内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
ブログ
  • HOME »
  • ブログ »
  • 資料 »
  • チェルノブイリ事故で何が起きたのか?

チェルノブイリ事故で何が起きたのか?

セシウム137が母親ー胎児系に与える影響 ユーリ・I・バンダジェフスキー

 政府は2015年6月12日、福島県の居住制限区域(年間50ミリシーベルト以下)および避難指示準備区域(年間20ミリシーベルト以下)を2017年3月までにすべて解除し、住民を強制的に帰還させる方針を決定しました。  さらにこれを補完すべく、福島県は2015年6月15日、2017年3月で、自主避難者への住宅支援事業の打ち切る方針を決定しました。  また、政府は2015年6月17日、全町避難が続いている楢葉町をお盆前の2015年8月に避難指示解除する方針を明らかにしました。  これは、住民の緩慢な殺人を意味する決定だと思います。  チェルノブイリ原発事故後、放射性セシウムが母親と胎児にどのような影響を与えたのか?そして、現在もどのような影響を与え続けているのか?ベラルーシ共和国ゴメリ医科大学学長(1990年~1999年)であった、ユーリ・I・バンダジェフスキー教授の『放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響 チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実』(久保田護 訳 合同出版 2013年4月1日)から、その主要な部分を抜粋し、紹介します。  同時にヤブロコフ、V・B・ネステレンコ、A・V・ネステレンコ、プレオブラジェンスカヤ著『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店 2013年4月26日)からも、妊娠異常と子どもたちの性的発達不全の部分を抜粋し、紹介します。  空間線量で何ミリシーベルト以下では安全などという、砂上の楼閣の議論はやめにしましょう。ウクライナ、ロシア、ベラルーシの人びとの苦難に学び、より良い選択をすべきだと考えます。                          2015年6月19日記 川根 眞也 放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響 チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実 ユーリ・I・バンダジェフスキー 著 久保田護訳 2013年4月1日    以下は、ユーリ・I・バンダジェフスキー著 久保田護訳『放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響 チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実』合同出版の抜粋である。一部、わかりやすくなるように文章を簡略化したところがある。〔編集者〕  1.1 チェルノブイリ原発事故以前のベラルーシ共和国の放射能汚染と人口統計の状況  ベラルーシ共和国では最近、死亡率が出生率の1.6倍になっているが、戦争や疫病といった人類がもっとも困窮したときでも、このようなことはなかった。       pp.7  1994年から2008年にかけて、ベラルーシの人口は60万7400人も減少した。これは総人口の5.6%も減少したことを意味する。15歳以下の子どもは2000年から2009年のあいだに29万も減った。 pp.9  2000年から2008年にかけて、ベラルーシ共和国では先天性奇形や発育異常のある新生児の数が10万出生につき、359.5から558.7に増加した。 pp.9  ベラルーシ共和国の人びとの生殖に重大な問題が生じていることを、先天性奇形の増加と出生率の低下が示している。このことと、死亡率の加速的な増加によって、人口が破局的に減少していることが説明できる。 pp.9  ベラルーシでは疫学的にみて非常に多くの先天的障害児が生まれている。先天的奇形の新生児が、ベラルーシ共和国のとくにチェルノブイリ原発事故の汚染地域で増えていることについては、明確だ。しかし、このことは原子力ロビーと旧ソ連の代議士、ベラルーシ共和国の議員たちにとって、都合の悪いものだった。そこで、遺伝学者であり、奇形学のG・I・ラジューク教授の先天性・遺伝性研究所を閉鎖してしまった。ベラルーシには現在、先天性疾患の発生原因に関する問題に十分な対応ができる学術組織が存在しない。原子力ロビーにとっては、政府に医学的知識がない方が好都合なのだ。 pp.10  国際原子力機関(IAEA)は、世界保健機関(WHO)を長年にわたって牛耳ってきた。そして、1959年、放射線被曝が人びとの健康に与える影響に関するデータは存在しないという協定を、WHOに押し付けた。世界中のすべての人びとの健康と生命よりもこの協定の方が大事なのだろうか。 pp.10 1.2 放射性セシウムが体内に取り込まれる条件での女性生殖器官の病態  女性の体内でセシウム137濃度が40Bq/kgを超えると、月経周期のさまざまな時期で性ホルモン産生の逆転が起きることが明らかとなった。これらの女性ホルモンの産生異常は、女性生殖器の病気の原因となるだけでなく、不妊症の原因にもなる。女性ホルモンが正常に分泌されていれば、妊娠中のプロセスや母体と胎児とのあいだに起きる相互作用に対応するため、子宮粘膜と女性生殖器の準備態勢を整えることができる。しかし、女性ホルモン産生異常があれば、子宮粘膜と女性生殖器の準備態勢を整えることができず、不妊症になってしまう。 pp.12  体内のセシウム137濃度が50Bq/kg以上になると、若い女性に起きる性ホルモンの産生異常は顕著になる。体内のセシウム137濃度が50Bq/kg以上の場合、検査した女性6人に1人に排卵が見られなかった。このように、放射性セシウムが体内に取り込まれると、その影響で月経周期の黄体期不全と無排卵症が起きる。これらはホルモン産生の制御プロセスにおける異常を反映している。結論として、無排卵症と黄体期不全により、不妊症となる。放射性物質の汚染地域で出生率が低下している主な原因のひとつは不妊症であると私たちは考えている。 pp.15  セシウム137による土壌汚染が55万5000~148万ベクレル/m2と、常に放射性物質にさらされている環境で生活している少女たちがいる。この少女たちの体内の女性生殖器官は発達が遅れていた。調査を受けた少女たちの37%で二次性徴の発現が遅れ、81%の少女たちで月経周期の異常が見られた。脳下垂体性腺刺激ホルモンの分泌機能異常が39%の少女たちに指摘された。31.5%の症例ではステロイドホルモンの産生障害(糖質コルチコイドホルモンの生合成の障害)も指摘された。調査の結果、放射能汚染地域に住む少女たちに内分泌機能の低下があることが明らかになった。されに生殖機能の調節障害も示された。 pp.15  性成熟の障害の程度と放射線の被曝量とのあいだには相関関係があることが明らかにされている。この知見は動物実験でも確認された。餌を通じて妊娠中の母親の体内にセシウム137が取りこまれると、仔の生殖器官の発育が障害される。具体的には、セシウム137で体内汚染された母親から生まれた仔の卵巣では、思春期に成熟卵胞が有意に少なくなっており、閉鎖卵胞は対照よりも増えていることが明らかになった。その実験動物の仔の卵巣では、成熟卵胞と機能中の黄体が併存していた。さらに、卵管と子宮の粘膜の形成にも遅れが生じていた。 pp.15 1.4 放射性セシウムがもたらす突然変異誘発作用  体重1gあたり27000Bqのセシウム137を雄ラットに経口的に一度に投与した。すると、投与210日から230日後に、雄ラットの生殖細胞内で一価染色体と染色体断片が統計的に有意に増加した。このセシウム137を投与した雄ラットを正常な雌ラットと交配させた。