内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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内部被ばくと健康被害

福島第一原子力発電所 1/2号機排気筒解体に向けた調整状況について 2019年5月23日 東京電力

[解説]  2011年3月12日,13日,14日,15日の福島第一原発1号機、2号機のベントと、2011年3月15日の2号機の圧力抑制室の底抜けによって、1/2号機の排気筒の内側には、高濃度の放射能がこびりついています。1/2号機排気筒は高さ120mもあります。1/2号機排気筒には、高さ45m,66m付近に明らかな亀裂があり、大きな地震や台風などにより、倒壊する恐れがある、とされてきました。東京電力は、そのため、排気筒上部から順順に切断・撤去する巨大なクレーン型の機械を開発し、2019年3月から解体・撤去工事を始める、としていました。それが、「モックアップ訓練(模型を作って、模型を解体・撤去して練習するること)を繰り返し、万全を期すため」と称して、2019年5月連休明けに行う、と発表されました。  それが突如、2019年5月14日、クレーンの長さが約1.6m足りなかった、として、無期延期になりました。  以下は、その後、2019年5月23日に東京電力が公表した資料です。 分かりにくいので、編集者が解説を加えています。赤字が解説を加えた部分です。 果たして、クレーンが約3m足りない、ということが、数年かけて準備されてきた工事で起こりうるのでしょうか?今回の作業に入る前の失敗は、そもそも650トンものクレーン車(巻末の東京新聞参照)を安定的に設置することが不可能なのではないですか?東京電力福島第一原発の敷地はもともとは沼地です。辺野古新基地建設予定地と同じようにN値がゼロなのではないですか?また、「5月11日の現場合わせ時、調査機材の下端が排気筒頂部よりも約1.6m低い」とは、たった2週間の間に、排気筒が沈んだのではないでしょうか?  東京電力の資料では、何も分かりません。今回の作業無期延期になった本当の理由を公表するべきだ、と考えます。  また、今年2019年7月、8月にも福島県地方にも台風が襲来する可能性があり、また、その台風によって1/2号機排気筒が倒壊する危険性もあります。その際に高濃度の放射能が舞い散る危険性があります。注意が必要です。 福島第一原子力発電所1/2号機排気筒解体に向けた調整状況について 2019年5月23日 東京電力 高さ120mの1/2号機排気筒解体開始に向けた最終確認として、解体装置が最頂部に設置可能か確認するため、5月11日にクレーンに解体装置高さを模擬した調査機材を取り付けて現場合わせを行ったところ、事前に計画していた高さと約3mの差異(低い)があることを確認しました。  差異の原因としては、クレーンアーム部の角度表示の測定誤差を一つの可能性と推定しつつ、光波等を用いて、長さ・高さ等の実測を中心とした確認を進めてまいりました。 図  解体装置外形図   クレーンフックまで約7.6m 解体装置高さを模擬した調査機材の模式図 事前に計画していた調査機材の下端位置が、排気筒頂部にぴったり合わなければならないのに、約1.3m短かった。 また、排気筒頂部が5月11日の現場合わせ時、調査機材の下端が排気筒頂部よりも約1.6m低い位置となった。 従って、約1.3m+約1.6m=約3m、長さが足りなくなった。 検証結果と今後の調整内容の検討状況 ・ 光波による実測等の結果、クレーンアームの角度は設定値と実際の角度に誤差がなかったことを確認するとともに、高さ等の実測から、最大巻き上げ時のワイヤーの長さに、計画と約4mの差異があることを確認しました。 ・ この差異が発生した要因は、リミットスイッチワイヤーの長さ約4mを、誤ってクレーン先端からフック上端までの距離約4mとして計画してしまったため、実際のワイヤー長さ約8mに対し、約4mの差異が発生しました。 ・ なお、排気筒の高さを実際よりも1m高い設定でクレーンの高さを計画していたことも確認され、5月11日の確認作業時には、約3mの差異が発生しました。 【今後の調整内容(案)】 ①︓クレーンジブを延長する ②︓ブームを起こしクレーンを排気筒に近づける 東京新聞 福島第一原発傷んだ排気筒はこう解体する 2018年12月5日 朝刊 4面    

福島第一 豪雨備え土のう…汚染水抑制 緊急設置へ 2019年6月11日 読売新聞 朝刊35面

福島第一 豪雨備え土のう…汚染水抑制 緊急設置へ 2019年6月11日 読売新聞 朝刊35面    東京電力は、福島第一原子力発電所で豪雨が予想される場合、雨水が原子炉建屋に流入して汚染水となることを防ぐため、1号機建屋の北側に土のうを設置することを決めた。梅雨入りし、台風接近などで豪雨の可能性が高まるのに伴う緊急的な対応だ。  土のうを設置するのは、24時間で300~500ミリの降雨が予想される場合で、保管場所から運ぶ。  東電によると、土のう設置場所付近には、山側から海に向けて下り坂の道路があり、地形上、地表の水が集まりやすいという。仮に豪雨であふれた地表の水が1~4号機の原子炉建屋に流入し、建屋内の高濃度汚染水などと混ざると汚染水が増えてしまう。同原発では、2017年の台風接近時に建屋地下への水の流入量が急増。雨水も流入源となっていた。

バスなど運転手の体調急変 増加 2019年6月15日 10時10分 NHK福島 NEWS WEB

バスなど運転手の体調急変 増加 2019年6月15日 10時10分   NHK福島 NEWS WEB 東北地方で去年、バスやタクシー、トラックなどの運転手の体調が急変して運行できなくなった事例が前の年から急増して29件にのぼり、そのうち9件が事故につながっていたことがわかり、東北運輸局が事業者に注意を呼びかけています。 東北運輸局によりますと、東北地方で去年1年間、バスやタクシー、トラックなどの運転手が、業務中に体調を急変させた例が29件あり、前の年より11件、率にして6割余り増えました。体調が急変した主な要因は脳や心臓などの病気で、このうち40代から60代の運転手6人が病死したということです。また、29件のうち9件は事故となり、死亡事故はなかったものの、タクシーを運転中に呼吸困難になってハンドル操作を誤り、対向車とぶつかったケースやバスの運転手が意識を失って道路脇の看板などに衝突したケースもあったということです。このため東北運輸局は各事業者に対し、定期的な健康診断を行うなど運転手の体調管理に注意するよう呼びかけています。

全1人区で野党一本化へ、参院選 鹿児島で社民譲歩 2019年6月7 日 徳島新聞

全1人区で野党一本化へ、参院選 鹿児島で社民譲歩 2019年6月7 日  徳島新聞  会談に臨む国民民主党の平野幹事長(右)と社民党の吉川幹事長=7日午前、国会    社民党の吉川元・幹事長は7日、国民民主党の平野博文幹事長と国会内で会談し、両党が独自候補擁立を目指す参院鹿児島選挙区(改選数1)で、条件付きで社民が候補を取り下げる提案をした。平野氏は前向きに検討する意向を示した。これにより32ある改選1人区全てで立憲民主党など野党5党派による統一候補のめどが立った。  会談で吉川氏は社民の候補取り下げに際し(1)国民が推す候補を無所属にする(2)地元の融和を進める(3)衆院鹿児島4区は社民の意向を尊重する―の三つを提案。平野氏は「苦渋の決断に敬意を表する」として受け入れる方向で調整を進める。週明けに正式に回答する。

保育園埋設の放射性汚染土問題 横浜市が保護者に相談会 2019年6月6日  神奈川新聞 

保育園埋設の放射性汚染土問題 横浜市が保護者に相談会 2019年6月6日  神奈川新聞  横浜市役所    横浜市内の保育園の少なくとも300園に放射性物質に汚染された土壌が埋設されている問題で、市は6日、このうち一園で保護者への相談会を行った。市保育・教育運営課の担当者2人が保育園に出向き、質問に応じた。  この保育園では、園児2人が白血病に罹患(りかん)したと指摘されている。同課によると、このため保護者から問い合わせが相次ぎ、相談会の開催を決めた。同課は「市内の保育園で2人の白血病患者が出たことは確認しているが、どこの園かは明らかにできない」とし、汚染土と白血病の因果関係は「何とも言えない」としている。  同課によると、この日は午後3時から約4時間、相談に対応した。6家庭10人の保護者が「(汚染土を)移設しないのか」などと意見を述べ、市が安全性を説明。保護者からは「不安はある」との声もあった。  同課は、現在のところ他の保育園で相談会を実施する予定はないとした上で「不安はできるだけ払しょくしたい」としている。汚染土については「対応が不要な放射線量」とし、保管施設の北部汚泥資源化センター(同市鶴見区)に移設する予定はないという。  同園に在園していた長男が白血病に罹患した保護者の男性(33)は「今年卒園したが、同じクラスの子も白血病になった」と明かし、「埋設した土のことは説明されなかった。情報を開示し、同じことを繰り返さないようにするのが行政の仕事。被害が出てからでは遅い」と話した。  

