川口市の水道水の放射能汚染に関するブログの記事の誤りについて
2019年7月28日 内部被ばくを考える市民研究会 川根眞也
[改訂]2019年7月29日 内部被ばくを考える市民研究会 川根眞也
① 誤って大阪・高槻・市民放射能測定所の検査結果が「5ベクレル」標準汚染玄米のデータを掲載していました。ただしく、産業技術総合研究所の「81g,85ベクレル標準汚染玄米」のデータと差し替えました。
② 水道水の放射能汚染の濃度計算を川根も間違えました。正しくは埼玉県川口市の水道水の放射能汚染濃度は0.000289ベクレル/L。シーディークリエーションのブログの表記の0.0048ベクレル/Lの16.8分の1。
③ 小豆川勝見氏が2019年5月に行った、東京大学の水道水の放射能汚染の測定結果0.0024ベクレル/Lでした。もし、埼玉県川口市の水道水の汚染濃度が、2019年5月の東京大学の水道水の汚染濃度と同じ汚染濃度であるとすると、シーディークリエーションのシャワーヘッド浄水器の放射性セシウム除去率は12%になります。
④ なぜ、セシウム134濃度とセシウム137濃度とを合計してもいいのに、フィルターA(人工ゼオライト50g)、フィルターB(天然ゼオライト+活性炭80g)の濃度は足し合わせてはいけないか、説明を追加しました。
以上を中心に全面的に書き直しました。
[改訂版]2019年7月29日
川口市の水道水の放射能汚染に関するブログの記事の誤りについて 2019年7月26日 内部被ばくを考える市民研究会 川根眞也
改訂 2019年7月29日
(1)秋田市民放射能測定室べくれでねがさんが、セシウム吸着をするシャワーヘッド浄水器(シーディークリエーション社製 代表 鈴木優彰氏)に対して、誤検出連発、東大の小豆川勝見氏の検証では4.8%しか放射性セシウムを取っていない、と批判するブログを書きました。2019年6月28日。
川根は、自宅にこのシャワーヘッドを装着し、どれくらい放射性セシウムが取れるか、実験に協力してきましたし、その結果の一部について、内部被ばくを考える講演でも話してきました。
今回、改めて、シーディークリエーションのブログの内容を、電卓をたたいて検証したところ、測定結果は正しいのですが、重大な計算ミスがあることが分かりました。この計算ミスのため、水道水の放射能汚染水濃度が、本来の16.8倍高い濃度で推定される誤りがありました。また、その水道水の放射能汚染を計算する際に、吸着した放射性セシウムの重量を通水量で割るべきなのに、この濃度で割ってしまったために、高い放射能汚染が計算される結果となりました。埼玉県川口市水道水0.00486ベクレル/Lとブログでは書かれていますが、川根の再計算の結果は0.000289ベクレル/Lです。そのブログの約16.8分の1程度の濃度です。この問題については、シーディークリエーションの鈴木優彰氏にも伝え、現在、ブログ記事の訂正を求めています。
川根が協力した水道水の放射能汚染測定のブログで、測定結果は正しいものの、水道水の放射能汚染濃度を約16.8倍高く計算する内容となっていました。測定に協力したものとして、深くお詫びして、謝罪いたします。
以下が、川根が協力した水道水の放射能汚染測定に関するブログで、誤りを見つけたものです。他のブログ記事は、川根が協力した以外の、他地域の水道水の放射能汚染測定に関するにも同様な誤りがあります。
埼玉県川口市の水道水中のセシウム シーディークリエーション 2018年05月16日
https://cdcreation.grupo.jp/blog/2166771
埼玉県川口市の水道水中のセシウム シーディークリエーション 2017年02月12日
http://cdcreation.grupo.jp/blog/1657064
埼玉県川口市の水道水のセシウム汚染(2) シーディークリエーション 2017年07月19日
https://cdcreation.grupo.jp/blog/1838041
CDSW-01各地のセシウム値 シーディークリエーション 2017年04月01日
https://cdcreation.grupo.jp/blog/1717370
