内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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内部被ばくと健康被害

輸入小麦使用の食パン、発がん性あるグリホサート検出…世界で使用禁止の動き、日本は緩和 文=小倉正行/フリーライター 2019年7月1日 Bussiness Journal

輸入小麦使用の食パン、発がん性あるグリホサート検出…世界で使用禁止の動き、日本は緩和 文=小倉正行/フリーライター  2019年7月1日 Bussiness Journal 「Gettyimages」より    高級食パンブームのなか、輸入小麦を原料としている食パンから、2015年7月にWHO(世界保健機関)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)が「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と結論づけたグリホサートが検出された。検査を行った農民連食品分析センターが4月12日に公表した。それによると、国内に流通している食パンおよび菓子パン15製品を検査し、そのうち食パン9製品、菓子パン2製品からグリホサートを検出(痕跡を含む)したという。具体的に検出された製品は、以下のとおり。 ・敷島製パン「麦のめぐみ全粒粉入り食パン」(グリホサート検出量0.15pp) ・山崎製パン「ダブルソフト全粒粉」(同0.18ppm) ・パンリゾッタ東武池袋「全粒粉ドーム食パン」(同0.17ppm) ・株式会社マルジュー「健康志向全粒粉食パン」(同0.23ppm) ・山崎製パン「ヤマザキダブルソフト」(同0.10ppm) ・山崎製パン「ヤマザキ超芳醇」(同0.07ppm) ・敷島製パン「Pasco超熟」(同0.07ppm) ・フジパン「本仕込み」(同0.07ppm ・神戸屋「朝からさっくり食パン」(同0.08ppm) ・フジパン「アンパンマンのミニスナック」(同0.05ppm) ・フジパン「アンパンマンのミニスナックバナナ」(同痕跡)  ちなみに国産小麦を原料としている食パンからは、グリホサートは検出されなかった。  このグリホサートは、米モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」に含まれる化学物質で、前述のように2015年7月にIARCが、非ホジキンリンパ腫との関連が認められ「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(Group2A)と評価された。また、18年8月には米国カリフォルニア州裁判所が、ラウンドアップを使って非ホジキンリンパ腫になったとして2億9000万ドルの賠償をモンサント社に命ずる判決が下されている。 日本では残留農薬基準の大幅緩和  世界的にはIARCによる報告以降、以下のとおりグリホサートを排除する動向が強まっている。 ・15年:ドイツの大手ホームセンターがグリホサートを含む製品の取り扱い中止 ・同:スリランカがグリホサートの輸入を禁止 ・同:コロンビアがグリホサートを主成分とする製品の散布禁止 ・16年:EU委員会はグリホサートについて加盟国に規制強化を要求。イタリアは、公園や市街地、学校、医療施設周辺などでのグリホサートの使用禁止 ・17年:スウェーデン、ベルギーなどがグリホサートの個人使用禁止 ・同:米国カリフォルニア州がグリホサートを発がん性物質リストに登載の方針を発表 ・18年:チェコが2019年からグリホサート使用を全面禁止 ・19年:ベトナムがグリホサートを含む除草剤の輸入を禁止 ・同:インドではパンジャブ州など4州に続きケララ州がグリホサートの販売を禁止  このような世界的な動きに逆行していると言えるのが日本の動向である。日本では、ホームセンターでグリホサートが含まれているラウンドアップが堂々と売られ、個人も含めて使用されている。  それだけではない。日本政府は昨年12月、農薬メーカーの求めに応じてグリホサートの残留農薬基準の大幅緩和を実施したのである。これにより残留農薬基準は、以下のとおり大幅に緩和された。 ・小麦:5ppm→30ppm ・ライ麦:0.2ppm→30ppm ・トウモロコシ:1ppm→5ppm ・そば:0.2ppm→30ppm ・ごま種子0.2ppm→40ppm  これは、海外の農業生産における全面使用を前提とする残留農薬基準設定であるが、このような基準であれば、今後も輸入小麦を原料とする食パンにはグリホサートが残留することになる。消費者は、国産小麦を原料とする食パンを選ぶか、残留農薬基準の見直しを求めるかどちらかを選択しなければならない事態に直面している。 (文=小倉正行/フリーライター)

なぜ、大阪湾に放射能汚染水を放流してはいけないのか 山崎 秀夫(元近畿大学教授)  2019年9月20日

なぜ、大阪湾に放射能汚染水を放流してはいけないのか 山崎 秀夫(元近畿大学教授)  2019年9月20日  この度、大阪市長から「福島第一原発の貯留タンクに保管されている放射能汚染水を科学的に可能なら大阪湾に放流しよう」という提案がなされました。全く非科学的な提言であり、その発言からは具体的な科学的根拠に基づく検討を行った痕跡は認められません。下記に放射能汚染水の大阪湾への放流(海洋投棄)に対する問題点について列挙しました。 【大阪湾に放射能汚染水を投棄してはいけない理由】 放射性物質に限らず、環境汚染物質管理の原則は拡散ではなく「集積」である。人為的に汚染水を環境中に拡散させることは、環境汚染防護の原則に反する。拡散によって希釈しても、食物連鎖による生態濃縮、環境変動による化学濃縮が起きる可能性が高い。トリチウム(T)は生体濃縮を受けるリスクは低いが、食物連鎖による生体間拡散は起きる。 福島第一原発のタンクに貯留されているALPS 処理水にはトリチウム以外の様々な放射性核種が含有している。TEPCO がHP で公表している2018 年度ALPS 処理水データの中で、タンクに貯留している最も高濃度なものは、T(トリチウム): 1,621,000 Bq/L, 137Cs(セシウム137): 829 Bq/L,90Sr(ストロンチウム90, β 線放射核種): 433,100 Bq/L, 全β 線:954,300Bq/L である。全β 線と90Sr の差は90Sr 以外のβ 線放射核種がALPS 処理水に含まれることを意味する。 ALPS 処理水を保管しているタンク貯留水中には半減期が極めて長い99Tc (テクネチウム99, 214,000 年)や129I (ヨウ素129, 1,600,000 年)も含まれている。保管処理水を海洋投棄することは、トリチウムと共にこれらの放射性核種も同時に海洋に放出することを意味する。これは環境生態系の放射能汚染の観点から極めて憂慮される。 TEPCO(東京電力ホールディングス株式会社:編集者注) が公表しているデータによれば、貯留タンクに保管されているALPS 処理水の放射能濃度はタンクごとのばらつきが極めて大きく、ALPS が健全に稼働していないことを示唆している。TEPCO 自身もHP 上の資料において、ALPS 稼働の不確実性について記載している。この様な不完全な装置から排出された処理水は成分の種類、濃度の変動が大きく、完全に管理して海洋投棄することが難しい。ALPS 処理水は放射能汚染水であることを忘れてはならない。 ALPS 処理水は原子炉冷却水として再使用されている(今でも、事故を起こした原子炉には冷却水が注入され続けている)。この様なリサイクル使用を繰り返せば、ALPS ではトリチウムは除去できないので、リサイクルのたびに処理水中のトリチウム濃度は上昇する。ALPS 処理水をタンクで永久保管する立場からは、処理水容積の増大を抑制できるのでこの方法は賢明である。 しかし、原子炉に注入した冷却水(ALPS 処理水も含む)が完全に回収されてALPS で処理されているわけではなく、陸側から海側に流れている地下水と共に原子炉から漏洩し、福島第一原発沖の海底への湧出が続いている。福島第一原発の岸壁の遮水壁や周囲に造った凍土壁は漏洩地下水の遮水にはあまり効果が出ていないようである。即ち、現状では高濃度汚染水と地下水は混合して、福島第一原発沖の海底から海に漏洩している。その結果、福島沖では今でも高濃度に放射能汚染した魚介類が捕獲されている(事故初期に比べて汚染魚の存在割合は低くなっているが、消費者には汚染の有無を判断できない)。 大阪湾は極めて閉鎖的な内湾であり、海水の滞留時間(海水が外洋へ流出するのにかかる時間)が長い。特に関空の二期工事が完成してから、大阪湾海水の滞留時間がより長くなったと言われている。関空から内側の大阪湾内湾には還流が発達しているので、大阪湾海水は湾奥部に滞留しながら外洋ではなく瀬戸内海に拡散していく可能性が高い。 福島第一原発から大阪湾までのタンク貯留水(放射能汚染水)の輸送システムは検討しているのか。タンカーによる海上輸送?タンクローリーやコンテナによる陸送?事故時の対応体制はできているのか。様々な問題が山積している。 大阪湾は赤穂のタイ、明石のタコ、泉南のアナゴやワタリガニ、その他、イカナゴ、イワシ、アジ、底魚のカレイやエビなど200 種以上の漁獲がある大漁場である。ここに放射能汚染水を投棄することは、この海域の漁業を壊滅させるのに等しい。 トリチウムは半減期12.3 年であるので120 年(半減期の10 倍の時間)保管すれば現在の濃度は1/1000 に減衰する。汚染の管理ができない海洋投棄より福島第一原発構内で保管管理した方が賢明である。保管管理のコスト削減のための海洋投棄であるならば本末転倒である。保管管理することによって国際的なストレスも低減すると考える。 現在の汚染地下水の海洋への流出を止めるためには福島第一原発全体を囲う棺桶型の遮水壁を造るしかないであろう。デブリは炉内から取り出さずに(取り出しても持っていく場所、保管する場所がない。政府は福島県と撤去期限を30 年と約束したらしいが、空約束になる可能性が高い)、棺桶の中で永久保管するしかないであろう。 追記・トリチウム汚染水の海洋投棄を容認する事由として、トリチウムが放出するβ 線のエネルギーが極めて低い(0.019 keV)ので、トリチウムの健康影響に対するリスクも低いと考えられることが挙げられている。 しかし、それは外部被曝の場合であり、トリチウム結合水分子HTO(普通の水はH2O)が生体内に入った場合には、トリチウムが生体分子と直接接触するので、水素結合の活性化によって生体分子やDNA が変性を起こすことを忘れてはならない。・さらに、放射能汚染水を環境に放出する際に濃度限度(原子力規制委員会告示)以下に希釈すれば問題ない、ということも挙げられている。しかし、この濃度限度は外部被曝について決められたものであり、内部被曝は考慮されていない。低線量放射線被曝では内部被曝による健康影響の効果を評価すること重要である。・人に対する低線量被曝の健康影響については、被曝の形態(1 mSv を1 年かけて被曝するのか、1 [...]

