再稼動工程(5号検査と言います。いわば、最終試験。)を目前に控えた、2018年8月20日、放射能漏れを起した高浜原発4号機は、たった11日後の2018年8月31日17時に再稼動工程を始めました。関西電力が公表した資料を読むと、驚くべきことが書かれています。今回、4号機の原子炉のふたの部分に取り付けてあった、温度計を出し入れする穴から放射能漏れが起きました。

 以下、2018年8月24日に公表された、関西電力の資料を読むと、この温度計を出し入れする管、フランジとコラムと呼ばれる部分にゴミが入らないようにするために、「養生テープ」を巻きつけていた。その「養生テープ」に異物(直径約0.3mm)がついていて、コラムから養生テープを外すときに、フランジとコラムの間に入ってしまい、パッキンとの間に挟まり、いつしか、そのゴミが取れたために、隙間ができて、そこから放射能が漏れた、というのです。

 関西電力の対策は、この「養生テープ」をよく拭いてゴミがつかないようにする、です。

 果たして、本当にこれで大丈夫なのでしょうか?

<関西電力の対策が論拠不明>

1.これらはすべて推論であって、直径0.3mmの異物は見つかっていない。痕跡があるだけ。

2.そもそも、大量の放射能が舞い散る中で、ゴミが付着しない状態で、温度計引出管接続部を点検、接続することが可能なのか?

 このような原子炉圧力容器からの直接の放射能漏れはどんなに微量であっても、重大な事故につながりかねません。なにせ、内部の温度と圧力は、「一次系冷却材の温度が286℃、圧力が157気圧」なのですから。関西電力の拙速な対応と、再稼動工程の開始に反対します。

 欠陥、原発はただちに運転を止めるべきです。

 以下、関西電力が2018年8月24日公表した資料を全文転載します。

高浜発電所4号機の定期検査状況について(原子炉容器上蓋の温度計引出管接続部からの蒸気漏れに係る原因と対策について)
関西電力 2018年8月24日

 高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、第21回定期検査中の8月20日15時頃、最終ヒートアップ(昇温・昇圧)後の現場点検中に、原子炉容器上蓋の温度計引出管接続部から、わずかな蒸気が漏えいしていることを当社社員が発見しました。今後、漏えいの原因について調査する予定です。なお、本事象による環境への放射能の影響はありません。

2018年8月20日お知らせ済み]

※原子炉容器の上蓋上部に設置されている筒状のもので、炉内の温度を計測する温度計を挿入するためのもの。

1 原因調査

 蒸気漏えいが確認された原子炉容器内温度計引出管接続部の構成部品を取り外し、各部位の点検を実施しました。

(1)点検結果
  1. ①上部クランプ

    ・外観点検の結果、変形や傷等の異常は認められませんでした。また、締付寸法計測、締付トルクを確認した結果、異常は認められませんでした。

  2. ②温度計引出管の支持筒(コラム)

    ・パッキンを取り付けている部分にほう酸の析出痕を確認しました。ほう酸を除去した後、パッキンとの接触面やポジショナのはめ込み部(溝部)などの外観点検を実施した結果、変形や傷等の異常は認められませんでした。

  3. ③フランジ

    ・パッキンとの接触面やポジショナとの接触面の外観点検を実施した結果、変形や傷等の異常は認められませんでした。

  4. ④ポジショナ(コラム位置決め治具)

    ・フランジとの接触面を点検した結果、変形や傷等の異常は認められませんでした。また、据え付け状態確認のため、コラム上端面とポジショナ上端面の周方向3箇所の高低差を計測した結果、有意な傾きがないことを確認しました。

  5. ⑤パッキン

    • ・コラムとフランジの間に挿入されていたパッキンの外観点検を実施した結果、コラムとの接触面にほう酸の析出痕を確認しました。また、ほう酸を除去した後、拡大観察を行った結果、接触面に微小なへこみ(直径約0.3mm)が認められました。
    • ・パッキン納入時の製品検査成績書を確認したところ、外観に問題がない製品が納入されていることを確認しました。
    • ・このため、コラムとの接触面に何らかの微小な異物が噛みこんだ可能性があるものと推定しました。
(2) 作業手順の確認(温度計引出管接続部の構成部品の組立作業)

 パッキンとコラムの接触面に異物が混入した可能性について、調査を実施した結果は以下の通りです。

  • ・温度計引出管接続部は、定期検査毎に取り外し、各構成部品の点検を行い、その後、一次冷却材系統のヒートアップ(原子炉の昇温・昇圧)前に組立作業を実施しています。
  • ・組立作業は、コラム上部の温度計引出管に養生テープを巻き付けた後に清掃を実施し、パッキンを装着、フランジを据え付ける手順となっています。その後、異物混入防止のため、コラムとフランジの隙間には養生テープを取り付けていたことを確認しました。
  • ・その後、下部クランプを据え付け、コラムとフランジの隙間の養生テープを取り外し、ポジショナを装着する手順となっており、その際に異物が混入した可能性があるものと推定しました。

(3)運転履歴
  • ・原子炉容器内温度計引出管の接続部の構成部品を組み立てた後、原子炉起動前の社内検査として、8月16日に一次冷却材漏えい試験(一次冷却材の温度110℃、圧力164気圧)を実施した際の当該部の点検の結果、漏えいは認められなかったことを確認しました。
  • ・その後、一次冷却材系統の温度を約60℃、圧力を約3気圧まで降温・降圧し、原子炉起動準備を行った後、8月18日より、昇温・昇圧を実施しました。
  • ・漏えい確認時点のプラントの状態は、一次系冷却材の温度が286℃、圧力が157気圧であることを確認しました。
2 推定原因

 当該箇所の組立作業時に、養生テープに表面に付着していた何らかの微小な異物がコラムとフランジの隙間に混入し、パッキンのコラムとの接触面に噛み込みました。その後、一次冷却材の温度上昇等に伴い、異物が押し出されたことにより、その部分が漏えい経路となり蒸気の漏えいに至ったものと推定しました。

3 対策

 当該漏えい箇所のパッキンを新品に取り替えます。
 また、ポジショナ取付け前に、養生テープ表面の清掃を行うことを作業手順書に追記して異物混入防止の徹底を図ることとします。

以 上