[初稿]2018年2月24日
[追記]2018年2月26日 矢部宏治「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」集英社,2014年 pp.95~99より抜粋追記。
2018年2月20日、立憲民主党は、原発ゼロ基本法案を発表しました。果たして、この法律ができれば、脱原発は実現できるのでしょうか?
以下、東京新聞の記事と、その下に立憲民主党のホームページに掲載されている、原発ゼロ基本法案(骨子)を掲載します。
立憲民主党が三月上旬に国会に提出する「原発ゼロ基本法案」の全容が二十日、判明した。基本理念で「全ての原発を速やかに停止し廃止する」ことを掲げ、法施行から五年以内に全原発の廃炉を決定する目標も明記した。
一月にまとめた法案骨子の段階では、原発の再稼働について、石油の輸入が途絶えるなど「原子力以外のエネルギー源を最大限活用しても、安定供給の確保に支障が生じる場合」と非常時に限定して例外的に認めることも盛り込んでいた。その後「非常時こそ原発の危険が高まるので現実的ではない」などと市民から意見が多く寄せられたため、例外規定は削除した。
全原発廃止については、法案骨子で「速やかに」との表現にとどめていた手続きの進め方を具体化。「法施行後五年以内に全原発の運転を廃止」とし、廃炉を決定する期限を盛り込んだ。
同法案では、原発ゼロへの道筋について、省エネの推進と再生可能エネルギーの拡大を掲げ、二〇三〇年時点の電力需要を一〇年比で30%以上減らし、再生エネによる発電割合を40%以上とすることを条文に明記している。
国の責務として、廃炉で経営悪化が想定される電力会社の損失に政府が「必要な支援をする」と明確にすることで、電力会社も原発ゼロを受け入れやすい環境づくりを行う。原発立地自治体にも「雇用創出や地域経済の発展」に措置を講ずるとした。
原発を廃炉にしても残る使用済み核燃料については「再処理は行わない」ことを打ち出した。 (山口哲人)
■「原発ゼロ基本法案」のポイント
・原発廃止とエネルギー転換を実現する改革に関し、国等の責務を明らかに
・全原発の速やかな廃止、停止
・法施行後5年以内に全ての原発の運転廃止(廃炉決定)
・2030年までに再生可能エネルギーの供給量を40%以上
「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案(仮称)」
(通称:原発ゼロ基本法案)骨子案
第一 目 的
この法律は、原発廃止・エネルギー転換(全ての発電用原子炉の運転を廃止するとともに、電気の需要量の削減及び再生可能エネルギー電気の供給量の増加によりエネルギーの需給構造の転換を図ることをいう。)を実現するための改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、「原発廃止・エネルギー転換改革推進本部(仮称)」を設置することにより、これを総合的に推進することを目的とすること。
第二 基本理念
原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとすること。
① 電気の安定供給の確保を図りつつ、全ての発電用原子炉を計画的かつ効率的に廃止すること。
※ 全ての発電用原子炉を速やかに停止させる。
↓
市民の意見により、「法施行後5年以内に全ての原発の運転廃止(廃炉決定)」に変更。
② エネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用を促進すること。
第三 国等の責務
一 国の責務
1 国は、第二の基本理念にのっとり、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的な責任を踏まえ、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革を推進する責務を有すること。
2 国は、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革に当たって生じ得る発電用原子炉設置者等の損失に適切に対処する責務を有すること。
3 国は、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革を推進するに当たっては、原子力発電施設等立地地域の経済に及ぼす影響に配慮しなければならないこと。
二 地方公共団体及び電気事業者等の責務
地方公共団体及び電気事業者等は、第二の基本理念にのっとり、国による原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革の推進に協力する責務を有すること。
第四 法制上の措置等
政府は、第五の基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならないこと。この場合において、第五の一の2及び3の基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上の措置については、この法律の施行後○年以内を目途として講ずるものとすること。
第五 基本方針
一 発電用原子炉の廃止
1 政府は、この法律の施行の日から○年を経過する日までに全ての発電用原子炉の運転を廃止することを目標とするものとすること。
※ 次のような案も検討できるか。
1 政府は、平成○○年までに全ての発電用原子炉の運転を廃止すること
を目標とするものとすること。
2 政府は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的な責任を踏まえ、発電用原子炉の廃止並びに使用済燃料及び放射性廃棄物の管理及び処分に関する国の関与の在り方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じなければならないこと。