いわき市学校給食の放射性物質の検査の休止について いわき市教育委員会に電話しました。2019年10月18日17時。

いわき市学校給食の放射性物質の検査の休止について              2019年10月18日 17:00pm 内部被ばくを考える市民研究会 川根眞也  いわき市の学校給食の食材の放射性物質の検査をやってきた、NPO法人いわき環境システムが台風19号で浸水被災し、検査機器が損傷、使用不能となったため、いわき市教育委員会は、学校給食の食材の放射性物質検査を休止する、という通知を2019年10月15日保護者宛てに出しました。 <資料> 台風19号による浸水に伴う放射性物質検査事業の休止について(通知) いわき市教育委員会教育長 吉田尚 2019年10月15日  不安に思う保護者からの声を受け、2019年10月18日17:00にいわき市教育委員会学校支援課食育給食課に電話をしました。  まず、電話口に出られたのは菅野さん。  川根が、この通知の文章の内容は2つです。前段では、NPO法人いわき環境システムが被災したため、学校給食の食材の放射性物質検査を休止すること。後段では、放射能が心配で給食を止める場合は書類を出せ、になっています。大事な「一時的に学校給食の食材の放射性物質検査を休止しますが、検査復旧に向けて努力しています。」という内容が抜けています。検査は止めるのですか?と聞きました。  やはり「心配される声が多々聞こえるのですが……」と菅野さんは話してくれました。学校給食の食材の放射性物質検査では、いわき市の独自基準、放射性セシウム20ベクレル/kgを超えて学校給食が一時停止したことが2015年9月にありましたが、それ以降6年間そういう事象(学校給食の食材が放射性セシウム20ベクレル/kgを超えること)がなかったことから、今回、10月16日に放射性物質の検査をしないままですが、学校給食を再開した、と。他の検査機関に依頼するにもしても時間がかかます。また今後検査をどうするか決まっていないので、通知の文面に「只今、学校給食の放射性物質の検査の復旧に向けて努力しています」という内容が入らなかった、と回答しました。継続するかどうかも含めて検討中、と回答しました。  川根が「それでは、6年間20ベクレル/kgを超える放射性物質が検出された食材がなかったので、今後、いわき市は学校給食の食材の放射性物質検査を止めることもありうる、と回答されたということでいいですね。」と聞いたところ、回答できず、係長の佐藤さんが替わりに電話口に出ていただきました。  係長の佐藤さん。いわき市にある7つの給食センターのうち、断水しているところもありますが、2019年10月16日から学校給食を再開できるところもあります。一方、学校給食の食材の放射性物質検査を行ってきた、NPO法人いわき環境システムが被災、検査機器が破損、検査ができないことがわかりました。だから、6年間20ベクレル/kgを超えた食材が出ていなかったこともあり、10月16日から学校給食を再開できるところが再開するべく、通知を出しました。まだ、台風19号の影響で自宅が断水しているところもあります。給食を提供できるところは提供したいと考えました。放射性物質の検査ができませんが。それで出した通知です、と。  川根は自分がチェルノブイリ現地での調査に協力していて、チェルノブイリ原発周辺のがんが多発、甲状腺がんも出ている地域でも、人参はせいぜい6ベクレル/kgや8ベクレル/kgです。野生のきのこなど4万ベクレル/kgを超えるもののあります。牛乳だと2000ベクレル/kg、また20ベクレル/kg前後のものもあります。このことから、いわき市の食材で20ベクレル/kg出ないのは当たり前です。検出下限20ベクレル/kgの検査を本来なら検出下限を数ベクレル/kgまでしないと検査したことにはならないのです。しかし、いわき市の検出下限20ベクレル/kgの学校給食の食材の検査もやめてしまえば、もっと高い汚染のものが学校給食に混ざる事態にもなりかなねないのではないですか?川根も学校現場にいたことがあり、学校が安心して勉強でき、安心して給食を食べることができるのは本当に大事なことだ、と思っています。川根のように20ベクレル/kgも安全ではない、と思いつつも、いわき市教育委員会が頑張って放射性物質の検査をやっているから、「給食は検査しているから安心して食べな」と子どもに話している保護者もいると思います。是非、来週にでも「NPO法人いわき環境システムが被災して、当面、学校給食の食材の放射性物質検査を行うことはできませんが、現在、放射性物質検査体制の復旧に向けて努力しています。」という文書が出せないか、とお願いしました。  佐藤係長は、川根さまのチェルノブイリでの状況についての意見も含めて、復旧について文書を出すかどうかも含めて検討します、と回答しました。 以上です。

