<解説>

 福島民友新聞は、毎週日曜日に東大医学部卒の坪倉正治医師(福島医大特任教授、相馬中央病院、南相馬市立総合病院、ひらた中央病院)が、「坪倉先生の放射線教室」の連載をしています。毎回、「これくらいの放射線は安全です」を刷り込むような、非科学的解説が繰り返されています。今回は、2018年10月14日掲載「大事なのは『どの程度か』」を取り上げて、その議論の間違いを指摘します。

<福島民友記事>

大事なのは「どの程度か」坪倉先生の放射線教室 2018年10月14日掲載

 私たちが日常食べている野菜や果物の中には、添加物や農薬ではない、さまざまな種類の発がん物質が含まれています。発がん物質が含まれる、と聞くとそれを食べるのが怖くなりますし、避けたくなるのが人情です。
 数年前の話になりますが、とある国際機関が加工肉を食べ過ぎると大腸がんが増えるといった内容の発表をしました。肉をたくさん食べる国を中心に波紋を呼びましたし、「ソーセージやハムでがんになる」といったような扇動的なフレーズが飛び交いました。
 それとは逆に、「これを食べれば健康になる」と言われると、その食材を毎日食べる方が増え、スーパーでは売り切れることもあります。
 気持ちは分かりますが、ぜひ惑わされないでください。大事なことは、これらのリスクや有効性はあるかないかの0か1ではなく、どの程度か? どれくらいの大きさか? ということです。
 例えば放射線と比べるなら、喫煙や飲み過ぎ、痩せ過ぎや肥満、運動不足などの生活習慣は100ミリシーベルトの被ばく影響よりも大きいです。現在の放射線から考えれば、文字通り桁違いです。身近すぎて目に入らない時もあるのですが、危ないか危なくないかではなく、大事な順番とその大きさを知ることはとても大切です。

<解説>

 この、放射線被ばくと、生活習慣とを比べて発がんを議論するのは、間違いです。環境省の「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」にも、放射線被ばくと生活習慣による発がんを比べた、下記のような図表があります。

 この資料のように、かならず「国立がん研究センター」が研究したかのように書かれていますが、国立がん研究センターでは、実は、放射線被ばくと発がんリスクは調べていないのです。国立がん研究センターで調べているのは、「喫煙」「飲みすぎ」「やせすぎ」「肥満」「運動不足」と発がんとの関係です。国立がん研究センターのがん予防・検診研究センター予防研究部の津金昌一郎氏が、がんのリスク– 放射線、ダイオキシンと生活習慣 -という資料を作っていますが、当の放射線の発がんリスクについては、放射線医学総合研究所の孫引きでしかありません。国立がん研究センターは、放射線とがんとの因果関係を調べてもいないし、研究してもいません。放射線と発がんとの関係を調べているのは、放射線医学総合研究所であり、この放射線医学総合研究所はABCC、放射線影響研究所の流れを組む、アメリカの核兵器戦略体制を擁護する立場で管理・運営されている組織です。ビキニ事件で被ばくした、第5福竜丸の乗組員を肝臓がんを見つけながらも、見殺しにしてきた機関です。

<参考> 国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルを信用したら、殺されます。ICRP pub111より

 国立がん研究センターが、生活習慣と発がんの関係を研究した、以下の表をご覧下さい。このがんの中に「甲状腺がん」がないことにご注目下さい。また、発がんの要因に「放射線」「放射性物質」がないこともにもご注目下さい。国立がん研究センターが研究しているのは、生活習慣と発がんとの関係であり、放射線に関しては門外漢の立場に置かれています。その「国立がん研究センター」の名前を使って、さも「運動不足」の方が「100ミリシーベルトの被ばく」より発がんリスクが高い、というのは詐欺です。

 そして、原発事故を引き起こしてしまった日本では、放射線被ばくは生活習慣と切り離して考えれるものではありません。もはや東日本に住む人間は、日常的な被ばく状況に置かれています。その被ばく状況の深刻なところと、比較的薄いところとで、発がんリスクを比べるべきではないでしょうか。また、日本に生活しながら、放射能汚染地帯の食べ物を日常的に食べる人と、放射能で汚染された食べ物を食べない人との発がんリスクを比べる必要があるのではないでしょうか。

 国立がん研究センターの独立した、放射線被ばくと発がんリスクの調査・研究体制を求めます。

<解説> 国立がん研究センターの検索画面で、「放射線被ばく がん」と検索をかけても、検索結果が何も出てこない。国立がん研究センターは、放射線と発がんとの関係を研究した成果を何一つ持っていません。