ミニシャワーヘッドに入れたゼオライト測定 シーディークリエーション 2016年09月01日
https://cdcreation.grupo.jp/blog/1440051
埼玉県川口市の水道水中のセシウム シーディークリエーション 2016年08月27日
https://cdcreation.grupo.jp/blog/1434246
(2)ただし、このシーディークリエーションのブログにおける、ヨウ化セシウムシンチレーション式放射能測定器iFKR-ZIPの測定結果については正しいものです。これはスペクトルデータを見て判断することができます。秋田市民放射能測定室べくれでねが氏の「黒のバックに緑色のラインが入っているものが掲載されている場合は誤測定の可能性が高いため」という批判はまったくあたりません。秋田市民放射能測定室べくれでねが氏も、東京大学の小豆川勝見氏も自らの放射能汚染測定結果にスペクトルデータをつけていません。スペクトルデータを検討することにより、誤検出がどうかがまず判断できます。スペクトルデータを公開できない測定こそ、誤検出の疑いがある、と判断されます。
(3)川根がシーディークリエーションのブログの計算ミスについて、すぐにわからなかったのは、ヨウ化セシウムシンチレーション式放射能測定器iFKR-ZIPの測定器の仕様を十分理解していなかったためです。今回、製作者のシンメトリックス社の野中修二氏の解説を聞き、仕様とその分析能力、使い方を理解することができました。同時に、シーディークリエーションのブログの計算ミスから、水道水の濃度を高く評価してしまったことを発見することができました。
専門的なことですが、通常のNaIシンチレーション式検出器やGe半導体検出器は、放射線を感知するヘッドと呼ばれる部分は円筒形をしていて、その上にドーナツ型のマリネリ容器に検体となる食品や水などを詰め込んだものをかぶせるようにして測ります。このヘッドと呼ばれる部分がGe(ゲルマニウムにアルミニウムなどの不純物を混ぜ込んだP型+シリコンにリンなどを混ぜ込んだN型をくっつけたもの)やNaI(ヨウ化ナトリウムの結晶)が入っています。しかし、NaIシンチレーション式検出器やGe半導体検出器では、試料が外側に向けて放射線を出した場合に、その放射線をカウントすることができません。
一方、シャワーヘッド浄水器を開発した、シーディークリエーションが使っている、CsIシンチレーション式放射能測定器iFKF-ZIPは、Ge半導体検出器やNaI測定器とは根本的に測定方法が違います。まず、CsIシンチレーション式放射能測定器iFKF-ZIPには測定室が2つあります。それもマリネリ容器を使うのではなく、通常のジップロップ袋に検体を160gずつ2つ入れて、それぞれの測定室に入れて測ります。ジップロック袋とジップロック袋の間に、CsI(ヨウ化セシウムの結晶)が挟み込まれるようにして、検体から出てくる放射線を四方八方から受けて、光信号にかえて測定します。当然、検体の外側に出た放射線は測れませんが、ジップロックでほぼ平面的になった形状で測るので、間に挟まれたCsIの結晶が受け止めた放射線と同じ量が外部にも出ている、として、計測を行います。
この仕様のため、CsIシンチレーション式放射能測定器iFKF-ZIPでは、検体重量が320gで測ることを前提に作られていて、1ベクレル/kg程度まで精度の高い測定ができます。大阪・高槻・市民放射能測定所で、このiFRK-ZIPを使って10時間測定で、産業技術総合研究所が作った81g,85ベクレルの標準汚染玄米を、誤差―2.01%まで測定できた測定結果がこちらです。
国立研究開発法人産業技術総合研究所の「標準玄米」試料測定 産総研85Bq/kg試料による機器チェック ブログ大阪・高槻・市民放射能測定所 2017年2月25日
https://takatsuki-sokuteisyo.blog.so-net.ne.jp/archive/201702-1
スペクトルデータ
iFKR-ZIPの仕様は検体重量を320gとしています。ですから標準米試料は81gです。iFKR-ZIPで打ち出されている数値を重量換算する必要があります。
