内部被ばくと健康被害
松井大阪市長、福島原発処理水 大阪湾放出に応じる構え 2019年9月17日 産経新聞
2019年09月29日内部被ばくと健康被害 資料
[解説] 大阪維新の会、松井一郎市長が、トリチウムを含む福島第一原発の汚染水について、「自然界レベルの基準を下回っているのであれば海洋放出すべきだ」と大阪湾での放出を容認する発言をしました。2019年9月17日。 まず、「自然界レベルの基準」など存在しません。松井一郎氏は原子力規制委員会にも問い合わせて、「自然界レベルの基準」などないことをただちに確認すべきです。また「科学が風評に負けてはだめだ」と述べ、「環境被害が生じないという国の確認を条件に」と言いますが、日本で語られる放射能問題での科学の多くはアメリカの核兵器の被害を隠すために、アメリカ主導で政治的に作られたものです。特に国連科学委員会(UNSCEAR)がその端的な象徴です。1945年8月6日に広島、8月9日に長崎に原爆を投下したアメリカは、核戦争を実戦的に闘い抜くために、米軍の調査団を広島、長崎に派遣しました、米海軍シールズ・ウォレン大佐が、人体被害効果(影響)調査の班長を務めましたが、その後の米軍の調査団の報告は徹底的に、広島、長崎の被爆者の遺伝的影響はなかった、とした報告書を出しました。一方で、広島、長崎で生まれた赤ちゃんの死体のホルマリン漬けを1200人分もアメリカに持ってかえって、軍に保管していることが明らかになっています。まさに、被爆者の遺伝的影響の資料として。 1956年に国連科学委員会(UNSCEAR)が作られますが、これはアメリカ主導で作られたものです。「科学」の名前を冠していながら、その委員は、科学界の各分野から選ばれたのではなく、国家の代表でした。また、アメリカ代表団の代表がこのシールズ・ウォレン海軍大佐でした。その頃、アメリカはビキニ環礁からアメリカ国内ネバダ州にも移動して核実験を行っており、国民の放射能被ばくに対する懸念に答える必要がありました。「これくらいの放射線では健康被害はでない」という報告をまとめるために、「科学」の冠した国連の委員会、国連科学委員会(UNSCEAR)が作られたのです。アメリカ代表団には、遺伝学者は排除されました。 松井一郎市長が語る、科学とは国連科学委員会(UNSCEAR)の科学です。私たちを放射能による健康被害から守る科学ではありません。 <参考> 『広島・長崎被爆者の赤ちゃん資料 1200人分 アメリカ研究利用 20120422』 内部被ばくを考える市民研究会資料 2012年4月23日 松井大阪市長、福島原発処理水 大阪湾放出に応じる構え 2019年9月17日 産経新聞 福島原発処理水の大阪湾への放出に応じる構えの大阪市の松井市長 日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は17日、東京電力福島第1原子力発電所で増え続ける有害放射性物質除去後の処理水に関し、「科学が風評に負けてはだめだ」と述べ、環境被害が生じないという国の確認を条件に、大阪湾での海洋放出に応じる考えを示した。大阪府と市は、東日本大震災の復興支援として、岩手県のがれき処理にも協力している。 松井氏は大阪市内で記者団に「自然界レベルの基準を下回っているのであれば海洋放出すべきだ。政府、環境相が丁寧に説明し、決断すべきだ」と述べた。 海洋放出をめぐっては、原田義昭前環境相が「海洋放出しかない」と述べた直後、小泉進次郎環境相が11日の就任会見で“所管外”と前置きした上で「努力してきた方々の苦労をさらに大きくしてしまうことがあったとしたならば、大変申し訳ない」と語っている。 維新の橋下徹元代表はその後、ツイッターで海洋放出について「大阪湾だと兵庫や和歌山からクレームが来るというなら、(大阪の)道頓堀や中之島へ」と発信。小泉氏には「これまでのようにポエムを語るだけでは大臣の仕事は務まらない。吉村洋文大阪府知事と小泉氏のタッグで解決策を捻り出して欲しい」と注文をつけた。 吉村氏もツイッターに「誰かがやらないとこの問題は解決しない。国の小泉氏が腹をくくれば、腹をくくる地方の政治家もでてくるだろう」と記し、国と地方が連携し、被災地の負担を軽減していく必要性を訴えた。
フランスでは異常気象対策で、海水温度を上げる原発を一時的に止めた 2019年7月
2019年09月26日内部被ばくと健康被害 資料
[解説] フランスは、異常気象対策として、海水温度を上げる原発を一時的に止めました。「原発が海水温を上げることはない」という学者がいるようですが、バカも休み休み言え、と思います。今年2019年6月、7月の北アフリカからヨーロッパの熱波は深刻でした。英国、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダの5ヵ国で観測史上最高気温を観測。フランスでは最高気温が45度を超え、死者が続出しました。 ヨーロッパ各地のこれからの予想気温を示した地図。スペイン北部の一部では、28日にも45度に達する可能性がある(Highest forecast temperature) 出典:緊急対応指令センター(ERCC)/世界気象機関(WMO) この中、フランス政府は、原発が暖められた冷却水を川に放出し、更に川の水温を上げるため、2019年7月に複数の原発を一時的に止めました。 日本がなぜ九州、四国、福井の原発を止めないのか、理解できません。原発の出す温廃水は台風のエネルギーに加わります。台風被害を少しでも押さえるためには、原発を止めるべきです。九州電力は、「電力が供給過剰になるから」と太陽光発電を発電制限するのではなく、玄海原発3号機、4号機(佐賀県)、川内原発1号機、2号機(鹿児島県)をすべて止めるべきだったのではないでしょうか。 台風被害を拡大する要因を九州電力も作ってしまった、と言わざるを得ません。 フランスが異常気象対策で原発を止めたことは、日本では報道されることは皆無に近いです。その中でも、6行だけ書いた毎日新聞の記事を紹介します。 検証 異常気象、温暖化で加速 専門家「早期対策を」 毎日新聞 2019年8月14日 東京朝刊 世界各地で異常気象が観測され、人々や環境への影響が深刻化している。欧州では5カ国で観測史上最高気温を更新し、経済活動にも支障を来した。猛暑や豪雨は、人間活動により排出される温室効果ガスを原因とした地球温暖化との関連が指摘される。世界的に健康への影響や気象災害が懸念され、温暖化対策を巡る国際的な議論を動かす可能性もある。 「これらの異常な現象は氷山の一角だ。そして、その氷山もまた急速に解けている」。今月1日、米ニューヨークの国連本部で記者会見した国連のグテレス事務総長は、世界各地の異常気象を受けて危機感をあらわにした。 欧州連合(EU)の地球観測プログラムは5日、今年7月を観測史上最も暑い月と発表した。これまで最高の2016年7月は、南米沖の太平洋赤道域で海面水温が高くなるエルニーニョ現象が記録的に強かったのが影響していた。今年はそうした要因はない。 西欧は7月下旬、北アフリカからの熱波に見舞われ、広い範囲で最高気温が40度を超えて、英国、ドイツ、ベルギーなど5カ国で観測史上最高を更新した。各地の鉄道会社は暑さに伴う送電線や線路の損傷、変形などへの懸念から、減速運行したり運休したりした。フランスの原発では、冷却水を放出する川の水温がさらに上がることによる生態系への影響が心配され、複数の原子炉の運転を一時的に止めた。 欧州は6月にも熱波に襲われ、フランス南部で国内観測史上最高の46度を記録した。 専門機関は温暖化との関連を指摘する。欧米の大学や気象機関が極端な気象の要因を分析する「ワールド・ウエザー・アトリビューション」は、今回のような熱波が欧州の一部を襲う可能性は、人為的な温暖化がないと仮定した場合に比べ、10~100倍高いとした。 暖気は北欧や北極圏にも記録的な高温をもたらした。