すると、子宮着床前と着床後の両方で子宮内の胎児の死亡が増加した。この研究者たちはセシウム137を投与した雄ラットの体内で、ゲノムに病的な変化が起きたことが影響して胎児の死亡が増加したと考えている。 pp.18  R・I・ゴンチャロワとN・I・リャボコニの研究では、放射性物質の汚染地域で育てた食物を実験用の雄マウスに与えて飼育した。すると、雄マウスの体内では放射性セシウムの濃度が853Bq/kgと1103Bq/kgに達した。その結果、雄マウスの生殖細胞と骨髄細胞では染色体とゲノムの突然変異が増加した。 pp.18  セシウム137で汚染されたゴメリ州の郡部に7~8年のあいだ居住した後、ミンスク市に移住してきた子どもたちの末梢血のリンパ球では、ニ動原体染色体と環状染色体の頻度が高かったことが確認されている。これらの染色体異常は、放射線被曝によって起きる不安定型染色体異常の指標として知られている。 pp.19  チェルノブイリ原発事故の非常事態が収束した後、発育奇形の数がベラルーシ全土で急激に増えてきた。それには多発性発育奇形、手足の縮小奇形、多指症の頻度が大きく寄与している。これらの発育奇形には優性突然変異が大きく寄与している。  単発性や多発性の先天性奇形の発生率の分析結果から、土壌汚染が55万5000ベクレル/m2の郡では、1997~1998年のあいだに生まれた子どもたちの奇形発生率が対照群よりも高いことが示された。 pp.19 1.5 妊娠中および授乳期間中の放射性核種の体内取り込みの特徴  放射性セシウムの体内への蓄積過程は複雑で、今日でもいまだに十分な研究がなされていない。筆者らは、体内の放射性セシウムの濃度が、性別や年齢、からだの生理的状態、臓器や組織の構造、またはそれらの代謝の性質、さらにRh式赤血球表面抗原によっても影響を与えることを明らかにした。同一の餌を与えても、雌の方が雄よりも放射性セシウム濃度が低くなる。 pp.20  しかし、妊娠は特殊な生理現象であり、母親の消化管で放射性セシウムが多量に吸収される。哺乳類では、動物でもヒトでも、放射性セシウムの大部分は、胎盤で吸収されてしまい、胎児の体内にはほとんど取り込まれない。しかし、妊娠中の病気や胎児の発育によっては、発育中の胎児の臓器で放射性セシウムの濃度が高くなることもありうる。 pp.20  子宮内で発育期にセシウム137の影響を受けた仔ラットは、自分で餌を摂るようになると、餌の中の放射性セシウムをより多く体内に取り込むようになる。 pp.22  血液型がRh+の人びとはRh-の人びとよりも放射性セシウムを多く体内に取り込むことが、筆者らの研究で明らかになった。胎盤の放射性セシウム濃度も、Rh-の女性の方がRh+の女性よりも統計的に有意に低かった。放射性セシウムの膜構造への結合に関する研究を考察すると、赤血球表面にRh因子を提示する抗原決定基が、体内への放射性セシウムの取り込み過程に関与している可能性が考えられる。 pp.22 1.7 胎盤の放射性セシウムの取り込み  胎盤は妊娠時に出現するもっとも重要な一時的器官であり、胎児の発育を支えている。ヒトと多くの哺乳動物、とくにげっ歯類の胎盤は、血絨毛型の構造を持つ。血絨毛型胎盤を持つ動物では、母親のからだと発育中の胎児組織のあいだに血管系を介して緊密な関係が築かれる。母親と胎児の両方の内分泌系、神経系、免疫系、造血系などの重要な器官系によって母親と胎児のあいだの関係が調節されている。 pp.36  母親の血液の細胞は、栄養膜構造を通って胎児の体内に入り、また胎児の血液の細胞も母親の体内に入る。胎児の赤血球の30%は、常に母親の血液中を循環していることが証明されている。胎児のリンパ球もまた母親の血液中で記録される。胎児は胎盤を介して母親から免疫担当細胞と免疫グロブリンを受け取る。筆者らは1994年に仮説を提出した。母親の免疫担当幹細胞が胎盤障壁を通過して胎児に入り、母親と胎児の液性免疫の連関が形成されるという仮説である。 pp.36  ヒトでも、放射性セシウムは胎盤障壁を通過してしまう。ヒトでは、胎児の放射性セシウムの濃度よりも胎盤の放射性セシウムの濃度の方が高いことに注目する必要がある。先天性奇形の胎児の場合では、放射性セシウム濃度が著しく高い。これは、胎盤の障壁機能が低下していることを意味しているかもしれない。ヒトでは、胎盤にセシウム137が蓄積すると、胎盤の機能が著しく変化する。胎盤のセシウム137濃度が100Bq/kgを超えると、妊娠の終わりが近づくにしたがい、中間絨毛が増加し、終末絨毛が減少した。絨毛は細胞栄養芽層で覆われ、間質は粗雑で結合織の細胞が増加していた。これはホルモン産生のプロセスを意味している。先天性奇形の胎児の胎盤では、絨毛間質と絨毛間腔への出血の形態をとる血液循環障害が顕著にみられ、限局性の小梗塞巣も認められた。 pp.37 1.8 放射性セシウムを取り込んだ母―胎児系の内分泌の相互関係  妊娠した女性の体内にセシウム137が取り込まれると、発育中の胎児で大きなホルモン分泌の変化が起きる。胎盤の放射性セシウム濃度が高くなると、胎児の臍帯血エストラジオール濃度が著しく低下することが示された。また、同時に胎児の臍帯血テストステロン濃度は顕著に高くなった。胎盤の放射性セシウム濃度が高くなると、母親の血中甲状腺ホルモン濃度(サイロキシンとトリヨードサイロニン濃度)が明らかに高くなった。同時に、母親の血中コルチゾール濃度ははっきりと増加した。反対に、胎児の臍帯血中コルチゾール濃度は低下した。 pp.38  このように、母親―胎児系にセシウム137が入り込むと、何よりもまず、発育中の胎児に顕著なホルモン濃度の変化が起きる。副腎皮質にセシウム137が強く取り込まれることが注目される。セシウム137が取り込まれると、ミトコンドリアの酵素系に機能障害が起きる。セシウム137が副腎皮質のホルモン産生細胞に悪影響を与えるため、男性ホルモンのテストステロンの産生が増加し、女性ホルモンのエストラジオールが減少するとも考えられる。この仮説ではまず、副腎皮質の主要なホルモンであるコルチゾールの正合成が障害される。この状況が、下垂体副腎皮質刺激ホルモンの産生増加に拍車をかけ、副腎皮質の細胞を刺激してテストステロンの過剰産生を招く。副腎皮質の先天性機能不全の状態が起きる。これは以後の子どもの発育に間違いなく悪影響を与えるだろう。放射性セシウムの影響で起きる子どもたちの内分泌状態の逆転は、子どもたちの性的な発達の異常と外部環境に対する生後の適応障害を引き起こす主な原因のひとつであると筆者らは考えている。そして、子どもたちが成長してから内分泌系、神経系、免疫系や、ほかの多くの器官系の病気になるのは、セシウム137の影響で胎児期からホルモン産生が異常になっていることが基礎にあると考えられる。 pp.40 ヤブロコフ、V・B・ネステレンコ、A・V・ネステレンコ、プレオブラジェンスカヤ『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店 2013年4月26日より 5.6 泌尿生殖器系の疾患ベラルーシ 被ばくした親のもとに生まれた10歳から14歳の女児に、1993年から2003年にかけて性成熟の有意な遅れが見られた(National Belarussian Report,2006)pp.92 大惨事後、2000年までに重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上)で生まれた子どもは、相対的に汚染度が低い地域で生まれた子どもより生殖器の障害が多かった。