その結果は次の通りです。
IFKR-ZIP測定値 Cs all 52.9Bq/kg Cs134 7.50Bq/kg Cs137 45.83Bq/kg
計算値 Cs all 53.99Bq/kg Cs134 7.32Bq/kg Cs137 46.67Bq/kg
測定値と計算値との差はわずかに-2.02%です。
(注)これは、産業総合研究所が、食品の放射能汚染を測定する放射能測定器が正しい値と出しているかをチェックするために、作った「81gで放射性セシウム85ベクレルの標準玄米」(2012年8月31日から産業総合研究所が頒布を開始)を測定したものです。セシウム134は半減期2.0年、セシウム137は半減期30.0年で減衰していきます。産総研の「81g,85ベクレル標準汚染玄米」は、2017年2月15日段階の理論値は、セシウム137については46.67ベクレル/kg、セシウム134については7.32ベクレル/kg、合計53.99ベクレル/Kgです。これに対して大阪・高槻・市民放射能測定所が同じ汚染レベルの「81g,85ベクレル標準汚染玄米」を測定した結果はセシウム137について45.83ベクレル/kg、セシウム134については7.50ベクレル/kg、合計52.9ベクレル/Kgです。放射性セシウム合計で比べると、iFLR-ZIP 52.9、理論値 53.99。その差 ―1.09。―1.09÷53.99×100=-2.02(%)
iFKR-ZIPでは1ベクレル/kgまでの測定も可能です。Ge半導体測定器だから、精度の高い測定ができる、というのは機器計測に対する誤解です。正確な校正や温度管理ができなければ、Ge半導体検出器でも数ベクレル/kgの測定にも失敗することがあります。放射性セシウム5ベクレル/kgの測定をGe半導体検出器で行った場合でも、±2~3ベクレル/kgの測定誤差を出してしまう例もあります。数ベクレル/kgの測定では、機器の能力だけでなく、Ge半導体検出器を使う測定者の技量も問われます。
秋田市民放射能測定室べくれでねが氏と小豆川勝見氏は、測定の数値だけではなく、スペクトルデータも公表するべきです。そうでなければ、低線量の放射能汚染が正確に測れているのか、判断できません。
(4)シーディークリエーションのブログの根本的な誤りは、同じ物質の濃度と濃度を、足し合わせたこと。その足し合わせた濃度で、水道水の汚染を計算したことです。
例えば、自転車を時速30kmで5分こいだあと、自転車で坂道を時速60kgで5分こいだとします。10分の間の平均の速さは、時速30km+時速60km=時速90kmでしょうか?いいえ。正しくはそれぞれのかかった時間を出し、それぞれの移動した距離を出し、時間、距離それぞれを合計した後、速度の割り算をします。5分+5分=10分、移動距離30×5/60=2.5kmと移動距離60×5/60=5と足す、7.5km。7.5kmを10/60で割ると、時速45kmになります。簡単に言うと、だいたい、平均速度は2つの速度の中間になります。濃度についても同じです。濃度は速度と同様足してはいけないのです。
2018年5月16日のシーディークリエーションのブログで、埼玉県川口市の水道水の通水量は約6ヵ月で38,473L。
人工ゼオライト50gについた放射性セシウム濃度は20.2ベクレル/kg(iFKF-ZIPの表示、重量を320gとして換算している)本当は50gしか検体の重量はないのですが、20.2ベクレル/kg濃度のものが320gについているとのiFKF-ZIPの検査結果が出ています。ベクレル/kgとは1kgあたり、つまり1000gあたりにどれくらいのセシウムが何ベクレルあるか、です。つまり、吸着したセシウムのベクレル数は20.2÷1000×320=6.464ベクレル(ここでは有効数字を無視して計算結果のみ)。しかし、実際の検体は50gですから、人工ゼオライトが吸着した放射性セシウム濃度は、6.464÷50g×1000g=129.28ベクレル/kgです。ここまでは、2018年5月16日のシーディークリエーションのブログの計算はあっています。