デンマーク自治領のグリーンランドは氷床が急速な勢いで解けている。デンマークの研究機関などの試算では7月だけで1970億トンの氷が解けて大西洋に流れ出た。7月30日~8月3日の5日間には氷床の表面の約9割(550億トン)が解け、1981~2010年の同時期平均の1・4倍に相当した。 北極圏や高緯度地帯では6月初めから大規模な森林火災が続く。気温が高くなり森林が乾燥しているためだ。特にロシア・シベリア、米アラスカの被害が顕著で、既に数百万ヘクタールを焼き、すすや灰が北極圏の氷の融解を加速させる懸念もある。 EUの地球観測プログラムによると、北極圏の火災規模は前例のないレベルで7月下旬までに二酸化炭素(CO2)1億トンを排出。ベルギーの年間排出量とほぼ同じで、温暖化を加速させる悪循環を招きかねない。 インドも首都ニューデリーで6月の観測史上最高の48度を記録するなど記録的猛暑となり、110人以上が死亡。一方、南アジア北部~北東部は7月に大雨が降り、バングラデシュなどで計130人が死亡した。 世界気象機関(WMO)のターラス事務局長は「現在起きていることはSFではない。気候変動の現実だ。早急な対策がなければ悪化する」と警告する。 今月下旬に主要7カ国首脳会議(G7サミット)、9月23日には国連気候サミットが開催される。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が来年始まるのを控え、各地の異常気象が対策の早期実施を促しそうだ。【ブリュッセル八田浩輔】 ジェット気流蛇行、重なり 欧州熱波 東京大先端科学技術研究センターの中村尚教授(気候力学)によると、7月に欧州を見舞った熱波は、亜熱帯の上空を西から東に向かって吹くジェット気流の大蛇行に地球温暖化の影響が重なったのが原因と考えられる。 今回、ジェット気流は欧州上空で、英国北部辺りまで極端に北に蛇行したため、非常に背の高い形となった高気圧が北に張り出して居座り、熱波をもたらしたとみられる。蛇行は自然現象として起こるが、ここまで大きいものは珍しいという。 さらに温暖化で世界の7月の平均気温は100年に0・7度のペースで上昇している。特に2015~19年の暑さは観測史上で上位5位を占めている。 中村教授は「温暖化が気温を底上げしている。これから中緯度地域ではどこでもジェット気流の蛇行に伴って猛暑が発生する可能性があり、油断できない」と話す。 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今月公表した特別報告書によると、温暖化に伴って各地で既に熱波の頻度が増えている。西アジアや北東アジア、アフリカ、南米の多くの地域などで干ばつが増加し、世界中で豪雨災害が深刻化している。 近年、個別の異常気象の発生に温暖化がどの程度影響していたかを分析する研究が進んでいる。米気象学会は報告書を毎年公表し、17年の米中西部の干ばつやバングラデシュ北部の洪水などは、温暖化によって起こりやすくなっていたとした。 日本でも平成最悪の豪雨災害となった昨年の西日本豪雨で、気象庁は個別の豪雨災害で初めて、温暖化が一因との見解を示した。気温上昇による大気中の水蒸気量増加が降水量に影響したとされる。 昨夏は記録的猛暑となり、6~9月に1500人以上が熱中症で死亡。気象庁気象研究所は、昨年7月の暑さは温暖化の影響がなければ起こらなかったと分析する。 気象庁の分析によると、温暖化の進展に効果的な対策を取らなければ、日本の今世紀末の年平均気温は20世紀末より4・5度上昇し、猛暑日の年間日数は東日本太平洋側で24日、沖縄・奄美では54日増加する。大気中の水蒸気量が増え、1日200ミリ以上の大雨の年間発生回数は全国平均で2倍以上になる恐れがある。【大場あい】 [佐賀新聞の記事] [解説] 九州電力は、以下の記事2019年4月20日以降も、原発を動かして無駄な電気を作りながら、太陽光発電の出力制限を行っています。しかし、玄海原発を佐賀県の佐賀新聞は、この記事以降、九州電力の太陽光発電制限について書いていません。全国紙が2018年10月に九州電力の出力制限を報じた最初だけで以降は、九州電力の太陽光発電制限、いや、太陽光発電つぶしを報じなかった中で、佐賀新聞だけが、詳しく報道していました。しかし、この2019年4月20日以降ぴたっと報道しなくなりました。しかし、玄海原発3号機、4号機が稼働し始めた2018年5月6月も、壱岐島地方では、九州電力は太陽光発電の出力制限をしています。しかし、佐賀新聞は書いていません。佐賀新聞は地元紙としての報道責任を放棄したのでしょうか? また、以下の記事で致命的なデータ偽装があります。「電力需給調整のモデル図」です。九州電力が太陽光発電の出力制限を史上初めて行い始めたのが、2019年10月。このとき、2018年9月28日に川内原発2号機が営業運転に入ったため、玄海3号機、4号機、川内1号機、2号機の4基すべての原発が稼働していたのです。4基も原発を動かすから、太陽光発電が電力供給過剰になったのです。しかし、「電力需給調整のモデル図」では、原発の占める電力供給があたかも一定であるかのような図にしてあります。図の緑色の「水力、風力、原子力、地熱」のところです。小さい字で「2018年5月3日の実績を基に作成」とあります。2018年5月3日の時点では原発は1つも稼働していません。 玄海原発3号機の営業運転開始。2018年5月16日 118万kW 川内原発1号機の営業運転開始。2018年6月29日 89万kW 玄海原発4号機の営業運転開始。2018年7月19日 118万kW 川内原発2号機の営業運転開始。2018年9月28日 89万kW 4基合計で414万kW 九州電力、太陽光の出力制限開始 2018年10月13日 ……日本国内史上最初の太陽光発電制限 図の緑色の「水力、風力、原子力、地熱」のところは、200万kWですから、2018年9月28日には、これが+414万kW、すなわち614万kWに急増したことになります。佐賀新聞の掲載したこの図は読者に「原発が稼働していたことは太陽光出力制限にあまり関係ないんだな」と印象づける、悪質な図です。即時、撤回修正と謝罪を求めます。 九電の出力制御 既に40回、解決策見通せず 低コスト蓄電池の開発必要 <さが深掘り 記者解説> 経済担当 樋渡光憲 2019年4月20日 佐賀新聞 各地に設置が進む太陽光発電施設。その有効活用は試行錯誤が続いている=佐賀市(提供) 樋渡光憲・顔写真・記者解説 九州電力は太陽光発電など再生可能エネルギーの接続を一時制限する出力制御を昨年10月に始め、これまで40回実施した(4月19日現在)。4月は雨や曇りの数日を除き、ほぼ連日実施している。九州が太陽光発電の導入先進地なのが背景にあり、九電も電力需給のバランスを取る努力はしているが、根本的な解決策は見通せていない。 出力制御は電力の需要と供給のバランスを維持させるために実施する。バランスが崩れると最悪の場合、大規模停電に至る恐れがある。春と秋は電力需要が比較的少ないため、出力制御の必要性が増える。日照条件が良い九州は太陽光発電の導入が進み、電力の需要量が全国の10%なのに対し、太陽光発電の接続比率は17%と高い。 出力制御は、現地操作が必要な2015年1月25日までに接続承諾分の事業者(500キロワット以上)には前日にメールで伝える。その後の承諾分は、出力制御を無制限、無補償で行う条件で契約しており、九電が遠隔操作で切り替える。家庭用など10キロワット未満は現在対象外。出力制御の予定や実績は九電サイトで公表し、実施設備は九電がローテーションさせながら選び、偏らないよう公平性には特に気を配っているという。 一方で、「出力制御は原子力ですべきではないか」という声もある。需給調整のモデル図のように、太陽光発電量は日照などで一日のうちに大きく変動する。