内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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2018年11月

放射能汚染で内部被ばくした日本ザルの骨髄の異形成。宮城県の日本ザルでも内部被ばく102.7ベクレル/kg(骨格筋)。

[解説]  毎日新聞2018年11月20日夕刊8面に「福島のサル、成長遅れ 食べ物から放射性物質? 「人より被ばく多く」」という記事が掲載されました。 ■福島第1原発事故 福島のサル、成長遅れ 食べ物から放射性物質? 「人より被ばく多く」 毎日新聞2018年11月20日 東京夕刊   福島市内に生息するニホンザル=羽山教授のチームの今野文治さん提供  福島県内に生息する野生のニホンザルについて、福島第1原発事故後、成獣の骨髄で血液のもとになる成分が減ったり、胎児の成長が遅れたりしたとする研究成果が英科学誌に相次いで報告された。事故で放出された放射性セシウムを木の皮などの食べ物から取り込んだことなどによる被ばくの影響の可能性があるという。【須田桃子】  成獣を調査したのは、福本学・東北大名誉教授(放射線病理学)らの研究チーム。福島第1原発から40キロ圏内にある南相馬市と浪江町で事故後に捕殺されたニホンザルを調べ、成獣18頭で骨髄中の成分を調べ他の地域と比べた。その結果、血小板になる細胞など血液のもとになる複数の成分が減っていた。さらに、一部の成分は、筋肉中の放射性セシウムの量から推定される1日あたりの内部被ばく線量が高い個体ほど、減り方が大きくなっていたという。福本さんは「健康への影響が表れるのかなど、長期的な調査が必要だ」と話す。  また、羽山伸一・日本獣医生命科学大教授(野生動物学)らの研究チームは、福島市が個体数調整のため2008~16年に捕殺したニホンザルのうち、妊娠していたメスの胎児を調べた。原発事故前後の計62頭のデータを比較したところ、事故後の胎児は事故前に比べ、頭の大きさが小さく体全体の成長にも遅れがみられた。母ザルの栄養状態には変化がなく、チームは事故による母ザルの放射線被ばくが影響した可能性があると結論づけた。  羽山教授は「サルは森で放射性物質に汚染された食べ物を採取していた上、線量が高い地面に近いところで生活していたため、人に比べて被ばく量が桁違いに多いはずだ」としている。  環境省が実施する野生動植物への放射線影響の調査対象にニホンザルは含まれておらず、日本霊長類学会など5学会は、ニホンザルを対象に含めることなどを求める要望書を同省に提出した。同学会の中道正之会長は「ニホンザルは寿命が20~30年と長く、定住性もある。世界的に見ても、ニホンザルへの長期的な影響を調べることは極めて重要だ」と話した。 [解説]  原論文は福本学ほかのScientific Reportsに2018年11月13日掲載された以下の論文です。 Haematological analysis of Japanese macaques (Macaca fuscata) in the area affected by the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident 福本学ほか 2018年  毎日新聞の記事などでは、はっきりと書かれていませんが、この論文では重要な指摘があります。その被ばくした日本サルの骨髄の異形成は、外部被ばく線量(年間9.1ミリシーベルト)がほぼ同じなのに、内部被ばくが15.6倍も多い、日本サルに顕著に見られる、ということです。つまり、長期に渡る低線量被ばくの影響を、外部被ばくで推定するのは間違いである、ということです。決定的なのは内部被ばくである、ということです。  また、この研究の致命的な欠陥は、「被ばくした日本サル」として福島県南相馬市および飯舘村のサルを選んでいますが、「被ばくしていない」対照群として宮城県の仙台市、川崎町、七ヶ宿町のサルを選んでいることです。宮城県のこれらの地域のサルの体内の放射性セシウムの蓄積量は、成獣で102.7ベクレル/kg、幼獣で76.3ベクレル/kgもあります。どちらも骨格筋の放射性セシウム濃度を捕獲したその日に測定したものです。つまり、宮城県仙台市、川崎町、七ヶ宿町の野生植物や果実を食べてはならない、ということをこの論文は言外に示しています。  「強度に内部被ばくしている日本サル」と「低いレベルに内部被ばくしている日本サル」とを比べることで、抹消血液像の数値もさほど変わらない結果となっています。しかし、これは本来、ほとんど放射能汚染のない青森県(六ケ所村はだめ)や岐阜県などの日本サルと比較すべきではないでしょうか。「被ばくした日本サル」と「被ばくしていない日本サル」とを比較することで、白血球の数値の減少も明らかになるのではないか、と思われます。また、人間の電離放射線健康診断のように、異形リンパ球の検査は行っていないのでしょうか?異形リンパ球が観察されることで、被ばく影響を証明することができます。  この論文の中の3枚の図版を紹介します。 ■福島第一原子力発電所を中心とする大地の放射能汚染と被ばくした日本猿×と被ばくしていない日本猿とを採取した地点+ 図1.試料採取地点の地図。黒い丸●は福島第一原子力発電所(FNPP)の位置を示す。×印および+印は被ばくした日本猿および、対照群とした被ばくしていない日本猿の試料を採取した地点を示す。被ばくした日本猿と被ばくしていない日本猿の抹消血液像の数値、体内の放射性セシウムの蓄積量 ■被ばくした日本猿と被ばくしていない日本猿の抹消血液像の数値、体内の放射性セシウムの蓄積量 表1.抹消血液像の数値。体内のセシウム134およびセシウム137の放射能濃度は試料が捕獲されたその日に測定された。WBC:白血球、RBC:赤血球、Hb:ヘモグロビン、Hct:ヘマトクリット値、PLT:血小板。