2014年10月22日1号機建屋カバーの撤去作業が開始されました。この目的は使用済み核燃料プール内から核燃料を取りだすためです。

※使用済燃料プールからの燃料取り出しに向け、原子炉建屋5階に堆積した瓦礫の撤去作業を進めるため、原子炉建屋カバーの解体を行う。当該カバーを解体しても、1~3号機からの放射性物質の放出による敷地境界線量(0.03mSv/y)への影響は少ないものと評価。当該カバー解体作業は、飛散防止剤散布やガレキ吸引・ダスト吸引等の放射性物質の飛散抑制対策を十分に実施する。10月22日午前7時8分、飛散抑制対策の一環として、当該カバー屋根パネルを取り外す前に同パネルに孔をあけ、飛散防止剤を散布する作業を開始。作業にあたっては、ダストモニタおよびモニタリングポストのダスト濃度等の監視を十分に行いながら着実に作業を進める。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)【午後3時現在】2014年10月22日より

 1号機カバーをまず取り外し、そして、屋上のがれきを撤去してから、核燃料を取りだす作業に入るとしています。ところが、使用済み核燃料プールの核燃料392体の4分の1、70体は損傷しています。東京電力も、「損傷燃料を取り出す技術はない」としています。

損傷した核燃料を取り出す技術はない、 福島第1原発1号機 燃料震災前破損70体、全体の4分の1 河北新報 2013年11月16日 

 3号機屋上のがれき撤去が2013年8月に行われましたが、その際に放射性物質が飛散し、原発作業員の頭部に放射性物質がつき警報がなりました(8月19日)。また、この放射性物質のが数十km離れた場所にまで飛散し、南相馬市旧太田村産では100ベクレル/kgを超えるお米ができました(10月3日120ベクレル/kg超え、10月20日150ベクレル/kg超え、12月20日180ベクレル/kg超えが検出)。

福島県南相馬市旧太田村2013度産米 180ベクレル/kg 20131220 

 今回、東京電力はこの事故を繰り返さないため、1号機屋上に飛散防止剤を撒いてから、カバーを撤去するとしています。しかし、2014年10月28日8:23am、突風にあおられ、飛散防止剤を散布するクレーンが揺れて、カバーを1m×2mの大きさに破いてしまい、作業を一時中断しました。(瞬間風速18m/s)

 東京電力は、1号機建屋カバー取り外し作業で放射性物質の飛散はない、と発表しています。

根拠は以下です。

(2-1)作業現場のダストモニタ[1号機]・警報の発報はありませんでした。(警報設定値:5×10-3Bq/cm3)(2-2)3号機原子炉建屋のダストモニタ・警報の発報はありませんでした。(警報設定値:5×10-3Bq/cm3)(3)建屋周辺のダストモニタ・警報の発報はありませんでした。(警報設定値:1×10-4Bq/cm3)(4)構内のダストモニタ・警報の発報はありませんでした。(警報設定値:1×10-4Bq/cm3)(5)敷地境界付近のダストモニタ・警報の発報はありませんでした。(警報設定値:1×10-5Bq/cm3)」

1号機 建屋カバー解体に向けた飛散防止剤散布と調査の状況について(平成26年10月28日実績)

 果たして、この作業によって、放射性物質は出ていないのでしょうか?東京第一原発の南南西約13kmにある、楢葉町上繁岡地区集会所での空間線量率の推移です。

 毎日8時から17時にかけて空間線量が上がって下がっていること(作業中に放射性物質を建屋から出している)、そして、日曜日も同様であること(日曜日は休業はウソ)、さらに、突風が吹いて作業が中断した10時28日9時以降は空間線量率も下がっています(作業を中断したから)。これらのことから、1号機の建屋カバー撤去に向けた作業で放射性物質は放出され続けている、と思います。さらに、そのレベルはだんだん、上がってきている、とグラフは教えてくれています。

 東京電力の敷地境界の警報レベルでも1×10-5Bq/cm3です。これはBq/m3に直すと、10Bq/m3です。1m3の空気あたり10ベクレルなどという放射性物質が出ないと警報が鳴らない、とんでもないレベルです。少なくともmBq/m3の単位で放射性物質の測定を行い、結果を公表すべきです。

 東京都は都内の大気中の放射性物質を0.001ベクレル/m3の単位(mBq/m3)まで毎日測定し、公表しています(公表は週2回に変更されました)。

都内における大気浮遊塵中の核反応生成物の測定結果について

 福島県で新たな100ベクレル/kgを超えるお米を作らないためにも。

屋根部分を試験撤去 第一原発1号機建屋カバー

 2014年11月1日 10:54 福島民報

  東京電力は2014年10月31日、福島第一原発1号機の原子炉建屋カバー解体に向け、カバー内部に散布した放射性物質の飛散防止剤の効果を確認するため、屋根部分のパネル6枚のうち1枚を試験的に取り外した。放射性物質の飛散がないことが確認できれば、外したパネルを戻し、来年3月に本格的なカバー解体を始める。

 屋根は幅約7メートル、長さ約42メートルのパネルを6枚並べた構造。このうち、1枚をクレーンで取り外すと、がれきの散乱する建屋上部が、カバー設置から約3年ぶりに姿をのぞかせた。東電は2014年11月7日にさらに1枚取り外す。内部にカメラを入れ、2014年12月初旬までに建屋内部のがれきや放射線の状況を調べる。

 東電によると、取り外し後、敷地境界付近の放射線量に変化はないという。
 建屋カバーの解体は使用済み核燃料プールから燃料を取り出すための準備作業。解体後に建屋上部のがれきを撤去し、燃料取り出し用のクレーンを設置する。プールからの燃料取り出しは早ければ平成31年度前半の見通し。
 パネルの取り外しは当初10月30日を予定していたが、10月28日に飛散防止剤を散布する機器が強風で揺れて建屋カバーが破れるトラブルが発生、作業がずれ込んだ。1号機建屋カバーは放射性物質の飛散を防ぐための応急処置として2011年10月に設置された。

<川根コメント>

 「東電によると、取り外し後、敷地境界付近の放射線量に変化はない」という東電発表を新聞各紙を垂れ流しています。下記資料で、この「敷地境界付近の放射線量」の有意な変動とは何か、調べてみました。

1号機原子炉建屋カバー解体作業
http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/removal-reactor-j.html

 上記資料によれば、「敷地境界のモニタリングポストでの有意な変動」とは、+2マイクロシーベルト/時以上の変動、とあります。

 2014年11月2日5:30am現在の放射線量は最高がMP-3の3.90マイクロシーベルト/時で、最低がMP-6の1.37マイクロシーベルト/時です。こんなものが2マイクロシーベルト/時上昇するとは、極めて異常です。「敷地境界の放射線量の放射線量が1.37→3.37になっていないから、放射性物質は拡散していない」などという東京電力の発表をそのまま新聞は載せるべきではありません。

記 2014年10月30日 川根眞也

追記 2014年11月1日 川根眞也

追記 2014年11月2日 川根眞也