福島県の子どもたちの小児甲状腺がんは174名になりました。

 しかし、新聞もテレビもまとも報じていません。福島の小児甲状腺がんについて報じた「福島甲状腺がん135 人に」(朝日新聞2016 年9 月15 日37面)の記事は、縦2.5cm×横4cm のベタ記事、たった87 文字でしかありません。

 毎日新聞が比較的大きく報じました。しかし、見出しは「甲状腺がん 新たに4人 福島県民健康調査 2巡目で計34名に」です。100名を超える、小児甲状腺がんの実態を伝えるものではありません。

 東京新聞にはがっかりしました。これまで、大きく福島の小児甲状腺がんを報じてきましたが、第24回福島県県民健康調査検討委員会が発表した、174名の小児甲状腺がんを一切報道しませんでした。改めて間違いがないように、東京新聞電子版でワード検索をかけました。2016年9月14日~9月15日の期日指定で、ワード検索「福島」で検索をかけましたが、小児甲状腺がんについては報道していません。新聞紙面でも川根は確認しました。9月14日(水)の東京新聞 朝夕刊、9月15日(木)の東京新聞 朝夕刊に、福島の子どもたちの小児甲状腺がんの記事はありません。

 犯罪的なのは読売新聞です。読売新聞は、全国版では174名の福島県の小児甲状腺がんについて一切報道しませんでした。ところが、福島県内で販売される、読売新聞 福島版では報道したのです。インターネット版では以下のように報じられています。「福島県の小児甲状腺がんは福島限定の問題」というスタンスなのでしょうか?許せません。

 未だに、福島県県民健康調査検討委員会では、福島県の子どもたちの小児甲状腺がんは過剰診断であるとか、放射線の影響ではないとか、全員をスクリーングしたために見つかっているだけだとか、議論がされています。果たしてそうでしょうか?福島県立医大 鈴木眞一教授が当初から、「日本の小児甲状腺がんの発症率は10万人あたり0.1 人か0.2 人である(年間の有病発見率)」と語ってきました。福島県の子どもたちの甲状腺検査の対象者は、原発事故当時0~18歳に加えて、原発事故のあった2011年4月2日~2012年4月1日を対象としています。その対象人数は38万1,281人です。

 10万人あたり0.1人か0.2人。対象人数は約40万人。つまり、最大0.2人×4倍=0.8人。福島県全体で毎年1人小に甲状腺がんの子どもが見つかるか、見つからないかの割合のはずです。

 スクリーニング検査で数十年後に見つかるべき、甲状腺がんを前倒しで見つけているのなら、先行検査(2011年度、2012年度、2013年度)ですべての子どもたちを見つけているはずです。115名の子どもたちが見つかったのなら、原発事故から5年間の2016年6月末時点で、全員のスクリーニングが終えた後の、追加の本格検査(2014年以降)で見つかるのは、福島県全体で年間1人×5年間=5人のはずです。各市町村で年間1人の小児甲状腺がんは見つかるのは極めて異常であり、多発としか表現しようがありません。

 以下に、各市町村ごとの先行検査(2011年度、2012年度、2013年度)と本格検査(2014年度、2015年度、2016年度6月30日まで)と、両方の合計を整理しました。ちなみに、井戸川克隆前双葉町長が全村避難させ、住民を埼玉県に連れてきた、双葉町からはいまだに小児甲状腺がんの子どもが出ていません。井戸川前町長は、独自の判断で、川俣町に避難していた、40歳未満の町民すべてに安定ヨウ素剤を服用させています(2011年3月14日および3月15日)。

福島県 子どもたちの甲状腺超音波検査と穿刺細胞診 先行検査(2016年3月31日現在)および本格検査(2016年6月30日現在) 20160914 色つき

 全村避難した町村で小児甲状腺がんの子どもたちが出ていない、または、1人、2人であるのに対して、避難指示のなかった、福島市で先行検査で12人、本格検査で8人、計20人の子どもたちが小児甲状腺がんに罹っています。同様に避難指示のなかった、郡山市で先行検査で25人、本格検査で17人、計42人の子どもたちが小児甲状腺がんに罹っています。同様に避難指示のなかった、伊達市で先行検査で2人、本格検査で7人、計9人の子どもたちが小児甲状腺がんに罹っています。本格検査では、先行検査の3倍を超える小児甲状腺がんの子どもたちが出ています。極めて危険です。線量が比較的低く、多くの避難指示を受けた自治体の仮役場、支所が置かれている、いわき市では、先行検査で24人、本格検査で5人、計29人の子どもたちが小児甲状腺がんに罹っています。いわき市は高濃度のヨウ素131のプルームが通ったことで知られている地域です。プルトニウム汚染が心配される、南相馬市では先行検査で2人、本格検査で4人、計6人の子どもたちが小児甲状腺がんに罹っています。本格検査のほうが発症人数が多いのです。果たして、南相馬市に子どもたちをこのまま住まわせていいのでしょうか。

 警戒区域、計画的避難区域は、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、飯舘村。(2012年4月1日時点)それぞれ小児甲状腺がんの子どもたちは、4人(先行検査2人、本格検査2人)、双葉町0人、大熊町3人(1人、2人)、富岡町1人(1人、0人)、楢葉町0人、飯舘村0人。

 2016年12月27日、第25回福島県 県民健康調査検討委員会が開かれます。是非、東京新聞、読売新聞は詳しく報道してほしい、と思います。また、いつまでも、先行検査(2011年度~2013年度)は原発事故の影響ではない、などと言っていないで、すべての小児甲状腺がんの子どもたちに、同じようなケアをしてあげてほしい、と思います。

福島県ホームページ 「県民健康調査」検討委員会

 

 そして、小児甲状腺がんの問題は、福島県限定ではありません。すでに福島県の南部と北部でも小児甲状腺がんの子どもたちが出ています。

茨城県北茨城市 小児甲状腺がん 3名

 (2015年8月25日公表 福島原発事故当時0~18歳を検査 検査実施4777人)

宮城県丸森町 小児甲状腺がん 2名

  (2016年6月2日公表 福島原発事故当時0~18歳を検査 検査実施1564人)

 繰り返します。福島市や郡山市、いわき市、伊達市、南相馬市などの小児甲状腺がんの多発は、放射能汚染地帯に子どもたちを放置したことが原因ではないですか?ただちに、子ども、妊婦を含め、住民の避難を補償するべきだと思います。福島県のみならず、東北、関東地方の子どもたちの甲状腺検査が必要です。

 同様に、大人の甲状腺がんも心配です。原発事故から8年後、ベラルーシでは大人の甲状腺がんが3倍になりました。甲状腺がんは本来、大人が罹るものです。原発事故の影響があるのですから、すべての診断と治療、手術後のケア、就業保障等を国の責任で行うべきです。原発は国家政策であったのですから。