「除染廃棄物が55袋流出」だけではない。台風19号の除染により太平洋側の水産物の放射能汚染、再び上昇の危険性

[解説]  いつか史上最大の台風が来ることは分かっていました。フレコンバックは耐用年数は3年。借り置き用のもの。東京電力福島第一原発当時1年目、2年目、3年目の除染フレコンバックは、5年も経ち、ボロボロで中から草木が生え出しているのもあります。  人々に「除染しましたよ」というアリバイ作りのフレコンバック除染。福島県沖を含めて大量の除染土壌が太平洋側に流れ出しています。何も55袋だけの問題ではありません。阿武隈川も氾濫しています。阿武隈川の川底には、相当の原発放射能が堆積していました。海にこれが一気に流れ出ました。  NHKは「環境省によりますと、周辺の空間線量の値に影響は見られないということです。」と報道していますが、空間線量は、放射能を測る手段ではないです。流れ出したフレコンバックの中の核種(放射性物質の種類)と放射能(ベクレル/kg)を残っているフレコンバックの除染土壌を測って推計すればいいのです。環境省のやっていることは詐欺に近いです。  これから、日本の太平洋側の水産物の放射能汚染が再び上昇するのは間違いありません。産地を選んで、水産物を食べるべきです。  ウェザーニューズが報じた、大雨特別警報の地域と、東京電力福島第一原発事故による放射性セシウムの積算沈着予想(2011年3月12日~5月1日)が、ぴったりと重なります。台風19号が、森林、大地、河川の大規模な除染をした、と考えられます。放射能は半減期に従い崩壊していきますが、除染で消えてなくなるのではありません。移動するだけです。環境省は「空間線量が…」などと子ども騙しの説明を言うのではなく、今回の台風19号によって、どんな核種が何ベクレル太平洋側に流れ出したのか、推計を出し公表するべきです。 除染廃棄物が55袋流出 2019年10月18日 14時00分  NHK福島放送局 環境省は、台風19号の大雨で、除染廃棄物の仮置き場が浸水するなどして、55袋が流出したと発表しました。周辺の空間線量の値に影響は見られないということです。 環境省によりますと、台風19号を受けて、県内に760か所ある仮置き場に保管されている除染廃棄物の状況を調査した結果、17日までに、あわせて55袋の流出が確認されたということです。自治体別では、田村市で21袋、川内村で18袋、二本松市で15袋、飯舘村で1袋となっています。このうち、二本松市の15袋は、市が探しているものの、見つかっていないということです。原因については、田村市、二本松市、それに飯舘村では、仮置き場のフェンスを上回る高さまで浸水したこと、川内村では、仮置き場が崖の上にあり、土砂崩れで崖の下に崩落したことで、それぞれ流出したとみられるということです。環境省によりますと、周辺の空間線量の値に影響は見られないということです。一部の仮置き場ではまだ調査できていないということで、環境省は、「流出した除染廃棄物はひとつ残らず回収していく。今回の流出の原因を検証し、再発防止策を検討する」とコメントしています。 【田中復興相 ”丁寧な説明できるようにしなければならない”】田中復興大臣は、閣議のあとの記者会見で、「関係機関によって対応が進められているが、まずは流出の状況をしっかりと把握することが重要だ。地域の人たちにとっても非常に大きな関心事なので、放射能の関係についても十分調査をして、丁寧に説明ができるようにしていかなければいけない」と述べました。

ホステスが明かす関西電力“原子力のドン”の北新地「500万円豪遊」 – 「週刊文春」編集部 2019年10月16日 文春オンライン

ホステスが明かす関西電力“原子力のドン”の北新地「500万円豪遊」 – 「週刊文春」編集部 2019年10月16日  文春オンライン  関西電力の豊松秀己元副社長(65)が、大阪の歓楽街・北新地の高級ラウンジXで豪遊していた際の様子が「週刊文春」の取材で判明した。すでに関電の幹部ら20人が、福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から3億2千万円相当の多額の金品を受領していたことが明らかになっているが、中でも特に突出していたのが豊松氏だ。判明分だけでも約1億1千万円の金品を受領していた豊松氏は、技術者として、電気事業連合会の原子力開発対策委員長を務めていたこともある“原子力のドン”でもある。 【写真】関西電力の本店 そびえたつ「関電ビルディング」   豊松秀己氏 ©共同通信社    ラウンジXの元ホステスが明かす。 「トヨちゃん(豊松氏)はカラオケ付きのVIPルームをよく借り切っていました。20人以上入る部屋を7人から10人くらいで使い、多い時は部下など15~16人くらい連れてきた。みんなが彼にペコペコしていました。料金は2時間で1人約2万円。それにVIPルーム代、ボトル代が加算されますが、ウイスキーなどをポンポンあけて羽振りよく飲んでいたのを覚えています。支払いはトヨちゃんで、いつも現金。毎日のように店に来ていた時期もあり、月に軽く400~500万円は落としていました」    関西電力の広報室に聞くと、こう回答した。 「(ラウンジXでの飲食の)事実を把握していないため、回答を差し控えます」  現在は非常勤嘱託となった豊松氏にも取材を申し入れたが回答はなかった。  関電が把握していないのならば、豊松氏個人でどうやって月500万円も支払ったのか。資金の出所についてもさらに注目を集めそうだ。    10月17日(木)発売の「週刊文春」では、豊松氏の店内での様子やお気に入りの女性の存在などについても詳報している。 (「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年10月24日号)

台風19号、静岡県から上陸し東京電力福島第一原発の真上を通過。The latest on Super Typhoon #Hagibis NIWA Weather 2019年10月10日 動画

台風19号、静岡県から上陸し東京電力福島第一原発の真上を通過。 The latest on Super Typhoon #Hagibis NIWA Weather  2019年10月10日 動画 The latest on Super Typhoon #Hagibis: •Wind gusts to 315 km/h as of Thursday. •Category 5 equivalent strength. •2nd strongest storm on Earth in 2019. •Makes landfall in Japan late Saturday with destructive impacts possible. https://t.co/X3VQKl5YMl