3 政府は、電気の安定供給の確保を図りつつ、全ての発電用原子炉を計画的かつ効率的に廃止するため、次に掲げる措置を講ずるものとすること。
① 発電用原子炉を運転することができる期間の延長を認めないものとすること。
② 発電用原子炉の運転については、原子力以外のエネルギー源を最大限に活用してもなお電気の安定供給の確保に支障が生ずる場合で、かつ、当該発電用原子炉施設に係る原子力災害に関する適正かつ確実な地域防災計画が作成されている場合に限るものとすること。
※ 相当の期間にわたって支障が生じている場合に限定。
↓
市民の意見により、削除。
③ 発電用原子炉の設置の許可及び増設を伴う変更の許可を新たに与えないこととするために必要な措置を講ずるものとすること。
④ 使用済燃料の再処理は行わないものとし、使用済燃料及び放射性廃棄物の管理及び処分が適正な方法により行われるよう、必要な措置を講ずるものとすること。
⑤ 再生可能エネルギー、可燃性天然ガスその他の原子力以外のエネルギーの利用への転換を図るために必要な措置を講ずるものとすること。
⑥ 発電用原子炉等を廃止しようとする事業者に対し、必要な支援を行うものとすること。
⑦ 原子力発電施設等立地地域における雇用機会の創出及び地域経済の健全な発展を図るものとすること。
⑧ 廃炉等に関する研究開発その他の先端的な研究開発を推進するために必要な措置を講ずるものとすること。
二 エネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用の促進
1 政府は、次に掲げることを目標とするものとすること。
① 一年間における電気の需要量について、平成四十二年までに平成二十二年の一年間における電気の需要量からその百分の三十に相当する量以上を減少させること。
② 平成四十二年までに一年間における電気の供給量に占める再生可能エネルギー電気の割合を四割以上とすること。
2 政府は、エネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用を促進するため、次に掲げる措置を講ずるものとすること。
① 国等が設置する施設におけるエネルギーの使用の合理化及び再生可能エネルギー源の利用を促進するものとすること。
② 事業者が行うエネルギーの使用の合理化が円滑に実施されるよう、必要な措置を講ずるものとすること。
③ 建築物のエネルギー消費性能の更なる向上を図るために必要な措置を講ずるものとすること。
④ 熱についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源及び廃熱の利用を促進するものとすること。
⑤ 電気事業者による再生可能エネルギー源の利用の拡大のために必要な措置を講ずるものとすること。
⑥ 電力系統の適正化その他の電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用の促進を図るために必要な措置を講ずるものとすること。
⑦ 地域に存する再生可能エネルギー源のその得られた地域における利用を促進するために必要な措置を講ずるものとすること。
⑧ 地域の住民又は小規模の事業者の再生可能エネルギーの利用又は供給に係る自発的な協同組織の発達を図るために必要な措置を講ずるものとすること。
⑨ 再生可能エネルギー源に関する研究開発その他の先端的な研究開発の推進を支援するために必要な措置を講ずるものとすること。
第六 推進計画
原発廃止・エネルギー転換改革推進本部は、この法律の施行後○年を目途として、第五の基本方針に基づき、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革の推進に関する計画(以下「推進計画」という。)を策定しなければならないものとすること。
第七 本 部
一 原発廃止・エネルギー転換改革推進本部
原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする「原発廃止・エネルギー転換改革推進本部(仮称)」(以下「本部」という。)を置くこと。
二 所掌事務
本部は、次に掲げる事務をつかさどること。
① 推進計画を策定し、及びその実施を推進すること。
② ①のほか、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革に関する施策であって基本的かつ総合的なものの企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。
第八 改革の推進を担う組織の在り方に関する検討
政府は、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革の推進を担う組織(本部を除く。)の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置を講ずるものとすること。
第九 年次報告
政府は、毎年、国会に、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革の実施状況に関する報告書を提出しなければならないこと。
第十 施行期日
この法律は、○○から施行すること。