その差は女子で5倍、男子は3倍である(Nesterennko et al.,1993) pp.93  チェルノブイリ事故によって、セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上重度に汚染された地域では、コルチゾール、サイロキシン、プロゲステロンといったホルモンの機能不全に関連した性的および身体的な発達異常のある子どもが増加した(Sharapov,2001;Reuters,2000b) pp.93  ゴメリ州チェチェルスク地区における生殖器の発達異常および性的発達異常と、地域の放射能汚染値(18万5000~295万ベクレル/m2)とには相関が見られた(Kulakov et al.,1997)  pp.93 若い男性のインポテンツと地域の放射能汚染値には相関が認められた(Shilko et al.,1993) ウクライナ 汚染地域の子どもに泌尿生殖器系の疾患が増加し、1987年に1000人あたり0.8例だった発生率が2004年には22.8例になった(Horishna,2005)  pp.93  放射能汚染地域(セシウム137で3万7000ベクレル/m2以上)の少女たちは思春期の発来が遅く(Vovk and Mysugyna,1994)、汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)に住む1017人の女児および十代の少女のうち、11%に性成熟の遅れが見られた(Luk’yanova,2003) pp.94  ストロンチウム90とプルトニウムに汚染された地域では、思春期の発来が男子で2年、女子で1年遅れた。セシウム137で汚染された地域では性的発達の早発が見られた(Paramonova and Nedvetskaya,1993) pp.94  ジトーミル州の汚染度の高い地域では第二次性徴の開始が遅れ、女子における第二次性徴の期間が標準より長くなっている(Sorokman,1999) pp.94  1986年に未成年で被ばくした女性は、被ばくしなかった女性に比べて出産時の問題が著しく多い(Nyagy,2006) pp.94  1986年に未成年で被ばくした女性が産んだ新生児は、被ばくしなかった女性が産んだ新生児に比べて身体障害の発生率が2倍に達する(Nyagy,2006) pp.94  大惨事後8年間にわたり、汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)で1万6000人の妊婦を対象に行われた調査の結果、次のことが明らかになった。すなわち、腎疾患の罹患率が12%から51%に上昇、羊水過少症が48%、新生児の呼吸器疾患が2.8倍、早産がほぼ2倍に増加。また、妊娠30週から32週という通常より早い時期に胎盤の劣化(胎盤の老化現象)が見られた(Dashkevich et al.,1995) pp.94  十代の少年少女における慢性腎盂腎炎、腎臓結石、尿路疾患の発生率と、居住する地域の汚染度に相関が見られた(Karpenko et al.,2003) pp.94  汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)では月経周期障害と診断される患者が多く(Babich and Lypchanskaya,1994)、月経障害の症例数は大惨事の3倍になった。大惨事に続く数年間は月経過多が多く、5,6年後には月経の回数減少や月経停止が多かった(Gorptchenko et al.,1995)被ばくし、検診を受けた1017人の少女の14%に月経障害が見られた(Luk’yanova,2003;Dashkevich and Janyuta,1997) pp.94  女性リクビダートルと汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)に住む女性における胎盤の発育異常や変性は、胎盤に取り込まれたセシウム137の量と相関があった。観察された変化には、胎盤の厚さの不均等や線維瘢痕形成、のう胞、石灰沈着、未梢絨毛間質の未分化、未熟な線維芽細胞などがあり、結果として新生児の低体重につながった(Luk’yanova,2003; Luk’yanova et al.,2005;Ivanyuta and Dubchak,2000;Zqdorozhnaya,1993) pp.94  大惨事後8年から10年で、避難者と汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)の住民に、自然流産や妊娠後期における妊娠中毒症、早産その他、妊娠にまつわる異常の発生頻度が有意に増加した(Grodzinsky,1998;Golbchykov et al.,2002;Kyra et al.,2003) pp.95 汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)に住む妊婦のうち54.1%に子癇前症、貧血、胎盤の損傷が見られた(対照群は10.3%)。78.2%は出産時に合併症と過多出血を経験したが、これは対照群の2.2倍だった(Luk’yanova,2003;Sergienko,1997,1998) pp.95  キエフ州の重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上)では流産が特に頻発した(Gerasymova and Romanenko,2002)。汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)では自然流産のリスクが他の地域より高い(Lipchak et al.,2003) pp.95  重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上)に住む少女は、流産や妊娠合併症、再生不良貧血、早産の可能性が他の地域より高い(Horishna,2005) pp.95  大惨事に続く7,8年間、リクビダートルの約30%に性機能障害と精子の異常があった(Romanenko et al.,1995b) pp.95  検査を受けたリクビダートルの42%で精子数が最大53%減少し、可動精子の割合が低下しただけでなく(対照群70~75%に対して35~40%)、死滅精子の数も増加した(対照群25%に対して最大70%)(Gorptchenko et al.,1995)。 pp.95 <編集者注>   かのチェルノブイリの国では、放射性物質の種類によって人体への危険度を考え、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム238,239,240の土壌汚染それぞれ汚染度合によって、強制避難、移住、移住権利、放射線管理区域が設定されています。  日本のようにガラスバッヂのような、不確かで定量化できないものを使った、放射線管理はしていません。  政府が言う、年間20シーベルトの区域は空間線量3.8マイクロシーベルト/時の地域です。以下のNUMO(核のゴミの最終処分場を探していた機関) フェロー河田東海夫氏の2011年5月24日の資料では、セシウム137で重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2)の空間線量率は2マイクロシーベルト/時である、と示されています。汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)の空間線量率は0.66マイクロシーベルト/時です。いずれも地上1mでの値です。年間20ミリシーベルトに福島県住民を帰還されるとはどういうことか?上記の文章をすべて、 55万5000ベクレル/m2→空間線量2マイクロシーベルト/時 18万5000ベクレル/m2→空間線量0.66マイクロシーベルト/時 放射線管理区域3万7000ベクレル/m2→空間線量0.13マイクロシーベルト/時 として、読み直してみて下さい。いかにこの原発20km圏内+高放射能汚染地帯に住民を帰還させることが「緩慢な殺人」を意味するものであるか、明らかになると思います。                             土壌汚染問題とその対応 河田東海夫(NUMOフェロー) 2011年5月24日    