アメリカの若者に広がる ソーシャリズム なぜいま社会主義? 2019年10月11日 13時45分 NHK

アメリカの若者に広がる ソーシャリズム なぜいま社会主義? 2019年10月11日 13時45分 NHK トランプ政権下のアメリカ社会で新たな現象が起きています。社会主義に傾倒する若者が増えているのです。若者を対象にした世論調査では「社会主義に好意的」と答えた人は51%にのぼり、資本主義の45%を上回りました。民主主義や資本主義の象徴とも言われてきたアメリカで、今、何が起きているのか。「ソーシャリズム=社会主義」に希望を見いだす若者たちのことばに耳を傾けました。(ワシントン支局記者 西河篤俊) シェアする アメリカ最大の社会主義団体 全米集会を訪ねると… 南部ジョージア州アトランタ。コカ・コーラ社が本社を置くことでも知られるこのまちの中心部で、全米最大の社会主義団体の2年に1度の全米集会が行われていました。その団体の名は、「DSA=Democratic Socialists of America」(アメリカ民主的社会主義者) 参加しているのは、社会主義を普及させる活動を全米各地で進めているメンバー1000人余り。会場で目立っていたのが若者の姿です。このDSA、3年前、2016年の時点で、会員数は5000人。それが前回の大統領選挙を機に急増。トランプ政権誕生後に格差に不満を持つ若者が次々と加入し、現在ではその10倍以上の6万人と爆発的に増えています。集会では、富を分配して、福祉を充実させることで、公平な社会を目指すという理念をいかに実現するか、3日間にわたって、熱を帯びた議論が続けられました。 スチュアートさん 集会に参加していた1人、スチュアート・ストレーダーさん(33)。4000キロ以上離れた西海岸のシアトルからはるばるやって来たと言います。 「この集会は、アメリカで社会主義が最高潮を迎えていることを象徴する歴史的なイベントです。この左派の運動を盛り上げれば、社会を根本的に変えることができると信じています。私の地元では、若者たちが切迫した状況に苦しんでいます」(スチュアートさん) なぜ社会主義にひかれるのか 若者たちの間で、何が起きているのか。私はスチュアートさんの地元シアトルに向かいました。スチュアートさんはシアトル市内にあるアパートに7年前に結婚した妻のブリンさん(31)と2人で暮らしていました。大学を卒業したあと、大手企業のウェブサイトの管理を行う会社に就職し、ウェブデザイナーとして働いていたスチュアートさん。しかし、4年ほど前に辞めました。理由は、いくら必死で働けど、給料が上がらず、経営陣が利益を独占していると感じたからです。 シアトルやその周辺には、アマゾンやマイクロソフトなど世界に名だたる巨大企業が本社を置いています。しかし、それが原因で住宅費が高騰。家賃は、この10年で50%以上も上がっています。 今は、電気の配線工事などで生計を立てるスチュアートさんの収入は、月21万円。そのうち毎月14万円が家賃に消えます。車もなく、移動はバスなど公共交通機関のみ。外食したり、休みの日に遠出することもほとんどありません。妻は、より給料の高い仕事に就こうと今、大学院に通っています。 取材中、スチュアートさんが複雑な表情で、妻に「食費も家賃も携帯代も切り詰められるところは全部切り詰めている。もし大学院に通いたいなら、アルバイトしてもらわないと…」と語りかける場面がありました。 「私たちは資本主義の恩恵を受けていない世代です。アメリカでは富を持たない人が99%、持つ人が1%。そして、トランプ大統領が就任してから、格差はさらに広がっています。だから社会主義を支持するようになったんです」(スチュアートさん) 困窮する若者たち 夜、まちなかでは、1年ほど、車で生活を続けているカップルにも出会いました。カイル・フラズィさん(25)とガールフレンドのジョダナ・ペタチアさん(30)。食事の宅配の仕事をしていますが、家賃を払うだけの収入は得られず、しかたなく車内で寝泊まりを続けています。後部座席には洋服や生活用品が所狭しと置かれていました。トランクも同様で、いったん開けると簡単には閉められないほど洋服が詰め込まれていました。ジョダナさんは狭い車内の助手席で猫を抱いていました。1か月ほど前、路上で捨て猫2匹を見つけたものの、自分たちの状況と重ね合わせて放ってはおけず、ともに暮らすようになったのです。ただ、今ではその猫にあげる餌代も負担になっていると言います。 「毎日働いているものの、今の仕事では、家賃を払えるレベルは稼げません。なんとかこの生活から抜け出したいですが、めどは立っていません」(カイルさん) さらに、シアトルのあちこちで見かけるのが、ホームレスが暮らすテント村です。シアトルやその周辺では、ホームレスは実に1万1000人を超えているのです。そのうちの1つのテント村で取材をしていると、赤ちゃんを抱いた若い女性がわれわれに話しかけてきました。 カーラ・コイヤーさん(28)。10か月の娘ウタちゃんとテントでの生活を続けています。アラスカ州出身のカーラさん。夫と別れて、住む場所がなくなり、しばらくは路上で生活していましたが、貯金も底をつき、NGOが運営するこのテント村にたどりついたそうです。ただ、赤ちゃんのための離乳食や服などはなく、この生活を続けるのは、もはや限界だと感じています。 取材中、赤ちゃんが誤って食べ物をのどに詰まらせてしまいました。するとカーラさんは動揺し「私を責めないでください。この子のために早くこんな場所からは出ていきたいんです。でも、頼れる身内もいなくて、私の力ではどうしようもないんです」とまくしたてました。カーラさんの目からは涙があふれ出ていました。 「今のシステムは機能していません。なんとか早く変わってほしいです。この子が大きくなった時に今のような不平等な社会であってほしくないです。社会主義は『正しい』というより、『今よりはマシな選択』だと思います」(カーラさん) 政治の世界で変化も こうした若者の不満の高まりを受けて、政治の世界でも変化が見えています。アメリカ最大の社会主義団体DSAのメンバーで、ジャーナリストのショーン・スコットさん(34)です。 8月のシアトル市議会の予備選挙に立候補。11人中2位の得票を獲得し、その結果は地元でも驚きをもって受け止められました。 選挙戦でも社会主義的な政策を前面に押し出しています。シアトル市が所有する4か所の公営のゴルフ場。これを低所得者向けの公営住宅に変えると訴え、支持を広げています。 「誰もが住む場所を持ち、屋根の下で暮らすべきです。人としての基本的な欲求です。これからアメリカで社会主義は、もっと広がっていくと思います」(ショーンさん) 来年の大統領選挙を見据え 1年後に迫ったアメリカ大統領選挙でも、「社会主義」を支持する若者の動向が鍵を握ると見られています。打倒トランプを目指す民主党の候補者争いでも、すでに“勢い”が数字で表れています。支持率で優位に立っているのは、▽「中道派」のバイデン前副大統領▽「左派」のウォーレン上院議員▽「左派」のサンダース上院議員の3人です。 富裕層への増税や国民皆保険の実現などを掲げ、社会主義を求める若者が支持する左派がトップ3のうちの2人を占めているのです。 一方のトランプ大統領。先月(9月)の国連総会での演説で、力強くこう語りました。 「アメリカが直面している最も深刻な課題は、社会主義だ。社会主義は国家や社会の破壊者だ/アメリカは絶対に社会主義の国家にはならない」(トランプ大統領) 冷戦時代にソビエトをはじめとする社会主義陣営と厳しく対立したアメリカでは、「社会主義」ということばに抵抗感やアレルギーを感じる人が特に中高年の間では多くいます。社会主義の否定的なイメージを呼び起こさせて、支持固めを図るとともに、民主党への攻撃材料にしようという思惑が透けて見えます。若者の間で社会主義が広まりつつあるというのは、格差が広がる今のアメリカを象徴する現象と言えます。来年に迫った大統領選挙の行方を左右する、新たな潮流となりそうです。 ワシントン支局 記者 西河篤俊 シェア

関東甲信越7つのダムで緊急放流やその可能性(午前1時現在) 2019年10月13日 1時21分 NHK

関東甲信越7つのダムで緊急放流やその可能性(午前1時現在) 2019年10月13日 1時21分 NHK 台風19号の接近に伴う大雨でダムの水位があがっていることを受けて関東甲信越では、ダムの機能を確保するため、5つのダムで緊急放流を行っているほか2つのダムで今後、緊急放流を行う可能性があります。 緊急放流は異常洪水時防災操作と呼ばれ、通常の放流と異なって、これ以上ダムに水をためられないと想定される際に、ダムに流れこんでくる大量の水を下流に流す操作です。 茨城県によりますと台風19号の影響で、北茨城市にある水沼ダムはダムの水位があがり、12日午後8時50分から緊急放流が行われています。 また12日午後9時半から神奈川県相模原市にある城山ダム、長野県伊那市にある美和ダム、それに、栃木県那須塩原市の塩原ダムで、それぞれきょう緊急放流を行っていて、命を守る行動を取るよう警戒を呼びかけたり、流域の住民に注意を呼びかけたりしています。 さらに茨城県は常陸太田市にある竜神ダムについて、13日午前0時35分から緊急放流を開始しました。 このほか栃木県では県が塩谷町の西荒川ダムについて、水位が上昇していることから、緊急放流を行う可能性があると発表したほか、日光市の中禅寺ダムについて、水位が上昇していることから、緊急放流を行う可能性があると発表しました。 一方、国土交通省の関東地方整備局は緊急放流を行うとしていた埼玉県秩父市にある荒川の二瀬ダムと栃木県日光市にある鬼怒川の川俣ダムと川治ダム、それに埼玉県と群馬県の境にある、神流川の下久保ダムについて、水位の上昇ペースが予想を下回ったとして、緊急放流を行わないことを決めました。 国土交通省では、緊急放流を行う場合、実施する3時間前に改めて発表するとしています。