白血病について考える資料(3) 米国東部環境放射線機関(EERF)の奇妙な仕事  放射能値のあり得ない大きな「マイナス値」

[解説]  歴史に学ぶことは重要です。過去にアメリカ本土で行われた、放射能汚染のデータ改ざんは、2011年3月の東京電力福島第一原発事故における、米軍の土壌調査データでも繰り替えられています。ストロンチウム89、ストロンチウム90の汚染データにー(マイナス)の値があるのです。  これは、すでに1990年にジェイ・M・グールド ベンジャミン・A・ゴルドマン『死に至る虚構 国家による低線量放射線の隠蔽』の中に「放射能値のマイナス値」の原因について書かれています。放射能が「負」になるような物質は存在しない。つまり、平均化すると「通常時と変わらない値」になるように、意図的にプラス値のいくつかがマイナス値に換えられた、と。  以下の東電福島第一原発事故で放出されたストロンチウム89とストロンチウム90のマイナス値も、そのマイナスを取ったプラス値として考える必要があります。  「白血病について考える資料(2) 東電福島第一原発事故で放出されたストロンチウム89とストロンチウム90 米軍のデータから」 内部被ばくを考えるを考える市民研究会資料 2019年6月14日   米国東部環境放射線機関(EERF)の奇妙な仕事  放射能値のあり得ない大きな「マイナス値」 ―アヒンサー 『死に至る虚構 国家による低線量放射線の隠蔽』DEADLY DECEIT ジェイ・M・グールド ベンジャミン・A・ゴルドマン 共著  英語初版1990年4月 肥田舜太郎 斎藤紀 共訳 pp.69〜73 アヒンサー出版 1994年10月22日 【編集】 内部被ばくを考える市民研究会 川根眞也 題名も。  1975年には、原子力エネルギーの推進と調整という原子力委員会の矛盾した役割に、議会と大衆の関心が強まり、委員会は解散した。原子力エネルギー委員会(AEC)の監視の役割を引き継いで原子力規制委員会(NRC)が設立された。保健教育福祉省(HEW)の放射線データの修正と出版の責任を環境保護局(EPA)が引き継いだ。月間「放射線データと報告」誌は廃止され、それに替わって制約の厳しい、配布も制限された季刊の「環境放射線データと報告」が発行された。この報告には「放射線データと報告」誌に公表されていた詳細な記事、すなわち政府の兵器工場周辺の環境放射線、食物の放射能、骨中のストロンチウム90などについては掲載されていない。ミルク中の長命なストロンチウム90と短命なストロンチウム89の正確なデータは各州とも7月1回だけの測定に縮小された。  1975年のその第1号の発刊から、「環境放射線データ」はアラバマ州モンゴメリーにある前AEC(原子力エネルギー委員会)研究所そのものによって準備が進められ、東部環境放射線機関(EERF)と名付けられた。中身は以前とまったく同じ機関に、現在、すべてのミルクや雨のサンプルと、環境放射線の精密な測定のための大気フィルターが送られている。今や、たった1ヵ所のこの研究室が全米のすべての地域の環境放射線の測定基準を決定することができ、組織はデータの変化を単純化したり、隠ぺいしたりするこ とができた。  東部環境放射線機関(EERF)の一番奇妙な仕事は、ミルク中の放射線量値を物理的にあまり大きくない「マイナス値」で報告することだった。放射線が「負」になるような物質は存在しない。しかし比較的、最近のミルク中の放射線の表記方式によれば、宇宙線やラドンその他の自然放射線によってできるバックグラウンドのレベルより低くなる時は「マイナス値」が発生する。この表記方式でも普通は、数週間で消滅するヨウ素131やバリウム140などの短命な核種には小幅のマイナス値とプラス値が存在する。統計上で予想されるように、滅多に最小幅の4〜5倍以上にはならず、平均すると年に2〜3回はゼロになる。  このような予想に反して、報告は時としてプラス値よりもマイナス値を多く含み、異様に大きなマイナス値もあった。レーガン政府の「宇宙戦争」戦略防衛構想にもとづいてネバダ核実験場で行われた1982年夏の地下核実験はそのような場合の1つだった。議会の公聴会の証言によれば、これらの実験は環境中に大量の放射能を放出したことが疑われた。中国の最後の大気圏内核実験は1980年10月であり、その後、この地域での原子炉の運転はない。したがってミルク中のバリウム140とヨウ素131の数値に大きなプラ ス値があったなら、アメリカ自身の地下核実験からの漏洩の明らかな証拠であるに違いない。  にもかかわらず、ネバダ州のミルク中のバリウム140は1982年5月に1L当たりマイナス42ピコキュリー(-1.6Bq/L)という驚くべき数値を示し、全米で最高のマイナス測定値だった。当月、アメリカ全土で62件あったバリウム140の測定報告のうち、驚いたことに57件がマイナス値だった。ネバダ州に隣合った8つの州でもマイナス値が測定されており、ネバダ核実験場から遠くなるにしたがって数値の大きさを減じている。  それとはまったく対照的に、1982年3月の月にはそのようにはっきりしたパターンは存在しない。ネバダ州におけるミルク中の放射線のマイナスの最高は1982年6月の10分の1で、正常な状態下で期待されるプラスとマイナスの小さな上下の動揺が見られるのみである(以下の図6−6を見よ)。  図6―6 1982年6月と3月の西部諸州におけるミルク中のバリウム140のマイナス値     また、1982年6月にヨウ素131の大きなマイナス値がニュー・イングランド州で数多く起こった。その月にはマサチューセッツ州のピルグリム原子炉が2回にわたって重大な放射能漏洩を起こしている。これらの事故とそれ以前に報告された放射能漏れは、引き続いて起こった白血病の増加と合わせてバーバード大学公衆衛生学部の研究課題になり、後にジョン・F・ケネディ上院議員が国立衛生研究所の原子炉付近におけるがん発生率の研究を正当化するため、その資料を使用している。  6−7図はヨウ素131の絶対値として大きなマイナス値が、ヨウ素131の大きな源泉と報告された、東マサチューセッツのピルグリム原子炉および東コネチカット州のマイルストーン原子炉から、遠く離れるにつれてその絶対値が減っていることを見事に示している。  図6―7 1982年6月と1月のニュー・イングランド諸州におけるミルク中のヨウ素131のマイナス値  このケースではピルグリム原子炉のオペレーターから原子力規制委員会(NRC)に、その夏、核工場の近くの大気中の放射能上昇が確認され、報告書が提出されている。ネバダ州のミルク中のバリウム140の濃度は、工場が閉鎖されていた1982年初めには、ゼロであった。  なぜ、大きなマイナス値が出るのか。なぜ、ゼロの近くの数値はずっとそのままなのか。大きなマイナス値の使用は真実を知る必要のない役人にとっては有意義であるが、一般庶民にとってはプラスの指標を帳消しにし、結果として国の平均値の警告の機能を失わせてしまう。  疑いなく、このような奇妙なデータ操作は最後の手段であった。改ざんされた統計が批判的に暴露される可能性は非常に少ない。このような月報の公表は高度に操作されており、非常に限定された読者層を想定している。放射線報告を読む科学者の大半は、例えば、原子力機関を含む連邦政府機関のどこかで働いている。データが国家の安全に微妙に関わり合うことを認めた上で、これら政府の科学者たちはどんな異常な測定値をも、それぞれ正当な管轄者、この場合は彼らの所轄上司に報告する。一方、公衆衛生の分野にいて人口統計月報を読んでいる科学者は放射線データについて詳しくは追跡しない。1960年代の当初に大気圏内核実験禁止条約が調印された後は、比較的、少数の科学者だけが、人類が作った環境放射能のレベルを心配してきた。  その上、目立たず、あまり疑われないデータ操作方法は、本当に突出したデータを隠すのにしばしば役立ってきた。例えば測定地点の記載順序を地理的に脈絡なく入れ替えることで、放射線測定値の表が持つ意味を解釈することを困難にする、という方法である。アラスカ州がアラバマ州の次に並び、南カリフォルニア州がロードアイランド州に続いている、などである。測定値が周辺より高いかどうかを判断するには、データを入れ替えるコンピューター解析が必要である。 <中略>  データを改ざんするためには、主要な官僚機構の抵抗を抑圧することになしには困難であったと思われる。東部環境放射線機関(EERF)の設立によって、そのことが簡単にできるようになった。