被ばくした日本猿のグループは福島県南相馬市および飯舘村に生息している群を含んでいる。被ばくしていない日本猿のグループは宮城県仙台市および川崎町、七ヶ宿町に生息している群を含んでいる。標高のデータは国土地理院のデジタル標高モデル(DEM)に基づく。「 ✣ 」のマークで示した値は、被ばくした日本猿(成獣)と被ばくしていない日本猿(成獣)とで大きな違いが見られる値を示している。そのp値は、✣0.01 ≤ p < 0.05 , ✣✣0.001 ≤ p < 0.01 , ✣✣✣ p < 0.001 [編集者注]被ばくしていないグループとして、宮城県仙台市、川崎町、七ヶ宿町の日本猿が選ばれているが、これらは明らかに被ばくしている日本猿である。放射性セシウムによる内部被ばくが102.7ベクレル/kg(成獣)、76.3ベクレル/kg(幼獣)もある。「強度に被ばくしたグループ」と「弱く被ばくしたグループ」とを比較することで、低線量被ばく影響を過小評価する研究結果となっている。 ■ 被ばくした日本猿の骨髄組織の比較(a)9歳オス (b)8歳メス 図3.被ばくした日本猿の骨髄組織の比較(a)2013年8月27日に捕獲した9歳オス。骨格筋の放射性セシウム合計(Cs134+Cs137)は439ベクレル/kg。推定実効線量(内部被ばく)は4.79マイクログレイ/日(=4.79マイクロシーベルト/日に同じ。)外部被ばくは24.8マイクログレイ/日(=24.8マイクロシーベルト/日に同じ。年間9.1ミリシーベルト。)(b)2014年1月24日に捕獲した8歳メス。骨格筋の放射性セシウム合計(Cs134+Cs137)は11,400ベクレル/kg。推定実効線量(内部被ばく)は74.5マイクログレイ/日(=74.5マイクロシーベルト/日に同じ。)外部被ばくは24.9マイクログレイ/日(=24.9マイクロシーベルト/日に同じ。年間9.1ミリシーベルト。) [編集者注] つまり9歳オスと8歳メスはほぼ同じ時期に捕獲されて、外部被ばくは年間9.1ミリシーベルトと同じ。しかし、内部被ばくは4.79マイクロシーベルト/日に対して、74.5マイクロシーベルト/日と15.6倍。この骨髄の異形成は内部被ばくによるもの、と判断できる。 [解説]   ちなみに、日本サルはだいたい5歳で成熟し、子どもを作れるようになります。0歳~4歳を幼獣。5歳以上を成獣としています。平均8.99km2(0.29km2~39.7km2)の縄張りを持ち、植物の葉、果実、昆虫、その他小動物を食べて生活します。(以上、上記論文より抜粋)

内部被ばくを考える市民研究会 第8回総会 公開のお知らせ 2018年11月25日(日) 13時30分~16時(総会は17時まで)

[ 2018年11月25日; 1:30 PM to 4:00 PM. ] 内部被ばくを考える市民研究会 第8回総会 公開のお知らせです。 日 時 11月25日(日) 公開 13:30〜16:00 議題1の報告と討議のみ            会員のみの討議~17:00 非公開(会員限定ツイキャス) 議題2~7 場 所 浦和コミュニティセンター 南ラウンジAB(浦和パルコ9階)参加費 会員の方無料    一般参加の方600円    高校生以下は無料 <議題> 1. 東京第一原発事故と内部被ばくをめぐって 報告:川根眞也  <報告の骨子> ・次々と再稼働される原発と内部被ばく 九州4基・関西3基が稼働中。関西1基(高浜3号機)、四国1基(伊方3号機)が再稼働工程中 ・原発とプルトニウムと日米原子力協定 ・原発のトラブルを報道するのは地元新聞だけ。全国紙は地域限定で報道 ・でたらめ点検と対策で原発再稼働を強行する九州電力、関西電力 ・原発4 基動かして、太陽光発電つぶし(九州電力、そして関西電力) ・なぜ脱原発の運動が力を持たないのか? ・安倍政権の進める原発輸出とアメリカの核戦力への自衛隊の参加 ・明らかになりつつある、チェルノブイリ原発事故の低線量被ばくの実態 ー1.1ベクレル/kgで痛み。10ベクレル/kgで子どもは全員病気。 ・原発集団訴訟の敗北要因は中間指針。年間20ミリシーベルトをどう論破するか? <質疑・討議>   13:30~16:00(途中10分間休憩) 公開ツィキャス http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/ ※ 上記の時間帯を公開とします。ツィキャスで非会員の方もご覧になれます。以降の時間帯は会員参加の討議になりますので、非公開とさせていただきます。会員の方には「会員限定のツィキャス」をご覧になれます。 2.活動報告 第7期 2017年10 月~2018年9月 3.内部被ばくを考える市民研究会会則改正(案) 4.  活動方針(案) 5.  第7期決算報告(案) 6.  第8期予算(案) 7.  人事 ※ 懇親会もあります。お時間のある方はどうぞ。 ※ 諸事情によりプログラムが変更になる場合があります。 ※ 当日はツイキャス中継もしますので、会場に来れない方は是非、視聴参加ください。 http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/ こちらでは、生中継の他、過去の動画を見ることも出来ます。 聞き逃した情報などもチェックしてみてください。 それでは、沢山のご参加をお待ちしています。   内部被ばくを考える市民研究会 新規会員を募集しています。 本会の目的は以下の5点です。 (1)放射線と内部被ばくについての正しい知識を市民に広めます。核兵器も原発もない世界を目指します。内部被ばくについての正しい知識を市民に広めるための講演者を育てます。 (2)子どもたちが保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学等で放射線被ばくしないように、学校給食の安全性の確保、園庭、校庭の除染、校外活動の行く先の安全性の確認などを実現させます。