これに対し、「原子力発電は短時間で出力を上げ下げするような調整用には向いていない」と九電は説明する。出力の抑制順を定めた国の優先給電ルールも、火力を抑え、他地域に送電しても供給過剰な場合に太陽光・風力の出力制御を定め、原子力による調整は最後の手段としている。 九電も太陽光発電量を見ながら毎日、需給バランスを取る努力をしている。太陽光の出力が増えてくると火力の出力を下げ、それでも需要を超える分は、揚水発電所の水を上部ダムにくみ上げて電力を消費し、バランスを取っている。それでも供給過剰になる場合に出力制御をする。 佐賀市の省エネコンサル「アースアクト」の筒井心CEO(40)は「出力制限が始まった当初は、設置者からは『どう対応すればいいか』など驚きや戸惑いの問い合わせがあった」と語る。その後、大きな混乱はないものの、これだけ出力制御が頻発すると「自分だけ損をしてはいないか」と疑心暗鬼を生じかねないという。「実施エリアを公表するなど、出力制御が公平に行われているかの情報は、もっと分かりやすく伝えるべきだろう」と指摘する。 太陽光発電を無駄にしないよう、九電は大型蓄電池(容量30万キロワット)を福岡県の豊前発電所内に設置。4月1日からは九州と本州をつなぐ送電線の送電可能量を約30万キロワット拡大した。ただ、これらの調整可能量はわずかにとどまる。九電の池辺和弘社長は昨年11月、電気事業連合会の会見で、出力制限の短期的な改善は困難で、回避するには低コストの蓄電池を開発する技術革新が必要とした。太陽光発電量は接続承諾済みの分もあり、今後も増加が見込まれる。季節や日々の変動が大きく、扱いが難しい太陽光発電をどう有効活用していくのか。先進地の九州はさまざまな知恵が求められている。
トリチウムを何万ベクレルも飲まないと健康被害はでない、とする放射能安全派の議論について
2019年09月25日内部被ばくと健康被害 資料
<はじめに トリチウムは脳にたまりやすい> トリチウムは脳にたまりやすいことを、京都大学原子炉実験所が研究の結果明らかにしていました。1985年の斉藤眞弘と石田政弘氏の論文です。 トリチウムの代謝と線量評価―ヒトのモデル系としてのマウス新生児に取り込まれたトリチウムの代謝と各臓器における蓄積線量の評価― 京都大学原子炉実験所 斉藤眞弘 石田政弘 1985年4月8日 この中で、ほ乳開始より離乳までの期間、母マウスにトリチウム水を投与し、 乳児マウスに間接的に母乳を通して乳児マウスにトリチウムを内部被ばくさせたところ、ほ乳開始30週目では、トリチウムは脾臓、腸、心臓、肝臓よりも、脳に10倍以上多く蓄積する。肺の3倍、腎臓の5倍も多く脳に蓄積することが分かりました。長期間飼育後でも、残留トリチウムは大部分が脂質, DNA, および蛋白質成分として存在しました。特に脳の脂質成分におけるトリチウムの残留は顕著で、他の臓器に較べて10~100倍の残留濃度を示していました。 <放射能が微量だから、人体には影響はない?は本当か?> この重要な結論に対して、「有機型トリチウムになる確率は非常に低いから、体内に溜まらない。 動物実験ほどの濃いトリチウムは飲まない。」 と処理水放流推進派が言います、という指摘がありました。 まず、2つの理論があります。以下の2つとも虚構です。 (1)微量の放射線被ばくは安全である。人間には放射線によって傷ついたDNAを修復するシステムがあるから。 (2)健康被害は、受けた線量に比例する。これは何万人も広島、長崎の被爆者の寿命調査(LSS)で明らかにされた。→しきい値なし線量直線応答関係(LNT仮説)がある。だから、数ベクレル/Lのトリチウムなど、人体に影響があるわけがない。 図1 しきい値のない直線仮説って何 原子力ミニ百科 環境科学技術研究所 (1)の「微量の放射線被ばくは安全である。人間には放射線によって傷ついたDNAを修復するシステムがあるから。」について、以下の資料で徹底的に批判しました。長文ですが、是非、お読み下さい。 <参考> 大石雅寿氏の「福島安全論」神話。おしどりマコ氏、大石雅寿氏論座記事を名誉毀損と指摘。内部被ばくを考える市民研究会資料 2019年7月14日 放射線による影響では、DNAの欠失が特徴的ですが、この場合、たとえDNAが修復されても、細胞ががん化する危険性があります。DNAが修復されたら、がんにはならない、というのは放射線生物学を知らない人間の戯言です。E.J.Hallの『放射線科医のための放射線生物学』(篠原出版新社,1995年)にそのがん化のメカニズムが解説されています。同書pp.26~28。 図2 放射線による分裂間期における欠失形成を示す Eric.J.Hall 1つあるいは2つの荷電粒子により、DNAの1つのループを分断するような2つの切断がいかにして起こるかは想像に難くない。くっつきやすい端は再結合し、欠失は、中心体がないため次の分裂期で失われる。このDNA損失には、抑制遺伝子の損失も含まれており、その時には悪性変化に導く。 以下、特に(2)「健康被害は、受けた線量に比例する。これは何万人も広島、長崎の被爆者の寿命調査(LSS)で明らかにされた。→しきい値なし線量直線応答関係(LNT仮説)がある。だから、数ベクレル/Lのトリチウムなど、人体に影響があるわけがない。」について、その虚構を暴いていきます。 <しきい値なし線量直線応答関係(LNT仮説)はABCCが作り上げた理論> 広島、長崎の何万人も被爆者の長期に渡る健康調査(被ばく線量とがん死との関係、他)を調べた、世界に他に例を見ない疫学調査、といううたい文句に騙されてはいけません。現在では放射線影響研究所がその研究を引き継いでいますが、そもそも、この寿命調査(LSS,Life Span Study)は以下のような問題を含んでいます。長文ですが、「茨城の教育」茨城県高等学校教職員組合 2013年9月10日号から全文引用します。ABCCとはアメリカの「原子爆弾傷害調査委員会」のことです。 *** 引用開始 *** ABCC・放影研の「寿命調査」(LSS) ABCC の「寿命調査」では、(A)「近距離被爆者」、(B)「遠距離被爆者」、(C)「市内不在者」の3つの群コホートが設定されている。ここで「被爆者」は、次の通り定義される。(1)1950 年の国勢調査に際して原爆に被爆したと自己申告した者であって、(2) 広島市ないし長崎市内に本籍があり、かつ市内に居住している者のうち、(3a) 爆心地から2499m 以内で被爆した(A)「近距離被爆者」等(3b) 爆心地から2500m 以上10km以内で被爆した者から抽出された(B)「遠距離被爆者」 したがって、(1) 国勢調査に漏れるなど「申告」しなかった者は含まれない。さらに、(2) 被爆していても、1950 年国勢調査時までに市外に転出した者、4万人以上いた軍人(広島は日清戦争以来、西日本最大の軍事都市であった)、数万人居住していたとされる朝鮮人などの「外国人」は含まれない(∵いずれも市内に本籍・住所がない。朝鮮人は原爆投下時点では日本国籍を有する「日本国臣民」だったが、1952 年のサンフランシスコ講和条約発効時に国籍を剥奪され、「外国人」となった)。 また、(3) 原爆被爆者のうち、爆風・熱線・放射線の直射・爆発後の火災等によって死亡した者、並びにそれらを生き延びたけれども1950 年までに死亡した者が、すべて除外される(∵生存していなければ自己申告できない)。爆風・熱線・放射線の直射・直後の火災等を生き延び、さらに1950 年までの5年間を生き延びた〈生存者〉だけが「被爆者」として調査対象となった。英文でのsurvivor を、「生存者」ではなく「被爆者」と邦訳したのは意図的な誤訳である。 ABCC は、サンプルにあらかじめ選択がかかっていることを認識していた。「寿命調査」の「研究計画書」には、「放射線急性傷害に耐えて生き残った人は平均より長く生きる可能性があるかもしれない」と記載されている。