白血病について考える資料(2) 東電福島第一原発事故で放出されたストロンチウム89とストロンチウム90 米軍のデータから

東電福島第一原発事故で放出されたストロンチウム89とストロンチウム90 米軍のデータから アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 2011年福島事故のデータおよび文書に対する対応 日本語地名入り US DOE/NNSA RESPONSE TO 2011 FUKUSHIMA INCIDENT- DATA AND DOCUMENTATION [解説]  以下は、東京電力福島第一原発事故時に米軍が行った土壌調査 US DOE/NNSA RESPONSE TO 2011 FUKUSHIMA INCIDENT- DATA AND DOCUMENTATION(アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 2011年福島事故のデータおよび文書に対する対応)について、公表されている北緯・東経にもっとも近い公共機関を編集者がGoogle Mapで見つけ出し、日本語の地名を入れたものです。  不思議なことに、ストロンチウム89やストロンチウム90の土壌測定結果の値にー(マイナス)があります。これは、ジェイ・M・グールド ベンジャミン・A・ゴルドマンが、著書『死に至る虚構 国家による低線量放射線の隠蔽』英語初版1990年4月の中で、「放射能値のマイナス値」の原因について明らかにしています。放射能が「負」になるような物質は存在しない。つまり、平均化すると「通常時と変わらない値」になるように、意図的にプラス値のいくつかがマイナス値に換えられているのです。マイナスの値はすべて、マイナスを取った正の数として読み取って下さい。  以下も参考にしての土壌データをご覧下さい。 「白血病について考える資料(3) 米国東部環境放射線機関(EERF)の奇妙な仕事  放射能値のあり得ない大きな『マイナス値』」 内部被ばくを考える市民研究会資料 2019年6月14日    また、奇妙なデータがいくつも存在します。飯舘村、福島市のストロンチウム90の量が異常に少ないです。宮城県 丸森町 丸森町立金山小学校付近 ストロンチウム90が25.27ベクレル/kgもあるのに(ただしこれはマイナス値からマイナスの符号を取って考えます)。飯舘村や福島市が0~1ベクレル/kgの範囲とはにわかに信じられません。  飯舘村 磐城森林管理署小宮森林事務所付近 新田川 川辺 ストロンチウム90 1.74ベクレル/kg  飯舘村 飯舘村立飯樋幼稚園付近 飯樋川 川辺 ストロンチウム90 0.34ベクレル/kg  福島市 福島市立土湯小学校付近 福島カントリークラブ付近 ストロンチウム90 0.31ベクレル/kg また、もっとおかしなデータは福島市 福島飯坂IC付近 資料ID 1751 のストロンチウム89のデータです。何と、検査結果が2つあります。元データをよく見ると「試料ID」の前に「解析ID」が書いてありました。両方をつけたデータは以下です。 解析ID 試料ID 地名 土壌採取日 調査機関 核種 ベクレル/kg 230063 7151 福島市 福島飯坂IC付近 3/20/2011 5:30:00 PM DOE Sr-89 0.00 230161 7151 福島市 福島飯坂IC付近 3/20/2011 5:30:00 PM DOE Sr-89 339.88 つまり、採取した時間は同じで、試料IDも同じ。しかし、検査を2度したと読めます。ストロンチウム89を測って1度目は339.88ベクレル/kgだったのでしょう。「これはまずい!」と2回目測定した結果が0.00ベクレル/kgだった、と。  同地点のセシウム136は何と驚くことに、4377.10ベクレル/kgです。半減期が13.2日の核種です。セシウム136が4000ベクレルを超えているのに、ストロンチウム89が0の訳がありません。ウランの崩壊で生み出される核種には2つのピークがあるからです。 核分裂生成物の質量数分布 Wマーシャル 原子炉技術の発展 上 1986年  これはウラン233、ウラン235、プルトニウム239が熱中性子を捕獲して核分裂すると、質量数(原子核の陽子と中性子の数のこと)が89~105あたりの原子と、質量数が135~146あたりの原子になる割り合いが高い、ということを表しています。233とか235,239が質量数です。これらの原子核が熱中性子を取り込み(+1)、2つや3つの原子核と分裂し、同時にα線、中性子線を出します。ですから、セシウム136がたくさんあったら、ストロンチウム89もたくさんあって当たり前です。それが0とは原子核物理では説明できない現象です。  以上、米軍のデータでも、普通の数値にマイナスをつけたり、意図的なデータ改ざんは行われている、と承知の上で以下のストロンチウム89、ストロンチウム90の土壌データをご覧下さい。 米ソが大気圏内核実験を行っていたピークの1963年こそ、ストロンチウム90は100ベクレル/kgを超えるところがありました。しかし、東電福島第一原発事故前の2009年の土壌中のストロンチウム90の最高値は、14ベクレル/kgです(栃木県日光市)。それがいかに原発事故によって高くなったか、確認してください。 US DOE/NNSA RESPONSE TO 2011 FUKUSHIMA INCIDENT- DATA AND DOCUMENTATION アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 2011年福島事故のデータおよび文書に対する対応 土壌中のストロンチウム89 【単位】ベクレル/kg 【出典】アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 US DOE/NNSA RESPONSE TO 2011 FUKUSHIMA INCIDENT- DATA AND DOCUMENTATION FieldSampleSoilResults.csv 【編集】内部被ばくを考える市民研究会 川根 眞也 (1)ストロンチウム89編 半減期は50日。従って、吸収されて人体の骨に沈着した場合、短期間に骨髄細胞にたくさんのベータ線を浴びせることになります。  US DOE/NNSA RESPONSE TO 2011 FUKUSHIMA INCIDENT- DATA AND DOCUMENTATION アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 2011年福島事故のデータおよび文書に対する対応 土壌中のストロンチウム89 【単位】ベクレル/kg 【出典】アメリカ合衆国エネルギー省 国家核安全保障局 US DOE/NNSA RESPONSE [...]

白血病について考える資料(1) 放射線の生物学的影響 ―人に対する影響を中心にして― 後藤孝也 独立行政法人放射線医学総合研究所緊急被ばく医療センター 2013年