妊婦、乳幼児のいる家庭への安全な食材の供給体制作りを目指します。 (3)安全な食品を確保し、生産者の健康を守るために、放射能汚染地帯での生産活動の禁止と生活補償を求めます。 (4)内部被ばくの現状を知るため尿検査、土壌検査等を企画、実施し、調査研究を行います。 (5)安全な場所への移住、体内の放射性物質を排出するための保養についての情報提供を行います。 上記フォームがご利用になれない方は、メールに①~⑥をご記入の上お申し込みください。 ①お名前(ふりがな)  ②住所  ③電話番号 ④会員限定メーリングリストを希望される方はメールアドレス。 ⑤コメント(参加する動機など)をお書き下さい。 ⑥振込予定日  問い合わせ 内部被ばくを考える市民研究会事務局 E-mail  entry.naibu@gmail.com まで 会 費:年2000円(10月~3月入会2000円 4月~9月入会1000円) 振込先:内部被ばくを考える市民研究会   ゆうちょ銀行からの場合 ゆうちょ銀行 記号 10370 番号73181351   ゆうちょ銀行以外の金融機関からの場合 ゆうちょ銀行 店名 〇三八(読み方 ゼロサンハチ) 普)7318135 ※上記口座にてカンパ金も受け付けています。   【お問い合わせ】entry.naibu@gmail.com 内部被ばくを考える市民研究会事務局 内部被ばくを考える市民研究会

ヨウ素131の海洋拡散予測と観測値 放射性物質 拡散 「最初は南北沿岸」 仏が予測 仙台湾到達後、東西に 2011年4月5日 読売新聞夕刊1面

<解説>  このような、ヨウ素131の海洋汚染の実態のデータがあることを知りました。当然のことながら、大地もヨウ素131で汚染されました。福島のみならず、東北・関東一円で多発している、小児甲状腺がんは、ヨウ素131で汚染された牛乳を飲んだせいではなく、呼吸によってヨウ素131を取り込んだことが主な原因であると思われます。2011年原発事故当時の仙台湾で取れた魚のヨウ素131汚染はどれくらいだったのでしょうか。宮城県は、県は放射能でまったく汚染されなかったような態度を取り、原発事故当時の放射性降下物のデータ(定時降下物)を未だに公表していません。部分的には、原発があった福島県よりも高いヨウ素131で汚染された地域が宮城県にあったはずです。宮城県は県の放射能汚染の実態がどうだったのか、情報を公開するべきです。このままでは、がんや白血病が自己責任の問題になりかねません。 ■放射性物質 拡散 「最初は南北沿岸」 仏が予測 仙台湾到達後、東西に 2011年4月5日 読売新聞夕刊1面  福島第一原子力発電所から、高濃度の放射性物質を含む水が海に流れ出している問題で、放射性物質の拡散は方向によって大きな差があり、最初は沿岸を南北に広がり、東西にはすぐに広がらないことが、仏国立科学研究センターなどの計算でわかった。政府は、「放射性物質は拡散して薄まる」と強調しているが、海域ごとに注意深く監視していく必要がありそうだ。  仏グループは国際原子力機関(IAEA)の要請を受け、福島県沖の海底地形や潮流、水温、塩分濃度をもとに拡散を予測。公表された動画では、同原発から海に出た放射性物質が沿岸に沿って南北に広がった後、北側の仙台湾から東西に拡散していく様子がわかる。

加圧水型原発の致命的な欠陥は蒸気発生器。蒸気発生器の細管はギロチン破断するとメルトダウンにつながる。1991年2月9日関西電力美浜原発2号機、レベル3。

 多くの全国紙は、次々と再稼働していく原発のトラブルについて、まったく報道しません。または、報道する場合でも地域限定で、九州の原発のトラブルは西部本社版だけで。福井県の原発のことは大阪本社版だけで。というように。首都圏で新聞を購読している人々には、九州や四国、福井県で起きている原発のトラブル、放射能漏れの事故は伝えられていません。 <参考>『高浜原発4号機、2018年8月21日から再稼動工程。再稼動情報を伝えるのは地元メディアと赤旗だけ』 <参考>『玄海原発のトラブルと再稼動の情報をもっとも報道しているのは、佐賀新聞。佐賀新聞の購読を!』 <参考>『九州の原発の再稼動の状況がなぜ首都圏の人々に伝わらないか? 』  現在、再稼働されている原発はすべて、加圧水型原発ですが、加圧水型原発の致命的な弱点は、蒸気発生器です。この蒸気発生器がギロチン破断すると一次冷却水が一気に漏れ、メルトダウンにつながります。そのメルトダウン一歩手前までいったのは、関西電力、美浜原発2号機の蒸気発生器細管破断事故、1991年2月9日でした。この事故で、放射性希ガス(キセノン133など)約230億ベクレル(約0.6キュリー)、放射性ヨウ素約3.4億ベクレル(約0.01キュリー)が放出され、原発周辺を放射能汚染しました。  以下、中川保雄著『放射線被曝の歴史』(2011年,明石書店)から、加圧水型原発の弱点、蒸気発生器と美浜2号機事故を紹介します。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー <注>以下は、中川保雄氏が1991年に書いた原稿である。この時点で、日本の原発において重大事故が起きる危険性を指摘していた。それも福島第一原発のような沸騰水型原発だけでなく、加圧水型原発の危険性についても書いていた。この後20年、関西電力も東京電力も政府も何もしてこなかった結果が原発震災事故につながったのではないだろうか。そして、2番目のフクシマ原発事故が関西・北陸、九州、四国に訪れかねない事態になっている。 <注>図表は「抜本的解決のない蒸気発生器の腐食要因」(同書pp.241)以外は、川根が必要に応じて挿入したものである。 日本における被曝問題の最近の特徴 中川保雄著『放射線被曝の歴史』(2011年,明石書店) pp.237~249  原発を中心として、日本の放射線被曝問題の最近の特徴についてここで別に取り上げておこう。