原発事故前の福島県の空間線量率は0.035~0.046マイクロシーベルト/時でした。これは2013年3月31日、福島県が公表した平成22年度(2010年度)『原子力発電所周辺環境放射能測定結果報告書』p.67~68に、記載されていた 第5 原子力発電所周辺環境放射能測定値一覧表5-1 福島県測定分 5-1-1 空間放射線 を転載したものです。単位のnGy/h(ナノグレイ/時)は、1nGy/h=0.001μSv/h(マイクロシーベルト/時)ですから、例えば43nGy/h=0.043μSv/hとなります。nGy/h(ナノグレイ/時)からμSv/h(マイクロシーベルト/時)へは「0を3つ消す」と覚えて下さい。

 つまり、現在の空間線量が0.35や0.46μSv/h(マイクロシーベルト/時)である地域は、原発事故前の自然放射線の10倍もの外部被ばくをしている、と考えなくてはいけない、ということです。あきらかな健康影響が心配される地域であると思います。

 

 

 

 また、外部被ばくだけではなく、空間線量が0.35や0.45μSv/h(マイクロシーベルト/時)の地域で作られた農作物はセシウム137だけでも100ベクレル/㎏を超える可能性があり、測定されたものだけを食べるべきです。自家菜園の農作物を測定もしないまま食べるべきではありません。

 森林総合研究所 清野嘉之氏、赤間亮夫氏が書いた論文「2012年春の山菜の放射性セシウム汚染」には、「空間線量率は同じでも,放射能濃度には最大100 倍近い開きがあり,特に濃度が高いのは付着根植物のイワガラミや集水地形に生育する山菜であった。」「比較的高濃度汚染した山菜を排除しても,空間線量率が同じときの放射性セシウム濃度に,なお10 倍ほどのバラツキが残る。」「バラツキの上限値を結んだ線は空間線量率と一定の関係があるようで,それを内挿すると空間線量率が0.1 μSv hr-1 の辺りで,放射性セシウム濃度が100Bq ほどなる。」と書かれています。つまり、山菜などは空間線量が0.10マイクロシーベルト/時あたりで、放射性セシウム100ベクレル/kgほどになる可能性がある、と指摘しているのです。

2012 年春の山菜の放射性セシウム汚染 森林総合研究所 清野嘉之 赤間亮夫 2012

 空間線量が0.10マイクロシーベルト/時でも、かつての福島県の空間放射線量の2~3倍です。内部被ばくも含め、健康被害の危険性を考えなくてはいけない地域であると思います。