水産研究・教育機構は、日本近海および遠洋の水産物のストロンチウム89,ストロンチウム90,セシウム134,セシウム137等の濃度を測り、公表しています。

「水産研究・教育機構による水産物放射性物質調査結果」

 この2018年12月6日公表の水産物ストロンチウム等調査結果 によれば、2018年7月20日採取のホウボウからは、ストロンチウム90が0.024ベクレル/kg検出されています。セシウム137が0.780ベクレル/kgでセシウム134が不検出(<0.059ベクレル/kg)とあります。

 原発事故から7年と4か月。東電福島第一原発はセシウム134とセシウム137とを同量放出したとされています。ですから、東電福島第一原発事故由来であるならば、2018年7月20日時点では、セシウム137が0.780ベクレル/kgあるとすると、半減期によるそれぞれ減衰により、セシウム134はセシウム137の約10分の1程度あるはずです。つまり、セシウム134が0.078ベクレル/kgあるはず。つまり、ホウボウからセシウム134が出て来ないということは、セシウムに関しては福島第一原発事故由来だけではない(大気圏内核実験由来+東電福島第一原発事故)。しかし、ストロンチウム90は福島第一原発事故である可能性があります。

 下記のように、文部科学省管轄の日本の環境放射能と放射線というサイトでは、原発立地自治体に設置されている原子力環境センターや、他の自治体では衛生研究所、保健環境研究所などが、水産物のセシウム137濃度、ストロンチウム90濃度を調べてきました。1964年度から2017年度の結果から、水産物のストロンチウム90汚染の結果を整理すると、以下のようになります。

 水産物の放射能汚染 セシウム137 ストロンチウム90 1964年から2018年 日本の環境放射能と放射線 資料作成 川根眞也

 つまり、2017年度時点では水産物からストロンチウムが0.020ベクレル/kg出てくることはほとんどない、ということです。しかし、上記、水産研究・教育センターの水産物のストロンチウム90汚染のデータでは、

2017年度採取

スケソウダラ 2017年4月16日採取 仙台湾沖20km ストロンチウム90 0.017ベクレル/kg セシウム137 0.20ベクレル/kg (セシウム134 不検出<0.016)

ハマグリ 2017年5月9日採取 千葉県九十九里浜 ストロンチウム90 0.029ベクレル/kg セシウム137 不検出<0.28ベクレル/kg (セシウム134 不検出<0.039)

マダコ 2017年5月17日採取 福島県小名浜沖10km ストロンチウム90 0.013ベクレル/kg セシウム137 0.10ベクレル/kg (セシウム134 不検出<0.021)

マダイ 2017年7月28日採取 福島第一原発沖 1.5km ストロンチウム90 0.031ベクレル/kg セシウム137 0.80ベクレル/kg  セシウム134 0.10ベクレル/kg

2018年度採取

ホウボウ 2018年7月20日採取 福島第一原発沖 5km ストロンチウム90 0.024ベクレル/kg セシウム137 0.78ベクレル/kg (セシウム134 不検出<0.059)

 ストロンチウム90が水産物から0.020ベクレル/kg超えて出てくることは、2010年原発事故前は、原子力発電所周辺海域でもめったになかったことです。これから、ストロンチウム90汚染の水産物(大気圏内核実験由来を超える)が宮城県仙台湾から福島県沖、茨城県沖、千葉県沖、東京湾沖、静岡県駿河湾沖まで出てくる可能性があります。政府はきちんと水産物のストロンチウム90汚染を調べるべきです。

 ちなみに、水産物のセシウム137汚染の推移を調べてみました。茨城県沖のシラス、北海道沖のマダラです。原発事故直後に高い汚染を見せていました。東電福島第一原発事故直後は例え北海道であっても、魚を食べ控えるべきであったことが伺えます。また、北海道はだいたいセシウム137の汚染については、2010年原発事故前のレベルに戻りつつありますが、茨城県ではまだ、高いレベルであることがわかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地図 ホウボウ 2018年7月20日採取 セシウム137 0.780ベクレル/kg ストロンチウム90 0.024ベクレル/kg 東京電力福島第一原発沖5km セシウム137の32分の1のストロンチウム90 水産研究・教育機構