まず第一に、日本の原発において重大事故が発生する危険性が高まっていることを指摘しなければならない。アメリカ、ソ連についで原発重大事故を起こすのは日本の可能性が高い、という話はあちこちで聞かれる。そのような噂を現実のものとする危険性が現に高まっているのである。  関西電力の美浜原発2号炉は、チェルノブイリ事故から5年目の1991年2月9日、加圧水型炉(PWR)のアキレス腱と呼ばれる蒸気発生器の細管の1本が、まるでギロチンで切られたかのように横方向にスパッと切断され、放射能で汚染された。一次冷却水が少なくとも数十トン以上二次側に漏れた。さらに、日本の原発史上はじめてのことであるが、燃料棒の周りの一次冷却水の一部が沸騰しはじめるほど高温に達し、燃料棒が溶け出す危険が生じたために、稼働中に緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動する事態に発展した。簡潔に言えば、美浜2号炉は炉心溶融(メルトダウン:編集者注)の一歩手前までいった大事故で、チェルノブイリの悲劇が日本において再現される危険性が現実に起きたことを示したのである。さらに二次側の蒸気逃し弁などから大気中に放出された放射能により、関西電力などの初期の発表とは異なり、周辺地を汚染した。この事故はまさに日本の原発史上最も重大かつ深刻な事故であった。  蒸気発生器細管は、一方では放射能の混じった一次冷却水を閉じ込めるとともに、他方では燃料が燃えて発生した熱を二次冷却水に伝え、発電に必要な蒸気を生み出すという役目を負っている。前者の目的のためには、細管はできるだけ厚くならなければならないが、後者の目的のためには、細管はできるだけ薄いことが望ましい。このように細管は相反する性格を負わされているが、実際には発電を経済的・効率的に行うために、可能な限り薄くされ、直径およそ2cm、全長20mの細管の肉厚はわずか1.2mmという薄さである。標準型の100万キロワット級の原発では、この薄い細管がおおそ1万本納められており、放射能を閉じこめる壁となる原子炉の容器が管の総面積のおよそ95%を占めるのである。放射能を閉じこめるこの壁の総面積は、たとえるなら甲子園球場のグランドほどの面積ではあるが、その大部分が厚さわずか1.27mmのこの細管によって占められている。しかも、一次冷却水はおよそ150気圧あり、二次側の冷却水との圧力の差、およそ100気圧がこの薄い細管の壁にかかるのである。また細管は、一次冷却水に含まれる放射能、あるいは二次冷却水に含まれるナトリウムなど、腐食を起こす種々の物質にさらされており、そのうえこの薄く長い細管の周りを急激な勢いで流れる水や、発生する蒸気で揺さぶられるという過酷な条件の下におかれている。  このため、蒸気発生細管では、肉厚が薄くなったり、人の歯がやせ細るようなディンティングという現象や、穴のあくピッティング、さらには合金の粒子の境界に沿って腐食が進む、粒界腐食割れを含む、応力腐食割れと呼ばれる損傷が、絶えることなく発生し続けてきた。日本の加圧水型炉の事故の最大原因は、菅、弁、そして蒸気発生器であるが、蒸気発生器の事故が全体の3分の1以上を占め、加圧水型炉の事故の最大要因となっているのである。これに対し、電力会社や日本の政府は、(1)二次冷却水の化学処理法を改善したこと、(2)渦電流探傷検査など、損傷細管の検査技術を改良したこと、(3)レーザー溶接を使ったスリーブ補修という継ぎ当て技術を開発したこと、などを根拠に細管の損傷問題は解決されたと主張してきた。そして、このように安全管理の徹底した日本では細管破断はありえないと強弁してきた。  しかし、現実には関西電力の大飯1号炉、高浜2号炉にみられるように、定期検査が行われるたびに、多数の細管が損傷していることが発見され続けてきた。そして電力会社は、損傷した細管に次々と栓を施して、一次冷却水が流れないようにして原子炉の運転を続けてきた。ところが、栓をした細管が増えると冷却水の流れが妨げられるため、冷却水事故が起きた場合には燃料棒を冷やしにくくなり、炉心溶融事故へと発展する危険性が高くなる。通産省と原子力安全委員会は、建て前としては、個々の原発について施栓する率を定めてきた。「安全解析施栓率」と呼ばれる認可施栓率は、当初は3%程度であった。しかし、損傷細管が次々増加すると、通産省と原子力安全委員会は電力会社の申請に応じて次々に施栓率を引き上げ、高浜2号炉に至っては1990年に施栓率を25%に許可してしまった。この場合、「50%施栓率でも安全」と主張したうえで、安全解析を関電に請け負わせるというでたらめな安全審査でもって、通産省はその引き上げを許可したのである。  関西電力など電力会社は、損傷細管に施栓するという方策だけでは対応しきれず、すでに施していた栓を引き抜き、損傷個所にレーザースリーブ補修を行い、施栓率を結果的に引き下げるというような方法も採用しながら急増する細管の損傷に対処してきた。しかし、細管の損傷は、近年急激に増加しており、高浜2号炉の場合では1990年には総数1万164本の細管の4686本、実に46%が損傷しているひどさである。ところで、関電の定義によれば、肉厚1.27mmの40%以上の傷を負っている場合に損傷と言うことにされている。言い換えれば、39%以下の厚みの傷は損傷細管とは考えられていないのである。しかし、現実にはそのような40%未満の厚さの傷を負った細管も多数存在すると考えなければならない。常識的な判断に従うならば、高浜2号炉などでは、蒸気発生器細管のほとんどが損傷を受けている状態と言えるのである。  さて、今回の美浜2号炉の事故の重大性はどこにあるのであろうか。まず第一に、炉心溶融事故直前、あるいは、チェルノブイリ原発事故一歩手前まで突き進んだ事故であったことである。