阿武隈川 上流で氾濫発生 2019年10月13日 00時37分 NHK

阿武隈川 上流で氾濫発生 2019年10月13日 00時37分 NHK  国土交通省福島河川国道事務所と福島地方気象台によりますと、阿武隈川が上流の須賀川市の江持付近で氾濫が発生したと発表しました。 5段階の警戒レベルのうち、最も高いレベル5にあたる氾濫発生情報を発表し、最大限の警戒を呼びかけています。河川がすでに氾濫した場合は外に出て避難をすると危険な場合があることから、建物のできるだけ高いところに避難するなど、命を守る最大限の行動をとるよう呼びかけています。

東電福島第一原発の汚染水を「水」と呼び「解決」を訴える安東量子氏の言説をめぐって 2019年10月10日朝日新聞論座

 [解説]   安東量子氏は、国際放射線防護委員会(ICRP)のジャック・ロシャール氏ともに、福島の住民に被ばくを避けつつ住み続けるためのダイアログを主催してきた人物です。 エートスいわき議事録 2012年1月15日 福島県いわき市久之浜町勉強会 (1) 2011年12月18日  福島に住みながら、「放射能が怖い」という住民の気持ちを受け止め、なおかつ「科学的な対話」を通じてその不安を解消していく活動を行ってきた人物です。  編集者は「不安の解消」より「避難ではないのか」と思います。朝日新聞の論座は以下の大石雅寿氏の投稿に引き続き、国際放射線防護委員会(ICRP)の福島エートス路線を宣伝したいようです。 <参考> 「放射線副読本」はなぜ回収されたのか 放射線誤情報に翻弄されるメディア・政治・行政 大石雅寿 国立天文台特任教授(天文学) 2019年7月2日 朝日新聞 論座  エートス運動とは、チェルノブイリ原発事故で放射能汚染された住民への支援としてフランスのNGO(建て前は)が取り組んだ活動で、放射能で汚染された食べ物を塩ゆで、酢漬けなどをして放射能を減らして食べる方法を教え、母親たちと相談しながら、空間線量の高い場所で子どもを遊ばせないようにする取り組みです。これをエートス運動と呼びます。  安東量子氏は東電福島第一原発事故後にこのエートス運動に福島で取り組んでいます。 ブログ ETHOS IN FUKUSHIMA  食品と暮らしの安全基金の小若順一氏が2012年からウクライナ調査に入っていますが、日本では「汚染状況重点調査地域」は空間線量率で0.23マイクロシーベルト/時以下の地域ですが、小若氏が2012年に入った地域は空間線量率が0.12マイクロシーベルト/時の場所。ノビィ・マルチノビッチ村。日本の埼玉県三郷市などの「汚染状況重点調査地域」の半分の空間線量率です。しかし、ノビィ・マルチノビッチ村では、大人も子どもも関節や足腰が痛い、鼻血が出る、風邪をひきやすいの症状がありました。小若氏が地元の食品のセシウム137汚染を調べてみると、以下の通り。 <参考> マルチノビッチ村(かつてのポリシア地区)とノビィ・マルチノビッチ村の食品の放射能汚染  左のマルチノビッチ村は、チェルノブイリ原発から35kmの場所にあった村。高濃度に土地が汚染されたため、政府が住民を移住させました。それがノヴィ・マルチノビッチ村。「ノヴィ」とはウクライナ語で「新しい」という意味です。セシウム137が牛乳6ベクレル/kg、じゃがいも4ベクレル/kgなど、これは特定避難勧奨地域(年間20ミリシーベルトを超えているとして地域が国の避難指示に指定された)であった、南相馬市の原町区で生産されている農作物の汚染レベルに相当します。  この住民25人の健康状態が以下でした。 <参考> ノヴィ・マルチノヴィッチ村 住民25名の健康状態   大人も子どもも7割が頭痛がして、5割が鼻血が出て、風邪をひきやすい。その住民の健康被害の原因として、放射性セシウムが考えれました。ノビィ・マルチノビッチ村立学校長に、子ども1日分の食事を用意してもらい、そのセシウム137の濃度を測りました。その結果が以下です。 <参考> 非汚染地域で健康被害が出ている学校の子ども1日の食事の放射能 1.1ベクレル/kg セシウム137 小若順一  つまり、食品のセシウム137がたった1.1ベクレル/kgで、このような健康被害が出ていたと考えられるのです。   以下の論座の中で、安東量子氏は、福島県沖で行われている試験操業について、「2015年以降、ほとんどの魚種から放射性物質はほぼ検出されていない。」と書いていますが、日本政府の基準はセシウム137について100ベクレル/kgです。このノビィ・マルチノビッチ村の住民で健康被害が出ている食品汚染の、何と90倍も緩い基準です。ウクライナでは食品の汚染についてはセシウム137だけでなく、ストロンチウム90についても測定して規制を設けていますが、日本ではセシウム134,137だけを測っています。東京電力福島第一原発からは今も放射能汚染水が垂れ流されており、核燃料デブリを冷やすために注入された放射能汚染水は高濃度にストロンチウム90を含んでいます。ですから、台風などの度に大量のストロンチウム90が海に流れ出ているのです。  事実、2017年1月28日に木戸川沖合2kmのところで獲れたクロダイでは、セシウム137の汚染が43ベクレル/kgであるのに対して、ストロンチウム90の汚染が30ベクレル/kgもありました。このストロンチウム90のクロダイが採れたのは、試験操業が禁止されている原発20km圏内の境界線のあたりであり、容易にこのクロダイが試験操業地域に泳いで出ていくことが考えられます。  すなわち、セシウム137の汚染だけを測っているだけではだめなのです。特に魚介類についてはストロンチウム90を必ず測るべきです。体内にストロンチウム90が蓄積すると白血病や骨がんの原因となります。 <参考>クロダイ 放射性セシウム 502Bq毎kg ストロンチウム90 30 魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所20km圏内海域> 第4四半期 東京電力 2017年7月13日  以下の、安東量子氏は、このストロンチウム90汚染について、一言も語りません。  そもそも、安東氏が「安全」と言っている科学は、国際放射線防護委員会(ICRP)の科学であり、国際放射線防護委員会(ICRP)は発足当初から、アメリカの原子力委員会(AEC)のコントロール下にあります。第2次世界大戦後にアメリカは、米核兵器開発計画に参加した3国、アメリカ、イギリス、カナダで調整して、3国の原子力開発をスムーズに進めることを目的に、アメリカがまとめた放射線の「許容線量」で三国会議で合意を取り付け、1937年以来開店休業状態だった「国際X線およびラジウム諮問委員会(IXRPC)」の再開に着手しました。戦後の「国際X線およびラジウム諮問委員会(IXRPC)」はアメリカ、イギリス、カナダにスウェーデンを加えた4カ国でした。ここから1950年科学的権威の集まりとされる「国際放射線防護委員会(ICRP)」が結成されますが、そのメンバーの実に3分の2が先の原子力推進の3国協議のメンバーでした。  戦前の「国際X線およびラジウム諮問委員会(IXRPC)」は、放射線による職業病を防ぐため、放射線関連学協会を中心として結成されたものでしたが、戦後の「国際放射線防護委員会(ICRP)」はアメリカの主導の下に、核兵器と原子力開発の推進者による組織であり、これは核兵器と原子力開発の推進体制に沿うものとして作り出されたのでした。 <参考> 中川保雄「<増補>放射線被曝の歴史ーアメリカ原爆開発から福島原発事故までー」明石書店,2011年 pp.34~35  安東量子氏の語る「科学」とは、アメリカの核兵器開発と原発推進の政策に沿った、「放射線防護学」であり、基本的には、多少の内部被ばくは健康に影響がないとする「科学」です。  