今こそ復習!主任者の基礎知識―「もっと基礎を、ここが肝」編―主任者コーナー 放射線の生物学的影響 ―人に対する影響を中心にして― 後藤孝也 独立行政法人放射線医学総合研究所緊急被ばく医療センター 2013年 Isotope News 2013年12月号 No.716  [解説] 【第1稿】2019年6月14日 編集者 【改訂】2019年6月15日  編集者  放射線医学総合研究所が驚くべき、資料を公表していました。放射性セシウムが白血病の原因となる、という資料です。編集者はこれまで、放射性セシウムが白血病の原因となる、という論文を読んだことがありませんでした。  この放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療センター 主任研究委員の後藤孝也氏の以下、論文によれば、内部被ばくで白血病の原因となる核種は以下の通りです。この論文の最後に表4が掲載されており、その中に記載がありますのでご確認下さい。 白血病の原因となる核種 カルシウム45(45Ca)、鉄59(59Fe)、ストロンチウム90(90Sr)、セシウム137(137Cs)、トリウム232(232Th)、ウラン238(238U)、プルトニウム239(239Pu)、ラジウム226(226Ra)、アメリシウム241(241Am) 表4 核種と体内集積部及びその影響 表作成 後藤孝也 2014年 より これまで多くの放射線生物学の学説では「放射性セシウムは筋肉にたまる、心臓にも脳にたまることはない」というものでした。一方、チェルノブイリ原発事故後では、リクビダートル(原発事故除染作業員)の脳が広範囲に侵され、短期記憶すら奪われている症例が報告されています(NHK スペシャル“終わりなき人体汚染~チェルノブイリ原発事故から10年~”1996年4月26日放映)。放射性セシウムは脳をも侵すのではないでしょうか。 また、この後藤孝也氏の論文で、これも驚いたことに、放射性セシウムの内部被ばくの影響で、白血病とともに“不妊”が挙げられていることです。編集者はベラルーシのユーリ・I・バンダジェフスキー博士の論文では「放射性セシウムが不妊の原因となる」という論文を読んだことがありましたが、放射線医学総合研究所のような、国際放射線防護委員会(ICRP)理論妄信の機関が出している論文ではありませんでした。東電福島第一原発事故以降、周産期死亡率が一時的に多くなったことは周知の事実です。 <参考> Increases in perinatal mortality in prefectures contaminated  A spatially stratified longitudinal study Hagen Heinrich Scherb Dr rer nat Dipl―Matha 2016年9月2日  東電福島第一原発事故以降、不妊も増えていたのではないでしょうか。また、現在でも放射性セシウムに汚染された食べ物を食べ続けている地域では、不妊が引き起こされるのではないでしょうか。  放射線医学総合研究所は、基本的に広島、長崎の被爆者を調査したABCC(原爆障害調査委員会)と同様、被ばく者の調査研究のために設立された機関であり、被ばく者が被ばく後どのように癌にかかり死んでいくかを調査研究してきた機関です。放射線医学総合研究所は、そもそも1954年3月のビキニ事件(アメリカがビキニ環礁で行った水爆実験)を契機に設立された機関で、ビキニ環礁で被災したマグロ漁船、第五福竜馬丸の乗組員たちの被ばくを調査研究してきました。しかし、乗組員たちが次々と肝臓がんにかかっているのを知りながら、本人たちには伝えず、英語の学術誌には論文を投稿していました。 <参考> 「放射線医学総合研究所の実態は、ヒバクシャの調査・研究。放射線防護や治療ではない」内部被ばくを考える市民研究会資料 2019年2月20日 http://www.radiationexposuresociety.com/archives/9884  また、放射線医学総合研究所は東電福島第一原発事故でも、双葉町で11歳の少女が甲状腺に100ミリシーベルトの被ばく(等価線量)していたことを把握していたにもかかわらず、隠していました。東京新聞の情報公開請求で明らかになりました。 <参考> 東京新聞 11歳少女、100ミリシーベルト被ばく 福島事故直後 放医研で報告 2019年1月21日朝刊 https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019012102000122.html  さらに、放射線と発がんなど、健康被害との科学的因果関係を証明する方法は、唯一あるのは疫学調査です。しかし、その疫学調査を「必要ない」として政府に進言したのは、放射線医学総合研究所理事、明石真言氏でした。これも東京新聞がスクープで明らかにしました。 <参考> 東京新聞 官邸に「疫学調査不要」 福島原発事故で放医研理事 2019年2月18日朝刊 https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021802000125.html  原発事故当時、福島県民に安定ヨウ素剤を予防服用させれば、これほどまでの小児甲状腺がんの子どもたちは出なかった可能性があるにも関わらず、福島県民に「安定ヨウ素剤を服用させる必要ない」と国に進言したのも、同じく放射線医学総合研究所理事、明石真言氏とされています。  放射線医学総合研究所が、放射線物質と発がん、がん死との関係を調べる機関でありながら、市民の放射線防護にまったく役立っていないことは明らかです。その上で以下の論文には参考となる事柄がたくさん記載されています。また、誤った記載もたくさんあります。今後、逐次、批判を加えていきたいと思います。  なお、第1種、第2種放射線取扱主任者試験を受け合格しようと思う方は、以下の論文の内容がすべて正しいとして回答しないと合格できません。ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告の要点は丸暗記する必要があることを書き添えておきます。 以下、(赤字)は編集者、※1~※8は編集者が挿入した言葉です。   今こそ復習!主任者の基礎知識―「もっと基礎を、ここが肝」編―主任者コーナー 放射線の生物学的影響 ―人に対する影響を中心にして― 後藤孝也 独立行政法人放射線医学総合研究所緊急被ばく医療センター 2013年 Isotope News 2013年12月号 No.716   はじめに  福島第一原子力発電所事故以降、放射線の人体影響に関する情報は書籍、インターネットをはじめ日常の報道の中にも氾濫しています。しかもかなり高度な内容に踏み込んだものも多く、以前であれば、ごく一部の大学院生の講義で扱われた内容が一般の方々の常識的知識となっている現状に戸惑いを禁じえません。しかも、不必要に不安を煽るような情報も散見されます。不特定多数の人々が情報を発信するインターネット情報には、故意ではないにせよ誤った情報が流され、それがあたかも正しい知識であるとの誤解を産んでいることさえあります。そのような中、放射線取扱主任者に求められる要請は、ますます高くなっていると言えるでしょう。本稿では、放射線の生物影響を人体影響に重点をおいて基礎の基礎に立ち返り、解説していきたいと思います。   1. 放射線の生体への影響を表す単位などについて  いろいろな経緯があるとはいえ、単位に関しては実に複雑怪奇なのが現状で、初学者をはじめ混乱の原因となっています。線量測定関係諸量である“照射線量”“カーマ”“吸収線量”と、放射線の生物学的影響を加味した“等価線量”“実効線量”などの量があります。人体に対する影響を考える場合には、後者の概念、量、単位が重要な意味を持ってきます。  放射線による生物学的影響は、その放射線の線質(種類とエネルギー)によって異なるとともに、影響を受けた(被ばくした)臓器、組織にも依存します。そのため、放射線の種類やエネルギー量による影響を補正するために、放射線荷重係数を導入し、物理量である吸収線量(Gy)に放射線加重荷重係数を乗じた値が等価線量(Sv)として定義されました。さらに、この等価線量に臓器・組織ごとの影響を補正する組織加重係数を乗じた値を全ての臓器組織について合計したものを実効線量(Sv)として定義されています。  この放射線加重係数、組織加重係数に関しては、2007年のICRP(国際放射線防護委員会)勧告で変更があり、日本の法律ではまだ正式には導入されていませんが、将来的には導入される予定です。ここで、等価線量は、個々の組織や臓器の線量の確率的影響を補正するために組織加重係数を用いて実効線量を定めていると理解していると思います。今一度確認すると、おおもとになるここでの吸収線量は、各臓器、組織にわたって平均された吸収線量であるということです。ただし、吸収線量の定義が変わるわけではありませんから注意してください。そして、等価線量の係数に用いる値は、低線量の確率的影響の誘発に関する生物効果比(RBE)の値から導かれるため、本来は確定的影響の評価には向かないのですが、代替えの線量概念がないために、そぐわないのを承知で使用しているという事情があります。ですから、乗じる係数は無次元ですが、吸収線量とは意味合いが変わるためにシーベルト(Sv)という特別な単位に換えて用いているのです。さらに話しがややこしいのは、このように定義しても、個々の組織臓器の等価線量を直接定義することができないということにあります。臓器の吸収線量すら測定できません。だからこそ、各臓器組織に平均された吸収線量という値を元に定義せざると得ないのです。端的には、実務的に測定記録されているのが、1cm線量当量であることからも、概念的な値と実測的な値に乖離があることは分かると思います。この辺りも混乱を招く原因ですから、ICRP(国際放射線防護委員会)あたりで、量・単位を整理してくれれば良いのにと、個人的には思っています。   2. 放射線の生物的な影響  放射線の生物的影響を考える上にも量・単位同様に、いろいろな用語があり、理解する際に非常に混乱します。これも“放射線による生物的(人体)影響”というモヤモヤとした“つかみどころのない現象”を色々な要素を持つ言わば刃物で切ったその断面を、それぞれの見かたで説明しているようなものだという立場で理解すると比較的理解が容易であると思います。放射線の影響を受けるのは、あくまでも個人であり、場面ごとに変わりますから当然と言えば当然です。  放射線による障害を受けた、つまり被ばくした人の身体に影響が現れる現象を、「遺伝という刃物」で切ったその断面を見た場合、被ばくした本人に現れる影響を“身体的影響”、その子孫に影響が現れる場合を“遺伝的影響”として見ることができます。