2016年12月27日に開催された、福島県 第25回県民健康調査検討委員会の発表では、福島の小児甲状腺がんは183名となりました。一番、真実を伝えていたのは北海道新聞ではないでしょうか。

■福島県の子ども調査 甲状腺がん患者増加 14年度以降 疑いを含め68人 北海道新聞 2016年12月28日 25面■

福島民報も、福島民友の報じています。現地の新聞ではもっと大きく報じられているはずです。電子版では

■がん確定44人に 2巡目の子ども甲状腺検査 福島民報 2016年12月28日■

■甲状腺がん…計44人に、2巡目検査で新たに10人 県民健康調査 福島民友 2016年12月28日■

 一方で、全国紙は非常に小さい扱いです。全国紙ではありませんが、東京新聞が2面で取り上げています。

■福島甲状腺がん 「第三者検証を」 健康調査検討委 東京新聞 2016年12月28日2面■

毎日新聞がやや大きい記事ですが、28面です。朝日新聞は非常に小さい記事で25面に掲載されていました。記事があることをわかっていないと見つけることも難しい記事です。

■甲状腺がん 新たに10人 福島県民健康調査 毎日新聞 2016年12月28日28面■

■福島の子、甲状腺がん145人 朝日新聞 2016年12月28日25面■

 読売新聞。前回(第24回県民健康調査検討委員会 2016年9月14日)、前々回(第23回県民健康調査検討委員会 2016年6月6日)のときは、全国版には記事を載せず、福島県版のみ記事を載せました。福島の子どもたちの小児甲状腺がんは福島県内の問題だ、とでも言うように。そして、今回の読売新聞は、全国版にも福島県版にも記事を載せませんでした。「183名の福島の小児甲状腺がんの子どもたち」の存在を読売新聞は完全に無視しました。以下に検索結果を載せます。

 事実はこうです。第25回県民健康調査検討委員会(2016年12月27日)で発表された福島県の小児甲状腺がんは本格検査で68名。第23回県民健康調査検討委員会(2016年6月6日)で発表された福島県の小児甲状腺がんは先行検査で115名。合計183名です。

 福島県立医大は、通常、甲状腺がんがどうかを判断する穿刺細胞診で悪性とされた子どもを「甲状腺がん確定」としていません。手術を終えた子どものみを「甲状腺がん確定」としています。手術を終えていない子どもを「甲状腺がん疑い」として、「がん確定」と区別しています。上記の新聞記事がすべて、がんの人数とがん疑いの人数を別々に記述しているのは、この福島県立医大の奇妙な分類分けに基づいています。しかし、これまで、穿刺細胞診で悪性とされ、手術してみたら良性だった子どもはたった1人しかいません。手術を終えた144名中143名は、穿刺細胞診で悪性とされ、手術でも悪性でした。99.3%の精度である、と言えます。

 福島県立医大のように「甲状腺がん確定」と「悪性疑い」とに区別する必要はありません。川根が記載している、183名とは、手術後良性結節であった、この1人を除く、穿刺細胞診で悪性と診断された子どもたちの人数を指します。

 また、地方自治体が行っている検査でも、茨城県北茨城市で3名、宮城県丸森町で2名の小児甲状腺がんの子どもが出ています。
 
■茨城県北茨城市 小児甲状腺がん 3名■

 (2015年8月25日公表 福島原発事故当時0~18歳を検査 検査実施4777人)

■宮城県丸森町 小児甲状腺がん 2名■

  (2016年6月2日公表 福島原発事故当時0~18歳を検査 検査実施1564人)

 さらに、崎山比早子さんが代表理事を務める「3.11甲状腺がん子ども基金」が2016年12月1日から、一律10万円の「手のひらサポート」(療養費給付事業)を募集したところ、36名の小児甲状腺がんの患者が申請書を出し、35名に療養費10万円が支給されました。そのうち3名には肺転移がありRI治療(アイソトープ治療)が必要であるため、追加10万円(合計20万円)が支給されました。その35名とは、

■福島県26人、神奈川県3人、宮城県1人、群馬県1人、千葉県1人、埼玉県1人、長野県1人、新潟県1人■

です。(2016年12月26日記者会見

 この12月26日の記者会見の中で、福島県の県民健康調査を受けながらも、甲状腺がんはわからず、自覚症状から自分で検査を受けに行ったところ、甲状腺がんであることが分かり手術を受けた方が3名いることがわかりました。

■福島県 県民健康調査を受けつつ、他の検査機関で甲状腺がんと診断された方 3名■

 この「3.11甲状腺がん子ども基金」が記者会見で発表した内容を非常に重大な内容であるにも係わらず、全国紙はまったく伝えていません。朝日新聞が非常によく伝えていますが、残念ながら全国版ではなく、福島県版のみでした。

■小児甲状腺がん 民間基金が療養費 「県外でも重症例」 朝日新聞 福島県版 2016年12月28日19面■

 全国紙ではありませんが、東京新聞 2016年12月29日朝刊が22面で報道しました。残念ながら、福島県26名以外で、書かれたのは神奈川県3名のみでした。宮城県1人、群馬県1人、千葉県1人、埼玉県1人、長野県1人、新潟県1人のことはここでも記事になりませんでした。

■甲状腺がん35人に療養費 東京新聞 2016年12月29日朝刊22面■

 読売新聞は、福島県の第25回県民健康調査検討委員会の183名の小児甲状腺がんも、「3.11甲状腺がん子ども基金」が療養費を支給した35名の小児甲状腺がんも、報道しませんでした。

 事実が事実として報道されないまま、東京パラリンピック、オリンピックの準備が宣伝されていていいのでしょうか?福島県の県民健康調査は今のままでいいのでしょうか?東北、関東地方の子どもたちに甲状腺検査のスクリーニングをやらなくていいのでしょうか?

 「福島県の県民健康調査の甲状腺検査も2年に1回、20歳を過ぎると5年に1回ですから、県民健康調査を受けている方でも、検査と検査の間に結節が非常に大きくなった方もいるかも」「県民健康調査を受けていたのに、自身の自覚症状から診断を受けに行って甲状腺がんが見つかった方は、検査の見落としというよりも、検査と検査との期間が長かったからという理由かも」。「福島県外の患者で手術した方で、リンパ節転移があった方は87%くらい」「福島県外の患者の症例では、① 腫瘍径が大きかったり、② 肺転移していたり、重症化しているケースが非常に目立つ」「自覚症状があってから受診したために、がんの発見が遅れたため」(2016年12月26日記者会見)-こうしたことが全国紙で報道されなくていいのでしょうか?

 マスコミ関係者の各位には事実を事実として伝え、子どもを大切にする国の施策を実現されるための努力を求めたいと思います。