また、安東量子氏とタイアップして福島での市民の対話集会を行っている、ジャック・ロシャール氏は国際放射線防護委員会(ICRP)副委員長であり、チェルノブイリ原発事故の際にも、現地に入り、エートス運動を主催した人物です。下記のグラフはこうしたエートス運動に協力したチェルノブイリ原発事故の高放射能汚染地住民のからだの内部被ばくの測定データから作られたものです。 <参考>1000Bqのセシウム137を一度に摂取した場合と、毎日1Bqまたは10Bqのセシウム137を摂取した場合の全身放射能の複数年にわたる変化 ICRP pub111  これは、チェルノブイリ原発事故で高濃度に汚染された住民が、どの程度セシウム137で汚染された食べ物を食べていて、どの程度体内がセシウム137で汚染されたかを調べたデータに基づいて作られたものです。ジャック・ロシャール氏は、高放射能汚染地帯の住民に放射能で汚染されていない食べ物を食べるように勧めるのではなく、放射能を低減して食べるように教えたのでした。また、放射能汚染が高すぎる食べ物は食べない、高線量地域には立ち入らない、と教えたのでした。ウクライナの高放射能汚染地帯ナロジチ市の中央病院院長マリア・パシュック氏は2017年7月29日の講演で以下のように語りました。 「私はずっとナロジチに住みながら、多くの放射線の専門家や支援団体が入ってくるのを見てきました。しかし、どの取り組みも成功の見込みがありませんでした。住民は希望を失いかけていました。」 「よく言われるように『祈りはいつか通じる』ものです。小若さんたちがやってきて、この『日本プロジェクト』の放射能汚染されていない食べ物を食べることで内部被ばくを減らせること、健康を取り戻せることを証明してくれました。」  すなわち、ジャック・ロシャール氏らの取り組みは、住民の健康状態を改善することができなかったのです。唯一、住民の健康状態を改善できたのは、食品と暮らしの安全基金の「日本プロジェクト」、つまり、放射能で汚染されていない食べ物を食べるプロジェクトだけでした。  上記の国際放射線防護委員会(ICRP)のグラフの解説文には、非常に重要なことが書かれています。それが以下です。   【出典】ICRP Publication111 原子力事故または放射線緊急事後後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用 2008年10月 日本語版 pp.7~8 (17) 汚染された食品の経口摂取による被ばくは,地域で生産される食品の食習慣における相対的な重要性に応じて,慢性摂取または一回摂取のいずれからも生じる可能性がある。一例として,図2.2 に,1000 Bq の137Cs を一度に摂取した場合(一回摂取)と,毎日1 Bq または10 Bq の137Cs をそれぞれ1000 日間摂取した場合(慢性摂取)の全身放射能の変化を示す。同じ総摂取量に対して期間末期における全身放射能は著しく異なる。これは,汚染された食品を日常的に毎日経口摂取する場合と,断続的に一回摂取する場合との負荷が本質的に異なることを示している。実際には,汚染地域に居住する人々の場合,全身放射能は食品の出所と食習慣に依存する日常的摂取と一回摂取の組合せによってもたらされる。(18) チェルノブイリ事故から20 年後,チェルノブイリ周辺の汚染地域における成人の137Cs の典型的な平均日常摂取量は10~20 Bq の範囲である。また,付加的なより高い一回摂取は,例えば野生のキノコやベリー類の経口摂取による数百Bq の範囲が一般的である。これによる年間実効線量は0.1 mSv 程度である。しかしながら,情報をほとんど得ていない一部の者や非常に特殊な食習慣を持つ者は100 Bq から数百Bq の範囲の日常摂取量を示す場合がある。これは1 mSv から数mSv の範囲の年間実効線量に相当する。  つまり、ジャック・ロシャール氏らは、チェルノブイリ原発事故で放射能で汚染された土地に住む住民で人体実験をやったのです。この文章には、毎日1ベクレル摂取したり、毎日10ベクレル摂取したりする住民の体内に蓄積するセシウム137の量の変化がグラフで書かれていますが、問題なのは、健康状態に一切触れずに年間実効線量が0.1ミリシーベルト程度であるとだけ書いてあることです。国際放射線防護委員会(ICRP)が主張する、一般人公衆の年間線量限度は年間1ミリシーベルトですから、年間0.1ミリシーベルトはまったく問題がないことになります。しかし、先にみたようにノビィ・マルチノビッチ村の住民は、1.1ベクレル/kgの食品を毎日食べて、頭痛や関節・足腰の痛み、風邪をひきやすいなどの健康被害にあっているわけですから、毎日2.2ベクレル摂取(大人は毎日2kg食べるから。1.1×2=2.2)の摂取でも健康被害が出る、ということです。  チェルノブイリ原発事故後に、「エートス・プロジェクト」はベラルーシで1996年から1998年までのエートス1、1999年から2001年までのエートス2が行われています。この計画の主催者は建て前はフランス原子力防護評価研究所(CEPN)と呼ばれるNGOですが、参加している会員は①フランス原子力庁(CEA)、②フランス電力公社(EDF)、③コジェマ社(現在はアレバ社)、④放射線防護と原子力安全研究所(IRSN)の4団体だけです。つまり、原子力推進派のみで構成された団体です。このフランス原子力防護評価研究所(CEPN)と呼ばれるNGOの所長であり、国際放射線防護委員会(ICRP)第4委員会の委員長がジャック・ロシャール氏でした。彼は、過去にフランス原子力庁にも勤務していたことがあります。エートス・プロジェクトには被ばく医療に関する専門家や医師が一人もおらず、病気の子どもや住民の診療や治療を支援する計画はまったくありませんでした。健康に関しては一般的な医療以外は手つかずでした。せいぜい、母親グループを組織して、線量の高いところに子どもを行かせない、と言った指導だけでした。ホールボディーカウンターで内部被曝線量を測っても、ワシーリー・ネステレンコ教授が奨励していた、アップル・ペクチンを使い体内の放射性セシウムを除去する療養法をまったく採用せず、むしろ、アップル・ペクチンの効果はない、としてネステレンコ教授の療養法を排除しました。彼らは広島・長崎でABCC(アメリカ原子爆弾傷害調査委員会)がやったように、データを収集するだけが目的であり、放射線による健康への悪影響を解明するつもりはそもそもありませんでした。 <参考>コリン・コバヤシ『国際原子力ロビーの犯罪』以文社,2013年 pp.94~99  まったく、同じことが今、福島で安東量子氏とジャック・ロシャール氏によって行われています。福島では避難指示解除が次々に行われています。今年2019年4月10日には、東電福島第一原発がある、大熊町の38%が避難指示解除されています。そして、住民の健康管理のためと称して、市町村にホールボディーカウンターを設置し、住民の内部被ばくを測っています。地元で採れる食品は100ベクレル/kgを超えなければ安全だという、学者、医者をそれぞれの自治体に配置して。 <参考>浪江町 飯舘村 川俣町 富岡町 帰還住民の状況 2017年4月3日 読売新聞 <参考>大熊町避難指示一部解除へ 朝日新聞 2019年2月20日朝刊 1面  すでに三春町と南相馬市原町区には、福島県と国際原子力機関(IAEA)との協定に基づいて、「環境創造センター」が設立されています。ベラルーシと同じように、住民が被ばくし続ける様子を観察しながら、環境中の放射能の推移を研究するための機関です。かつて、ABCC(アメリカ原子爆弾傷害調査委員会)が、「被爆者を診察しながら治療しない」と批判されたこととまったく同じことが、チェルノブイリで、そして、福島で繰り返されようとしています。