そもそも国際放射線防護委員会(ICRP)とはいったいどんな組織なのでしょう。国際放射線防護委員会(ICRP)は単なる民間機関であり、その目的は原子力発電の推進のための放射線防護モデルを作る団体です。その多くは各国の原子力規制委員会のメンバーと重なり、国際原子力機関(IAEA)、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)のメンバーでもあります。

日本の放射線防護の考え方は、多く放射線医学総合研究所(千葉県千葉市)が発刊する資料に基づいています。放医研もまた、国際放射線防護委員会(ICRP)と相互交流を行っており、放医研は国際放射線防護委員会(ICRP)から独立な考えを一切持っていません。いわば、ICRPの日本支部的な存在です。

その国際放射線防護委員会(ICRP)が2011年の発表した「ICRP Pub118 組織反応に関するICRP声明」には、生殖器への放射線の影響について書かれた2.3生殖系(pp.77~82)の中で、たった7行、内部被ばくした場合に生殖器に与える影響が記述されています。ここでははっきりとセシウム137、ヨウ素131、ストロンチウム90、プルトニウム238、プルトニウム239、アメリシウム241、トリチウム酸化物の摂取が、子どもたちの性的発達を送られ、不妊を招きかねないことが示唆されています。それも「1度の摂取でも長期抑制効果をおよぼす」と書かれています。

以下、該当する7行を全文紹介します。

「2.組織と臓器の放射線応答 2.3生殖系

2.3.4 内部被ばく

(150)137Cs,131I,90Sr,238Pu,239Pu,241Am,トリチウム酸化物は,1度の摂取でも生殖器に長期抑制効果を及ぼす。雌ラットの90Srによる慢性照射(卵巣への線量は1Gy)は、,卵巣内の発育卵胞および始原卵胞の減少と月経周期の延長をもたらす。雄ラットの場合(精巣に最大0.7~0.8Gy)は,精母細胞,精子細胞,精子の数が減少する。セルトリ細胞の核を収容している細管における収縮や中身の喪失,生殖上皮の隔離が頻繁に見られた(ShvedovとAkleyev 2001)。放射性核種が生殖機能に及ぼす影響は複雑で,生殖腺への直接照射とそれが下垂体や内部分泌腺に与える影響の双方に関係する(DedovとNorets,1981;Lyaginskaya,2004)。」

【出典】ICRP Pub118 組織反応に関するICRP声明 正常な組織・臓器における放射線の早期影響と晩発影響 放射線防護の視点から見た組織反応のしきい線量 2011年声明 pp.82

 

ちなみに、 泌尿器系についての記述には、チェルノブイリ膀胱炎についての記述はありません(ICRP Pub118 2.8泌尿器系 pp.143~151)。これほど顕著な放射性物質の内部被ばくと健康被害についての研究があるにもかかわらず、無視する国際放射線防護委員会(ICRP)の立場は明確です。低線量内部被ばくはないことにするために、そもそも研究対象から削除して、防護モデルを作っているのです。