天然ゼオライト50g+活性炭30gについた放射性セシウム濃度は14.5ベクレル/kg(iFKF-ZIPの表示、重量を320gとして換算している)本当は80gしか検体の重量はないのですが、14.5ベクレル/kg濃度のものが320gについているとのiFKF-ZIPの検査結果が出ています。ベクレル/kgとは1kgあたり、つまり1000gあたりにどれくらいのセシウムが何ベクレルあるか、です。つまり、吸着したセシウムのベクレル数は14.5÷1000×320=4.64ベクレル(ここでは有効数字を無視して計算結果のみ)。しかし、実際の検体は80gですから、人工ゼオライトが吸着した放射性セシウム濃度は、4.64÷80g×1000g=58ベクレル/kgです。これも、2018年5月16日のシーディークリエーションのブログの計算はあっています。
問題はこの次からです。フィルターA、人工ゼオライトが吸着した放射性セシウム濃度 129.28ベクレル/kgと、フィルターB、天然ゼオライト+活性炭が吸着した放射性セシウム濃度 58ベクレル/kgと足して、187.28ベクレル/kgの汚染があった、と書いてしまったことです。
同じ物質の濃度と濃度とは足してはいけないのです。時速30kmと時速60kmで走った自転車の平均速度が時速90kmになることはありません。濃度も同じです。正しく計算するなら、平均濃度はそれぞれの濃度の中間くらいになります。
通常の放射能測定では、測定室が1つであり、測定は放射性セシウム2種類セシウム134,セシウム137を対象にして行われます。この場合は、人体への健康被害を推定するために、別々の違う核種ですが、セシウム134濃度とセシウム137濃度とを足し合わせます。
(注)正確には、セシウム134(半減期2年)の方がセシウム137(半減期30年)より、内部被ばくした場合の影響が大きいです。これは同じベクレル数でも半減期が2年と短いので、より短い時間により多くのベータ線、ガンマ線を出して、DNAや細胞を傷つけるからです。セシウム134とセシウム137とを足し合わせて評価するのは本来間違いで、セシウム134の過小評価につながります。本来であれば、セシウム134のベクレル数を1.5倍など大きくしてから、足し合わせるのが正当な評価であると言えるでしょう。
フィルターA(人工ゼオライト50g)、フィルターB(天然ゼオライト+活性炭80g)の測定はそれぞれ別々に行い、セシウム134の濃度、セシウム137の濃度を測定して結果を出しています。
ですから本来は
①フィルターAに吸着したセシウム134の量(ベクレル)+フィルターBに吸着したセシウム134の量(ベクレル)=シャワーヘッド浄水器が除去したセシウム134合計量(ベクレル)を出す。
②フィルターAに吸着したセシウム137の量(ベクレル)+フィルターBに吸着したセシウム137の量(ベクレル)=シャワーヘッド浄水器が除去したセシウム137合計量(ベクレル)を出す。
③ ①をフィルターA,Bの人工ゼオライト、天然ゼオライト、活性炭の合計重量(130g)で割り、セシウム134の吸着濃度(ベクレル/kg)を出す。
④ ②をフィルターA,Bの人工ゼオライト、天然ゼオライト、活性炭の合計重量(130g)で割り、セシウム137の吸着濃度(ベクレル/kg)を出す。
⑤ ①+②で人工ゼオライト、天然ゼオライト、活性炭の合計重量(130g)が取り除いた放射性セシウム総合計の重量(ベクレル)を出す。
⑥ ⑤を通水量で割って、1Lあたりの水道水の放射能汚染濃度を推定する。
という順番で計算するべきでした。
それをシーディークリエーションのブログでは、フィルターAが吸着したセシウム濃度(ベクレル/kg)とフィルターBが吸着したセシウム濃度(ベクレル/kg)とを足し合わせて、「セシウム総量」と表記していました。ここには、同じ物質のセシウム134濃度(A)+セシウム134濃度(B)と、合計されてしまっています。すなわち、自転車の例では時速30km+時速60km、つまり時速90kmで走ったと計算したことになります。本来は平均の速さを求めると、時速30kmと時速60kmとの中間くらいの数値になるはずですが、足し合わせると2倍くらいの数値になってしまいます。
