東京新聞が東日本大震災から2年と題した特集で「原発事故1年と1年半後の放射線量の増減」という記事を掲載しました。2013年3月10日朝刊32面。これは日本原子力研究開発機構福島技術本部が2013年3月1日に公表した『東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況等に関する調査研究結果について』に基づくものです。
『東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況等に関する調査研究結果について』
この記事を見るだけでは、緑色の部分の放射線量はもう低くなってしまっているので安全だという誤解を与えかねません。これは「放射能はもうない。安全だ。」キャンペーンの一環なのでしょうか?原発と原発事故報道について、貴重な報道をしてきた、東京新聞に対して、大きな疑念を抱かざるを得ません。
だいたい、日本原子力研究開発機構 福島技術本部の調査報告書を読むと、以下のように書いてあります。
「KURAMA-Ⅱシステムを用いた走行サーベイ(第3 次走行サーベイ)については、KURAMA-Ⅱシステムが体積の小さなCsI 検出器を用いてガンマ線を検出しているため、検出効率が小さく、空間線量率の低い地域での測定においては、測定値が統計的に大きなばらつきを示す。今回、0.2 μSv/h 以下の空間線量率の地域で行なった走行サーベイにおいては、統計的なばらつきが顕著に現れる現象が時折観察された。そこで、測定結果における統計的なばらつきを抑えるために、走行地域をメッシュに分割しそのメッシュ内に含まれる測定点での空間線量率値を平均してメッシュの代表値として表した。放射性セシウムが地表面へ沈着して線源となっている場合、半径60 m の範囲からやってくるガンマ線の寄与が地上1m 高さの空間線量率の約90%を占めることを考慮し、100m メッシュで測定対象地域を区切りその中の平均値を測定結果とすることとした。」
つまり、0.2マイクロシーベルト/時以下はすべて、100mメッシュ内の平均値を表示しているに過ぎないのです。
ですから、0.4とか0.5マイクロシーベルト/時などを越える、本当に線量の高いところだけが青い線で表示されるだけとなっています。
国でも0.23マイクロシーベルト/時を越える場所は年間被ばく1ミリシーベルトを越えるとして、「汚染状況重点調査地域」として除染の対象としてきました。この0.23マイクロシーベルト/時を越える場所が緑色の線で表現されてしまう、今回の東京新聞のこの記事は読者に誤解を与えるものだと思います。
撤回と加筆修正記事の掲載を求めたいと思います。
そして、この2013年3月1日に日本原子力研究開発機構 福島技術本部が発表した調査報告書にはもっと大事な報告が載っていました。福島県内の河川のセシウム137の濃度の変化です。これまで福島県内の自治体はせいぜい10ベクレル/kgまでしか、セシウム137の濃度を測らず、すべて不検出(ND)として公表してきました。これはでたらめです。この調査報告書には2011年6月、8月、12月だけですが、河川水中のセシウム137濃度の推移が出ています。
福島県福島市渡利河岸町 1.5ベクレル/kg→0.94ベクレル/kg→0.33ベクレル/kg
川俣 0.41ベクレル/kg→0.26ベクレル/kg→0.29ベクレル/kg
南相馬原町 1.1ベクレル/kg→0.6ベクレル/kg→0.18ベクレル/kg
など。少なくとも2011年3月12日以降の河川水を飲んではいけなかったのではないですか。そして、ストロンチウム90は入っていなかったのですか。そして、現在のデータをなぜ、今、公表しないのですか。
日本原子力研究開発機構 福島技術本部は住民の命のためにも上記内容を公表すべきです。
そして、東京新聞はこの隠された河川水のデータこそ記事にするべきだと思います。