原爆症訴訟  4人を認定、救護被爆者は認めず 大阪地裁  毎日新聞  2008年7月18日

 被爆者が原爆症認定を求めた集団訴訟のうち、大阪、京都、兵庫の11人(うち6人は死亡)が国に認定却下処分取り消しなどを求めた第2次近畿訴訟で、大阪地裁(西川知一郎裁判長)は18日、未認定の5人のうち4人を原爆症と認定するよう国に命じる判決を言い渡した。一連の訴訟で国は10連敗となった。残る1人は直接被爆していない「救護被爆者」で、集団訴訟で初の司法判断として注目されたが、西川裁判長は請求を棄却した。
 救護被爆者の原告は森美子さん(83)=京都市右京区。爆心地から約20キロ離れた長崎県大村市の海軍病院で、看護師として被爆者の救護活動に従事し、放射能の影響で肝機能障害になったと主張。西川裁判長は「多数の被爆者との身体的接触を通じ、被爆したとしても不合理ではない」と指摘し、救護被爆で健康被害が起きる可能性に言及したものの、「放射線に起因しているとする明らかな証拠はない」と結論づけた。
 原告は広島、長崎で被爆し、がんや肝機能障害などを発症した73~83歳の男女と、死亡により訴訟を承継した遺族。国の新基準で原爆症と認定された6人については「訴えの利益がなくなった」として訴えを却下。また、国への1人当たり300万円の賠償請求は「漫然と却下処分を出したとは言えない」として棄却した。【川辺康広】
 【ことば】▽救護被爆者▽ 直接被爆したり、原爆投下後に爆心地近くに立ち入ってはいないが、死者や負傷者の搬送や救護活動に当たり、放射能の影響を受けた被爆者。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ約25万2000人(昨年3月末現在)の約1割が救護被爆者。72年の1人を最後に原爆症認定者はなく、今年4月から運用された新基準でも対象外になっている。