*** *** ***
果たして、立憲民主党の「原発ゼロ基本法案」は本物でしょうか?問題は、日本が原発ゼロを選択するか、どうかではありません。アメリカの属国である日本が、アメリカに逆い主権を取り戻し、脱原発を主張できるか、否かです。立憲民主党は、アメリカからの日本国民の主権奪還をまったく提起していません。この「原発ゼロ基本法案」は毒饅頭である危険性があります。「原発をゼロにしたい」という過半数の国民の思いを吸収しながら、かつて野田政権が2012年9月に「2030年代に原発ゼロを」と掲げたにもかかわらず、アメリカ、エネルギー省の役人と一回会談しただけで、撤回したことを教訓にするべきです。民主党 野田政権は「2030年代に原発ゼロ」を2012年9月に撤回しただけでなく、同時に、プルサーマル発電を推進する、と密約を結んでいます。当時民主党、現在は希望の党 共同代表の大串博志衆議院議員の下で。
原発の再稼動を止めたい、世界から原発をなくしたい、と思う方々はぜひ、矢部宏治さんが書かれた『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社 2014年)をぜひ、お読み下さい。民主党 野田政権の「2030年までに原発ゼロ」がなぜ公表から一週間もたたないうちに、つぶれたのか、知る必要があります。pp.95~99の「日米原子力協定の仕組み」「なぜ『原発稼動ゼロ政策』はつぶされたのか」に真実があります。
日本はアメリカの従属国であり、すべての原発、米軍のヘリコプター1機、すら止められません。こと基地と原発の問題で、日本国民の主権は存在しません。この対米従属の状況下で、日本が原発ゼロを選択することはできません。日本の原発ゼロ、一つのチャンスが2018年1月16日でした。日米原子力協定は今年2018年7月16日、20年を向かえ、破棄か更新かを選択するはずでした。この日米原子力協定は、アメリカの支配下の下で日本が原発を稼動させ、日本が使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する権利が保障するものです。2017年、日本と同じような非核兵器保有国である韓国は、アメリカ、IAEAに対し、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する権利を要求しました。しかし、韓国のプルトニウム生産権は認められませんでした。
世界広しと言えども、非核兵器保有国で、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する権利をIAEA、アメリカに認められているのは日本だけです。アメリカは日本に何を期待しているのでしょうか。世界唯一の戦争被爆国であり、「核兵器廃絶」を訴える国でありながら、実際はアメリカの核戦略を無条件で支持する役割が日本に期待されています。日本が独自に原発をやめようとしても、アメリカやIAEAは「それでは使用済み核燃料から抽出したプルトニウムはどうするのだ?」と日本が聞かれるでしょう。プルトニウム抽出の権利は、将来の日本の独自核武装のための必須の条件でもあります。日本の保守層の底流には、連綿と「いつか日本の核兵器を持ち大国になりたい」という願望が存在します。原発ゼロは、日本の持つプルトニウムの放棄や、今後のプルトニウム抽出の権利の放棄ともつながり、それは日本の独自核武装の構想の永遠の放棄につながります。原発ゼロは、日本のエネルギー源の選択の問題ではなく、すぐれて対米関係、アメリカの核戦略を無条件で支持するのか否か、や、日本の独自核武装の放棄の問題です。
立憲民主党が、アメリカの支配からの独立を掲げない以上、また、日本の独自核武装を放棄し、アメリカの核の傘に依存しない安全保障政策を掲げない以上、この「原発ゼロ基本法案」は絵に描いた餅です。結果、原発ゼロは実現できず、期待していた市民に訪れるのは、「また、結局原発ゼロができなかった」という絶望感と政治的ニヒリズムではないでしょうか?信用してはいけないものは信用しない。大事なのは、歴史に学ぶということです。集会やデモに明け暮れるより、矢部宏治氏の著作を1冊読むことが、日本の現状を変える一歩になるのではないか、と思う今日この頃です。
日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか 矢部宏治 集英社 2014年
pp.95~99 より抜粋
日米原子力協定の「仕組み」
その後調べると日米原子力協定という日米間の協定があって、これが日米地位協定とそくりな法的構造を持っていることがわかりました。つまり、「廃炉」とか「脱原発」とか「卒原発」とか、日本の政治家がいくら言ったって、米軍基地の問題と同じで、日本側だけではなにも決められないようになっているのです。条文をくわしく分析した専門家に言わせると、アメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけだそうです。
そっくりな法的構造というのは、たとえばこういうことです。日米地位協定には、日本政府が要請すれば、日米両政府は米軍の基地の返還に「合意することができる(may agree)」と書いてあります。
一見よさそうな内容に見えますが、法律用語で「できる(may)」というのは、やらなくてもいいという意味です。ですからこの条文の意味は「どれだけ重大な問題があっても、アメリカ政府の許可なしには、基地は絶対に日本に返還されない」ということなのです。 一方、日米原子力協定では、多くの条文に関し、「日米両政府は○○しなければならない(the parties shall ……)と書かれています。「しなれけばならない(shall)」は、もちろん法律用語で義務を意味します、次の条文をの太字部分を見て下さい。
「第12条 4項
どちらか一方の国がこの協定のもとでの協力を停止したり、協定を終了させたり、〔核物質などの〕返還を要求するための行動をとる前に、日米両政府は、是正措置を取る前に協議しなければならない(shall consult)。そして要請された場合には他の適当な取り決めを結ぶことの必要性を考慮しつつ、その行動の経済的影響を慎重に検討しなければならない(shall carefully consider)。」
