[解説] 

 2019年6月3日、福島県で第13回甲状腺評価部会が開かれました。しかし、その4日前の5月31日には、共同通信や毎日新聞などで、「甲状腺2巡目の検査で見つかったがんと被ばくに関連性がないとする中間報告」を出すと言う、事前リークがありました。

 このNHK福島放送局のニュースでは、鈴木元氏(部会長)の以下の言葉を紹介しています。 「放射線の影響を受けやすい、事故当時1歳から5歳だった子どもたちの中で甲状腺がんが増えていないと結果が出るまでは検査をやめるという答えは出せない。」

 しかし、2016年時点で、原発事故当時、4歳、5歳の子どもたちが1人ずつ、小児甲状腺がんにかかり、福島県立医大で、甲状腺がん摘出手術を受けていたことが明らかになっています。NHK福島放送局は、この事実について触れていません。

 福島県県民健康調査検討委員会はさかんに、「チェルノブイリ原発事故の際は原発事故当時0~5歳の子どもたちに甲状腺がんが多発した。しかし、福島の子どもたちの小児甲状腺がんの平均年齢は14.9歳(先行検査、2011,2012,2013年度)。だから、福島の子どもたちの小児甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくい 」と主張してきました。しかし、2016年に原発事故当時4歳、5歳の小児甲状腺がんの患者が出ても、民間団体3.11甲状腺がん子ども基金やour planet tvが、事実確認をするまで事実を公表しませんでした。

〈参考〉

「184人以外にも未公表の甲状腺がん〜事故当時4歳も」our planet tv 2017年3月30日

 

 NHK福島放送局は、鈴木元氏の「事故当時1歳から5歳だった子どもたちの中で甲状腺がん」に触れるならば、すでに、原発事故当時4歳,5歳の子どもたちの患者が1人ずつ出ています、とコメントすべきです。ただただ、甲状腺評価部会の発表を垂れ流す姿勢はあらためるべきです。

甲状腺2巡目検査の報告書案は

2019年6月03日 19時50分  NHK 福島放送局

福島県が原発事故当時、18歳以下だった子どもたちを対象に行っている甲状腺検査をめぐり、検査の結果を評価している専門家の部会で、2巡目の検査で発見された甲状腺がんと被ばくの関連は認められないとする報告案が示されました。
一方、部会長は、この報告案を受けて検査をやめるという答えは出せないとしています。

この報告案は3日、福島市で開かれた専門家による部会で示されました。
2巡目の検査で発見された甲状腺がんと被ばくの関連については、UNSCEAR=国連原子放射線影響科学委員会で公表された年齢別や市町村別の推計の線量を解析に使った上で、「甲状腺がんの発見率との関連の解析においては、線量の増加に応じて発見率が上昇するといった一貫した関係は認められない」とした報告案をまとめました。
また、県民健康調査の受診率が年々低くなっていることから、調査とは別に、自治体が医療機関を通じてがん患者の情報を集める「地域がん登録」などを利用し、甲状腺がんの状況を把握することや、単発の検査だけではなく数回の検査の結果を蓄積して解析する必要があることも盛り込まれています。
この報告案は、今後県民健康調査検討委員会に提出されることになっています。
甲状腺がんと原発事故による被ばくの影響をめぐり、県の県民健康調査検討委員会は3年前、被ばく線量が総じて小さいことなどを理由に「放射線の影響とは考えにくい」とし、検査を大規模に実施したことでがんが多く見つかっている可能性が高いという見解を示しています。
甲状腺検査評価部会の鈴木元部会長は「放射線の影響を受けやすい、事故当時1歳から5歳だった子どもたちの中で甲状腺がんが増えていないと結果が出るまでは検査をやめるという答えは出せないと個人的には考えている。今後も検討を続ける必要がある」としています。
去年から4巡目に入っている甲状腺検査で、がんやがんの疑いと診断された人は212人となっています。