そして、その結論は「人間には放射線による遺伝的影響はない」更には「年間20ミリシーベルトまでは人間の健康影響はない」という結論を導くために。  安東量子氏はその研究に加担している人物であると判断できます。この朝日新聞論座の記事の即時、削除を求めます。 <参考> 国際原子力機関(IAEA)と福島県、協働覚書に署名 2012年12月15日 福島第一原発の「水」問題は本当に八方塞がりか ステークホルダーを交えた本当の協議はまだ尽くされていない 安東量子 NPO法人福島ダイアログ理事長 2019年10月10日 朝日新聞論座  溜め続けるほど厄介になることはわかっていた  原田義昭元環境大臣の退任時の「海洋放出するしかない」との唐突にも聞こえる発言をきっかけに、東京電力福島第一原子力発電所構内のタンクに溜められ続けている「水」が注目を集めることになった。続く松井一郎大阪市長の「大阪湾で放出を行ってもよい」との発言も大きな話題となり、波紋は今も広がっている。だが、この一連の流れについて、戸惑いを覚えているのは私だけではないだろう。 小泉進次郞氏に引き継ぎを終えた原田義昭・前環境大臣=2019年9月12日、東京都千代田区  原田義昭元環境大臣の発言に端を発した動きについて、私が戸惑いを覚えている理由から書いてみたい。まず、「水」問題は、今にはじまったことではない、ということ、これが最大の理由だ。というよりも、東京電力福島第一原子力発電所事故が起きて以来、ずっと水との戦いであったと言ってもいい。NHKの原発事故後のニュースをアーカイブサイト「40年後の未来へ福島第一原発のいま」で確認してみると、2011年4〜6月のニュースの見出しの半数近くが「水」関連のニュースで占められている。  これは、冷却機能が失われた原子炉を冷やすために、緊急的な放水などを行う必要があったためである。事故直後の東京消防庁のハイパーレスキュー隊の高所放水車による放水作業をご記憶の方も多いだろう。その後、安定を取り戻すにつれ、水は「垂れ流し」の状態ではなくなり、急造されたタンクに蓄えられることになった。2013年には冷却に用いた水から放射性物質を取り除く多核種除去装置(ALPS)が稼働し、時折小さなトラブルは発生しながらも、「水」は安定的に管理ができるようになった。そして、ニュースとして報じられる機会は激減した。  ただ、報道が消えた後も、「水」は構内のタンクに蓄えられ続けており、敷地が無限でない以上、その後の処分方法を決めなくてはならないということは、状況を多少なりとも知っている人間ならば誰でも知っていたことであった。  福島第一原発の「水」は、冷却用に使用されたものだけではなく、もうひとつ発生ルートがある。それは地下水からの流入である。こちらは、元々の福島第一原発が地盤を切り下げて造成された敷地に建てられたことに起因しており、事故前から地下水のコントロールは必要とされてきた。ところが、事故が起きたため、その地下水が事故を起こした建屋に流入してしまうこととなり、冷却水とはまた別に地下水の管理が必要となった。  このため、約350億円の国費をかけ、地下に「遮水壁」と呼ばれる工事を2014年から2017年にかけて行い、地下水の流入と流出を防ぐ作業を行う一方、井戸を掘って地下水を汲み上げて建屋への流入を防ぐなどの作業も並行して行ってきた。  「水」問題はこのように、1年や2年前にはじまった問題ではなく、当初から大きな問題であり、溜め続ければ続けるほど対応が厄介になることはわかりきっていたことであった。  ちなみに、現在、「処理水」と呼ぶか、「汚染水」と呼ぶかといった議論がときおり見られるが、おおもとを辿れば、複数の経路から発生する「水」問題があり、その「水」が放射性物質に汚染された原子炉や建屋と接触し「汚染水」となり、「汚染水」がALPSを通して放射性物質が除去されることによって「処理水」になるわけだから、私はたんに「水」問題と呼ぶことにしたいと思う。 迷走が続いた小委員会での「話し合い」  さて、ここまでが長い前置きである。なぜ福島第一原発事故構内に「水」が蓄えられ続けてきたのだろうか。そこには、福島の漁業をめぐる長い経緯がある。  原発事故直後、アンコントローラブルな状況の中、放射性物質が多量に含まれた汚染水は何度か緊急的な海洋放出が行われている。これは、管理を大原則とする放射性物質の処理としては禁じ手であったが、こうした手法をとらざるを得ないほど、事態は切迫していた。この緊急放出のニュースを聞き、もはや福島の海は駄目になってしまった、と思った人は少なくなかったろう。私も、もはや福島沿岸の海産物をこの先二度と口にすることはできないだろうし、また海で泳ぐこともできなくなるのだろう、と思っていた。 底引き網漁でヒラメやアナゴなどが水揚げされている福島県の試験操業=2017年6月30日、福島県いわき市・沼之内漁港  ところが、諦めなかった人たちもいた。2012年6月から、福島県沿岸では試験操業がはじめられ、徐々に対象魚種を広げながら、慎重に粘り強く漁業本格再開への道を探ってきた。  現在までに試験操業は、安全性を確認しながら対象魚種を拡大し続け、2019年9月25日には、2魚種を残し全魚種が試験操業の対象となっており、ほぼ同時に、漁連によって本格操業再開への協議がはじめられることも伝えられた。ちなみに、試験操業というのは操業日と漁獲対象魚種に制限が加えられるという意味であり、漁獲された海産物は市場に流通している。2015年以降、ほとんどの魚種から放射性物質はほぼ検出されていない。  だが、この漁業再開への動きに対して、大きな問題となったのが、「水」問題であった。  汚染水流出等トラブルが伝えられる度に、試験操業は延期をやむなくされた。また、先述した福島第一原発構内で発生した地下水のうち、「井戸水」と「サブドレン水(注)」については、現在も海洋に放出されている。この放出を行う前に、政府と東電は県漁連と交渉を行ってきたが、汚染水流出によってシラスの試験操業の延期をやむなくされるなどの経緯もあり、交渉は難渋し、漁連の苦渋の判断のうちに2015年9月から放出が行われている。 (注)サブドレンとは、原子炉建屋周りの井戸。この井戸から水を汲み上げて建屋への地下水の流入を防ぐ  この交渉の時に、漁連はいくつかの申し入れを東電に行っている。そのなかのひとつに「多核種除去装置(ALPS)で処理した汚染水は漁業者の理解を得られない限り海に放出しない」との条件があり、このことがタンクに水が溜められてきた大きな理由のひとつとなっている。  この間の政府は、2013年12月20日、原子力災害対策本部での「東京電力(株)福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水問題に対する追加対策」の決定を受け、12月25日に「トリチウム水タスクフォース」を立ち上げ、ALPS処理水の取り扱いを決定するための基礎的な情報の整理を行った。ここでは、リスク、環境影響、費用対効果等の評価すべき項目を整理し、総合的な評価を行うことが目的とされ、その結果は、2016年6月3日付けで「トリチウム水タスクフォース報告書」として取りまとめられている。  松井大阪市長は、海洋放出受入の条件として、政府が科学的な見解を示すことを求めたが、2016年6月には、政府としての科学的見解は既に取りまとめられている。だが、それだけでは漁業者は放出を認めるわけにはいかなかった。もともと福島県沿岸も津波で被災しており、それだけで既に大きな被害を受けている。それに加えての原発事故による放射性物質流出だ。事故から八年半を経て、現在も漁獲量は震災前の15%にとどまり、風評被害も根強い。  これまでの過程で、東電による情報隠しなども度重なって起きており、不信感も募っている。既に苦渋のなかでサブドレン水放出は受け入れた。これ以上の苦労を引き受けなくてはならないのか。