同様に、フィルターAが吸着したセシウム濃度(ベクレル/kg)とフィルターBが吸着したセシウム濃度(ベクレル/kg)とを足し合わせて「セシウム総量」と表記することで、同じ物質のセシウム137濃度(A)+セシウム137濃度(B)とが合計されてしまっています。足し合わせると2倍くらいの数値になってしまいます。
さらに、1Lあたりの水道水の放射能汚染濃度を推定するには、実際にA,Bのフィルターに吸着したセシウム134,セシウム137の合計量(ベクレル)を通水量で割らなくてはいけないのに、A,Bの足し合わせた濃度(ベクレル/kg)で割ってしまったことです。
吸着したセシウムはセシウム134,セシウム137合計11.104ベクレルです。ですから、この11.104を通水量38,473Lで割らなくてはいけなかったのです。濃度+濃度で187.28ベクレル(表記はベクレル/kgだが、意味としてはベクレルとして計算している)もある、という計算をしてしまったのです。このことで、約16.8倍もの高い水道水の放射能汚染があるかのようなブログになっていました。
川根もiFKF-ZIPが2つ測定室がある、とは聞いていたので、すぐにはこのブログの誤りには気づきませんでした。製作者シンメトリックス社の野中修二氏の説明を聞いて、なぜ、2つの測定室があるのか、精度が高い測定ができるのはなぜか、と伺って、やっと、このブログの間違いを理解することができました。また、本来は、320gで測定ができるように、それも測定室の内側のそれぞれの面にジップロックが入った160gずつの検体が密着することを想定して作られている測定器ですから、50g、80gの検体では、測定器の仕様に合っていないため、正確な測定とは言い難いと思います。できれば、汚染された人工ゼオライトや、天然ゼオライト+活性炭に同様な性質の物体を加えて320gにして測定するのが、本来の仕様の測定能力が発揮されると思います。
いずれにしても数年間にわたり、このシーディークリエーションのブログの誤りに気がつかなかったことを深くお詫びいたします。
(5)ちなみに、2018年5月16日のシーディークリエーションのブログでは、埼玉県川口市の水道水の放射能汚染の濃度は、放射性セシウム濃度0.0048ベクレル/Lと記載されていますが、川根が計算しなおしたところ、放射性セシウム濃度は0.000289ベクレル/Lでした。先の約16.8分の1の濃度です。
シャワー浄水器の測定実験に協力し、また、ブログを見ながらも、その誤りに気がつけなかったことをここの深くお詫びいたします。
しかし、東京大学の小豆川勝見氏の水道水通水実験(シャワーヘッド浄水器の実験ではなく、東大の水道水の濃度を比較するために測った)では、小豆川勝見氏が、ブログの中で2019年5月に自身が「水道水に含まれる137Csを公定法[3]に基づいて測定しました。その結果、137Csの濃度は0.0024ベクレル/kgでした。」と書いています。これは、川根の自宅で2017年11月18日~2018年5月14日までの約6ヵ月通水した、38,473Lの水道水からこのシーディークリエーションのシャワーヘッド浄水器が取り除いた0.000289べクレル/L(川根の再計算の結果)と比べると約8.3倍です。もし、2019年5月時点での東京大学の水道水の濃度が、川根が6か月間シャワーヘッド浄水器を通水した期間の濃度と同じであるならば、このシャワーヘッド浄水器の放射性セシウム除去率は、1Lあたりに換算すると、水道水0.0024ベクレルに対して、0.000289ベクレル除去したことになります。つまり、除去率12%です。
一方、2019年5月に東京大学の小豆川勝見氏が行った、シーディークリエーションのシャワーヘッド浄水器の通水条件が、ブログに掲載されています。「通水条件は、一般家庭の用途を想定し、流量(SV)700(水量は1分間あたりに約2.2L、シャワーの1/3程度の流量)と設定し、室温、研究室内の水道水(Ca 6.02mg/L,Mg 5.25mg/L,硬度 3.67)を用いています」ブログの末尾[2]。