同じく、被ばくの影響を「時間という刃物」で切ったその断面を見た場合、数時間から数日そして数週間以内に現れる影響を“急性障害”、また、数か月~数年以上(場合によっては数十年)経過して現れる影響を“晩発障害”という見方をします。そして、「確率という刃物」で切った断面を見た場合に、その影響を“確率的影響”と“確定的影響”とを対比して見ることになり、「体という刃物」で切った断面を見ると、“外部被ばくによる影響”と“内部被ばくによる影響”加えて“体表面汚染による影響”という三者を対比させて見ることになるのです。場合によっては、前記のたとえで言う2種類の刃物で同時に切った断面を見て影響を考えることもあります。以下それぞれについて説明をしていきますが、全体はあくまでも放射線の被ばくにより受けた影響という一塊のモヤモヤとして現象であるということを忘れないで下さい。   3. しきい値の概念  放射線の障害を考える前提となる概念にしきい値があります。一般的に、ある値を超えると効果が現れ、それ以下では効果が現れない値をしきい値と呼び、放射線障害では、皮膚の紅斑や脱毛などで障害が起きるか否かの境界をなる値などがそれに当たります。この値は、被ばくを受けた人のうち、1~5%の人に影響が現れる値として定められており、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の組織線量当量限度を定めるための基になっています。ここにいう効果が現れないということは、障害を受けた細胞が可逆的障害にとどまる場合や周辺組織が代償的に機能する場合も含む値であり、そのため、個人差も見られることを認識しておく必要があります。このポイントを押さえた上で以下を説明します。   4. 身体的影響と遺伝的影響  放射線による生物的影響を見た場合に放射線の電離作用により影響を受ける標的がDNAであるため、それが世代を越えて影響を及ぼすか否かが問題になります。そのため、「遺伝という刃物」で切った切り口を見ると、被ばくした本人に現れる影響と、子孫以降の世代に現れる影響を、遺伝的影響(hereditary effect)と言い、子孫に伝えられるか否かに関わらず、遺伝子突然変異が起こることを、遺伝学的影響(genetic effect)と言って区別して用いられる点です。  身体的影響は、被ばくした本人の影響として、別の切り口で考えるため、この切り口で分類した場合の議論の中心は、遺伝的影響となります。我が国においては、広島・長崎の原爆被爆者の長期にわたる調査が現在までも継続されており、被曝2世、被爆3世の調査も行われています。ここで注意することは、胎内被ばくは身体的影響に含まれることです。放射線影響研究所などが中心となった調査では、先天的奇形の発生頻度、被爆2世の寿命調査、親の生殖細胞に由来する染色体異常、がんの死亡率調査などが行われてきましたが、いずれの調査によっても対照群と有意差は認められず、遺伝的影響は認めらえていません(表1)。一方で動物実験では、ショウジョウバエ、マウスなどには遺伝的影響が報告されています。この差の原因に関しては、明確な結論は得られていません。    身体的影響とした胎内被曝については、胎児の初期胚発生から出生に至るまでの各週令とそれに伴う影響のしきい値は推定がなされています(表2)。しかしながら、遺伝的影響が認められるマウスの実験データなどが基になっているため、厳しすぎるきらいがあるとも考えられています。この点は、妊婦に対する放射線障害が以前ICRP(国際放射線防護委員会)より10daysルールとして勧告されていましたが、1990年勧告からは、それが緩和されて妊娠が疑われる場合は下腹部の照射を避けるべきとするより緩やかな規制に変わって来たことにも現れています。胎児以外の身体的影響は別の切り口で詳しく見ます。   5. 急性障害と晩発性障害  放射線によっておこる障害を「時間という刃物」で切った切り口を見ると、急性障害と晩発的障害という対比として見ることができます。ここでいう急性障害とは、被ばく後比較的短時間の内に生じる障害をいいます。さらに、この急性障害を全身の被ばくと局所の被ばくとして分けて議論がされます。全身の被ばくに関しては、放射線被ばく後、数時間から数週間の間に生じる発熱や嘔気、嘔吐の症状を急性放射線症と言います。臨床的に使っていますが、症状と全身の被ばく線量は相関しており、被ばく事故の際には、トリアージなどで重要な意味を持ってきます。通常、急性放射線障害は、全身に被ばく1Gy以上で起こり、1Gy以上全身に被ばくすると、まず放射線船酔の症状が現れ、2.5Gy程度の全身被ばくで骨髄死、10Gy程度で腸管死、30~50Gy程度で中枢神経死を来すとされています。全身被ばくした時に現れるは、①前駆期(被ばく後数時間で現れる嘔気や頭痛などの症状が見られる時期、線量が大きいほど発現までの期間が短い)、②潜伏期(障害を受けた臓器より症状が変わり、免疫不全、出血、下痢や下血、意識障害などを呈する時期)、④回復期又は死亡(医療により救命し得た場合、回復してくる時期)の4期に分けられています。急性期の前駆症状と被ばくの関係をまとめると(表3)のようになります。   特に嘔吐の症状の有無は治療により救命できるかの境界となる指標であることが重要点と言えます。このように、全身被ばくの場合は、局所被ばくとは異なり、救命できるか否かが問題となり、しきい値も腸管死、骨髄死がその境界として意味を持ってきます。腸管死の機序を例にとってみると、腸管では、小腸がもっとも放射線感受性が高く、すなわち、細胞分裂が盛んに行われているということになるのですが、全身被ばくで10Gyを被ばくした場合には、腸管の腺窩(クリプト)にある幹細胞が障害を受け分裂を停止する一方、分化している絨毛細胞は影響を受けず時間とともに脱落していくことになります。結果として、新しい細胞が補充されなくなった腸管は、吸収機能はおろか防御機能も失い、出血や腸内細菌などによる感染症(敗血病)を起こし、最終的に死に至るという経過をたどることになります。これが腸管死のしきい値の意味です。  一方で局所の被ばくにおける障害は、それぞれの組織で障害が現れるしきい値が推定されています。例えば、皮膚における局所被ばくの際のしきい値としては、細胞分裂の盛んな毛嚢は、1~2Gyで一時的に毛の成長が停まり、3~4Gyで脱毛が起こります。3~6Gyで紅斑や色素沈着が起こり、7~8Gyで水泡形成、10Gy以上被ばくすると潰瘍を形成し、さらに20Gy以上では難治性の潰瘍を形成します。初期の紅斑としては、照射を受けた初期にヒスタミン様のケミカルメディエーターによる血管拡張が原因で起こる紅斑と、より高線量によって引き起こされる持続性の紅斑とを区別して臨床像を扱います。また、臨床的には、線量に依存して起こる第1~4度の皮膚反応に分類していますが、本質としては、表皮層及び真皮層に存在する基底細胞や毛嚢細胞に存在する幹細胞が障害を受けることに由来します。皮膚の基底細胞は深いところで100μm、浅いところで30μmの深さに存在するため、皮膚を評価する平均値として70μm線量当量が使われています。  このように、局所の急性被ばくを考える際に、皮膚同様に生殖器、造血器、及び諸臓器について障害を起こす詳細な線量が教科書等に一覧表になっていますが、その値が全身照射によるものか、局所照射によるものかを注意して見る必要があります。例えば、放射線感受性が強い臓器である肝臓において、障害を受けるしきい値が30~40Gyという場合、またリンパ組織での障害を受けるしきい値が0.25Gyという場合は、局所被ばくを考えているということになります。30Gyや40Gyを全身に被ばくすれば、個体は腸死で早期に死亡しますから当然と言えば当然なのですが、理解する上で混乱を招く原因ですから要注意です。  晩発的障害は、致命的ではない放射線被ばくをした後、また、局所にしきい値を超えて被ばくした場合や急性の被ばくをしたのち、急性障害から回復後、数か月~数年を経た時期に障害(症状)が顕著化したものを言います。代表的なものはがん、白内障というものがあります。ただし、ここでは「時間という刃物」で切った切り口を見ているため、確率的な議論はしていませんからその上で理解してください。晩発的な影響として前述のように、問題となる症状疾患はがんや白内障です。歴史的には、キュリー夫人のように白血病の例などがありますが、がんの発症に関する多くのデータは、広島・長崎の原爆被爆者の追跡調査や1986年4月に起きたチェルノブイリ原子力発電所の被災者の長期調査結果によるものです。現在のところ、放射線被ばくを因果関係が深いと考えられているがんは、白血病、甲状腺癌、女性乳癌、肺癌、皮膚癌などですが、唯一、慢性リンパ性白血病の過剰発生は認められていません。また病理組織像としての放射線に特異的な病理像の報告はありません。最近、甲状腺癌の遺伝子変異などで特異的な遺伝子変異の症例の報告がありますが、更なる研究の蓄積は必要と思われます。前記のがん以外に発生率の増加が認められるがんは、食道癌、胃癌のほか、多発的骨髄腫などが挙げられますが、観察集団の高齢化も考慮した更なる解析が必要です。  局所の被ばくによる晩発的影響として問題となるのは、白内障です。被ばくから発症に至るまでの期間が長期にわたりますが、これは、水晶体の上皮が再生性上皮であり、被ばくによる再生障害が起こると、水晶体の白濁が生じ、視力障害が見られることが、白内障の発生機序とされています。1回の照射による被ばくであれば、水晶体の白濁に至るしきい値は2Gy、白内障を呈するしきい値は5Gyとされています。分割照射による被ばくでは、水晶体の白濁に至るしきい値は5Gy、白内障のしきい値は8~10Gyと考えられています。ただし、このしきい値は、年齢依存性が認められ、年齢が若いほど、しきい値は低くなると考えられています。  これまで本稿では、しきい値の単位は全てグレイ(Gy)を使ってきました。初めに、しきい値を持つ障害には、組織の影響を表す等価線量としてシーベルト(Sv)の単位を使うことは向かないということを述べましたが、そのため、吸収線量(Gy)で表す方がより正確であると思われるためです。現在、氾濫している情報にはシーベルト(Sv)を用いて説明している情報も多いのですが、放射線加重係数が1であるため、数値の差はありません。当然、放射線加重係数の値が異なるα線や、中性子線では値が変わってきます。これは、放射線医学では、標準放射線として放射線加重係数が1である250keVのX線若しくは60Coのγ線が使われるため、Gy=Svという扱いになっているからだということを認識しておくことが必要です(注:1931年に線質の感受性を基に生物効果比を設定した当時は、165keVのX線が基準でした)。   