第二に、電力会社や政府がこぞって「絶対に起きない」と強く主張してきた蒸気発生器細管破断が、原発反対派の側から繰り返し指摘されてきたとおりにギロチン破断を免れなかったということである。加圧水型炉の蒸気発生器細管の事故は絶対に起きないという神話の下に運転が強行され続けてきたことである。第三に、原子炉の細管破断は、細管が日々さらされている振動等により金属疲労が起きたものと考えられるが、そのことも含め、細管を損傷さらには破断に至らせる原因は他にもいくつか存在する。そして、そのいずれもに抜本的な解決法がないことが明らかになったことである。第四に、事故が起きてみるとたいてい明らかになることであるが、設計ミスや施工ミス、加えて操作ミスが重なっている起きるというのが重大事故の共通現象であり、あのスリーマイル島事故やチェルノブイリ事故で見られたのと同様なミスが、日本の原発でも日常茶飯事に起きているという危険が明らかになったことである。 図 抜本的解決策のない蒸気発生器の腐食要因 NEI1990年1月号より中川保雄氏作成 『放射線被曝の歴史』 pp241  以上のような問題は、事故が起きてから次々に明らかにされつつあるがその過程で関電が前言を覆すという事態が何度も見られる。まともな議論をする大前提として、電力会社や政府が、今回の事故はもちろん、原発に関する情報を広く国民に公開する必要性がますます明らかになってきた。  チェルノブイリが起きてからでは遅すぎる。今回の事故の重要性にかんがみるならば、それは美浜2号、大飯1号など、いわゆる第一世代の加圧水型炉と呼ばれる初期の加圧水炉に限ることなく、すべての加圧水炉を即刻止め、細管の破断や損傷を徹底的に検証する必要がある。蒸気発生器細管の損傷は、何も9基の第一世代原子炉に限られたことではない。たとえば、1985年に運転を開始した高浜3号炉では、1989年の定期検査時に細管23本に損傷が進んでいることが発見された。さらに4号炉においても、1990年3月の定期検査において21本の細管に損傷が確認されたのである。これらの例も含め、近年起きている細管の損傷の原因は、粒界腐食割れ、応力腐食割れである。これらの腐食割れに対する原因は、今日においてもなお完全には解明されていない。そもそも原因が不明のこのような細管の破壊現象に対して有効に、ましてや抜本的に対処する方法など存在しないのである。それ故、すべての加圧水炉は、蒸気発生器細管の破断の危険性を常にかかえている。二本以上の細管が破断するというような事態になれば、かりに緊急炉心冷却装置(ECCS)が正常に働いたとしても、炉心の空焚きを防ぐことはできない。そうなれば、日本でチェルノブイリの惨状を再び繰り返すことを免れないのである。  若狭湾に林立する10基の加圧水型炉で、もしそのようなことが起こるならば、人口密度がきわめて高い日本においては、チェルノブイリをはるかに上回る被害は避けがたい。若狭湾一帯では放射線被曝による急性死も避けることはできないであろう。また、放射能雲が京阪神地方に流れるならば、およそ1000万~2000万の人びとが避難しなければならない事態へと追い込まれる。放射能による被曝はもちろん長期におよびであろう。京阪神の水甕、琵琶湖も汚染される。京阪神地方のガン・白血病だけを取り上げてみても、数十万人に達する危険性があることを誰も否定することができないであろう。しかも、今回の美浜2号炉の事故においてそのような重大な事故につながる兆候がいくつも見られたのである。  関西電力や政府は、美浜2号炉をはじめ、高浜2号炉、大飯1号炉等で蒸気発生器細管そのものの取り換えを進めることにより、抜本的な解決につながると主張しているが、しかし蒸気発生器細管の取り換えが新たな事故の発生原因になる可能性もある。新しい蒸気発生器細管だからと言って、抜本的に細管の損傷を防ぐことにはならない。加えて、古い原子炉やパイプに、新しい蒸気発生器細管やパイプを無理矢理に接続すると、新たな事故原因を作り出さないという保証はどこにもないのである。  改めて指摘するまでもなく、原発事故の危険性は、何も加圧水炉に限られたことではない。1989年1月6日に東京電力の沸騰水型原子炉で起きた再循環ポンプ事故も深刻な事故であった※1。沸騰水型とで再循環ポンプが停止するという事態が発生すると、チェルノブイリ原発で見られたような、核暴走事故に発展する危険性に見舞われる。再循環ポンプは、原子炉を流れる水の量を調節することにより原子炉の出力を調整するいわば心臓部とも言うべき、最重要機器の一つである。このポンプが停止したり、あるいは故障し、破壊された部品などによって冷却水が流れなくなったり、流れが悪くなると、炉心の冷却が悪くなって炉の温度が急上昇し、水蒸気の泡も急増する。そのような状態でポンプが再起動されるなどして冷却水の流量が増えると、蒸気の泡がつぶれ、水の密度が増えることによって、原子炉内を走る中性子の減速能力が高まり、その結果出力が急上昇する。あるいは落雷などの原因によって、発電機を切り離さねばならなくなったりした場合は、原子炉は止めずにタービンのみを止めるという操作が行われる。急に閉じるという操作が行われるが、その際に、蒸気をタービンに送る菅の弁が閉じられたにもかかわらず、その蒸気を別の菅に逃す弁が開かない、すなわち、蒸気の逃げ場がなくなるなど、原子炉の圧力が急に高まるということがしばしば起こる。このような場合も原子炉の圧力が急に高まり、燃料棒付近の蒸気の泡がつぶれ、核反応が急速に進み、出力が通常の10倍くらいに急上昇する。そして高温に達した燃料の一部で、溶融、破裂などの事態が起こり、蒸気と、溶けた燃料の混合物が一気に吹き出して、水を一気に沸騰させる。このようなことが起こると、原子炉の急激な圧力上昇によって核反応がさらに急激に進み、通常の出力の100倍にも増加する、という危険が沸騰水型炉には存在する。これは負の反応度として恐れられている。沸騰水型炉が核暴走へと至る道の一つである。