肺の中の「ホット・パーティクル」を巡って エフゲニー・P・ペトリャーエフ

肺の中の「ホット・パーティクル」を巡って エフゲニー・P・ペトリャエフ  1991年11月9日「チェルノブイリ被害 調査・救援女性ネットワーク 夕食会にて  エフゲニー・P・ペトリャエフ(Evgeny P.Petrayev )博士はベラルーシ大学放射線化学研究科教授。チェルノブイリ事故による環境汚染を調査研究。ベラルーシ共和国の住民の肺にプルトニウムなど放射能をおびた微粒子を検出した。この「ホット・パーティクル」について、1991年11月に開かれた国際プルトニウム会議で特別講演のため来日。主催者側の御好意で、2011年11月9日、「チェルノブイリ被害 調査・救援女性ネットワーク」は博士を囲む夕食会を開いた。 〔本文より抄録。部分的に川根が意訳、現代の単位系に直した。〕綿貫礼子+チェルノブイリ被害 調査・救援女性ネットワーク『誕生前の死』藤原書店 1992年7月30日 pp.103~121    私は今回私の論文「チェルノブイリ事故による人間の肺の中のプルトニウムとホット・パーティクルの存在」を持ってきました。今回の国際プルトニウム会議に参加された方々だけではなく、広く日本のみなさんに興味を持ってほしいと思います。なぜならば、日本では非常に多くのプルトニウムが作られているからです。  チェルノブイリの原発は190tのウランが濃縮度2%で使われていました。  そして、運転中に300kgから400kgのプルトニウムが作られていました。爆発の時、その3から6%の核燃料が大気中に放出されました。その結果、この事故の際に20kgのプルトニウムが大気中に放出されました。他にも、セシウム、ストロンチウムなど放射性核種も放出されました。日本では何十トンものプルトニウムを作る計画が進められているとのことですが、これは危険なことです。   この事故の際に放射性物質は数マイクロメートル(μm)から10マイクロメートル(μm)の大きさに粉々になって飛び散りました。この大気中に飛び散った微粒子は、その後土壌の中に入り込みました。私の論文に載っている写真を見て下さい。これは数マイクロメートル(μm)の微粒子です。5年間たっても(この講演はチェルノブイリ原発事故後5年目の1991年に行われた)この微粒子が地面の下1cmのところに留まっています。そして、この微粒子がどの程度あるのかと言いますと、1cm×1cmの地面の区画に、1~10個の微粒子があります。この微粒子は外部からの影響によってなかなか壊れることがありません。これが地表1cmという上部にあるため、簡単に大気中に混じることになります。とりわけ農作業中にはそういうことがあります。そのために大気に混じった微粒子がさらに肺に入る可能性があります。首都ミンスクだけでなく、ベラルーシ全域の大気中にこのような微粒子が存在します。  (編集者:注)モズィリ、ゴメリ、モギリョフ、ブレストの位置は以下の通りです。  この大気と接している土壌中の放射性微粒子の濃度がたいへん高いために、これが人体の肺の中にも見られます。その人が生きている間に肺の中に入り込んだ微粒子を取り除く方法はありません。ですから私たちが研究のために肺の中からその微粒子を摘出するにあたって、亡くなった人の肺から切除しています。調べた死体の数が少ないので、それをもとにして今生きている人たちの肺の中にも同じようにあると断言することはできません。生きている人のことを研究するためには、亡くなった人の事例をたくさん集めないと分かりません。この仕事は1987年に始め、現在までに300以上の死体を検査しています。これからお見せするのは、亡くなった人の肺の中の放射性微粒子の写真です。これは10gの肺の断片を取っただけです。少なくとも50個の微粒子が存在しています。もし150g取ったらどうなるでしょう。そしたら100個以上の微粒子が検出されます。私たちが調査した地域で、300体のうち70%くらいにこういった微粒子が見られるということは、その地域の住民の人の肺の70%にも、このように微粒子(ホット・パーティクル:編者注)に侵されているといえるのではないでしょうか。  チェルノブイリ原発の原子炉からは20kgものプルトニウムが飛散しました。ですから原子炉のすぐそばに住んでいる人だけでなく、原子炉から200kmあるいは300km以上離れたところに住んでいる数百万人の人の中にも同じような状況が見られるのではないでしょうか。私はこのテーマ以外のチェルノブイリのことについても研究しています。 <質疑応答から 抜粋> Q(綿貫礼子) 事故が起きたとき先生は専門家ですから、ホット・パーティクルが肺に入るかもしれないということを予見されていたのでしょうか? A(ペトリャーエフ) いいえ。ホット・パーティクルが肺に入るということは予期していましたが、こんなに多くということはまったく予期していませんでした。もちろん原発事故の除染のため、4号炉に入って作業した労働者については、マスクをずっとつけたまま作業するというのは不可能ですから、ホット・パーティクルが肺に入るということは予想していました。しかし、100kmも離れたベラルーシでこのように多くの住民が被害を受けることはまったく考えていませんでした。  Q(NHK記者)国際原子力機関(IAEA)をはじめ、さまざまな機関が発表している被ばく線量と、実際に起こっている病気の出方、疫学調査の数字との間に非常に大きな開きがあるように感じるのですが。 A(ペトリャーエフ) 最初に申し上げたいことは、1986年と1987年に放射能によって汚染された食品がベラルーシ中に出回って、ベラルーシの人びとがみんなそれを食べましたので、その汚染地域にいた住民だけでなくベラルーシの国民すべてがその影響を被ったということです。  IAEAの見解に、私は批判的なのですが、IAEAの結論は1300人くらいを調べて出されたものです。みんなが汚染されたものを食べたので、まったく汚染されていない地域というものがなくなってしまったのです。 (編者注)医学における臨床データでは、「対象群」との比較をします。あるガン治療薬の試験では、偽の薬と試験対象の薬を同じ人数同じ期間投与し、その後の予後を診ます。そして5年間生存率を出し、このガン治療薬が利き目があるかないかを判断するわけです。偽の薬(例えば、小麦粉のかたまり)を投与されたグループを「対照群」と言います。  IAEAがベラルーシで調査した住民の健康影響は、「対照群」も放射能で汚染されていた食べ物を食べたわけですから、「対照群」と言えない、ということです。「対照群」が存在しない、科学的データとは言えない、とペトリャーエフ氏は批判しています。 A(ペトリャーエフ) IAEAの報告にあった被ばく線量と発病率との相関関係に乖離(かいり)があるというのはその通りです。それをきちんと確かめるには10万から15万人の検査をしなくてはいけない。ちょうど広島・長崎で行われたと同じように。私たちはそんなにやっていません。このデータはソ連にとって重要なだけでなく、全世界の人びとにとって重要なものですから、全世界の専門家や人びとがぜひ参加する必要があります。 (編者注)ペトリャーエフ氏が言及している、広島・長崎の10万人を超える調査とは、LSS(寿命調査)と呼ばれるものです。広島・長崎の被爆者約12万人の集団の調査を1950年から2009年まで行い、そのうち直接個人線量の推定されているのは86,611人です。