まだ川内原発1号機は再稼働していない。NHK、朝日新聞はうそ

 哲野イサク氏は、川内原発1号機は現在「起動後検査中」であり、この起動後検査を含む「保安検査・使用前検査適合」によって「規制基準適合審査」が終わり、最終的に合格したことになる。つまり、原子力規制委員会が、川内原発1号機が新規制基準に適合していると認めたことになると解説しています。

 2015年8月11日NHKの報道では、「起動から12時間半後の8月11日午後11時ごろに核分裂反応が連続する『臨界』と呼ばれる状態になり、3日後の8月14日に発電を始めたあと、徐々に原子炉の出力を高め、9月上旬に営業運転に入る計画です」とありますが、原子力規制委員会は、2015年8月14日以降に「起動後検査の適合」を判断するはずです。これと同時に、川内原発1号機が新規制基準適合とさせるはずであり、万が一、この「起動後検査中」に異常が発見された場合は、「起動後検査」不適合、つまり、新規制基準の不適合(=不合格)が原子力規制委員会によって判断されることもあるのです。

<追記> 2015年8月14日 7:20am

 2015年8月12日大分県で、そして今朝8月14日は熊本県で異常な空間放射線量の上昇が見られた、という情報が入りました。原子力規制委員会のモニタリング情報では、時系列データを見ることができます。しかし、データをcvsデータとしてダウンロードできなくなっています。

 これはちょうど2015年4月8日、福島県で、福島県が3月末に設置したモニタリングポストが通常の1000倍も超える異常値を記録したときと同じです。そのときも、時系列データが見ることができるが、ダウンロードできなくなりました。

 川根が手作業でデータを書きうつし、EXCELでグラフ化した、大分県 県衛生環境研究センターのここ1週間分の空間放射線量率の推移です。川内原発1号機が臨界に達する前に、放射性物質が漏れたのではないでしょうか?

測定日時    放射線量(μSv/h)1m高さの推計値(μSv/h)   

8月12日 10:00   0.065       0.067
8月12日 11:00   0.067       0.069
8月12日 12:00   0.066       0.068
8月12日 13:00   0.064       0.065
8月12日 14:00   0.062       0.064

※ 通常の空間放射線量率は 0.050と0.051(1mの高さ)。これより0.015μSv/hも高くなっている。

【追記終了】

 【追追記】2015年8月14日 9:50am 熊本県の空間放射線量率も8月12日異常値に。通常値の2倍以上。

 NHKの報道では、「川内原子力発電所1号機は、8月11日午前10時半に原子炉の起動が行われ再稼働しました。国内の原発が稼働するのは東京電力福島第一原発の事故のあと作られた新しい規制基準のもとでは初めてで、おととし9月に福井県にある大飯原発が停止して以来1年11か月ぶりです。」と、原子炉の「起動」=「再稼働」としていますが、これは意図的な誤解です。川内原発1号機が新規制基準に合格するのは早くても8月14日以降。そして、原発再稼働のためには地元30km圏内の自治体の同意が必要。その上で、安倍政権が再稼働の政治的判断をすることになっていることを解説しています。以下が哲野イサク氏がこれまでの原子力規制委員会の「実⽤発電原⼦炉に係わる新規制基準について」(2013 年7 ⽉原⼦⼒規制委員会など)を整理してまとめた、原発再稼働許可までの法的⼿続きフローチャートです。(クリックすると大きくなります。)

 ところが、NHKも大手新聞も、2015年8月11日の原子炉の起動が、あたかも再稼働のように報道しています。これは意図的な誤報であり、原発再稼働に反対する市民に「あぁもう、川内原発は再稼働してしまったのか」と思わせ、運動を鎮静化させるための世論操作です。極めて悪質です。

 哲野氏が解説しているように、「起動」は原子炉から制御棒を抜き、核燃料が正常核分裂が行われることで発⽣した蒸気でタービンを回して電⼒を生産することを指します。これに対して、「再稼働」とは⽂字通り原発が電⼒⽣産の体制に⼊り実際に電⼒網(グリッド)に電気を供給する状態を指します。

 

 

8月14日以降に「新規制基準適合」=合格か?再稼働のためには地元の同意と政府の政治的判断が必要

 この「再稼働」には、新規制基準適合の上に、①原発立地自治体の同意(原発⽴地⾃治体の範囲は現在不明確だが、最低でも30km 圏の⾃治体)②政府の政治的判断が、必要であるとされています。

 九州電力は、本来であれば新規制基準適合の後に、①パブリック・コメントの実施、②住民説明会の実施、③原発立地自治体の同意を得るべきところでした。何と新規制基準適合(2015年8月14日以降になるはず)の前、去年の2014年8月15日にパブリック・コメントを締め切り、そのパブリック・コメントのまとめも発表しないまま2014年9月10日、原子力規制委員会は、川内原発1、2号機が新規制基準の3つの重要な認可のうちの根幹である、「原⼦炉設置変更許可」に適合していると審査書を決定したのです。これを持って、大新聞はみな「新規制基準の合格した」とまず宣伝したのでした。

※3つの重要な認可とは「原⼦炉設置変更許可」、「⼯事計画変更認可」、「保安規定変更認可」

原発30km圏内の住民の圧倒的多数は再稼働反対

  また、本来であれば、新規制基準適合の後に開催すべきである住民説会を、2014年10月20日までに、薩摩川内市、日置市、阿久根市、さつま町、いちき串木野市の5市町で開催(2589人が参加)しています。そこでは県が実施したアンケートには、原発再稼働に賛成か、反対かの項目すらありませんでした。アリバイ作りのための住民説明会であり、再稼働に向けた合意形成などできていません。事実、毎日新聞が、この5つの市町の説明会に参加した50名に聞いたアンケートでは、

(1)川内原発は「安全」だと思いましたか?