チェルノブイリ事故の最大の教訓は、もはや出力の急上昇による核暴走事故など歴史的に過去のものであり、克服され、起こりえない、とその危険性が軽視されていたことが誤りであったことが実証されたことであったとも言える。日本の原発ではチェルノブイリのような核暴走事故は起こりえない、という日本の原発推進派の主張は、チェルノブイリ事故からなんらの教訓も学んでいない、ということを示している。 ※1 「福島第2原発3号機 炉心部から金属片」23個回収、まだ残る 破損羽根車の一部? 1989年3月1日 朝日新聞 東京電力は二十八日、福島県富岡町の福島第二原子力発電所3号機(軽水炉沸騰水型、出力百十万キロワット)で起きた再循環ポンプ水中軸受けの脱落事故で、原子炉圧力容器内に金属片が入っているのを見つけ、うち二十三個を回収した、と発表した。金属片は同容器内の中枢部である燃料棒集合体下部でも見つかっており、このように炉心に異物が入った事故はわが国では初めて。燃料棒の被覆管が異物で傷つけられ破れると、放射能漏れなど重大事故につながるが、東電は「穴はなく、放射能漏れはない」としている。しかし、予想外の出来事に、福島県など地元は大きなショックを受けている。  福島第二原発3号炉の事故においては、再循環ポンプが異常な振動を示したが、それはポンプを構成している部品に大破壊事故が起きていた結果であった。このため、大量の金属片が削られたり破損したりして、原子炉内に送り込まれた。再循環ポンプのこのような異常な振動は、ポンプにつながる配管とのつなぎ目を破壊する恐れもあった。もしも、そのようなつなぎ目でパイプが破断し、冷却水の大量喪失という事態が起これば、炉心溶融事故に至る危険性も否定できなかったのである。沸騰水型炉においても、パイプ、弁、そして再循環ポンプが事故の三大要因を占めている。福島原発事故(1989年当時:編集者注)がチェルノブイリの再現に至らなかったのも、きわめて幸運なことと言わねばならない。  この福島原発事故(1989年当時)の後、東京電力と政府の示した姿勢もまた原発重大事故の発生を危惧させるに十分なものであった。東京電力は最初、原子炉内に送り込まれた金属片をすべて回収するまで原発の運転を再開しない、と約束した。しかし、実際には金属片、粉末を完全に回収することなど不可能なことであった。安全を優先するためには、この炉は運転を停止する以外にはなかった。しかし東京電力は、1990年の秋、炉に流し込まれた金属片を残したまま運転の再開を強行するという挙に出たのである。政府はもちろんそのことを許可したのであるが、そのことと合わせて政府が行った再循環ポンプ事故の原因究明もまた、でたらめなものであった。反原発運動がアメリカの情報公開法を利用して入手した資料にもとづくと、再循環ポンプが激しい振動を起こして破壊された根本的な原因は、どうやら共振と呼ばれる現象にあった。アメリカからの技術導入、すなわち、アメリカの再循環ポンプをそっくりそのままコピーした結果が共振を引き起こした、というのがことの真相であった。しかし、政府の委員会はポンプ破損の原因は溶接にあったとし、反原発運動が指摘した共振説には頬被りを決め込んでしまったのである。それと言うのも、この委員会の責任者はかつてこの再循環ポンプの安全性を評価する委員会の重要メンバーで、きわめて安全という評価を下していたからである。今度は、事故原因の究明においてその責任をとる道を選ぶはずはなかったのである。  このように。事故原因の解明すら行われずに問題をかかえた原発の運転が強硬に再開されることになってしまったが、この一事を取り上げてみても、重大事故が起こらないとは言い難い環境の下で、日本の原発の運転は続けられているのである。  さきに述べた加圧型原子炉、また、この福島をはじめとする沸騰水型炉のいずれの原発を取り上げてみても、日本は原発から100km以内に、人口密集地帯が存在している。逆に都市から見れば、日本のいかなる大都市と言えども、100km以内に、いつ重大事故を起こすかもしれない原発をかかえているのである。都市の住民は放射能汚染の犠牲を原発立地住民に押しつけて恩恵だけを自らのものとしてきた、と指摘される。全くその通りである。しかし、スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故が起きた今日、明白になったことは、その都市住民と言えども、原発の放射能汚染から免れようもない時代を生きていると言うことである。 図 セシウム137、セシウム134、およびヨウ素131(気体状および粒子状)の5倍、の合計沈着量 T. Christoudias and J. Lelieveld 2013。 <注> 2011年3月11日の原発震災で首都、東京も放射線管理区域になった。この放射能汚染マップはEUに報告されたものである。  放射能汚染という問題についてさらに指摘しなければならないのは、今回起きた美浜原発2号炉の場合も、環境への放射能流出、放射能汚染が全く軽視されているという問題である。関西電力は事故直後、例によって環境中に放射能は漏れなかったと発表した。放射能が漏れたということが否定し難くなった後、放射能は漏れたが環境への影響はなかったと言い換えた。しかし、その関電の評価によっても、大気中におよそ50億ベクレル、海水中におよそ700万ベクレルの放射能が放出されたのである。それにもかかわらず、関電も福井県も環境への影響はない、安全であると宣伝した。そして関電は、事故が起きているさなかに、美浜原発の見学者457人を、漏れた放射能にさらしたままにしたのである。関電が発表した放射能値の信頼性はほとんどない。そのデータの根拠が全く明らかにされていないからである。明白なことは、この例にも示されているように、環境への放射能の放出、それによる住民の放射能被曝について関電も自治体もほとんど問題にしていない、ということである。

関西電力 高浜原発3号機が2018年11月7日再稼働工程を始める 欠陥原発を稼働していいのか?