この選択は、放射線被ひばく曝の影響を小さく評価する方向で働くことになる。 その後1960 年代と1985 年に本籍の条件を外して範囲を拡大するなどしたが、他方で1950年国勢調査後の転出者(30%)が対象から外され、結局のところ2499m 以内の被爆者(=生存者)のほぼ半数が「寿命調査」の対象から外された。 (A)(B)「被爆者 survivior 群コホート」の対照群コホートとして設定されたのが「非被爆者群コホート」としての(C)「市内不在者」である。「不在」と言っても原爆爆発時に10km 以内に「不在」という意味であり、爆発直後、救援等で爆心地付近へ立ち入った「早期入市者」と、30日経過後に立ち入り、居住するようになった「後期入市者」からなる。これも1950 年国勢調査時点で広島市・長崎市に本籍と住所のある者に限られる。 原爆の直接放射線だけが対象 原爆による放射線被曝には、大別して次の3類型がある。①〈直接放射線〉 爆発時の中性子線やガンマ線などの直接放射線による外部被曝(爆心地から1000m で半数致死線量の4G グレイy、2000m で100m ミリグレイGy のガンマ線。なお、アルファ線・ベータ線は地上には到達しない。「寿命調査」が設定する左表の値は建物や人体自体による遮しゃへい蔽後の結腸〔大腸〕が受ける線量のモデル)②〈誘導放射能〉 直接放射線によって環境中の物質が放射能を帯びて生成された放射性物質(誘導放射能)による外部被曝と内部被曝③〈放射性降下物〉 核分裂せず飛散したウラン・プルトニウムや核分裂生成物質が、はじめに火球ついでキノコ雲によって上昇し、さらに爆発後の市街の大火災による上昇気流によって運搬・拡散され、すす・霧・雨(「黒い雨」)として降り注いだ。それによる外部被曝と内部被曝(広島では爆発当日の海風によって放射性降下物は北北西方向に拡散した。「黒い雨」の区域は爆心地から東に10km、西に25km、北北西には40km の範囲に及んだ〔沢田昭二他『共同研究 広島・長崎原爆被害の実相』1999 年、新日本出版社、118 頁以下〕) ABCC・放影研の「寿命調査」では、このうち、①直接放射線についてだけ、その暴露と疾病との関係を調査することになっている(ただし1km 以内では放射線量の過大評価、1km 以遠では過小評価があるなど実態にあわないとの批判がある)。原爆による放射線に暴露した集団と、まったく暴露していない集団の比較対照は最初から意図されていない。 ②③はすべての集団(コホート)に共通する暴露要因であり、相当の被曝をもたらした(8月6日に爆心地から1km 以内に「入市」した場合には、平均して1.5Gy 被曝したと推定される。放影研は、十分な測定がおこなわれなかったことをいいことに、「誤差の範囲」だとして無視する。 ABCC は、以前は呉市住民を対照群とする調査を実施していた(上述)。「寿命調査」においても、同様に放射線被曝のない広島市以外の住民を対照群にすることも可能であったが、あえて対照群を広島市居住者とした。遠方だと手間がかかるというのにとどまらない、意図しておこなった選択である。恣意的なデータ操作 「寿命調査」に関する報告書「第1 報」(1962 年) は、「非被爆者の死亡率は被爆者あるいは日本全国の平均と比較して異常に低い」ので「非被爆者は考慮せず異なった距離の被爆者間の比較をすることとした」という。 あきれるほど見え透いた恣意的データ処理である。「非被爆者の死亡率」が、「被爆者の平均と比較して異常に低い」のは、爆発時の直接被曝を受けていないのだから当然である。さらに、「非被爆者」26,961 人のうち、21,961 人(83%)を占める後期入市者の一部は、9月17 日の枕崎台風により誘導放射性物質や放射性降下物が洗い流され減少した後に入市したため、死亡率は低くなると推測される。 そしてまた「日本全国の平均と比較して異常に低い」ということだが、被爆者コホートの「生存者survivor」は、もし被爆しなかったとした場合、同様に全国平均と比べて「異常に低い」死亡率を示す可能性があるが、その点は考慮されない。 死亡率が低くて当然のものを「異常」と評価すること自体が異常である。都合の悪いデータを「考慮」しない疫学研究は妥当性を欠く。「非被爆者」のデータを勝手に無視する作為は、その後も引き継がれた。放影研は、白血病に関する1950 年から2000年までの死亡統計と、がんに関する1958 年から1998 年までの死亡統計において、残留放射性物質と放射性降下物による被曝者を含む「市内不在者」だけでなく、とうとう「被爆者」全体の4割以上を占める5mGy 未満の「遠距離被爆者」をも「対照コホート」としての「非被爆者群」に含めてしまった。 以上のとおり、放影研の「寿命調査」は、「放射線被曝者コホート」と「非−放射線被曝者コホート」とを厳密に設定して観察する本来の意味での疫学研究ではない。「寿命調査」では、「対照群」の中に残留放射能や放射性降下物による被曝者が多く含まれているため、それらの影響が差分としては表れるはずがない。残留放射能や放射性降下物による「低線量被曝」とりわけ内部被曝が健康に及ぼす影響が、放影研の「寿命調査」によって明らかになることは絶対にありえない。はじめに結論ありき 「寿命調査」には、結論があらかじめ用意されていた。寿命に影響するわずかの変化を見いだすため、あるいは逆に寿命に対してはほとんど影響のないことを明らかにするためには大規模な死亡調査の実施の必要がある。 これは、誤った予断として後になって否定されたものではない。現在も放影研のウェブサイトに掲載されている「研究計画書」(前記URL)の記述である。 UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は、「本委員会は、放射線の全身被ばくに関わる最も有益な唯一のデータは、1945 年の日本における原爆の被爆者の研究から得られると判断した」としたうえで、「例えば被ばくした米国の集団のリスクを推定する方法は、日本の原爆被爆者から導かれた推定値に基づいている」という。原爆の直接放射線以外の被曝に対して、放影研の「寿命調査」を留保なしに拡大適用しているのである。高線量外部被曝についての(それ自体にも問題のある)「寿命調査」の結果を、そもそも対象としていない内部被曝や低線量被曝について勝手に拡張して適用するもので、疫学を僭称する非科学的手法である。 RERF( [...]
トリチウムの代謝と線量評価―ヒトのモデル系としてのマウス新生児に取り込まれたトリチウムの代謝と各臓器における蓄積線量の評価― 京都大学原子炉実験所 斉藤眞弘 石田政弘 1985年4月8日
2019年09月25日内部被ばくと健康被害 資料