やっとの思いで再開にこぎ着けた漁業が再び駄目になり、一から苦労を繰り返すのか、との思いはあって当然のことだろう。  そこで、トリチウム水タスクフォースの結論を受けて、政府は、風評被害などの社会的観点から対策を検討する「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」を2016年11月に立ち上げ、そこでの議論が現在も継続されている。  私の印象としては、2016年からの一連の小委員会での議論は「迷走」の感が拭えない。なぜならば、いつまで経っても実効的な対策が打たれることはなく、延々と話し合いを続けられているように感じられるからだ。政府・東電としては漁連の理解なくして、海洋放出はできない。漁連としては、これまでの経緯や風評被害のことなどを考慮すれば、海洋放出は到底認められないだろう。 スリーマイル島の経験に学ぶ  ここまで書けば、「八方塞がり」の印象を持たれる方も多いだろう。では、どうすればいいのか。政治的判断の名の下に、海洋放出を強行するしかないのか。幸いなことに、国外に先例は存在する。  たとえば、アメリカで1979年にアメリカ合衆国で起きたスリーマイル島の事故処理である。 事故後、1号機の運転が再開されたスリーマイル島原発=1988年、米国ペンシルバニア州  スリーマイル島原発事故は、福島第一原発事故のような大規模なサイト外への放射性物質流出は起きなかったが、冷却に用いた水の処理は同様に問題となった。   スリーマイル原発は海ではなく、サスケハナ川という河川に面しており、処理済みのトリチウムを含んだ水はサスケハナ川に放出することが最も安価で合理的なものとして検討された。しかし、この川には下流域にも都市があり、漁業への影響のみならず、子供たちの川遊びの場所にもなるなどの理由から、放出に対する感情的反発は非常に大きく、実行することができなかった。  最終的に選択されたのは、水蒸気として蒸発させるという手法であった。もっとも福島第一原発と比べ、スリーマイル島の「水」の量は桁違いに少なく、福島でそのまま同じことができるわけではない。このことも既に「トリチウム水タスクフォース」で検討済みである。ここで強調したいのは、この意思決定が行われるまでの過程についてである。トリチウム水処理を行うにあたって、アメリカ政府と電力事業者は、地域の住民との協議を繰り返し、結論を出した。なぜならば、そうしなければ、事態は一向に進展しなかったからである。  原子力災害後に、政府と専門家への信頼が大きく失墜するのは、日本のみならず、世界的に共通の現象である。日本における特殊な事情ではない。イギリスのセラフィールド原子力発電所、チェルノブイリ原発事故後のソ連国内、そして、その影響を受けたヨーロッパ各国でも、同様の状況は伝えられており、そのため事故後の対応にあたっては、住民との意思疎通をいかにうまく行うかが重大な問題となった。  原子力災害を経験したどの国においても、「科学的に正しい」と言っても、専門家と政府への信頼は失墜しており、正当性そのものが受け容れられない。そこで世界的に行われて、効果が実証されているのが、利害関係者を交えた息の長い協議で結論を見いだしていく方法である。  このことは、トリチウム水タスクフォースでも議論の俎上に上がっており、2014年3月26日の第6回会議の際に、海外関係者のヒアリング結果が報告されている。そこでは具体的にどのようなことが課題となり、どのような人を「ステークホルダー(利害関係者)」とみなすかと言ったことが聞き取りをされている。   ただ、その後のタスクフォースの議論においても、ごくたまに「ステークホルダー」という文言は入るものの、ステークホルダーを交えた協議の重要性を認識している形跡は見えず、議事概要を追っても、技術的なやりとりに終始しているように見受けられる。  福島第一原子力発電所事故後の私自身の経験からも、利害関係者を交えた話し合いの重要性は、大いに頷けるところである。  「感情も含めて人間だ」  2012年から私はいわき市の最北端に位置する末続(すえつぎ)という小さな集落で測定の活動を行ってきた。7年が経過し、昨年から住民に対して活動を振り返る聞き取りを行っている。事故当初の放射線に対する知識を尋ねたときに、予想外の反応が返ってきた。 福島第一原発の敷地にならぶ貯水タンク=2016年11月10日  何人かの人は既に、自分達の地域の放射線量を喫煙などの他の健康リスクと比較した場合に極端に大きなものとなるわけではない、といった一般的なリスク論は「知っていた」と回答したのだ。ただ、それを信じられなかった。なぜ信じられなかったのか、と尋ねると「あんたたちの言うことなんて信じるもんか、と思っていたのかもね」とのことだった。事故を起こし、その上責任逃れの発言に終始し、都合の悪い情報を隠し、しかもそこに暮らす自分達の困難をわかろうともしない政府や専門家の言う事なんて、と意地になっていたのかも知れない、と言うのが落ち着いてみてから当時を振り返っての言葉だ。  なぜ、私たちの測定は信じられたのか。そこに通い(実に7年間)、そして「つまらない」質問にも丁寧に答え、かといって結論を押しつけるわけでもなく、気が済むまで測定に付き合って対応を一緒に考えた、それが理由だ。科学的に正しいことは前提条件ではあるが、しかし、それだけでは足りないのだ。  スリーマイル事故の収束作業にかかわった関係者が述べる、「感情も含めて人間だ」という言葉は、シンプルだが真を得ている。(「平成26年度 技術研究組合国際廃炉研究開発機構シンポジウム 「廃炉への道」を切り拓く」 IRID国際顧問・コンサルタント レイク・バレット氏の講演より)  今年の8月3日、私たちが開いた「福島ダイアログ」という集まりでは、漁業をテーマとした。何人かの漁業関連の人たちにも参加してもらい、話を聞くことができた。その際に「水」問題についても問いを投げかけてみた。わずか数名の話であり、それが漁業関係者の総意であるなどと言うつもりは毛頭ないが、内容は非常に示唆的であった。  「水」問題については、尋ねたいこと、確認したいこと、要望したいことも多くある。だが、それらを直接尋ねることも、対策に反映してもらう機会もない。そのくせに、放出するかどうかを決めるのは漁業者や地元である、との判断責任だけは押しつけられる、そのことに対する不信感である。  これは至極当然のように思える。結論は既にほぼ決められている。だのに、その結論によって引き起こされる不利益を蒙るのが確実な漁業者や地元に判断責任だけは押しつけるという構図は、あまりに無責任なものであり、感情的に大きな反発が出るのはやむを得ないだろう。  こうした無責任な構図ではなく、利害関係者の疑問や要望を汲み取りつつ、意思決定に反映させていくための具体的な協議こそが、いま求められていることではないだろうか。こうした協議の重要性は、国際廃炉機構の主催する第1回国際廃炉シンポジウムでも、セラフィード事故の経験者からも語られており、政府関係者も知らないわけではないだろう。  だが、これらを現実化させようという動きは、何年経っても国内では起きてこない。本来であれば、トリチウム水タスクフォースでの検討が終わった2016年の段階で、具体的な協議の場の設定に入るべきであったろう。こうした協議の場での話し合いプロセスを経ずには、「水」問題を収束させることは不可能であることは、過去の海外の事例が証明している。  廃炉と「水」問題が長期にわたる以上、この先も、地元を中心とした住民との意思疎通と信頼関係構築は政府・東電にとっては決定的に重要なものとなる。それならば、今からでも、協議の場の設定をはじめるべきだ。信頼なしには、なにごとも為し得ない。海外の先例を日本は生かすことができるかどうか、いま、それが問われている。

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