 関西電力が2018年11月7日高浜原発3号機の再稼働工程を始めました。新聞各紙は「高浜3号機再稼働」と書きますが、また、定期点検中であり、総合負荷性能検査がこの後あります。この間に放射能の蒸気漏れなどの事故を起こせば、再稼働工程は中止、再稼働は延期となります。事実、2018年5月、九州電力は玄海原発4号機について一次冷却水が漏れるトラブルを起こしたために、再稼働を1か月延期しています。 <参考>『玄海原発4号機、一時冷却水漏れトラブル。九電、「水温が上昇したため」とし原因不明のまま機器交換で2018年6月16日から再稼動工程を始める。』  ですから、「関西電力が高浜3号機の再稼働工程を始めた」と書くのが正しいのであって、新聞やテレビが「高浜3号機が再稼働」と書くのは間違いです。 図 高浜発電所3号機 第23回定期検査の作業工程 関西電力 2018年11月6日 <注>2018年11月7日始まったのが、この原子炉起動試験。営業運転するには、この後、総合負荷性能検査に合格する必要がある。  今回、高浜3号機の再稼働工程を始める、と関西電力が公表したのは、なんと前日の2018年11月6日でした。原発再稼働に反対する世論を警戒して、抜き打ち的に発表しています。再稼働を知らなかった方も多いのでないでしょうか。改めて、高浜原発3号機のトラブルと被ばく事故を振り返ります。多くの全国紙は報道していません。  2018年9月10日、高浜3号機の定期点検中で、作業員が計画線量の倍超被ばく事故を起こしました。2018年9月12日、関西電力は、高浜原発3号機の蒸気発生器の細管1本と支持板の間に、長さ1センチ程度の異物を確認したことを公表しました。その後、2018年9月20日にこの長さ1センチ程度の異物は「2次系配管に含まれる酸化鉄の微粒子の塊と確認した。細管の外側を減肉させたとみられる金属片は見つからなかった。」と公表しました※1。これ以降、関西電力は再稼働工程を始める前日の2018年11月6日まで、定期点検でどのような機器のトラブルが見つかったのか、機器のどこを修理し、機器の何を交換したのか、一切公表していませんでした。また、この2次系配管に含まれる酸化鉄の微粒子の塊の写真も、元素分析の結果も公表していません。2018年9月12日の関西電力の発表では「蒸気発生器細管1本では、内側に長さ約4・8ミリのひび割れが見つかった。高温(約320度)の1次冷却水が入る部分。細管の厚さは約1・3ミリあるが、貫通はしていない。応力腐食割れとみられる。この細管も施栓する予定。」と発表※2。蒸気発生器の細管は全部で計1万146本にものぼりますが、この長さ1cm程度の異物がどこからやってきたのでしょうか。 ※1 「蒸気発生器内異物、酸化鉄微粒子の塊 高浜3号、関電が確認」 福井新聞 2018年9月21日 ※2   「蒸気発生器内に異物 高浜3号 細管1本が減肉」 福井新聞 2018年9月13日  2018年9月20日の関西電力の公表では、この酸化鉄の微粒子(スラッジと関電は呼んでいる)の出所を、以下のように説明しています。 「弁やストレーナの分解点検の際に作業員の⾐服等に異物が付着していた場合、それが配管内に混⼊する可能性があることを確認しました。また、その弁等が配管の⽴ち上がり部に取り付けられている場合、作業前後の異物確認時に目視による確認が困難である範囲があることを確認しました。」 そして、その対策とは 「弁やストレーナの分解点検時に使⽤する機材や内部に⽴ち⼊る作業員の⾐服等に異物の付着がないことを確認することについて、作業⼿順書に追記して、異物混⼊防⽌の更なる徹底を図ることとしました。」  つまり、定期点検のときには、作業員は機材をよく吹き、衣服をよく叩いてから、作業することにした、というのです。これが対策と言えるのでしょうか?  まず、疑問なのは、このスラッジ(酸化鉄の微粒子)が果たして外部からの異物であるのか、ということです。写真も公表されていなければ、元素分析の結果も公表されていません。そもそも、高温高圧で配管を流れる水でさらされているなかで、なぜ、鉄の酸化物ができたのか?ということです。配管がどこかひび割れているのではないでしょうか。異物ではなく、配管そのものの損傷である可能性が否定できません。  関西電力の説明は、ちょうど、高浜原発4号機の原子炉のふたの部分に取り付けてあった、温度計を出し入れする穴から放射能漏れ事故を起こしたときの説明とそっくりです。何でも、点検作業中の作業員の服や機材や、養生テープにくっついていたゴミのせいにするのでしょうか? <参考>『ずさんな原発管理。原子炉容器上蓋の温度計を出し入れする穴は養生テープでふさいでいた。養生テープについたゴミが放射能漏れを引き起こす恐れ。それでも高浜4号機は2018年8月31日に再稼動工程を開始』  実は、以下のように蒸気発生器の細管は1万146本もあったのですが、次々に配管が減肉(何物かによって削れて厚さが薄くなること)したり、応力腐食割れしたために、使えなくなり、蓋をして止めている状態です。この蓋をして使えないようにすることを「施栓」と言いますが、かつて、通産省と原子力安全委員会は「安全解析施栓率」を蒸気発生器の細管の3%までと定めていました。しかし、損傷細管が次々と増加すると、通産省と原子力安全委員会は電力会社の申請に基づいて次々に施栓率を引き上げていきました。高浜原発2号機にいたっては、施栓率を25%にまで引き上げることを許可してしまいました。この場合、「50%施栓率でも安全」と主張した上で、安全解析を関西電力に請け負わせるというでたらめな安全審査を行い、通産省は施栓率の引き上げを許可したのでした※3。 ※3 中川保雄『放射線被曝の歴史』明石書店 pp.241~242   今回の定期検査の時点で、高浜原発3号機の蒸気発生器の細管の「施栓率」は3%を超えています。安全とは言えません。欠陥原発は大事故を起こす前に運転を中止すべきです。すでに、この高浜原発3号機の定期点検で、労働者の被ばく事故が起きています。1日3時間10分程度の作業で、当初計画していた0.9ミリシーベルトをはるかに超える、1.81ミリシーベルトも被ばくしました。2018年9月10日午後発生したにもかかわらず、福井県に報告したのは9月12日でした。この作業員は一次系の弁の分解工事を行っていました。