トリチウムの代謝と線量評価―ヒトのモデル系としてのマウス新生児に取り込まれたトリチウムの代謝と各臓器における蓄積線量の評価― 京都大学原子炉実験所 斉藤眞弘 石田政弘 1985年4月8日 [解説] [第1稿]2019年9月25日 14:45pm [改訂第2版]2019年9月25日 22:45pm 脳に蓄積する → 脳に残留する 訂正 グラフの最初が100キロベクレル/gとあります。論文を読むと、母親マウスには妊娠中から37万ベクレル/mLのトリチウム水を母親マウスに与えた、と書かれています(グラフ5の説明文)。 この論文には、非常に重要な研究成果が記載されています。しかし、重要な結論は文章には記載されていません。グラフから読み取る必要があります。グラフ4は、「ほ乳開始より離乳までの期間母マウスにトリチウム水を投与し, 間接的に母乳を介して子マウスにトリチウムを与えてその代謝を調べた結果」ですが、極めて重要な結果が読み取れるのですが、筆者たちはあえてその重要な結果を文章には書きません。そのグラフ4の意味するところは、以下です。編集者がグラフから読み取りました。 本文 pp.170 「Fig. 4(グラフ4)には各種臓器中の総トリチウム濃度のトリチウム投与停止後の経時変化を示してある。トリチウム投与停止後のトリチウム濃度が停止直後から, 5週齢に至るまで脳を除いてほぼ重なっているのがわかる」 ↓ 編集者のよる考察 「Fig. 4(グラフ4)各種臓器中の総トリチウム濃度のトリチウム投与停止後の経時変化を示してある。妊娠した母マウスにほ乳開始からトリチウム水を与え、乳児マウスに間接的に母乳を通して乳児マウスにトリチウムを内部被ばくさせたところ、ほ乳開始30週目では、トリチウムは脾臓、腸、心臓、肝臓よりも、脳に10倍以上多く残留する。肺の3倍、腎臓の5倍も多く脳に残留する。」 図1:トリチウムの代謝と線量評価―ヒトのモデル系としてのマウス新生児に取り込まれたトリチウムの代謝と各臓器における蓄積線量の評価― 京都大学原子炉実験所 斉藤眞弘 石田政弘 1985年4月8日 グラフ4 【編集者】川根眞也 ※ 青字、赤字は編集者。数字は指数表示定規から読み取った。 <乳児マウス 30週目の各臓器中に残留したトリチウム> 脳 1030ベクレル/g 肺 300ベクレル/g 腎臓 200ベクレル/g 脾臓 103ベクレル/g 腸 70ベクレル/g 心臓 53ベクレル/g 肝臓 40ベクレル/g ただし、グラフの最初が100キロベクレル/gとあります。論文を読むと、母親マウスには妊娠中から37万ベクレル/mLのトリチウム水を母親マウスに与えた、と書かれています(グラフ5の説明文)。 また、本文、pp.171には、以下の記述があります。 「Fig. 6からわかるように長期間飼育後の残留トリチウムは大部分が脂質, DNA, および蛋白質成分として存在する。特に脳の脂質成分におけるトリチウムの残留は顕著であって他の臓器に較べて10~100倍の残留濃度を示している。」 トリチウムの主な傷害する器官は脳である、ということができそうです。 以下本文を全文掲載します。 *** *** -ヒトのモデル系としてのマウス新生児に取り込まれたトリチウムの代謝と各臓器における蓄積線量の評価-斉藤眞弘*1, 石田政弘*1(1985年4月8日受理) Metabolic and Dosimetric Aspects of Tritium Incorporated into Newborn MiceMasahiro SAITO*1 and Masahiro R. ISHIDA*1KEY WORDS: tritium, metabolism, newborn mouse, dosimetry 1. はじめに 核融合炉の開発が, やがては枯渇するであろう化石燃料や,ウラン燃料に代わるべきエネルギー源として進められている。現在有望な核融合炉として研究が進められているのはD-T融合反応を利用したものであり, 核融合チェンバーの隔壁にはリチウムが含まれ, トリチウム増殖の役割を果たしている。トリチウムは核融合炉には多量に使われて, 程度の差はあれ正常運転時, 事故時を問わず環境中に放出される可能性がある。出力1,000MWの核融合炉あたり, 3.7×1017~9.3×1018 Bq(1~20kg)のトリチウムが装荷されると予想されているが,この値は自然界で生成され平衡に達したトリチウムの総量(2.6×1013~5.2×1013Bq)に匹敵する。もし全世界の必要電力(約6×106MW)のすべてを核融合で賄うとすると装荷されるトリチウム量は2.2×1024~5.6×1024Bqになる。また毎年環境中に放出される割合は出力1,000Wあたり1.1×1014~1.5×1014 Bqであると評価されている。そのとき約7. 4×1012Bqのトリチウムが毎年地球環境中に放出される。すなわち天然に作られるトリチウム量(1.5×1012Bq/年)の5倍のトリチウムが毎年環境中に放出されることになる1)。 このトリチウムによる生物圏の汚染がヒトを含めた生物にどのような影響を及ぼすのかを事前に評価しておくことは現代のわれわれに課せられた課題である。また現実の核融合炉の開発現場の研究者や労働者は高濃度のトリチウムガスやトリチウム水にさらされる危険が高い。これらトリチウム作業従事者の安全確保のためにもトリチウム生物影響の評価は必要である。 天然の水中に存在するトリチウムの濃度は3. 7Bq/Lの程度である。もしこの濃度の水を1年間飲料水として飲んだとしても, トリチウムベータ線の内部被曝による蓄積線量は, たかだか1μGyであって全自然放射能による被曝線量約1mGyの1,000分の1程度にすぎない。もし上に述べたような環境トリチウム量の増加があったとしても地球全体の平均をとれば1人あたりの被曝量の増加は1%程度以下であるけれども局所的なトリチウム汚染により, 自然放射能量に匹敵もしくは数桁多い被曝を受けることはありうることである。生物は元来その誕生以来放射線の場の中で生きてきており, 生命固有の修復機能を持っている。はたして上のような被曝線量の増加は生物界における人類の運命に決定的な意味を持っているのであろうか。これはトリチウムの生物影響に関してまず解決しなければならない問題である。 一方トリチウムを仕事として取り扱う人が, トリチウムを摂取した場合のことを考えて見よう。この場合の被曝線量は一般の公衆が受けるかも知れない量にくらべるときわめて大きい。ちなみにヒトのトリチウム1回摂取の半致死量は約1.5×1012Bqであると推定されているが, トリチウム水量にするとわずか0.023gにしかすぎない。したがってトリチウムを安全に取り扱うこと, 予想される内部被曝線量を評価すること, 体外への排出を促進することなどが実際的に重要となってくる。これらの課題に対応するためには次のような研究が必要である。すなわち第一に環境中に放出されたトリチウムの挙動と人体への取り込みの過程を明かにし環境中のトリチウムレベルからヒトの被曝線量を評価することであり第二にはその被曝線量をもとに人体に対する生物的影響を予測することである。放射能の発見以来, X線やガンマ線に対する種々の生物的効果についてのわれわれの知識の集積は豊かである。トリチウムの場合, そのような情報はいまのところ多くないけれども, もしその生物効果比にっいての確かな評価が得られれば一つ一つの生物的指標についての効果を調べる必要はなく被曝線量のみから最終的な生物効果の予想は可能になる。生物効果を予測するには体内でのトリチウムの分布とその時間的変化を知り, さらに内部被曝線量の体内分布と被曝の時期についても知る必要がある。ここでトリチウムの分布と言うのは空間的な分布を指すのと同時に質的な分布すなわち生体各成分の間での分布も意味する。また被曝線量の分布の概念には臓器間での差のような巨視的なものから細胞内諸器官へのトリチウム局在のような微視的なものまでが含まれる。このような知見をうるためにわれわれは京都大学原子炉実験所に設置されているトリチウム投与小動物飼育装置を使ってここ数年来マウスを使ったモデル実験を行っている。われわれの得たトリチウム代謝データをもとに内部被曝線量の評価のモデル構築をすることができる。得られた結果とそのヒト被曝線量評価における意義について述べる2~4)。2. トリチウムによる内部被曝線量評価の難しさわれわれが使い慣れている吸収線量の概念は巨視的な量である。すなわち照射された生物体の中で微視的に見たエネルギー付与のばらつきが問題にならないようなスケール, X線やガンマ線についていえば数mm~ 数cmのスケールで平均されたエネルギー吸収量について定義された概念である。このような巨視的な線量をもとに生物効果を較べることによりいわゆるRBE値(相対的生物効果比)がえられる。トリチウムベータ線のRBE値は1より大きく2~3以下ということが多くの生物効果実験によって確かめられている。この様な値が得られる理論的根拠は二つある。 第一に, [...]