6. 確率的影響と確定的影響  放射線による生物的な影響を「確率という刃物」で切ったその断面を見ると、その影響は確率的影響と確定的影響という分類で見ることができます。この確定的影響は、以前は非確率的影響という言葉を使っていました。この2つの違いは、しきい値を持つか持たないかという違いと言えます。確定的影響は、前項の急性障害と晩発的障害の白内障などが該当し、確率的影響は、発がんと遺伝的影響が該当します。ここでは、生物的影響という範囲で考えるため、遺伝的影響を含めています。被ばくの線量と影響の発生頻度を図で表すと(図1)のようになります。  確率的影響の原因は、遺伝子の突然変異に由来すると考えられ、その突然変異が起こる可能性が確率的であるためこのように分類されていると理解すれば良いでしょう。しかしながら、がんは放射線によって誘発されるだけでなく、自然的に発症することも事実です。自然発症のレベルを超えて発症頻度を考える場合は、線量依存的に直線的な発症率の増加が見られます。しかし容認できるレベル以下の低線量では、それが直線的に線量に依存するかどうかは正確には解明されていません。ごく低線量では、むしろ生体に有用となるという立場に立つホルミシス効果説や、確率的影響の低線量領域にしきい値が存在するという仮説などがありますが、今のところは、直線的に変化するというLNT仮説(しきい値なし直線-線量応答関係,Linear Non-Threshold model)が線量とリスクの関係をより安全側に評価するという観点から採用されています(図2)。 あくまでも安全側に評価するという立場として、放射線防護と管理のために採用している考え方ですから、これが正しいと主張しているものではありません。ここも理解が混乱している点でもあると思われます。低線量領域での生物影響の正確なことは今後の研究の発展が望まれます。  確率的影響として問題なのは、発がんであるということは前にも述べた通りです。これは、主に年齢と性の揃った原爆被爆者追跡調査に基づき評価されていますが、統計的に有意ながんの増加は、約100mSvを超えた値で認められています(図1)。これまで、すべてグレイ(Gy)の単位を用いてきましたが、ここでは、シーベルト(Sv)の単位を用いました。これには理由があります。このシーベルト(Sv)は、確率的影響(がんや遺伝的影響)の発生を考慮するために、組織臓器の等価線量に係数の総和を1とした各組織加重係数を乗じたものの総和として定義した実効線量であり、確率的影響を測る“ものさし”だからです。つまり、全身が均等に被ばくした場合も、ある臓器が単一に被ばくした場合も実効線量の値が同じであれば、それらの被ばくによる確率的リスクは同じであると考え、その値が100mSvを超えなければ発がんリスクは自然の発がんと変わらないと考えられるからです。例えば、10mSvの全身均等被ばくであれば、その実効線量は10mSvであり、甲状腺(組織加重係数=0.04)に250mSvを被ばくした場合も250×0.04=10の計算により、10mSvとなって、同じ実効線量は10mSvとなり両者の確率的影響は同じであると考えることができるということになるわけです。この組織加重係数は2007年のICRP(国際放射線防護委員会)勧告で、生殖腺が、0.20から0.08、膀胱、肝臓、甲状腺などが0.05から0.04に変更になっています。これは、広島・長崎の原爆被爆者の長期調査によって生殖腺への影響を見直し、より低く見積もられたことに由来しています。この組織加重係数が、がんや遺伝的影響を評価するために見積もられているということを忘れて議論すると話が混乱しますから注意が必要です。また、単位線量当たりの発がんリスクを見積もったリスク係数もICRPから出されており、2007年勧告では、年齢分布集団を平均した発がんの名目リスク係数が5.5(10-2Sv-1)、つまり1Sv当たり5.5%、遺伝的影響のリスク係数が0.2(10-2Sv-1)、つまり1Sv当たり0.2%となっています。  これまで説明した放射線による起こる障害を分類して分けてみると図3のようになります。   7. 外部被ばくと内部被ばく  放射線による障害を「体という刃物」で切った断面を見ると、“外部被ばくによる障害”と“内部被ばくによる障害”加えて“体表面汚染による障害”という三者を対比させて見ることになります。体表面汚染とは、文字通り衣類などを含め体表面に放射性物質が付着した状態をいいます。実験室などでは、実験に使う非密封放射性物質が誤って付着した、作業現場では怪我などの部位に放射性物質による汚染を発見したという事故が想定されます。当然、汚染がある状態では、作業員や研究者は外部被ばく、内部被ばくの危険に曝されるわけですが、汚染を除去することにより被ばくの危険は最小限になります。また、汚染の除染は放射線障害を最小限にするための基本ですから実務的には最も重要な事項と言えます。  次に内部被ばくと外部被ばくという分類対比を考えると、外部被ばくに関しては、これまで説明してきたように、主にX線、γ線による全身被ばく、局所被ばくを包含したものであることが分かります。さらに外部被ばくに関して、全身の被ばくの説明時には、混乱を避けるために述べませんでしたが、全身の均等被ばくに対して、非均等被ばくした場合は、被ばくした部位について、各部の等価線量に部位別加重係数を乗じた値を合算することで求めます。日常の管理では、この算出方法は難しいですが、より正確な被ばく管理を行う上で必要ですから、理解しておくことは重要です。  内部被ばくは、何らかの理由によって放射性物質が体内に取り込まれたために起こるものです。経路としては、口から入る場合(経口曝露)、吸い込む場合(経気道曝露)、傷口など皮膚から取り込まれる場合(経皮曝露)が主な経路と考えられます。本来、皮膚は防御機構が発達していますから、経皮曝露は、粘膜以外傷口がなければ経皮的吸収による内部被ばくは少ないと考えられます。よって内部被ばくとして考慮すべきものは、経口曝露と経気道曝露といえます。体内に取り込まれた放射性物質の場合、核種や形状、更には崩壊によって生じる娘核種の種類によって集積する組織臓器や代謝を考慮した実効半減期(有効半減期)と及ぼす影響は異なってきます。一般的には、水溶性や脂溶性の化学形をとる物は経口され、腸管から吸収することが多く、222Rn(ラドン222)、133Xe(キセノン133)などはガス状の状態で、経気道曝露されて内部被ばくの原因となる可能性があります。また、131I(ヨウ素131)や239PuO2(二酸化プルトニウム,※1)のような核種も粉塵として経気道的に吸収されると考えられています。例えば、131Iなどは、甲状腺にほぼ選択的に集積することにより、甲状腺癌や甲状腺機能低下症のような症状を起こすことがあります。化学形に依存する場合としては、239Pu(※1)の場合、可溶性であれば肝臓や骨に集積が見られ、粉塵と伴に吸入した場合は肺にそのまま沈着すると考えられています。実験室などでよく使われる32Pなどは、物理的半減期が14.3日と短いため、有効半減期も物理的半減期に近く、白血病減少の症状を起こしても白血病の誘発の可能性は低いと考えられています。(表4)にそれぞれの核種と集積されやすい臓器及び生じ得る障害をまとめました。※1 原論文には229PuO2,229Puとあったが、239PuO2,239Puの誤りであると考え編集者が239に直した。     化学形と同じく内部被ばくの場合に考慮しなくてはならない点として放射線の線質が重要になってきます。外部被ばくでγ線、X線が問題になったのと比べ、内部被ばくでは、α線の線質及び生物効果比が大きいためです。つまり、α線は紙1枚でも容易に遮へいできますが、逆にそれだけの厚さの部分に高密度にエネルギーを付与するということですから、局所的に大きな影響を受けることにほかなりません。  内部汚染の問題が生じた場合には、その内部汚染を除去するための薬剤を使用する必要がありますし、事前に内部汚染の予防のための薬剤が使われることがあります。具体的には、放射性セシウムの内部被ばくに対するプルシアンブルーや、放射性ヨウ素に対して使われる安定ヨウ素剤などがそれに当たります。それと同時に内部被ばくの線量も評価しなくてはなりません。前にも述べたように、吸収線量を直接測定することはできないため、推定するしかないのですが、組織臓器の吸収線量を推定することはかなり難しいと言わざるを得ません。摂取された放射性物質が実効半減期を繰り返しながら減衰していく間、継続的に被ばくをし続けることになるためと、推定の根拠となるホールボディーカウンタで測定した値と摂取に至る時期やその経路などの摂取シナリオによって、推定される摂取量が大幅に変わる可能性があるためです。また放射線防護の立場からは、より安全側の立場に立ち、摂取後50年間(小児にあっては、70歳になるまでの期間)被ばくすると推定される被ばく線量を、摂取時に一度に摂取したものとして以後の防護を考えるという立場、預託実効線量で内部被ばくを評する考え方が採用されています。ですから、内部被ばくの線量という場合は、この預託実効線量の値を示しているということを理解しておく必要があります。内部被ばくを推定する手段としては、前述のようなホールボディーカウンタと尿や糞便などから試料を調整して計測するバイオアッセイ法などがあります。また、経口摂取した場合など、核種ごとに実効線量係数がICRP(Pub.72)から出されており、それを用いて計算することにより、経口量(Bq)から預託実効線量(Sv)への換算が可能となります。本来私たちの体は、天然由来の40Kの放射性物質を持っていますから、何も被ばくしていない状態でおも、ホールボディーカウンタで計測すると、天然の40K由来のγ線スペクトルが観察されることを忘れてはなりません。その意味では、我々は常に自然放射線に曝されているということになります。   終わりに  平成23年に起こった未曾有の震災とそれに付随して発生した福島第一原子力発電所事故を契機に放射線及びその影響に関しての知識が驚く勢いで一般化しました。週刊誌に始まり啓蒙書、単行本に至る多くの出版物が書店に平積みになっていますが、誤った情報も紛れています。確かに、単位などこれまで整理されないまま今日に至っていることにも問題もあると思いますが、いまだ未解明が数多くあるのも事実です。このような中、放射線取扱主任者に求められる要求が今までにも増して大きくなったことは間違いないでしょう。基礎の基礎を理解することは、非常に大事です。本稿では、舌足らずな説明に終わってしまったことも多くあります。足りない部分は主任者試験対策テキストなどを用いて補っていただければ幸いです。  Isotope News 2013年12号 No.716 pp.89~98

