東京第一原発事故で日本海の太平洋側のストロンチウム90の汚染は、どれくらいなのでしょうか?スペインのN.Casacuberta(バルセロナ自治大学環境科学技術および物理研究所)、P.Masque(同)、J.Garcia-Prellana(同)、R.Garcia-Tenorio(セビリア大学応用物理学科)、K.O.Buesseler(ウッズホール海洋研究所)らは、東京第一原発事故の3ヶ月後、宮城、福島、茨城、千葉県沖の海水を採取して、そのストロンチウム90、およびストロンチウム89の濃度を測定しました。
この研究論文は2013年2月5日、Biogiosciencesに掲載されました。
海洋の採取地点は以下のところでした。2011年5月~6月
そして、それぞれの地点で採取された海水表層のストロンチウム90およびストロンチウム89の濃度は以下のとおりでした。地点29ではストロンチウム90の濃度の最高値 85±3 ベクレル/m3、ストロンチウム89の最高値 265±7 ベクレル/m3が計測されています。
これは、ベクレル/Lに直すと、それぞれストロンチウム90 0.085±0.003 ベクレル/L、ストロンチウム89 0.265±0.007 ベクレル/L にあたります。
東京第一原発事故前の太平洋海水のストロンチウム90の平均値は、約0.0015 ベクレル/Lですから、この地点29の数値は100倍の濃度にあたります。
上記のデータをマップ化したものが、以下です。
また、海水表層中のセシウム137、およびセシウム134の濃度をマップ化したものが以下です。
生物に吸収されたストロンチウム90は、セシウム137とは違った濃縮をするので、以下の濃縮係数は一つの参考値に過ぎません。しかし、海水に0.01ベクレル/kgのセシウム137がある海域で生活していたブリは、海水のセシウム濃度の122倍、つまり、セシウム137を1.22ベクレル/kg程度汚染される可能性があることを示しています。
水産総合研究センターが、魚介類のストロンチウム90の濃度を少ない検体数ですが、知らべて公表しています。最近では、2012年1月18日いわき市久ノ浜沖でで獲れたイシカワシラウオが、セシウム134が18ベクレル/kg、セシウム137が29ベクレル/kgなのに、ストロンチウム90が0.4ベクレル/kgも検出されたことが報告されています。
水産総合研究センター 水産物ストロンチウム等調査結果 20140528
垂れ流しのままの原発汚染水には、大量のストロンチウム90が含まれています。凍土遮蔽壁も、多核種除去装置ALPSも満足に動いていません。N.Casacubertaらが研究した2011年5月、6月の時点よりも、海洋のストロンチウム90汚染は深刻になっているのではないでしょうか。