グレタ・トゥーンベリさん、国連で怒りのスピーチ。「あなたたちの裏切りに気づき始めています」スピーチ全文 2019年9月23日 国連環境行動サミット
2019年09月24日内部被ばくと健康被害 資料
グレタ・トゥーンベリさん、国連で怒りのスピーチ。「あなたたちの裏切りに気づき始めています」スピーチ全文 2019年9月23日 国連環境行動サミット 2019年9月24日 Huffingtonpost 温暖化対策に本気で取り組まなければ、「あなたたちを許さない」と大人たちを叱責した Satoko Yasuda 安田 聡子 「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!」 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)は9月23日、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席し、地球温暖化に本気で取り組んでいない大人たちを叱責した。 トゥーンベリさんは世界のリーダーを前に、時に涙を浮かべながら約5分間スピーチ。 温暖化解決のための具体的な行動を取らないのであれば、「結果とともに生きなければいけない若い世代」はあなたたちを許さないと強く訴えた。 トゥーンベリさんのスピーチ全文 私から皆さんへのメッセージ、それは「私たちはあなたたちを見ている」、ということです。 私は今、この壇上にいるべきではありません。私は海の向こうで学校に行っているべきです。それなのに、あなたたちは私に希望を求めてここにきたのですか?よくそんなことができますね! SPENCER PLATT VIA GETTY IMAGES あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢そして子供時代を奪いました。それでも私はまだ恵まれている方です。 多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。 それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか! 30年以上にわたって、科学ははっきりと示してきました。それに目をそむけて、ここにやって来て、自分たちはやるべきことをやっていると、どうして言えるのでしょうか。必要とされている政治や解決策はどこにも見当たりません。 STEPHANIE KEITH VIA GETTY IMAGES あなたたちは私たちに“耳を傾けている”、そして緊急性を理解していると言います。しかしどれだけ私が怒り悲しんでいようとも、私はそれを信じたくありません。 なぜなら、もしあなたたちが状況を理解していながら行動を起こしていないのであれば、それはあなたたちが邪悪な人間ということになるからです。私はそれを信じたくありません。 二酸化炭素排出量を10年で半分に減らしたとしても、地球の平均気温を1.5℃以下に抑えるという目標を達成する可能性は50%しかありません。そしてそれによる取り戻しのつかない連鎖反応を埋め合わせることは、制御不能になります。 あなた方は50%でいいと思っているのかも知れません。しかしその数字には、ティッピング・ポイント(小さな変化が集まって、大きな変化を起こす分岐点)やフィードバックループ(フィードバックを繰り返して改善していくこと)、空気汚染に隠されたさらなる温暖化、そして環境正義や平等性などの要素は含まれていません。 そして、私たちや私たちの子供の世代に任せっきりで、何千億トンもの二酸化炭素を吸っている。私たちは50%のリスクを受け入れられません。私たちは、結果とともに生きなければいけないのです。 STEPHANIE KEITH VIA GETTY IMAGES 「気候変動に関する政府間パネル」が発表した、地球の温度上昇を1.5℃以下に抑える可能性を67%にするために残っている二酸化炭素の量は、2018年1月の時点で420ギガトンでした。今日、その数字はすでに350ギガトンにまで減っている。 なぜこれまでと同じやり方で、そしていくつかの技術的な解決策があれば、この問題が解決できるかのように振舞っていられるのでしょうか。現在の排出量レベルを続ければ、残っているカーボンバジェット(温室効果ガス累積排出量の上限)は、8年半以内に使い切ってしまいます。 しかしこの現状に沿った解決策や計画は作られないでしょう。なぜならこの数字は、とても居心地が悪いから。そしてあなたたちは、それを私たちにはっきりと言えるほど十分に成熟していない。 あなたたちは、私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。 もしあなたたちが裏切ることを選ぶのであれば、私たちは決して許しません。 私たちはこのまま、あなたたちを見逃すわけにはいかない。 今この場所、この時点で一線を引きます。世界は目覚め始めています。変化が訪れようとしています。 あなたたちが望もうが望むまいが。 STEPHANIE KEITH VIA GETTY IMAGES 気候行動サミットに出席するために、トゥーンベリさんは二酸化炭素排出量の多い飛行機に変えて、ヨットで大西洋を横断していた。 トゥーンベリさんは15歳だった2018年に、温暖化対策を取らない大人へ抗議するために、学校を休んでスウェーデン議会の前に座り込む「学校ストライキ」を始めた。 彼女の主張に世界中の若者たちが賛同。たった一人で始めたストライキは各地に広がった。 賛同者はどんどん増え、国連気候行動サミット直前の9月20日に世界各地で開かれた「グローバル気候マーチ」には何百万人もの人たちが参加して、温暖化の取り組みの遅れに抗議した。 https://twitter.com/nattyover/status/1175150366033420293 「(1枚目) 2018年に、一人で抗議運動を始めたトゥーンベリさん。(2枚目)2019年「グローバル気候マーチ」に参加した人たち」 1年で世界を大きく変えたトゥーンベリさん。 16歳の彼女に「成熟していない」と言われた大人たちは、変わることができるのだろうか。 Satoko Yasuda 安田聡子 ライフスタイルエディター
東京電力福島第一原発1/2号機排気筒解体工事、第二部分。2019年9月18日~20日
2019年09月23日top表示 内部被ばくと健康被害 資料
ツィッターで東京新聞原発取材班さんが、東京電力福島第一原発1/2号機排気筒解体工事を取材、報道してくれています。東京新聞えらい!頑張れ、東京新聞。 東京新聞 原発取材班@kochigen2017福島第一原発の排気筒解体は予想以上に苦労が続きます。2段目の解体は18~20日の3日間に及びましたが、装置のトラブルや台風接近により、半周を切断した状態で中断中です。1分強の動画にまとめました。(山川)https://twitter.com/i/status/11755841925386280962019年9月22日 10:35am 東京新聞 原発取材班@kochigen20173日間の動き その1 18日 午前10時 装置つり上げ開始 午後 はしごなど切断 午後3時45 筒本体切断開始19日 午前7時すぎ 筒身25%切断 午前8時03 装置を吊り下げ(給油と刃の交換) (続く)2019年9月22日 10:45am 東京新聞 原発取材班@kochigen2017(続き)3日間の動き その2 19日午後1時17 装置をつり上げ 午後3時04 電線管を切断(~3時16) 午後6時33 筒身切断を再開20日午前9時15 筒身の半周まで切断 その後 切れ目合わせの縦切断 午後3時41 装置つり下げ開始2019年9月22日 10:54am 東京新聞 原発取材班@kochigen20173日間の動きを振り返ると、筒本体の切断に本当、苦労しているのがよく分かります。25%切るのに15時間ずつ。装置が外れると、切り口に重さがかかり、かみついたようになっています2019年9月22日 11:01am
天然痘やエボラウイルス保管施設で爆発…露は全容明らかにせず 2019年9月23日 読売新聞 朝刊 7面
2019年09月23日内部被ばくと健康被害 資料
天然痘やエボラウイルス保管施設で爆発…露は全容明らかにせず 2019年9月23日 読売新聞 朝刊 7面 【モスクワ=工藤武人】ロシアで国の重要施設の爆発事案が相次いでいる。8月に軍のミサイル実験場で爆発が起きたほか、16日には天然痘やエボラ出血熱など重篤な感染症を引き起こすウイルスや細菌株を保管する西シベリアの研究施設で爆発が起きた。爆発に関する情報は機密を理由に十分開示されていない。 16日の爆発は、ノボシビルスク郊外にある国立ウイルス学バイオテクノロジー研究センターで起きた。世界有数の感染症研究施設で、天然痘ウイルスが保管されている世界2施設のうちの一つでもある。 研究センターは16日、6階建ての建物の5階にある検査室の改修工事中にガスボンベが爆発し、約30平方メートルを焼いて1人が負傷したと発表した。爆発現場で「生物学的な作業は行われていなかった」と説明している。研究施設が保管する試料の安全確保については言及しなかった。 露有力紙コメルサントによると、この研究施設の起源はソ連時代の1974年にさかのぼり、70~80年代には秘密裏に生物兵器の研究もされていた。 8月に北部アルハンゲリスク付近の露海軍ミサイル実験場で起きた爆発では、国営原子力企業の従業員5人が死亡し、放射線量の一時的な上昇も確認された。「軍事機密」を理由に全容は明らかにされていない。