これはシャワーヘッド浄水器の使用目的とはまったく異なります。シーディークリエーションのシャワーヘッド浄水器の特徴は強い流水量で、浄水器内で渦のような水量が生じ、それが人工ゼオライト、天然ゼオライト+活性炭の間を通り抜けています。このことで、放射性セシウムを人工ゼオライト、天然ゼオライト活性炭に吸着させます。シャワーと同じ流水量がなければ、吸着量が落ちます。
通水条件が1/3も違えば、結果が違うのは当たりまえです。東京大学の小豆川勝見氏は、シャワーヘッド浄水器の仕様条件で実験を行うべきでした。シャワーヘッドに取りつけるものですから。除去率は4.8%ではなく、もっと高かった可能性があります。
また、川根の自宅水道水の通水実験を行ったころは、もっと、水道水の汚染が高かった可能性があります。2017年2月からの1年間と、2018年2月からの1年間で、福島第一原発が出した放射能の量を、東京電力の資料で比べると、2倍だったとNHKが報道しました。
資料 福島第一原発 放射性物質の放出量が前年比2倍に NHK 2019年3月8日
http://www.radiationexposuresociety.com/archives/10185
川根が実験に協力した時期の内では、特に2018年2月の福島第一原発からの放出量が大きく、前年が77000ベクレル/時に対して、2018年2月は240000ベクレル/時でした(東京電力 1~4号機からの追加的放出量の評価結果より)。ですから、実際の水道水はもっと汚染されていて、このシーディークリエーションのシャワーヘッド浄水器が取り除いたのは、12%ではなく、さらに低く数%であった可能性もあります。
図4 福島第一原発原子炉建屋からの追加的放出量の評価 2017年と2018年の比較 川根眞也 2019年3月25日
実際にはシャワーヘッド浄水器が吸着した放射性セシウム濃度から、水道水の放射能汚染は計算できません。放射性セシウムを1Lあたりどれくらい取り除いたかは、計算で求めることはできます。シャワーヘッド浄水器が取り除くのは、水道水の放射能汚染の一部であり、計算されたよりも高い濃度の水道水の放射能汚染がある、ことは肝に銘ずるべきです。
しかし、大事なのは、水道水から放射性セシウムが検出されること。それもGe半導体検出器やCsIシンチレーション式検出器で検出されるレベルの放射能汚染が東京都(東京大学)や埼玉県(川根の自宅)水道水から出る、ということです。
日本分析センターの阿部俊彦氏らが「1988年度降下物陸水海水土壌および各種食品試料の放射能濃度」という資料の中で、水道水の放射能汚染を9県で年1~4回測定した結果を報告しています(第33回環境放射能調査研究成果論文抄録集昭和63年度(1988年)科学技術庁)。
これによると、1988年度の日本の水道水の放射性ストロンチウム濃度、放射性セシウム濃度は
ストロンチウム90 0.0012ベクレル/L(試料数92)
セシウム137 0.0002ベクレル/L(試料数92)
先の東京大学の小豆川勝見氏は、東京大学の水道水を測定した結果が、0.0024ベクレル/Lですから、1988年当時のなんと12倍もの放射性セシウムが東京都の水道水から検出されたことになります。この問題について小豆川勝見氏は語りません。0.0024ベクレル/kgものセシウム137が出る水道水の危険性について、小豆川勝見氏は一言も触れません。
<参考>
市販品浄水器の放射性セシウム吸着率の検証 小豆川勝見 日付なし
https://user.ecc.u-tokyo.ac.jp/users/user-10609/purifier.html
余談ですが、2019年4月10日に、大熊町は町の面積の38%にも及ぶ地区を避難指示解除しました。その決定を大熊町が行う際に、参考にしたのが、土壌のプルトニウム239やストロンチウム90の汚染です。しかし、大河原地区3か所、中屋敷地区2か所のプルトニウム239やストロンチウム90しか公表されていません。それも大気圏内核実験の汚染と変わらないレベルの数値です。果たして、38%の町がこの汚染レベルなのでしょうか?