2003年までの追跡期間中に50,620人(58%)が死亡し、そのうち総固形がん死亡は10,929人でした。   しかし、この疫学調査は疫学調査としての基本的なベースに問題があります。それは広島の対象群を呉市にしていることです。呉市は広島市からたった19kmしか離れていませんでした。東京第一原発から飯舘村までは30~50km圏内です。飯舘村住民と双葉町・大熊町で被ばくした住民との比較をしたと同じことです。 『成人健康調査集団におけるリンパ球絶対数についての長期的観察、広島・長崎』放射線影響研究所 日米共同研究機関pp.12より 広島・長崎における原爆被爆者のリンパ球に関する最近の調査は完了していない。初期の所見はBlaisdellが1947-1959年に両市のABCCで行われた血液学的調査を要約し報告している。1947-1948年(被爆から19-32カ月後)に広島の被爆者に関する血液学的調査(HE67)が行われ、これは原爆後130日以内に脱毛を呈した広島の被爆者16,000人以上の中から選ばれた924人を対象とするものであった。当時、この集団の総被ばく線量中のガンマ線は、300-700rad(300-700ラド→3-7グレイ、これは3-7シーベルトに相当)と推定された(ただし、20%が爆心地から2,000m以上の地点で被ばくしていた。)対照群は呉市(旧広島市から約19km)の住民995人からなっていた。この両集団について白血病数算定及び白血球分類像検査が行われた。全白血球数は広島の被爆者と、呉の対照群ではほほ同じであったが、広島では相対的リンパ球数はやや少なく、好酸球数はやや多かった。1948-1949年に、同一ではないが大体同じ対象者を用いて行われたHE67追跡調査では、広島の被爆者と呉の対照群との間にリンパ球百分比に差は認められなかった。 以上、編集者(川根眞也)の注でした。Q&Aに戻ります。 A(ペトリャーエフ) ベラルーシの保健省が1991年5月に出した統計があります。この統計はモギリョフとゴメリの住民の健康状態について、チェルノブイリの事故前の5年間と事故後の5年間の統計を比較したものです。これによってチェルノブイリの事故の影響を知ることができます。一方で、原発事故のときから今までの間に住民が受けた被ばく線量を知る必要があるわけですが、これを調べることは困難なことです。というのは、原発事故の初期に住民がどれだけの線量を受けたか、わからないからです。 (編者注) 長瀧会議(「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」)では、福島県他の人びとの被ばく線量を推定していますが、この初期被ばく、特に内部被ばくを無視した、被ばく線量評価をしています。 Q(吉田由布子) 土壌の中のホット・パーティクルは風によって空気中を移動したり、水中に落ちて川を汚染するといった形で、今も汚染が広がっている、動いている可能性はありますか。 A(ペトリャーエフ) 地面の中にあるホット・パーティクルは非常にゆっくりとしか動かないんですが、表層のは動きます。大気中のホット・パーティクルは特に春、強い風が吹くときに大きな移動があります。 (編集注) 2013年8月、東京第一原発の3号機屋上のがれき撤去作業の際、放射性物質が17km離れた南相馬市旧太田村などにまで飛び、お米が最高180ベクレル/kgの放射性セシウムで汚染されました。原子力規制委員会は、「これは3号機がれき撤去が原因ではない」と発表しましたが、以下の農林水産省、福島県の資料をよく読めば、放射性物質が飛んできて稲の穂についたためであることがわかります。そして、それは放射性セシウムが単独で飛んだものではなく、ホット・パーティクルだったのではないでしょうか。夏の南東の季節風によって運ばれたものであると考えらます。 農林水産省 福島県 南相馬市における玄米の基準値超過の発生要因調査(調査結果) 2014年12月1日公表 以上、編集者(川根眞也)の注でした。Q&Aに戻ります。 Q(綿貫礼子) まだ公表されていないデータ、事故処理に関わった人たちの健康に関するデータは誰が持っているのですか? A(ペトリャーエフ) 事故処理をした人たちについて研究しているの学者たちは保守派に属しています。チェルノブイリ原発の事故処理に60万人の人たちが参加しました。その人たちの健康状態については秘密にされています。もちろん、ソ連保健省の生物物理学研究所のレオニード・イリイン博士は知っています。それからもうひとつはレニングラードに軍事医科大学というのがあってそこで研究しています。データは門外不出になっていて私も知りません。  このレニングラードの軍事医科大学の研究所は国防省の管轄で、事故処理に関わった軍人は、このレニングラードの医科大学で全部検査されました。軍人以外の一般市民や労働者の事故処理に関わった人びとは、ソ連保健省生物物理学研究所か、またはそこにある病院で診察され、データはすべてL・イリイン博士のところに保管され、他のところには出ていません。 Q(綿貫礼子) それじゃ国際原子力機関(IAEA)にも出していないんですか。他のところは知らないんですか。 A(ペトリャーエフ) もちろんそうです。 Q(綿貫礼子) だから、今回の国際原子力機関(IAEA)の報告書には、その他の最も強く被ばくした集団のことが一行も書かれていないのですね。 以上。  以下、エフゲニー・P・ペトリャーエフが来日される前年1990年7月9日に朝日新聞渥美記者が書いた記事を紹介します。 多量の高放射能微粒子 住民の肺に存在 白ロシア 朝日新聞 1990年7月9日 【モスクワ8日=渥美記者】  4年前(1986年4月26日)にソ連で起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故で大気中に放出された「ホットパーティクル」と呼ばれる高い放射能をもった微粒子が、白ロシア共和国の放射能汚染地域に住んでいる住民の肺の中に予想を超えるほど多量に存在することがわかった。同共和国のミンスク大学放射線化学研究室のエフゲニー・ペトリャエフ教授が朝日新聞の取材に対して明らかにしたもので、1年半にわたる住民の遺体解剖で得た肺の標本とレントゲン写真を示し、「5年後ぐらいから肺がんが多発する可能性が大きい」と警告した。詳細なデータは近く国際原子力機関(IAEA)に提出される。  ペトリャエフ教授が解剖した遺体は200体。チェルノブイリ原発の北に位置し、放射能汚染指定地が多数点在するゴメリ州の住民がほとんどで、交通事故や一般的な病気で死んだ11歳から70歳までの男女。全員の肺を摘出して調べた結果、7割の人の肺からホットパーティクルを検出した。  ソ連国内の広範な土地の放射能汚染の主役は、炉心から飛散した揮発性のセシウムだが、ホットパーティクルはいくつかの不揮発性の放射性物質の混合物だ。爆発の時、2000度以上の高温で溶けて結晶化した核燃料ウランが主体で、その中に猛毒のプルトニウム、ルテニウムなどが混じっている。  肺の中にあった粒子の直径は0.01ミクロンから4ミクロン、細かなものは肺の深部、大きなものは気管支近くに分布していた。1人の肺全体のホットパーティクルの数は、数百から2万前後まで。1つの粒子の放射能の強さもさまざまだが、セシウムのように尿中から排出されることはなく、死ぬまで肺の中にとどまり放射線を出し続ける。ペトリャエフ教授は「1個平均を1億分の1キュリーと推定すれば、2万個あれば何年かあとにほぼ確実にがんを引き起こす」という。      