思わない 34人

思う 16人

(2)再稼働に賛成ですか?

反対 33人

賛成 16人

(3)住民に再稼働の賛否を聞くべきだと思いますか?

聞くべきだ 38人

聞く必要ない 12人

ー毎日新聞 朝刊 2014年10月22日 

 これが住民説明会を終えた後のアンケートです。地元の住民合意が得られているとは言えません。 

 そして、一番最後は10月20日いちき串木野市の住民説明会が開催されましたが、本来はその一週間前10月13日に開催される予定でした。それが台風のために延期され、2014年10月20日に開催されることになったのです。しかし、この10月20日に、川内原発がある薩摩川内市の市議会特別委員会は「川内原発再稼働求める市民の陳情」を採択しています。まずもってスケジュールありきの強行採決でした。

 同年10月28日、川内原発がある薩摩川内市の市議会は「川内原発再稼働求める市民の陳情」を採択、岩切秀雄市長が再稼働に同意すると表明、鹿児島県議会も同年11月7日に、鹿児島県臨時県議会の原子力安全対策等特別委員会(15人)は、31本の川内原発再稼働に反対する陳情(3号機増設反対やすべての原発の廃炉をもとめる陳情も含む)を否決し、たった1本の薩摩川内市の商工団体などが提出した「川内原子力発電所1・2号機の一日も早い再稼働を求める陳情」を採択しました。伊藤祐一郎県知事も同日、「国民の生活レベルを守り、わが国の産業活動を維持する上で再稼働はやむを得ない。政府の再稼働方針を理解する」と表明しました。

 【出典】『第68回伊方原発再稼働を止めよう!2015年8月8日』 ブログ 反被曝・反原発 広島2人デモ

 一方、日置市、姶良市(あいらし)、いちき串木野市は、原発立地自治体として「地元」に3市を加えるよう県に求める意見書を可決。姶良市議会は再稼働反対と廃炉を求める意見書を可決しています。鹿児島県知事 伊藤祐一郎氏は「同意が必要な自治体を県と立地自治体の薩摩川内市のみ」と説明しています。(東京新聞朝刊 2014年11月7日)

原発30kmk圏内の同意は必要ないのか?

 原発30圏内の住民の同意は必要ないのでしょうか? 

 薩摩川内市に隣接するのは2市、いちき串木野市と阿久根市です。いちき串木野市は2014年9月30日に川内原発の再稼働を求める陳情を否決、阿久根市も2014年11月6日川内原発の再稼働を求める陳情を否決しています。

 果たして、③原発立地自治体の同意を得ることができている、と言えるのでしょうか。

 川内原発から30km圏外でも、次々と声が上がっています。熊本県水俣市議会は7月2日、「水俣市での住民説明会開催に関する決議書」を全会一致であげました。「国民の同意が得られているとは到底いえません」と強調。川内原発について「地震問題、火山問題、過酷事故対策、使用済み燃料、避難計画など、安全上の問題が数多く指摘されています」としたうえで、「40キロの距離にある水俣市民は、再稼働されることに不安を持っています」「住民への十分な説明がないままに、再稼働に踏み切ることは、公的責任を負う電力事業者として、責任のある態度とは思えません」と厳しく批判しています。

 川内原発30km圏外でも、10市町が「再稼働にあたって九電に公開の住民説明会を求める」決議や陳情を採択しています。宮崎県では高原(たかはる)町、鹿児島県では、日置市、出水(いずみ)市、伊佐市、日置(ひおき)市、肝付(きもつき)町、南種子(みなみたね)町、屋久島町の3市3町。熊本県では、荒尾市、水俣市、大津(おおづ)町の2市1町。ちなみに、鹿児島県議会は再稼働に賛成の陳情を採択、宮崎県議会と熊本県議会は川内原発再稼働に関して、川内原発再稼働反対の決議や住民説明会の開催を求める決議は上げていません。宮崎県議会では2014年9月議会で、請願第50号『川内原発再稼働に反対表明を求める請願』が出されていますが、否決されています。

安倍政権の「再稼働」の政治的判断を止めよう!いちき串木野市、阿久根市と鹿児島県、宮崎県、熊本県の10市と連帯して、声を上げよう!

 2015年8月14日以降、原子力規制委員会は今回の起動後検査の結果の評価と、最終的な新規制基準適合か否かの判断を文書で示すはずです。それを受けて、原発立地地元自治体が同意したのかを安倍政権が判断し、その上で、「原発再稼働」の判断をします。川内原発1号機の再稼働の判断をするのは、原子力規制委員会ではなく、日本政府です。

 再稼働に同意していない、30km圏内6市町と、30km圏内に一部入るのに地元自治体の扱いを受けてない鹿児島市、出水市。30km県外で「再稼働にあたって九電に公開の住民説明会を求める」決議や陳情を採択した、宮崎県高原町、鹿児島県ー日置市、出水市、伊佐市、日置市、肝付町、南種子町、屋久島町、熊本県ー荒尾市、水俣市、大津町の住民と連帯しながら、川内原発の再稼働を阻止しましょう。