2016年6月6日に福島市で開かれた、第23回県民健康調査検討委員会において、福島の子どもの小児甲状腺がんは、「先行検査」では115人(がん疑いを含む)、「本格検査」で57人(がん疑いを含む)。合計172人であることが発表されました。

 今朝の新聞各紙です。一番記事が3面と目につきやすく、比較的ていねいな解説があるのが、東京新聞でした。しかし、6月7日午前11時の時点で東京新聞電子版に記事は掲載されていません。また朝日、毎日は非常に小さい記事でした。紙面をよく探さないと見落としてしまうようなそれぞれ25面、25面に掲載されたベタ記事でした。

 読売新聞にいたっては、全国版には一切記事がありません。地方版 福島県にしか掲載されていません。読売新聞は、「この小児甲状腺がんの問題は福島県内だけの問題だ」という見解なのでしょうか?

 こうして、日本の人々からも、福島の子どもたちの小児甲状腺がんが忘れさられていこうとしています。宮城県丸森町で2人もの小児甲状腺がんの子どもが見つかっているのに。これは10万人あたりの発症率で言えば、128人/10万人です。福島県立医大 鈴木眞一氏はこれまで日本の子どもたちの小児甲状腺がんの発症率は10万人あたり、0.2人か0.3人と言ってきました。宮城県丸森町の発症率はまさにチェルノブイリ原発事故の影響を受けた、ベラルーシ共和国のゴメリ州における小児甲状腺がんの発症率すらはるかに超えます。北茨城市でも3人の子どもたちが小児甲状腺がんと診断されました。これは10万人あたりの発症率で言えば、63人/10万人です。

 福島県だけでなく、福島と同様な放射能プルームが通過した、宮城県丸森町や茨城県北茨城市でも小児甲状腺がんの子どもたちは見つかっているのに、この国や自治体は何をしているのでしょうか。大新聞はこの問題をどのように考え、報道しているのでしょうか。事態はますます深刻になってきています。高放射能汚染地帯から、子どもたち、妊婦をはじめ、住民を避難させるべきです。初期被ばくに加えて、土壌に結びついた放射性物質を呼気で吸い、放射能を含んだ食べ物を食べ続けることは、発がんリスクをいっそう高めることになります。政府と各自治体への取り組みを始めましょう。

 少なくとも、放射線管理区域(4万ベクレル/m2超え)は、18歳未満立ち入り禁止です。つまり、学校、公園、スポーツ施設などの教育施設は閉校、閉鎖するべきです。これは自然放射線が0.04マイクロシーベルト/時であったところは、地上1mで0.13マイクロシーベルト/時に相当します。(セシウム137が4万ベクレル/m2あると、その1m上の空間線量率は0.09マイクロシーベルト/時分上がる。)学校閉鎖の基準を電離放射線防護規則にのっとり、作るべきです。

<新聞記事 全文>

 福島 全子ども対象 甲状腺検査2巡目 がん確定は30人に 2016年6月7日 東京新聞 朝刊 3面

東京電力福島第一原発事故の健康への影響を調べている福島県の「県民健康調査」検討委員会が6日、福島市で開かれた。県内すべての子どもが対象の甲状腺検査を巡り、2014年4月に始まった2巡目の検査でがんと確定したのは、前回会議(今年2月)での報告から14人増えて30人となった。がんの疑いは27人。

確定と疑いの計57人は、事故から約3年までの1巡目の検査でほとんどが「問題ない」と診断されていた。委員会後の記者会見で、星北斗座長(福島県医師会副会長)は「原発事故の影響とは考えにくい」と従来の見解を繰り返しながらも「人数が増えて県民の不安が増していることも間違いない。さらに詳細な調査をしたい」とした。

 検査を実施する福島県立医大などによると、57人は事故当時5~18歳の男女で。腫瘍の大きさは5.3~35.6ミリ。このうち4ヶ月間の外部被ばく線量が推できたのは31人で、最大値が2.1ミリシーベルト、11人が1ミリシーベルト未満だった。

 約30万人が受診した1巡目の検査も合わせ、これまでにがんと確定したのは計131人、疑いは41人。

 福島、甲状腺がん131人に 2016年6月7日05時00分 朝日新聞 朝刊 25面記事

  福島県は6日、東京電力福島第一原発事故当時18歳以下の約38万人を対象にした甲状腺検査で、1月から3月の間に新たに15人ががんと診断され、計 131人になったと発表した。うち1人は事故当時5歳だった。県の検討委員会は「これまでのところ被曝(ひばく)の影響は考えにくい」としている。

福島第1原発事故 当時5歳の1人、甲状腺がん疑い 毎日新聞 2016年6月7日 朝刊 25面

 東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会は6日、当時5歳の1人が甲状腺がんかその疑いがあると明らかにした。甲状腺がん発生で放射線の影響は考えにくいとする理由の一つだった「5歳以下の診断例がない」状況が変わる可能性があるが、同委は「(影響が考えにくいとする)論拠を変える必要はない。これからどれくらい出るか検証する」としている。

 福島県によると、放射線への感受性は大人より子どもの方が高く、チェルノブイリ事故では、当時5歳以下でも甲状腺がんが多発していたという。

 健康調査は県が2011年6月から実施。甲状腺検査は事故時18歳以下だった約37万人を対象に15年4月まで1巡目を実施し、14年4月からは2巡目に入っている。これまで5歳以下の診断例がないことなどから、検討委が1巡目の結果に基づき作成した今年3月の中間まとめで、甲状腺がんの発生について、放射線の影響は「考えにくい」としていた。

 検討委は、今年3月までに2巡目で30人ががんと確定したことも報告。昨年末と比べ14人増で、「疑い」は同8人減の27人だった。「疑い」が減った理由について、県は「8人ががんと確定されたため」と説明している。【曽根田和久】

事故当時5歳男児「甲状腺がんの疑い」 2016年06月07日 読売新聞 朝刊 地方版 福島

◆調査委「放射線の影響考えにくい」…県2巡目検査

県立医大は6日、県が県民に実施している2巡目の甲状腺検査(2014年4月開始)の結果、事故当時5歳だった男児が「甲状腺がんあるいは疑いあり」と診断されたと発表した。5歳以下の子供が、がんもしくは疑いがあると診断されるのは、1巡目を含めて初めて。県民健康調査検討委員会の星北斗座長は「事故の放射線の影響とは考えにくい」との見解を示した。

 検査は東京電力福島第一原発事故当時、18歳以下だった県民などが対象。

 同委員会は3月、甲状腺がんに対する放射線の影響は考えにくいとした理由の一つに、「事故当時5歳以下では、がん発見がない」ことを挙げていた。

 福島市でこの日開かれた委員会後の記者会見で、星座長は「1人出たからといって評価を変えることはない」と話す一方、「今後出てくるのかきちんと検証する必要がある」とも述べた。

 2巡目の検査は3月末で26万7769人が受けた。30人が甲状腺がんと診断され、疑い例を含めると計57人になる。