処理水の大阪湾放出反対申し入れ 2019年9月20日 NHK 関西 放送局
2019年09月20日内部被ばくと健康被害 資料
処理水の大阪湾放出反対申し入れ 2019年9月20日 NHK 関西放送局 大阪市の松井市長が、福島第一原子力発電所にたまり続けている放射性物質などを含む水の安全性が確認できれば、大阪湾への放出に協力する考えを示していることについて、学識者などで作る市民団体が大阪市に対し、放出を行わないよう確約を求める申し入れを行いました。 福島第一原子力発電所にたまり続けている放射性物質のトリチウムなどを含む水の処分について、大阪市の松井市長は、環境への影響がないことが科学的に確認できれば、大阪湾への放出に協力する考えを示しています。これに対し、放射能や環境問題に取り組んでいる学識者やジャーナリストなどでつくる市民団体が、20日、大阪市に対し、「放射能汚染水をわざわざ大阪に移送し、湾内に放出するなどというのは、ありえない話だ」として、大阪湾への放出を行わないよう確約を求める申し入れ書を提出しました。このあとメンバーが記者会見し、ジャーナリストの木下黄太さんは、「高濃度のトリチウムが無害と断定できる研究はない。大阪湾は地形が特殊で湾内に滞留するリスクがある。放出が現実にならないよう、ありとあらゆる手段を講じたい」と述べました。松井市長の発言をめぐっては、大阪府内の漁協でつくる大阪府漁業協同組合連合会も、大阪市と大阪府に抗議文を提出するなど、波紋が広がっています。 【松井市長”議論が深まればいい”】市民団体の申し入れについて、大阪市の松井市長は、記者団に対し、「波紋が広がって議論が深まればいい。処理水をどう処分していくか、政府が方向性を示すべきだ。自然環境に悪い影響を出さないレベルであることを科学的根拠をもって証明できれば、日本中どこでも受け入れることができる」と述べました。
広島、長崎の被爆者に放射線の遺伝的影響は果たしてなかったのか?ABCCー予防衛生研究所の犯罪を追及する(2)
2019年09月18日内部被ばくと健康被害 疎開・移住 資料
[第1稿] 2019年9月19日記 <広島、長崎の遺伝的影響調査の対照群として、呉市、佐世保市の妊産婦と子どもたちが選ばれていた> 前稿(1)では、「放射線によりショウジョウバエには遺伝的影響が出るが、人間には出ない。少なくとも広島、長崎の被爆者には放射線被ばくによる遺伝的影響の有意な増加は認められていない。」は果たして正しいのか、検証したい、と書きました。そして、そもそも「広島、長崎の被爆者には放射線被ばくによる遺伝的影響の有意な増加は認められていない。」と学説の原典は1956年ABCC(アメリカ原子爆弾傷害調査委員会)の論文であることを紹介しました。 <参考>広島、長崎の被爆者に放射線の遺伝的影響は果たしてなかったのか?ABCCー予防衛生研究所の犯罪を追及する(1) 図1 ABCC(アメリカ原子爆弾傷害調査委員会)J.V.NeelとW.J.Shullの1956年の論文の表紙 ABCC(ATOMIC BOMB CASUAALY COMMISSION)の文字がはっきりと書いてある。 <資料>James V.Neel W.J.Schull Effect of Exposure to the Atomic Bombs on Pregnancy Termination in Hiroshima and Nagasaki ABCC 1956年 本稿(2)では、日本の予防衛生研究所の原爆遺伝調査計画全文を紹介します。故笹本征男氏の労作『米軍占領下の原爆調査~原爆加害国になった日本~』新幹社1995年より、紹介します。本来、この予防衛生研究所の計画通りに、広島市の被爆者と呉市の一般住民、長崎市の被爆者と佐世保市の一般住民との比較対照したならば、はっきりと被ばくによる遺伝的影響が明らかになったはずです。しかし、調査が広島市、長崎市、呉市(ついに計画だけで佐世保市では調査が行われなかった)での妊産婦登録が1948年から開始されましたが、1950年8月で呉市の妊産婦とその子どもの調査は打ち切られます。これは遺伝的影響がはっきりしてきたからではないか、と疑われます。以降は、広島市の被爆者である妊産婦とその子どもと、新たに広島市に入市し生活を始めた妊産婦とその子どもが、また、長崎市の被爆者である妊産婦とその子どもと、新たに長崎市に入市し生活を始めた妊産婦とその子どもが対象となった調査が行われます。広島、長崎の被爆者は外部被ばくとともに、放射能で汚染された野菜、魚を食べ、放射能で汚染された川の水を飲んでいます。新たに広島市、長崎市に入市し生活を始めた人々は外部被ばくこそしていませんが、放射能で汚染された野菜、魚を食べ、放射能で汚染された川の水を飲んでいます。どちらも内部被ばくをしているのです。 第二次世界大戦後の世界を核兵器を使って、支配しようとしたアメリカが、核兵器の生み出す放射能が、人類に遺伝的影響をもたらす兵器であることをひた隠しにするために、組織された機関がABCC(アメリカ原子爆弾傷害調査委員会)であった、と言えます。また、その核兵器の放射能が遺伝的影響をもたらす事実を隠しことに協力したのが、日本の天皇制あり、政府であり、日本学術会議であったのです。日本学術会議の前身である文部省学術研究会議は、広島、長崎に調査団を派遣します。これは、マンハッタン管区調査団長ファーレル准将が、広島での調査から東京にもどった日の1945年9月14日に文部省は学術研究会議原子爆弾災害調査研究特別委員会を設置することを決めます。この決定文書には、広島、長崎の実情を我が国の科学の総力を挙げて調査する、と書かれていますが、本調査研究は純学術的なものであって、調査結果は地方民生の安定に資するためにも遺憾なきを期している、とだけ記されていて、広島、長崎で心身ともに深刻な被害を受けた被爆者の救援・救護・治療のための調査・研究では一切ありませんでした。(笹本、同書、pp.55~56)今、再び、福島で行われている、小児甲状腺がんの子どもたちの「学術・研究」はまた、学問のためであり、決して子どもたちを救援・救護・治療するための調査・研究ではないことは、悪夢の再現を見るかのようです。日本の戦後とは、学問がその良心を捨てたところから始まった、と言わなければなりません。 外部被ばく・内部被ばくしている被ばく者と、入市して生活し内部被ばくしている人々とを比べると、がん死の割合も、奇形児の出生率も似たものになります。比べてはいけないものを対照群とすることで、差がないような疫学調査結果をまとめ、「広島、長崎の被爆者には放射線被ばくによる遺伝的影響の有意な増加は認められていない」との結論を導き出したアメリカと日本の学者たち、その犯罪を暴きます。 <予防衛生研究所「原子爆弾の影響に関する医学的調査」計画書 1947年12月 同書pp.303~309> 予防衛生研究所「原子爆弾の影響に関する医学的調査」 1947年12月18日付 PHW局長サムス大佐宛て提出 Box No-9354 PHW-01729-01720 予防衛生研究所 東京都港区芝白金台 電報宛名略号……東京衛生 電話(57)0011-0014 1947年12月18日 連合国最高司令官総司令部公衆衛生福祉局長 C・F・サムス大佐殿 原子爆弾の影響に関する医学調査 私はここに貴官の吟味に供し、貴官の承認を得るために上記計画書案の写し3通を提出いたします。 本計画ができるかぎり早急に開始されることを希望いたします。 予防衛生研究所長 小林六造 1947年12月1日 原子爆弾の影響に関する医学調査 第二次世界大戦の終わり近くに広島、長崎に投下された原子爆弾は、前記の二都市の被ばくした住民に対して、ある晩発的影響をもたらしている可能性がある。考えられる様々な影響のなかで、子供の成長の正常な形態にみられる変化、血液異常の増大、ケロイドの悪性変化は医学的に綿密に研究されるべきである。 本調査は戦時においてのみならず、来るべき原子力時代の人類の福祉の保護に対して多大の寄与をなすと予想される。それ故に、われわれは本調査を一刻の猶予もなく開始するべきである。 アメリカ合衆国国家研究評議会の日本代表のニール博士(James V.Neel:編集者注)を通じて、前記機関が来るべき平和条約が発効した後に本調査の必要経費の大部分を負担することはいとわないという提案がなされたことを付け加えておかなければならない。 一.本調査は、日本の予防衛生研究所とアメリカ合衆国国家評議会との共同の援助のもとに実施される。連合国軍最高司令官総司令部と日本国政府厚生省は本計画に対して援助を与える。 