チェルノブイリ原発事故1986年4月26日 ウクライナ共和国におけるプルトニウム汚染マップ ウクライナ国家報告2006より

チェルノブイリ原発事故1986年4月26日 ウクライナ共和国におけるプルトニウム汚染マップ ウクライナ国家報告2006より  2013年8月30日から、気象研究所 足立光司氏ら、東京理科大学 中井泉氏ら、筑波大学 末木啓介氏らによる、セシウム・ボール(以下、セシウム球と呼びます)の研究報告がありました。  しかし、中井泉氏らのSpring-8による、マイクロエックス線蛍光分光分析法(μ-XRF)では、このセシウム球からウランが検出されました。果たして、ウランだけであり、プルトニウムがあったのか、なかったのか、中井泉氏の論文には記述がありません。 『ウランを含む原発事故由来のガラス状の大気粉塵がつくばにまで飛来 -放射光マイクロビームX線を用いた複合X線分析- (プレスリリース)』  しかし、チェルノブイリ原発事故後、住民の死体を解剖し肺を調べると、プルトニウムのホット・パーティクルがベラルーシのゴメリ住民の肺だけでなく、広くベラルーシ全土の住民に多かれ、少なかれ、ありました。(綿貫礼子+チェルノブイリ被害 調査・救援女性ネットワーク『誕生前の死』藤原書店 pp.103~107 エフゲニー・P・ペトリャエフ)このチェルノブイリの住民の健康被害にこそ、私たちは学ぶべきです。  セシウム球ではなく、ホット・パーティクルと呼ぶべきである、と思います。  チェルノブイリ原子力発電所から600km離れた場所にも、プルトニウムのホット・スポットができました。日本では果たしてどうなのでしょうか? ウクライナ共和国におけるプルトニウム汚染マップです。ウクライナ国家報告2006より Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People …  pp.38にあります。2013年4月26日岩波書店から上記の日本語訳が出ています。 アレクセイ・V・ヤブロコフ、ヴァシーリー・B・ネステレンコ、アレクセイ・V・ネステレンコ、ナタリア・E・プレオブラジェンスカヤ『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店 2013年4月26日 5250円    ベラルーシ(Belarus)、ウクライナ(Ukraine)の各行政区とチェルノブイリ原子力発電所の位置は以下の通りです。              

時間の経過にともなうチェルノブイリ汚染の放射性同位体構成の変化 総放射能量を割合(%)で表したもの

時間の経過にともなうチェルノブイリ汚染の放射性同位体構成の変化 総放射能量を割合(%)で表したもの 【原典】アレクセイ・V・ヤブロコフ、ヴァシーリー・B・ネステレンコ、アレクセイ・V・ネステレンコ、ナタリヤ・E・プレオブラジェンスカヤ 『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店 2013年4月26日 p.21   【意訳・編集】川根 眞也

チェルノブイリ原発4号機から放出された放射性核種の推定量(PTBq)

 チェルノブイリ原発4号機からは、どのような放射性核種がどれくらい放出されたのでしょうか?  1986年4月26日から5月20日にかけて、チェルノブイリ原発4号機から放出された主な放射性核種の推定量は以下の通りです。ヤブロコフ、ネステレンコ他『調査報告 チェルノブイリの被害の全貌』岩波書店 2013年4月26日 p.17 に掲載されていた表1.5 の推定量(100万Ci)から、川根が単位をPBqに直したものです。 【原典】 ヤブロコフ、ネステレンコ他『調査報告 チェルノブイリの被害の全貌』岩波書店 2013年4月26日 p.17 【編集】 川根 眞也      

チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績 I および Ⅱ および Ⅲ “チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト1991-1996”より 山下俊一*/柴田義貞*/星正治*/藤村欣吾*/ほか**

チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績 I および Ⅱ および Ⅲ “チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト1991-1996”より 山下俊一*/柴田義貞*/星正治*/藤村欣吾*/ほか** pdf ↓ チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績IⅡⅢ 山下俊一他 出典↓ チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績 チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト1991-1996より 「放射線科学 第42巻第10号-12号(1999年9月-11月)掲載」 *Yamashita Shunichi, Shibata Yoshisada, Hoshi Masaharu, Fujimura Kingo/チェルノブイリ笹川医療協力委員会 **その他の同委員会専門家(専門家名簿は本文表1(9月号303頁)に掲載) 1. まえがき   チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトは、1986年4月に発生したチェルノブイリ原子力発電所(原発)の事故より5年後の1991年5月にウクライナ、ベラルーシ、ロシア連邦の3共和国で、事故による放射能汚染を受けた計5地域(ウクライナ2地域、ベラルーシ2地域、ロシア連邦1地域)をセンターとして事故当時の児童を対象に検診活動を開始し、1996年4月に当初の5か年計画を終了した。主な検診内容は、被曝放射線量測定、甲状腺検診、血液検査の3項目で、検診児童数は5センター合計で延べ約16万人に達したが、このうち重複受診者や検診データの不完全な者を除いた約12万人を本報告における解析の対象とした。なお、本報告の詳細は既に英文報告書1)として発表されている。 チェルノブイリ原発事故に関しては、今日までに外部からも多くの援助が行われてきた。これらは国連、世界保健機関、国際原子力機関、ヨーロッパ連合などの国際機関をはじめ、各国政府や民間団体などによるものであるが、特に事故後の数年間は援助内容も事故の影響把握に関する調査的なものが主で、被災地住民への支援を直接の目的としたものは皆無に近い状態であった。 このような状況下で、1990年2月、当時のソ連政府は国際医療協力の面で多くの実績を持つ(財)笹川記念保健協力財団に被災地住民の支援を要請した。これを受けて、同財団は(財)日本船舶振興会(現・日本財団)の協力の下に、“チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト”を発足させることとし、同年8月にはプロジェクトの実施方法に関する調査団を現地に派遣した。 その報告2)によると、1]被災地の住民の不安が大きいこと、2]その原因の一つは正確な情報が伝わっていない点にあること、3]健康上の問題点を早急に把握する必要があること、4]それには直接の住民検診が適していること、5]被害を受けやすい児童を優先すべきであることなどの諸点が指摘された。これに基づいて、関係諸機関と協議を重ねながら5か年計画のプロジェクトが作成され、チェルノブイリ笹川医療協力委員会が3共和国の関係者と協力してその実施を担当することとなった(表1)。 表1 チェルノブイリ笹川協力委員会専門家名簿 (順不同。所属は各人の本プロジェクト参加時)   *Yamashita Shunichi, Shibata Yoshisada, Hoshi Masaharu, Fujimura Kingo/チェルノブイリ笹川医療協力委員会 **その他の同委員会専門家(専門家名簿は本文表1に掲載) 本プロジェクトで実施された事項を列挙すると次の通りで、その総経費は35億円に達する。 (1) 甲状腺超音波診断装置、血液分析装置、ホールボディーカウンター等を搭載した検診バス5台および受診児童の移動用バス10台の供与 (2) 検診バス搭載の機器と同様の診断装置各1式を5センターに供与 (3) 医療機器、医療用品、医薬品、試薬およびデータの保管・管理用パソコンの供与 (4) 技術指導と意見交換のために、広島大学、長崎大学、(財)放射線影響研究所等研究機関の専門家を派遣(約90回、延べ310人) (5) 検診担当者の日本および現地における技術研修(13回、延べ130人) (6) 被災地住民に対する啓蒙活動 (7) 検診結果の公表とワークショップ、シンポジウムの開催(住民対象講演会4回、ワークショップ6回、シンポジウム5回) 本プロジェクトは、旧ソ連時代に発足したこともあって、当然のことながら5センターは共通の機材、試薬を用い、統一のプロトコールによって検診を実施してきた。このことは、ウクライナ、ベラルーシ、ロシア連邦の旧共和国が独立して、独自の路線を強調するようになってからも継続されており、この点各センターで得られた検診データには相互比較性comparabilityが存在するということができよう。 ただし、本プロジェクトはもともと被災者に対する人道的支援を目的に開始されたものであり、検診対象児の選択は原則として現地の担当者に一任されていて、任意抽出的に選んだわけではないので、検診データについてはこの意味での偏りが存在しうることをつけ加えておきたい。 なお、5か年計画の本プロジェクトは1996年4月に終了したが、その後も5センターの自主的な検診続行を支援するために試薬等の供与が行われており、また3センター(ベラルーシの2センターとロシア連邦の1センター)においては国際がん研究機関などと協力して甲状腺がん罹患児の患者対照研究、甲状腺検診によるコホート調査、事故後の出生児の検診などを実施している。 2. 対象と方法  1) 対象  チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトの小児検診は、1976年4月26日から1986年4月26日までに生まれた子供を対象に、1991年5月から1996年4月まで、旧ソ連5地域の医療機関(センター)-ゴメリ州立専門診療所(ゴメリ市、ベラルーシ)、モギリョフ州立医療診断センター(モギリョフ市、ベラルーシ)、ブリヤンスク州立第2診断センター(クリンシィ市、ブリヤンスク州、ロシア連邦)、キエフ州立第2病院(キエフ市、ウクライナ)、コロステン広域医療診断センター(コロステン市、ジトミール州、ウクライナ)-で実施された(図1)。 検診は同一プロトコールの下で、同種の器材および試薬を用いて行われ、各センターを担当するスタッフの努力により、検診した子供の居住地は各センターが管轄する地域のほぼ全域に及び、検診延べ数は16万人に達した。 図1 チェルノブイリ原子力発電所と5センターの位置(2重丸で表示) しかし、かなりの子供が再検査を受けており、そのような子供については、最初の検査結果のみ用いることとした。加えて、検診データが不完全な子供を除いた結果、約12万人が分析の対象となった(表2)。   表2 地域・性・検診年別被検者数 2) セシウム137の体内放射線量測定3) セシウム137の体内放射線量測定には、コリメータ装着のガンマスペクトロメータ・モデル101(アロカ、東京)を使用した。測定結果は測定器のコンピュータに内臓したソフトウェアを用いて処理した。 最初に、セシウム137およびコバルト60の標準線源を用いて、ガンマスペクトロメータのエネルギー較正を行った。これによって、スペクトロメータ増幅器のパラメータ変動による測定誤差を除くことができ、安定した測定結果が得られるようになる。次に、ファントムがない場合およびルーサイトの厚さ5、10、15、20cmの板でできたファントムを置いた場合のバックグラウンドを測定した。体内ガンマ線測定結果の修正は、読み取った値から人体の体格に対応するファントムの厚さのバックグラウンド値を差し引くことによって得られる。 これらの準備を終えてから、セシウム137の体内ガンマ線を測定した。被検者をコリメータの正面に座らせ、被検者の体重、身長、胸囲等のデータを入力した後、測定を開始する(図2)。入力データおよび処理された結果等はコンピュータに保存され、印字される。 図2 セシウム137体内放射線量測定に用いたチェアタイプ線量計の側面図 NaI(TI)検出器の角度と高さは調節可能。椅子の背と座面は鉛板で遮蔽している (Health Physics Societyの許可を得て、Hoshi et al.3)から転載) 3) 甲状腺検診 [...]

