2018年8月29日

経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部

原子力政策課原子力発電所事故収束対応室

多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会事務局 御中

多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 委員各位

      原子力規制を監視する市民の会国際環境NGOFoE Japan

       要請書

    説明・公聴会の開催の前提は崩れました小委員会での検討をやり直してください

 トリチウム以外の放射性物質の残留が明らかにタンクに貯蔵しているALPS処理水の中にトリチウム以外の核種についても、告示濃度限度を超える放射性物質が含まれていたことが明らかになりました。東電の公表データから読み取れる状況は以下の通りで、もっとも深刻なのはヨウ素129ですが、告示濃度限度超えは、2015年4~9月の時期と2017年4月~現在に至る時期に集中しています。

・ヨウ素129…(告示濃度限度:9 Bq/L)2015年4~9月では、既設ALPSで最大121Bq/Lを観測しており、増設ALPSでも基準値超えが続出。2017年4月~では、既設ALPSで最大27.83Bq/L、増設ALPSで最大62.24Bq/Lを観測

・ストロンチウム90(告示濃度限度:30 Bq/L)…最大141Bq/L(2017年11月30日)

・ルテニウム106(告示濃度限度:92.5Bq/L)…2015年5月に告示濃度限度を超える値が頻発(最大1100Bq/L)

吸着材の交換頻度を下げた

 東京電力によれば、いずれも原因は、吸着材の交換頻度を意図的に下げる運転をしたためとのことです。ヨウ素129などを告示濃度以内にするためには、吸着材を頻繁に交換する必要がありますが、ALPSの稼働率は下がります。東電は、2015年については敷地境界における実効線量1mSv/年未満を達成するため、2017年以降はフランジ型タンクの運用を止めるために、いずれもALPSの稼働率を低下させないようにする必要があったと説明しています。

 東電は2014年段階で、このような運転を行うことについて、資源エネ庁が設置した廃炉・汚染水対策チーム会合事務局会議の第13回会合(2014年12月25日)で事前に説明していました。規制委が設置した特定原子力施設監視・評価検討会の第2回、第3回会合でも説明していました。また東電は、実績については、2015年と2017年以降ともに、個別の面談やヒアリングの場で説明したと述べています。

<参考> 増設多核種除去設備 本格運転に向けた対応について 東京電力 2014年12月25日 第13回廃炉・汚染水対策チーム会合事務局会議

委員会には、問題のないデータが示された

 しかし、肝心の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の委員たちには、公式の場では説明されていません。同小委員会の第1回会合(2016年11月11日)において、処理水のデータが示されていますが、これは、2014年9月20日~28日に採取したデータで、トリチウム以外の放射性物質は、ヨウ素129などは検出限界以下、ルテニウム106も告示濃度以下となっています。東電は、「トリチウム以外のものは何とかできている」と説明しています。すなわち、小委員会では、トリチウム以外の核種については検討されていないのです。

説明・公聴会資料でも告示濃度超えデータは隠された

 この時の資料がそのまま、今回の説明・公聴会の資料(p.22)の参考2-2に添付されています。タイトルは「タンクで貯蔵している処理水の性状」とあり「現在、タンクに貯蔵している水(多核種除去設備等処理水)は、トリチウムを除く放射性物質の大部分を取り除いた状態」とありますが、トリチウム以外でも告示濃度限度を超える放射性物質が含まれている実態が全く反映されていません。

追加の放射性物質の海中排出には反対

 資料は総じて、トリチウム以外の放射性物質は除去されていることを前提に、トリチウムについても、自然由来や、原発や再処理工場、核実験で放出された量と比べてもタンクに貯蔵されている量は相対的に大きくはないことや、トリチウムが他の放射性物質に比べても危険度が小さいことが強調され、希釈して海洋放出する方法を容認するものになっています。

 核実験や再処理工場などから既に大量のトリチウムが放出されていることについては、そのこと自体が問題であって、追加の放出を免罪することにはなりません。甲状腺がんなどの原因となる放射性ヨウ素の危険性は言わずもがなですが、トリチウムのリスクについても、さまざまな指摘がなされています。福島第一原発周辺海域では既に大量の放射性物質が放出されていますし、今でも放射性物質が観測されています。私たちはこれ以上の放射性物質の海洋放出には反対です。

小委員会での検討を一からやり直すべき

 小委員会の事務局が、第1回会合の段階でトリチウム以外にも告示濃度限度を超える放射能が含まれていることを十分承知していたことは、この小委員会の名称にも表れています。小委員会は「トリチウム水タスクフォース」を衣替えしたものですが、その際に、タンクに貯蔵している処理水の名称を「トリチウム水」から「多核種除去設備等処理水」に変えています。

 今回の説明・公聴会の資料には、2017年4月以降、現在も続くのヨウ素の告示濃度限度超えについても一切記載がありません。これでは、委員をだまし続け、住民・市民に対しても「だまし討ち」をしたと言われても否定できない状況です。説明・意見聴取会の開催の前提は崩れました。一から小委員会での検討をやり直してください。

 原子力規制を監視する市民の会

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