つまり、一次系の水が想定以上に放射能に汚染されていた、ということではないでしょうか?  朝日新聞、毎日新聞、読売新聞などの全国紙は原発のトラブルの情報をほとんど書きません。地元新聞を読む以外には、原発の放射能漏れ事故やトラブルの詳細についてはわからない状況です。欠陥原発、老朽原発がトラブルの原因もわからず、場当たり的な対応で、次々と再稼働している状況に対して、新聞各社はその責任を果たすべきであると考えます。  福井新聞の記事を紹介します。もはや、関西・北陸の原発の事故・トラブル・再稼働については、福井新聞を。九州の原発の事故・トラブル・再稼働については、佐賀新聞を、読むしかないようにも思います。ぜひ、みなさん、真実を伝える新聞を購読しましょう。 ■高浜3号の定検作業員 計画線量 2倍超被ばく 2018年9月13日 午前5時00分 福井新聞  関西電力は12日、定期検査中の高浜原発3号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)の原子炉格納容器内で作業をしていた協力会社の作業員が、1日分の計画線量の2倍を超える外部被ばくを受けたと発表した。法令で定める年間限度量は超えておらず、内部被ばくや皮膚の汚染はなかったとしている。  関電によると、作業員は東亜バルブエンジニアリング(兵庫県)の下請け会社の50代男性。10日午後、1次系の弁の分解点検を約3時間10分行った。管理区域から退出する際に線量計を確認したところ、計画値の0・9ミリシーベルトを大きく超える1・81ミリシーベルトの被ばくが分かった。  作業員の被ばく線量低減のため、一日1ミリシーベルトを超える作業に従事する際は、事前に労働基準監督署長への届け出が必要。関電は同日中に敦賀労基署へ線量超過を報告した。  今回の作業では線量計の警報音が聞こえるようイヤホンを付ける必要があった。しかし作業員は装着しなかったため、警報音に気づかなかった。また、作業時間は2日前に同じ場所で行った別の作業員の被ばく実績値を元に、東亜バルブの放射線管理専任者が決めたが、線源と作業員の距離を十分考慮しなかったことが、計画外の被ばくを生んだとしている。関電は今回の被ばくについて、法令報告や安全協定上の異常報告に該当しないことから、別件と併せてこの日発表したとしている。(坂下享)  <参考> 故中川保雄氏が、加圧水型原子炉の蒸気発生器細管が致命的な弱点であり、危険であるから原発を止めるべきだと1991年に訴えていた。中川保雄『放射線被曝の絵歴史』(2011年増補版,明石書店)から重要な指摘の部分を抜粋しました。長文ですが、ぜひ、お読み下さい。そして、近くの人へ伝えて下さい。 『加圧水型原発の致命的な欠陥は蒸気発生器。蒸気発生器の細管はギロチン破断するとメルトダウンにつながる。1991年2月9日関西電力美浜原発2号機、レベル3。』    

川根眞也氏お話会『福島産を食べないのは本当に差別ですか?〜自然放射能と人工放射能〜』 at 愛知県日進市 2018年11月23日(祝)14時

[ 2018年11月23日; 2:00 PM to 8:00 PM. ] 川根眞也氏 お話会 『福島産を食べないのは本当に差別ですか?〜自然放射能と人工放射能〜』 同時開催 被害の現実を知ることが第一の復興被害者に寄り添うことが第一の支援真の被害を知らせることが第一の救済 ふくしまと全国を集う日進交流会 ①福島原発事故の損害賠償訴訟裁判報告会 ②事故避難者アピールタイム ③事故被害者との交流会 [日時] 2018年11月23日(金・祝) [会場] 愛知県 日進市民会館小ホール日進市くるりんばす循環線「市民会館」バス停 下車すぐ〒470-0115 愛知県日進市折戸町笠寺山62番地3開場13:30 講演14:00〜16:00 報告と交流会16:30〜20:00(休憩あり) [参加費] 一般:500円 会員・避難者:300円 学生:無料 主催/脱被ばく実現ネット日進(代表・吉田弥生)協力/あゆみR.P.NET、いきいき塾NPO絆、ふくしまと全国を集う会 お問い合わせ、参加申し込みdatuhibaku_nisshin@yahoo.co.jpTEL 090-5638-9363(担当・吉田)  チェルノブイリ事故後、ウクライナでは1.1ベクレル/kgの食品で痛みが出ていて、10ベクレル/kgの食品を食べている地域では子どもは全員病気です。 低線量被ばくの本当の話をしながら、学者・文化人のうそを解説します。 内部被ばくを考える市民研究会(代表・川根 眞也)…内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会です。http://www.radiationexposuresociety.com 講師紹介 川根 眞也「内部被ばくを考える市民研究会」代表元・さいたま市立中学校教員(現在は退職)2018年4月より岐阜県に移住。2011年3月14日より、身の回りの放射線量率を計測。3月15日の異常な空間線量率から、関東での汚染を確認。同日から「放射線測定メール」を配信。同年8月に「内部被ばくを考える市民研究会」を設立。2013年ベラルーシ訪問をきっかえに、小児甲状腺がんの診断と治療の実際を学ぶ。以来、低線量被ばくの危険性を訴え、内部被ばくを避ける講演会活動を行っている。 当日の進行14:00〜16:00    お話会『福島産を食べないのは本当に差別ですか?』16:30〜17:00    福島原発事故の損害賠償訴訟裁判報告会17:00〜17:50    福島原発事故の避難者アピールタイム18:00〜20:00    福島原発事故被害者との交流会(別途食事付き/ 準備中 代金未定 円)&質疑応答            ※食事をご希望の方は、参加費(チケット)申し込み時に食券(代金 未定)もご購入ください。      いなり寿司(1パック●入り)300円 豚汁200円 コーヒー100円 食事例の写真食事の例(メニューは変更になる場合があります) 脱被ばく実現ネット日進(代表・吉田弥生) TEL 090-5638-9363(担当・吉田) datuhibaku_nisshin@yahoo.co.jp    

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