大熊町の土壌汚染はチェルノブイリを超えている

 小野俊一氏に「フクシマはチェルノブイリを超えている」として、大熊町の土壌汚染調査結果を教えていただきました。   『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』ではアレクセイ・V・ヤブロコフとワシーリー・B・ネステレンコの書いた第1部 チェルノブイリの汚染ー概観ーでは以下のように書かれています。 「ベラルーシでのセシウム137の汚染の最高値は ゴメリ州ブラーギン地区ザレーシェ村の475Ci/km2(1757万5000ベクレル/m2)、 ゴメリ州ナロヴリャ地区ドヴリャドイ村における500Ci/km2(1850万ベクレル/m2)」                                                ―同書 p.11  ロシア、ウクライナについてのセシウム137汚染の最高値の記述はありませんでした。ポイントであっても、「ウクライナ キエフ州、ジミトール州、ロヴノ州北部、ヴォルニエ州北東部までが汚染された(いくつかのホット・スポットでは地表の汚染密度(濃度)が最大19万ベクレル/m2に達した)」です。これは柏市、我孫子市の高放射能汚染地帯の方が高いです。 常総生活協同組合 土壌沈着量測定結果について 柏市北部 柏市南部 同 測定データ 柏市北部 同 測定データ 柏市南部  セシウム137だけに注目すると、大熊町のホームページのデータでは 東平  3001.4万ベクレル/m2中央台  594.5万ベクレル/m2緑ヶ丘  574.2万ベクレル/m2北台   494 万ベクレル/m2大野   480.7万ベクレル/m2東台   326.8万ベクレル/m2清水   252.0万ベクレル/m2長者原  238.9万ベクレル/m2諏訪   180.3万ベクレル/m2高平   105.1万ベクレル/m2西平   71.1万ベクレル/m2  土壌採取地点は、以下の11か所です。(1) 大野幼稚園駐車場(野上字諏訪 地内)(2) 高田公園前畑(大川原字西平 地内)(3) 大野児童館園庭(下野上字清水 地内)(4) 役場前児童公園(下野上字大野 地内)(5) 総合スポーツセンターグランド(夫沢字中央台 地内)(6) 夫沢字長者原 地内(7) 夫沢字北台 地内(8) 夫沢字東台 地内(9) 小入野字東平 地内(10) 緑ヶ丘グランド(熊川字緑ヶ丘 地内)(11) 小良浜集会所前(小良浜字高平 地内)  東平のセシウム137汚染3001.4万ベクレル/m2は、ゴメリ州ナロヴリャ地区ドヴリャドイ村1850万ベクレル/m2)の1.6倍。ゴメリ州ブラーギン地区ザレーシェ村1757万5000ベクレル/m2の1.7倍です。 <追記>チェルノブイリ事故当時の単位はすべてキュリー/km2でした。上記データをすべてキュリー/km2に直してみました。大熊町 東平はセシウム137の汚染は 811キュリー/km2です。 「2011年5月25日に、東北大学大学院理学研究科 小池武志先生、東北大学サイクロトロン ラジオアイソトープセンター 島田健司先生のご協力をいただいて、大熊町町内11か所の土壌を採取し、サンプルを東北大学、並びに金沢大学に送り、分析をお願いしました。  土壌果分析結果について2011年6月24日、大熊町役場 会津若松出張所にて東北大学大学院理学研究科 小池武志先生、金沢大学 山本政儀先生より報告を受けましたので、皆さまにお知らせします。」 ブログ大熊町 2011年6月30日 土壌中の放射性核種     空間線量(μSv/時) ヨウ素131 セシウム134 セシウム137 セシウム136 プルトニウム239・240    地表面 地上1m     (kBq/㎡)  (kBq/㎡)  (kBq/㎡)  (kBq/㎡)   (Bq/㎡)(1)諏訪 22.0   16.8   43     1600    1803     7      未検査(2)西平 12.6    9.0   32      623     711     3      未検査(3)清水 38.0   22.0   78     2185    2520     11      0.19(4)大野 60.0   42.0   100     4463    4807     24     0.26(5)中央台90.0   70.0   139     5494    5945     29      1.24(6)長者原19.0   14.0   100     2092    2389     9      5.91(7)北台 140.0   100.0   197     4590    4940     22      11.10(8)東台 130.0   100.0   124     2906    3268     13      2.77(9)東平 180.0   140.0   653     27772    30014    151      5.02(10)緑ヶ丘100.0   80.0   171     5101    5742     24 11.00(11)高平 40.0   30.0 31 [...]

1987年のベラルーシにおけるセシウム137の汚染状況  ユーリ・バンダジェフスキー ECRR2009

 1987年のベラルーシにおけるセシウム137の汚染状況を、ユーリ・I・バンダジェフスキー博士が欧州放射線リスク委員会(ECRR)のレスボス会議2009で報告しています。  

チェルノブイリ原発事故に伴う放射性物質汚染区域の地域区分 ベラルーシおよびロシア

チェルノブイリ原発事故に伴う放射性物質汚染区域の地域区分 ベラルーシおよびロシア  ベラルーシおよびロシアでは、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム238、239、240による土地汚染(ベクレル/㎡)の度合いで、緊急移住地域、移住地域、移住の権利を有する地域、放射線定期管理居住地域など(ベラルーシの名称)を規定しています。  日本では2013年1月の時点で、未だにセシウム137による土地汚染しか発表されていません。  セシウム137だけではなく、ストロンチウム90、プルトニウム238、239、240による土地汚染マップを作成、公表するべきです。データは取っているはずです。  ロシアやベラルーシでは、住民の年間平均有効被曝線量が5ミリシーベルトを越える場所では住民避難が行われています。これは外部被ばくだけではなく、内部被ばくも合わせた数値です。日本政府は年間外部被ばくが20ミリシーベルト以下になったら住民を帰還させるという政策を取っています。あまりにも人権無視の政策です。  日本政府は、内部被ばく無視の、外部被ばくのみの推定された数値で議論するのは間違いです。空間線量が0.23マイクロシーベルト/時の場所が年間被ばく1ミリシーベルトに相当するなどといううそは止めるべきです。  外部被ばくと内部被ばくと合わせた、住民の年間平均有効被曝線量が1ミリシーベルトを越える地域からの、住民避難を行う法律を制定すべきです。  セシウム137だけではなく、ストロンチウム90、プルトニウム238、239、240による土地汚染マップを作成、公表し、いずれかの基準を越えた場合の住民の移住を行うべきです。

チェルノブイリ原発事故で被ばくした北ウクライナ住民にあらわれた精神、神経、身体の疾患(1987~1992年) Nyagu 

チェルノブイリ原発事故で被ばくした北ウクライナ住民にあらわれた精神、神経、身体の疾患(1987~1992年) 住民10万人あたりの罹患数 出典:『チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害~科学データは何を示している~』 核戦争防止国際医師会議ドイツ支部 合同出版 2012年3月30日刊 第7章 チェルノブイリ原発事故によるさまざまな疾病 P.85より 原典:Nyagu, A.I.: Medical consequences of the Chernobyl accident in Ukraine, Chernobyl ministry of Ukraine, Science Centre for Radiation Medicine, Academy of Medical Sciences of Ukraine, Scientific-Industrial Union PRIPJAT,Scientific-Technical Centre Kiev-Chernobyl 1994.(Russ)

Copyright © 内部被ばくを考える市民研究会 All Rights Reserved.
Powerd by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.