農水ファンド 累積赤字 92億円 2019年6月9日 毎日新聞

 [解説]  故石井紘基衆議院議員は、以下のように著書『日本が自滅する日』(PHP,2002年)で述べています。 「今日わが国が直面している事態を見れば、大問題は既存の体制それ自体にあることがわかる。既存の体制とは、権力による経済浸蝕の構造、すなわち官僚経済体制である。市場を市場でなくしてしまった官僚経済体制にこそ日本経済低迷の原因があり、そこにこそ日本再生のための問題を解く鍵がある。」(pp.27)「二重三重の補助金をバラ撒く-農業経営基盤強化措置特別会計 農業構造改善事業のためには特別会計が利用されている。その一つが農業経営基盤強化措置特別会計だ。これはもともと戦後の農地解放時に設けられたもので、農地解放によって多くの農家が小作人から脱皮し農地の所有者になったため、その経営基盤を強化するのが目的であった。だから、その役割はとっくに消滅しているはずなのだが、その後は資金貸し付けなどの事業を増やし権益の拡大を行っている。」(pp.67)「要するに、訳のわからない仕組みを作って、訳のわからないことをやっているのだ。それが利権と政党・政治家の集票・集金に結びついていくのである。」(pp.69)「構造改革のための25のプログラム プログラム1 既得権益と闘う国民政権をつくり プログラム2 すべての特殊法人廃止を急ぐ1.経済活動に属する事業・組織はすべて廃止する。2.特殊法人の民営化(株式会社化)は原則として行うべきではない。(pp.237~241) 以上、石井紘基『日本が自滅する日』PHP,2002年   残念ながら、石井紘基衆議院議員は、以上の日本の官僚経済を改革するプランを国会で質問する、3日前に、テロリストによって刺殺されました。2002年10月25日。  今まさに、石井紘基氏が恐れていた、日本が自滅する日が近づいているのではないでしょうか?クールジャパン機構累積赤字98億円に次ぐ、累積赤字92億円を農水ファンド「農業漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)」が出しました。しかし、2019年6月9日朝刊時点では、読売新聞も朝日新聞も、記事にしていません。そして、明日2019年6月10日は新聞休刊日。このまま、他紙は報道しないのでしょうか? 累損92億円 官民共同 投資先が破綻 最大クールジャパンに匹敵 2019年6月9日 毎日新聞  朝刊1面  農林水産省が所管する官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)」の3月末までの累積損失が、約92億円に膨らむ見通しになった。2013年の開業以降、投資実績が振るわず、昨秋には投資先が経営破綻するなど、18年度だけで赤字が約28億円拡大。官民ファンドでは、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)が昨年3月末時点で最大の約98億円の累損を計上しており、それに次ぐ損失となる。政府関与の投資ビジネスのあり方が問われる。【山下貴史】  官民ファンドは政府と民間企業が共同出資して設立した投資組織。高度な研究開発や地域振興など政府の成長戦略を後押しし、リスクの高い分野に投資することで、民間投資を喚起するのが目的。内閣府によると、14ある官民ファンドのうち12が12年末の第2次安倍内閣発足以降に設置・改組された。  A-FIVEは、農林漁業者が生産、加工、販売などを一体的にする「6次産業化」を進めて農山漁村の振興を図る狙いで、13年1月に設立。財務省の財政投融資資金300億円と民間出資19億円の計319億円が元手だ。しかし、農水省などによると、開業から6年過ぎた今年3月末までの投融資総額は111億円で、計画の1892億円を大きく下回る。  昨年10月には、直接投資していた会社が初めて破綻し、約6億円の損失を計上。ブランド農産物の海外販路開拓などを目指した「食の劇団」(東京都)で、香港のレストラン進出が失敗し、破綻につながった。関係者によると、A-FIVEの役員が同社の社外取締役会長を兼務し、この投資案件の事実上の責任者だった。役員は6月下旬にA-FIVEを退任する予定で、退職慰労金1400万円が満額支払われる見通し。  会計検査院は昨年4月、損失拡大が続くA-FIVEに業務の見直しを検討するよう指摘。今年4月、A-FIVEは24年度に単年度黒字化する改善計画を発表した。A-FIVEの桜井淳治統括部長は累損について「投資の見込みがずれ、スピードが遅いのは確か。今後は直接投資を増やして実績を積み上げたい」としている。 農水ファンド累損92億円 政府主導の運用限界 甘い計画、責任は回避 2019年6月9日 毎日新聞 朝刊 3面  投資実績が伸び悩み、多額の累積損失を抱えた農林水産省所管の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)」。不振の背景には、投資計画の見通しの甘さや組織の硬直的な体質も浮かび上がる。【山下貴史】  政府は2013年5月、農林漁業の6次産業化の市場規模を、当時の1兆円から20年度に10兆円にする目標を掲げた。A-FIVEはこのシナリオに沿って動き出した。  A-FIVEは当初、各地の地銀などと作った投資組合(サブファンド)を通じた「間接投資」で全国の案件が掘り起こせると考え、1件当たり1億円、年200件の投資実績を見込んだ。ファンドは通常、投資先の価値上昇に時間がかかるため、設立当初は収益よりも費用が先行する。収益確保には、一定の投資実績を達成する必要がある。  しかし、もくろみは外れた。間接投資の実際の額は1件当たり3000万~3500万円と「小粒」で、今年3月末までの6年間の投融資件数は目標を大きく下回る125件。自ら支援する「直接投資」15件を含めても総額は111億円で、出資金319億円の3分の1程度にとどまった。  「生産者にとっては国の補助金や日本政策金融公庫の低利融資を使うことが一般的で、認知度のないファンドにはなかなか手を伸ばしてくれなかった」。A-FIVEの満永俊典総務部長は、こう釈明する。農林水産業の担い手の高齢化が進む中、大規模事業に乗り出す生産者がそもそも少ないことも誤算だった。  サブファンドは53組合作られたが、投資先が不十分で既に10組合が解散し、うち8組合は投資実績がゼロのままだった。会計検査院は昨年4月の報告書で、A-FIVEを名指しし、サブファンドによる投資不振を問題視した。  硬直化した組織の体質も不振に拍車をかけた。A-FIVEの元社員は「サブファンドと共同で生産者向けの説明会を開くなど、投資先の開拓に努力している社員もいたが、役員から『開拓はサブファンドに任せるべきだ。失敗したら責任を負わされる』とストップをかけられていた。役所以上にお役所的だった」と証言する。  「直接投資」でも手痛い失敗をした。日本の食材の海外展開を目指す「食の劇団」への投資では、香港のレストラン事業を後押し。店のフェイスブックによると、畳や掘りごたつのある個室を備え、和牛など日本から空輸した高級食材を使った2万円程度のコース料理を提供していた。利用客から称賛する投稿も目立ったが、開業の遅れなどが響き、わずか1年で頓挫。同社は破綻し、A-FIVEは約6億円の損失を出した。店は別の会社が引き継ぎ、営業を続けている。  ビジネスを育てる長期的視点が欠けているとの指摘もある。「発足時は投資が役立ったのですが」。北海道余市町でワインの生産販売とレストランを運営する「オチガビワイナリー」の落(おち)希一郎専務は不満そうに振り返る。同社はA-FIVEとサブファンドから計約1億4000万円の出資を受け、開業した。しかし、A-FIVE側がすぐに株を売ろうとしたという。「『社員を季節雇用に切り替えろ』とコスト削減まで求められた」。追加融資も断られ、17年に全株を買い取った。「官民ファンドなのに農家を育てる気がない。農業は息の長い商売なのに」と嘆く。あるサブファンドの元幹部も「農林漁業は短期間で勝負がつくビジネスではない。本当に育成するつもりがあるのか」と疑問を呈す。  「6次産業化のスローガンはイリュージョン(幻想)だった。その犠牲を、A-FIVEが(国から)押しつけられているのではないか」。昨年11月、財務省財政制度等審議会の分科会では、委員から国の責任を問う意見が飛び出した。 累積黒字82億円 改善計画に疑問  A-FIVEは業績を回復できるのか。公表資料によると、昨年3月末までの人件費など運営経費は45億円を超え、出資先の不振に伴う減損処理は47件、計11億円に上る。社用車をなくし、昨年9月には本社機能を賃料が高い東京都千代田区大手町から同区麹町に移すなど経費削減も進める。  今年4月に公表した改善計画によると、A-FIVEは食品業界の事業再編などにも投資対象を広げ、今年度だけで110億円、20~26年度に計590億円を投資。20年間の事業期間の期限である32年度末に82億円の累積黒字を出すとしている。  農水省産業連携課の高橋広道課長は「高いハードルだが、非現実的ではない。イリュージョンと言われないよう努力したい」と意気込む。しかし、開業から6年間の投資額と同額を1年で達成するという楽観的な見方に、財務省幹部も「小規模な投資が多く、黒字回復は無理ではないか」と首をかしげる。 巨額損失相次ぐ  A-FIVEに限らず、他にも問題を抱えた官民ファンドが目立つ。  財務省は昨年11月、A-FIVEと並び、投資実績が計画を大きく下回る▽海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)▽海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)▽海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)--の計4ファンドの監視を強化する方針を示した。4ファンドは今年4月の財務省財政制度等審議会の分科会に呼び出され、改善計画を提出した。  経済産業省所管で、日本文化の輸出を手がけるクールジャパン機構は17年度までに計1910億円の投資を計画したが、実際の投融資額は399億円で、累積赤字は98億円に上る。過去にはこんな事例も。バンダイナムコホールディングス(HD)などが14年に設立したアニメの海外配信会社に10億円を出資したが、配信会社は「競争激化や市場の変化」(バンダイナムコHD)で事業停止に追い込まれた。機構はこの投資の結果について「個別案件の損益は答えられない」としている。  総務省所管のJICTは17年度までに計1365億円の投資を計画したが、実際の投融資額は48億円で累積赤字は25億円に上る。17年3月には、「フリーテル」ブランドの格安スマートフォン会社「プラスワン・マーケティング」(東京都)に計13億円を投融資した。アジア進出を支援する目的だったが、同社は9カ月後に経営破綻。JICTは約13億円の損失を計上した。  投資不振など運営能力への疑問に加え、お手盛り体質も浮かび上がる。昨年9月に発足した「産業革新投資機構(JIC)」(旧産業革新機構)は、最大で1億円を超える役職員報酬案を所管の経産省がいったん示したが、内外から「高過ぎる」との批判を浴びた。報酬案は撤回され、民間出身の社長ら役員9人が2カ月半後に「総退陣」するなど混乱した。