この避難指示解除にOKを出したのが、大熊町除染検証委員会ですが、東京大学、小豆川勝見氏はこの大熊町除染検証委員会の委員です。ストロンチウム90を測る専門家が「大丈夫だ」と言ったから、大熊町の避難指示解除は行われたのです。
図5 第1回大熊町除染検証委員会 委員 出席者 2018年11月8日
<参考>
2019年4月10日、東電福島第一原発の立地自治体、大熊町の避難指示解除のデタラメを問う。プルトニウム239+240、ストロンチウム90の合計100箇所のデータを公開せよ!
http://www.radiationexposuresociety.com/archives/10325
先に紹介した、小豆川勝見氏のブログには、国際原子力機関(IAEA)のリンクが貼ってあります。小豆川勝見氏が、国際原子力機関(IAEA)に無批判であり、国際原子力機関(IAEA)の放射線防護理論を丸ごと受け入れていなければ、自身のブログに国際原子力機関(IAEA)のリンクは貼らないでしょう。
まさか、小豆川勝見氏は国際原子力機関(IAEA)の次期日本委員候補なのでしょうか?
(6)シーディークリエーションの鈴木優彰氏にもブログの誤りを伝え、現在、ブログ記事の訂正を求めています。当面、誤解を生むことがあることを深くお詫びいたします。しかし、東日本全域の水道水の放射能汚染が事実としてあることは変わりません。
ベクレルからシーベルトを計算する数式も、国際原子力機関(IAEA)や国際放射線防護委員会(ICRP)が定めた、実効線量係数に基づくものです。市民団体でも、この実効線量係数を無批判に使い、内部被ばくが計算できるとか、これくらの放射能汚染は年間1ミリシーベルトにはいかない、という誤った放射線防護理論が信じられています。
しかし、年間1シーベルトの内部被ばくは、2011年7月時点での計算では、1人の人間のからだの中に放射線セシウムが5万1000ベクレル、たまった時です。これは国際放射線防護委員会(ICRP)の実効線量係数を使うと、このようなところまで、安全、となるのです。なぜなら、国際放射線防護委員会(ICRP)は、一般人に年間1ミリシーベルトを許容線量としていますから。しかし、1人の人間のからだの中に、5万1000ベクレルもの放射性セシウムがあるのは、死の危険があります。事実、川俣町で自家野菜、野生きのこを食べて、2万ベクレルも蓄積した男性は、この毎日新聞の記事が書かれた1年後、突然死されています。
毎日新聞2012年8月22日 自家栽培の野菜食べ 福島の男性2人
国際原子力機関(IAEA)や国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護理論を信じていると、殺されます。これからも、川根は、東日本に広がる放射能汚染の実態を明らかにし、市民の健康を守るために活動をしていきたいと思います。
以下に、上記毎日新聞の記事も掲載されています。
<参考> 放射能の基礎知識 人工放射能はなぜ危険か?
http://www.radiationexposuresociety.com/archives/6988