つまり、「アメリカの了承がないと、日本の意向だけでは絶対にやめられない」ような取り決めになっているのです。さらに今回、条文を読み直して気づいたのですが、日米原子力協定には、日米地位協定にもない、次のようなとんでもない条文があるのです。
「第16条 3項
いかなる理由があってもこの協定またはそのもとでの協力の停止または終了の後においても、第1条 4項、第3条から第9条まで、第11条、第12条および第14条の規定は、可能なかぎり引き続き効力を有する」
もう笑うしかありません。「第1条 4項、第3条から第9条まで、第11条、第12条および第14条の規定」って……ほとんど全部じゃないか!それら重要な取り決めのほぼすべてが、協定の終了後も「引き続き効力を有する」ことになっている。こんな国家間の協定が、地球上でほかに存在するでしょうか。もちろんこうした正規の条文以外にも、日米地位協定についての長年の研究でわかっている密約の数多くが結ばれているはずです。
問題なのは、こうした協定上の力関係を日本側からひっくり返す武器が何もないということなのです。これまで説明してきたような法的構造のなかで、憲法の機能が停止している状態では。
だから日本の政治家が「廃炉」とか「脱原発」とかの公約をかかげて、もし万が一、選挙に勝って首相になったとしても、彼には何も決められない。無理に変えようとすると鳩山さんと同じ、必ず失脚する。法的構造がそうなっているのです。
なぜ「原発稼動ゼロ」はつぶされたのか
事実、野田内閣は2012年9月、「2030年代に原発稼動ゼロ」をめざすエネルギー戦略をまとめ、閣議決定をしようとしました。このとき日本のマスコミでは、
「どうして即時ゼロではないのか」とか、
「当初は2030年まで稼動ゼロと言っていたのに、2030年代とは9年も延びているじゃないか。姑息なごまかしだ」
などと批判が巻き起こりましたが、やはりあまり意味のない議論でした。外務省の藤崎一郎駐米大使が、アメリカのエネルギー省のポネマン副長官と2012年9月5日に、国家安全保障会議のフロマン補佐官と翌9月6日に面会し、政府の方針を説明したところ、「強い懸念」を表明され、その結果、閣議決定を見送らざるをえなくなってしまったのです(同9月19日)。
これは鳩山内閣における辺野古への米軍基地「移設」問題とまったく同じ構造です。このとき、もし野田首相が、鳩山内閣が辺野古の問題でがんばったように、
「いや、政治生命をかけて2030年代の稼動ゼロを閣議決定します」
と主張したら、すぐに「アメリカの意向をバックにした日本の官僚たち」によって、政権の座から引きずりおろされたことでしょう。
いくら日本の国民や、国民の選んだ首相が「原発を止める」という決断をしても、外務官僚とアメリカ政府高官が話をして、「無理です」という結論が出れば撤回せざるをえない。たった2日間(2012年9月5日、6日)の「儀式(*)」によって、アッというまに首相の決断がくつがえされてしまう。日米原子力協定という「日本国憲法の上位法」にもとづき、日本政府の行動を許可する権限をもっているのは、アメリカ政府と外務省だからです。
本章の冒頭で、原発を「動かそうとする」主犯探しはしないと書きましたが、「止められない」ほうの主犯は、あきらかにこの法的構造にあります。
*―これが儀式だったという理由は、もともとアメリカ政府のエネルギー省というのは、前身である原子力委員会から原子力規制委員会を切り離して生まれた、核兵器および原発の推進派の牙城だからです。こんなところに「原発ゼロ政策」をもっていくのは、アメリカの軍部に「米軍基地ゼロ政策」を持っていくのと同じで、「強い懸念」を表明されるに決まっています。最初から拒否される筋書きができていたと考えるほうが自然です。
事実、藤崎大使の面会からちょうど一週間後の2012年9月12日、野田首相の代理として訪米した大串博志・内閣府大臣政務官(衆議院議員)たちが同じくアメリカエネルギー省のポネマン副長官と面会しましたが、「2030年代の原発稼動ゼロ」政策への理解は、まったく得られず、逆に非常に危険な「プルサーマル発電の再開」を国民の知らない「密約」として結ばされる結果となりました。(「毎日新聞」2013年6月25日)
プルサーマルとは、ウランにプルトニウムを混ぜた「MOX燃料」を使う非常に危険な発電方式です。今後、2012年9月に結ばれたこの「対米密約」にしたがって、泊(とまり)(北海道電力)、川内(せんだい)、玄海(九州電力)、伊方(四国電力)、高浜(関西電力)などで、危険なプルサーマル発電が次々に再稼動される恐れが高まっています。
ー矢部宏治氏が「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないか」(集英社)の本を出版したのは、2014年10月29日。
九州電力が川内原発1号機の再稼動行程を開始したのが翌年2015年8月10日、川内原発2号機の再稼動行程を開始したのが10月15日です。さらに、関西電力は2016年1月29日に高浜原発3号機、2月26日に高浜原発4号機の再稼動行程を開始しました。また、四国電力は2016年8月12日伊方原発3号機の再稼動行程を始めました。当時、裁判が差し止め判決を出したため、高浜原発3号機、4号機が停止しました。2016年8月当時、伊方原発3号機は、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使う国内唯一のプルサーマル発電でした。
矢部氏が「危険なプルサーマル発電が次々に再稼動される恐れが高まってい」るとした、ことが現実のものとなっています。