二.原子爆弾の影響に関する医学調査のために、特別な部局が予防衛生研究所内に設置される。組織及び人員は付表に示されている。 三.現地調査班は広島、長崎に組織され、その支所が比較対照情報を収集する目的で、呉、佐世保に組織される。組織及び人員は付表に示されている。 四.前記現地調査班及びその支所は必要な情報を収集し、必要な健康診断を行なう。予防衛生研究所の調査課は現地調査班が提出した情報の整理を行う。 五.本調査の円滑な実施のために、東京に中央委員会、広島、長崎に地方委員会を設置する。組織及び人員は付表に示されている。 六.本調査は約20年間継続する。 七.本調査に必要な経費の大部分は平和条約締結後、アメリカ合衆国国家研究評議会原子傷害調査委員会(CAC)が負担する。しかし、その時期までは日本国政府は上記の経費を負担する。現在、本項の内容を証明する文書は日本にいる当委員会代表のニール博士(James V.Neel:編集者注)が管理している。本計画のために利用しうる資金の調達に関する手続きの詳細は今後ニール博士と協議されるべきものである。 八.第四項に述べられた様々な調査計画のうち、アメリカ側との詳細な協議が終了しているものについては調査が始められるように提案する。 遺伝計画、健康診断及び職務全般に必要な経費の概算は経費予算要求に含まれる。 子供の成長に関する最終勧告は、目下原爆傷害調査委員会(ABCC)とアメリカ合衆国のグルーリック博士のとの間で準備中である。 九.研究計画 a.遺伝計画 原子爆弾都市(広島、長崎)及び比較対照都市(呉、佐世保)の全妊産婦は登録され、調査票の一部に必要事項が記入されることが求められる。調査票の写しが添付されている。調査票は正副二通記入される。調査票の写しの一通目は当の妊産婦に渡され、妊産婦はかかりつけの医者あるいは助産婦にそれを提出する。医者と助産婦は調査票を完成し、妊娠期間の終結後に収集地の返却する。写しの二通目は出産予定日に従って必要事項が記入され、返却数の完璧を期すために点検用として使用される。 妊婦の異常終結あるいは先天的奇形に関する全ての報告は現地班の医者によって確認される。可能ならばより完全なデータが求められる。 本研究の目的は、原爆被爆時に広島、長崎にいた両親から生まれた子供たちに先天的奇形発生数の増加があるかどうかを確定することである。比較対照都市において、調査票は日本人の奇形及び死産発生数に関する基本的データを提唱するであろう。 b.子供の成長計画 未定。 c.ケロイド計画 未定。 d.健康診断計画 本計画の主要目的は、上記計画に述べられた様々な計画に必要な健康診断を実施することである。しかし、本計画は低料金の医療を施す点においてこれらの計画の円滑な実施に向けて公衆の協力を確保するのに役立つ。 計画案 1947会計年度ー1948会計年度 原子爆弾の影響に関する医学的調査 一.原子爆弾の影響に関する医学的調査のために、予防衛生研究所内に中央委員会を設置する。本委員会は当該分野の科学者たちから構成され、四つの現地調査班から提出された資料を研究し、本計画の政策全般を討議する。 二.特別な部局が予防衛生研究所内に設置される。この部局は整理と分析のために四つの現地調査班から情報を受理し、さらなる研究のために上記中央委員会に情報を提出する。 三.本調査のための地方委員会が広島、長崎に設置される。これらの地方委員会は各県市の当局者、地方の医師会、助産婦会、看護婦会、医学教育施設の代表者から構成される。これらの委員会は各地の現地調査班の実際の作業に関する諸問題を討議するために時々会合する。 四.本調査のための現地調査班は広島、長崎に組織され、その支所は呉、佐世保に各々組織される。これらの現地調査班は各都市における全妊産婦を登録し、調査票を収集し、それらを東京の中央機関に提出する。広島、長崎の現地調査班は呉、佐世保の現地調査班を時々監督する。 五.遺伝調査課、健康診断課、庶務係が広島、長崎に設置される。現地調査班、遺伝調査課、健康診断課が呉、佐世保の現地調査班内に設置される。 現在まで、遺伝計画に関する詳細な取り決めがアメリカ合衆国国家研究評議会と日本の予防衛生研究所との間で決められている。今期会計年度内に、広島、長崎の現地調査班及びその呉、佐世保支所に遺伝調査課、健康診断課、総務課が設置されるように提案する。 原子爆弾被爆後の出産に関する調査票 地域及び調査票番号、出産日、夫、妻(旧姓)、名前、生年月日、年齢、被爆時広島か長崎か、場所、爆心地からの距離、屋内、建築物の形態、点状出血、歯肉炎、血性下痢、脱毛、発熱、火傷、外傷、婚姻届け日、結婚生活の中断、結婚前の同棲期間、全同棲期間(月数)、1945年8月以後の妊娠回数、1945年以後の死産数、全妊娠数、血族関係、現住所、妻最近の月経期間、出産予定日、現在の妊娠期間、出産日、出産経過、出産の終結(生産期間、生産、早産、流産、20週以内ー死産、5~6ヵ月ー死産、6~8ヵ月ー死産、期間)、多産ー順序、性別ー体重、奇形、奇形の形態、1948年1月以降妊娠したかどうか、所見、医者の氏名・住所、助産婦の氏名・住所 組織及び様々な組織における人員の任務 一.中央組織 a.東京予防衛生研究所原子爆弾影響医学調査課 課長 1 助手 統計係 2 技師 4 計 7 二.地方組織 a.広島原子爆弾影響医学調査研究所 (遺伝調査課、健康診断課、庶務係のみ) 研究所長 医師 1 *遺伝課員 医師 2 遺伝課助手 技師 2 調査員ー保健婦、事務員 8 総務課 2 庶務給仕 2 計 17 b.広島原子爆弾影響医学調査研究所 (遺伝調査課、健康診断課、庶務係のみ) 研究所長 医師 1 *遺伝課員 医師 2 遺伝課助手 技師 2 調査員ー保健婦、事務員 8 総務課 2 庶務給仕 2 計 17 c.呉原子爆弾影響医学調査研究所 (遺伝調査課、健康診断課のみ) *遺伝課員 医師 2 遺伝課助手 技師 2 調査員ー保健婦、事務員 6 庶務給仕 2 計 12 d.佐世保原子爆弾影響医学調査研究所 (遺伝調査課、健康診断課のみ) *遺伝課員 医師 2 遺伝課助手 技師 2 調査員ー保健婦、事務員 6 庶務給仕 2 計 12 *注ー遺伝課員(医師)は健康診断課を訪れる患者を診断する。 1947ー48年の配置組織人員 研究者 助手 計 所見 二級 三級 三級 下級 予研の組織 1 2 0 4 7 広島現地班 3 3 1 10 17 長崎現地班 3 3 1 10 17 呉現地班 3 3 1 10 [...]
原発事故前の日本の土壌はどれくらいセシウム137で汚染されていたのか? 【データ出典】日本の環境放射能と放射線データベース
2019年09月17日内部被ばくと健康被害 資料
原発事故前の日本の土壌はどれくらいセシウム137で汚染されていたのか? 【データ出典】日本の環境放射能と放射線データベース 【データ収集・編集】川根眞也 日本分析センターが「放射能測定調査」として、47都道府県の土壌(多くの地点は1箇所のみ)の地表0-5cm、5-20cmの土壌を採取し、そのセシウム137、ストロンチウム90の汚染度を調べています(1963年度より一部開始)。 東京電力福島第一原発事故以前の土壌のセシウム137汚染、2009年度が以下です。 原発事故前の日本の土壌はどれくらいセシウム137で汚染されていたのか 2019年9月17日 ← pdfがダウンロードできます。 各土壌中のセシウム137 【単位】ベクレル/kg 分析機関:日本分析センター 採取年:2009年 データ出典:日本の環境放射能と放射線 データベース 都道府県名 採取地 試料0-5cm 試料5-20cm 採取日 備考 北海道 江別市 14Bq/kg 7.6Bq/kg 8/26 草地 青森 五所原市 0.97 Bq/kg 2.9Bq/kg 7/14 草地 青森 青森市 15Bq/kg 16 Bq/kg 7/21 草地 岩手 岩手郡滝沢村 37Bq/kg 8.2Bq/kg 8/4 草地 宮城 大崎市 2.8 Bq/kg 2.4Bq/kg 9/10 未耕地 秋田 秋田市 22Bq/kg 23 Bq/kg 9/11 草地 山形 山形市 14Bq/kg 2.6 Bq/kg 8/17 草地 福島 福島市 18Bq/kg 16 Bq/kg 6/17 草地 茨城 那珂郡東海村 60Bq/kg 32 Bq/kg 5/11 未耕地 栃木 日光市 38Bq/kg 13 Bq/kg 9/15 未耕地 群馬 前橋市 1.1 Bq/kg 0.62Bq/kg 10/5 草地 埼玉 さいたま市桜区 4.8 Bq/kg 0.7 Bq/kg 7/30 草地 千葉 市原市 0.98 Bq/kg 0.65Bq/kg 7/21 草地 東京 新宿区 1.5 Bq/kg 2.3 Bq/kg 9/3 草地 神奈川 横須賀市 4.6 Bq/kg 4.4 Bq/kg 8/18 草地 新潟 柏崎市 5.9 Bq/kg 9.8 Bq/kg 7/23 草地 富山 射水市 2.1 Bq/kg 3.5 Bq/kg 8/5 草地 石川 金沢市 24 [...]