玄海4号機プルサーマル 必要性理解 玄海町長選初当選 脇山伸太郎氏に聞く 「正式な話なく、容認でもない」

佐賀新聞 2018年07月31日

 2018年7月29日投開票された東松浦郡玄海町長選で、現職から後継に推されて初当選した前町議の脇山伸太郎氏(61)が30日会見し、核燃料サイクルの観点から、玄海原発3号機で実施しているプルサーマル発電を4号機にも導入する必要性に理解を示した。ただ、現時点で九州電力から打診があったわけではなく、容認している訳でもないとも述べた。唐津市が目指す原発再稼働の同意権を広げる協議会設立については態度を留保した。(藤本拓希)
 ■当選から一夜明けた。心境は。
 議員経験はあるが、端から見ていた町長と、実際に町長になることとは全く違う。不安もあるが、岸本町政を引き継ぎながら、私なりのカラーを出していきたい。選挙でも感じたことだが、北部と南部の旧村のしがらみをなくしていきたい。
 ■選挙戦では争点にならなかったが、九州電力玄海原発とどう向き合っていくか。
 福島第1原発事故では、(電気を供給している)配電区域の外に原発を持つ東京電力のおごり、慢心を感じた。九州電力には玄海町に地元意識を持ってほしい。福岡県に原発があるような意識で運営してもらいたい。
 ■玄海3、4号機が再稼働した一方で、使用済み核燃料の保管量には余裕がなく、行き場がない。
 (使用済み核燃料を再処理、活用する核燃料サイクルの要となる)高速増殖炉「もんじゅ」が頓挫し、青森県の再処理工場も動いていない。余剰プルトニウムも増え続けている。玄海4号機へのプルサーマル発電導入の話がくるのではという予測がある。必要であれば考えていかなければいけない。3号機でも実績があり、大丈夫ではと思う。ただ正式な話があったわけではなく、導入拡大を容認しているわけでもない。
 1号機は廃炉になり、安心した。2号機は出力が3、4号機の約半分で、新規制基準に沿った安全対策費用のことを考えると、運転を延長して本当に採算が合うのか。九電が考えることだが、難しい気がする。
 ■唐津市の峰達郎市長は原発再稼働などの同意権を巡り、立地自治体以外への拡大を検討する協議会の設立を新町長に打診する考えを示している。
 自分の考えはあるが、県や九電と結んだ安全協定との関係もあり、今はコメントしない。ただ(同意権を拡大した)茨城方式を取ると、再稼働へのハードルは上がるとは思う。
 ■人口減や若者の流出が止まらない。まず何に取り組むか。
 町内には働く場所がなく、これから結婚、子育てをしようとする世代にとっては魅力ある町ではないかもしれない。年度途中であり、公約に掲げた政策推進室の新設は来年度になるだろう。まず雇用をつくり、町内に住んで働いていける環境をつくっていく。

 原発、争点ならず町長選回顧
 3期12年の岸本英雄町政の継承か、変革かが問われた東松浦郡玄海町長選は、現職後継の脇山伸太郎氏(61)が、変革を訴えた中山敏夫氏(63)を破った。玄海原発3、4号機が6月までに再稼働し、共に原発容認の立場だったこともあって、今回も原発は争点とならなかった。
 初当選した脇山氏は17年近い町議時代の活動をアピール、定例議会での一般質問を欠かさず、地道な地域活動が評価された。現職の岸本英雄町長(65)をはじめ、新旧の町議会議長ら現町政を支える人たちの後押しを得たほか、元町議などの組織も生かして「継承」への支持を広げた。
 2人の差は638票。4年前、岸本氏に330票差まで迫った中山氏だったが、後継の脇山氏に差を広げられた。前回は、小中学校の統合で学校がなくなる町北部の不満や、岸本町政の長期化への批判も追い風に票を積み上げた。今回は新人同士となり、町を二分するような争点もなく、両候補ともソフト事業を中心に訴えていて違いが見えにくかったのも影響した。
 住民サービス拡充を競い合った格好だったが、原発頼みで細る歳入にどう対応するかは見えなかった。使用済み核燃料の行方や2号機の存廃といった課題もある。新町長は選挙戦で語られなかった論点への考えを示し、議会もただしていく姿勢が求められる。(藤本拓希)