自民党参院選公約の要旨 2019年6月7日 日本経済新聞

[解説] 以下が、2019年6月7日、自由民主党が公表した、参議院選挙2019の選挙公約です。赤字およびコメントは編集者です。   自民党参院選公約の要旨 2019年6月7日 23:00  日本経済新聞   自民党の参院選公約の要旨は次の通り。 【前文】 急速に進む少子高齢化や激動する国際情勢などの課題に立ち向かい、新しい時代の日本をつくるのは私たち自身だ。国民とともに新しい令和の時代を切りひらく覚悟だ。 参院選の公約を発表する自民党の岸田政調会長(7日、党本部)   【外交】 日米同盟をより強固にし、揺るぎない防衛力を整備する。地球儀を俯瞰(ふかん)する外交をさらに進める。北朝鮮に対し制裁の厳格実施とさらなる制裁の検討など圧力を最大限に高め、核・ミサイル開発の完全な放棄を迫る。拉致被害者全員の即時一括帰国を目指す。 日本の名誉と国益を守るための戦略的対外発信を強化するなど、韓国、中国などの近隣諸国との課題に適切に対処する。 我が国固有の領土である北方領土問題の解決に向け、平和条約締結交渉を加速する。 【安全保障】 中国の急激な軍拡や海洋進出など、北朝鮮の核・ミサイル開発などに対し、領土・領海・領空を断固守る。日米同盟や友好国との協力を不断に強化し、抑止力の向上を図る。 宇宙・サイバー・電磁波などの新領域での自衛隊の体制を抜本的に強化する。自衛隊の人員、装備の増強など防衛力の質と量を抜本的に拡充、強化する。 沖縄の基地負担軽減のため、米軍普天間基地の移設や在日米軍再編を着実に進める。 【経済再生・成長戦略】 成長戦略、生産性革命、人づくり革命などあらゆる政策を総動員し、デフレ脱却、国内総生産(GDP)600兆円経済を実現する。 データ利活用の環境整備のため「デジタル市場競争本部(仮称)」を設置する。「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法(仮称)」を策定しデジタル経済の公平・公正なルール作りを進める。 ※ 働き方改革、同一労働同一賃金、パワハラ・セクハラのない職場作り、非正規雇用をなくし正規雇用に、最低賃金を時給1500円に、障害者雇用、子どもを産み育てられる環境作り(長時間勤務縮減、大幅賃上げ、育児介護保険制度の改善、保育士・介護士の大幅賃上げ、質の高い保育施設の拡充、子育て支援制度の改善、大学まで教育費の無料化)など、一切ありません。「今だけ、金(株)だけ、自分だけ」の自民党政治の途絶えることのない継承です。これのどこが「成長戦略」なんだか。 【中小企業】 人手不足の解消に向け生産性向上や人材確保を進め、なお人手確保が困難な分野では、外国人材の適正な受け入れを支援する。最低賃金は年率3%程度をめどに全国加重平均が1000円になることを目指す。 【科学技術】 科学技術イノベーションの活性化を推進し、5年間で総額26兆円の政府研究開発投資を目指す。宇宙産業の倍増を目指す。 【エネルギー】 徹底した省エネ・再エネの最大限の導入、原発依存度の可能な限りの低減方針を堅持。2030年エネルギーミックスの確実な実現、50年に向けたエネルギー転換、脱炭素化を目指す。 原子力規制委員会で規制基準に適合すると認められた場合には、立地自治体などの関係者の理解と協力を得つつ、原発の再稼働を進める。 ※ 自民党政権がこれ以上続くと、東海地震、東南海地震、南南海地震が、第二のフクシマを引き起こす可能性大。今でも全世界の核のゴミ処分場になりかけているが、2度の原発事故を引き起こし、住民が黙っている国は、核のゴミ最終処分場になりかねない。全土が米軍の訓練基地に。  危険を犯してまで原発再稼働にこだわるのは、原発に投下した資本を回収するため。エネルギー問題ではない。ただただ、金。金。金。  市民の命、ふるさと喪失の危険を無視。 【財政・税制】 25年度の基礎的財政収支の黒字化を目指す。消費税率を19年10月に10%に引き上げる。軽減税率制度の実施は混乱が生じないよう万全の準備を進める。ポイント還元の実施やプレミアムつき商品券の発行など十二分な対策を講じる。 【金融】 東京の国際金融センター化を推進する。キャッシュレス決済など利便性、安定性の高い金融サービスの実現を図る。 【2020東京五輪・パラリンピック】 「復興五輪」として被災地が復興をなし遂げつつある姿を世界に発信する。セキュリティーや暑さ対策など、安全・安心な開催へ準備を進める。 【女性活躍】 政治への参画促進のため男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指す。指導的地位に占める女性の割合を3割程度とすることを目指す。 イクメンやイクボスなど男性の意識改革、職場風土の改革を進める。 【社会保障・子育て】 人生100年時代にふさわしい社会保障制度を構築する。「130万円の壁・106万円の壁」の見直しを進める。高齢期の多様な就業機会の確保、柔軟な働き方を推進する。 厚生年金の適用拡大を進める。年金受給開始時期の選択肢を拡大する。就職氷河期世代への就職・生活支援の充実など、人生100年時代のセーフティーネットをつくる。待機児童ゼロに向け保育の受け皿整備、保育士の処遇改善を進める。 【教育・文化・スポーツ】 低所得世帯の子どもの高等教育無償化を着実に実施する。スクールカウンセラーなど相談・支援体制を強化する。 【治安・テロ対策・海上保安】 外国機関との連携を強化する。サイバー空間を含む人的情報収集・分析を中心としたインテリジェンス機能を強化する。 【共生社会】 外国人の適正な在留管理の徹底を図る。一元的相談窓口の設置や日本語教育など受け入れ環境の整備を進め、外国人との共生社会を実現する。 【環境】 30年までに使い捨てプラスチックの25%排出抑制を目指す。30年温暖化ガス26%削減、50年80%削減、今世紀後半のできるだけ早期の脱炭素社会の実現を目指す。 【地方創生】 IoT・AI・5Gなどを活用し、地域の抱える様々な課題を解決する。農業、医療、教育、観光などの分野でイノベーションを創出する。 若者の地方での企業・就職に最大300万円を支給するなど、地方への人の流れをつくる。自動走行、遠隔医療、ドローン宅配などを地方から展開する。ローカル・イノベーションを推進する。 【農林水産業】 環太平洋経済連携協定(TPP11)加盟や日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効による農林漁業者の不安を払拭するため「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき経営安定に万全を期す。 日米物品貿易協定(TAG)については日米首脳間で過去の経済連携協定で約束した内容が「最大限」と確認したことを踏まえ対応する。 「19年輸出額1兆円」目標の達成をばねに輸出を新たな稼ぎの柱とする。わが国固有の財産である和牛を守るため、法改正を含めて制度の見直しを検討する。 6次産業化・地産地消・農商工連携を進める。20年に6次産業の市場規模を10兆円に拡大し、農業・農村の所得拡大を目指す。スマート農業を推進し、中山間地を含め生産現場にロボット、AIなど先端技術の導入を加速する。 【観光】 訪日外国人旅行者数30年6000万人等の目標に向け、ビザの戦略的緩和や出入国円滑化などによる相互交流の拡大を図る。 統合型リゾート(IR)整備法に基づき、様々な懸念に万全の対策を講じて、安心で魅力的な「日本型IR」を創り上げる。ギャンブル等依存症対策を徹底的、包括的に実施する。 【社会資本整備】 高速道路がつながっていないミッシングリンクの解消や4車線化等について、国民に約束した基幹ネットワークの整備を進める。 【沖縄振興】 「強く自立した沖縄」を国家戦略と位置づけ、税財政含めて沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。 【復興の加速】 東日本大震災の地震・津波被災地域の復興は20年度までにやり遂げる。福島の復興は国が前面に立ち、中長期的・計画的な見通しのもと安心して帰還できるよう取り組む。 ※ [編集者による翻訳]福島県民、いやそれだけでなく、東日本住民をこれからも、放射能汚染地帯に縛りつけ、「福島、食べて応援」を日本国中、更には全世界に広める。国際放射線防護委員会(ICRP)モデルを盲信、セシウム134,137合計51,000ベクレル体内に蓄積して内部被ばく年間1ミリシーベルト、というトンデモ計算で。原発20km圏内も次々避難指示解除。健康被害があっても、帰還した住民の自己責任。検診、手術費、治療費はぼったくり。また、福島県民は被ばくの調査・研究対象、モルモット並みの扱い。 【防災・減災、国土強靱(きょうじん)化】 首都直下地震、南海トラフ地震など大規模災害に備えるため、緊急災害対策派遣隊の体制・機能の拡充を進める。 7兆円規模の「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」を着実・迅速に進める。事前防災・減災に資する災害に強い国づくり、国土強靱化を進める。 【憲法】 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理はしっかり堅持し、初めての憲法改正への取り組みをさらに強化する。 改正の条文イメージとして(1)自衛隊の明記(2)緊急事態対応(3)合区解消・地方公共団体(4)教育充実――の4項目を提示している。 憲法改正に関する国民の幅広い理解を得るため、党内外での議論をさらに活発にする。衆参の憲法審査会で国民のための憲法論議を丁寧に深める。憲法改正原案の国会提案・発議をし、国民投票を実施し、早期の憲法改正を目指す。

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