日本原子力研究開発機構が2013年6月27日、『新たに開発した航空機モニタリング解析手法を用いて福島第一原子力発電所事故により放出されたヨウ素131の地表面沈着量を導出-米国エネルギー省が事故後初期に測定した結果を日米共同研究により解析-』を公表しました。その中で日本で初めて、ヨウ素131の地表沈着量の実測値による汚染マップを公表しています。

 このヨウ素131汚染マップは2011年4月3日段階。単位はベクレル/㎡です。赤く塗られた地域はヨウ素131が300万ベクレル/㎡を超えていました。

 この論文は、米国保健物理学会誌Health Physics 8月号に掲載され、同誌ON-LINE版でも発表されています。(有料)

Enhanced Analysis Methods to Derive the Spatial Distribution of 131I Deposition on the Ground by Airborne Surveys at an Early Stage after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident
Torii, Tatsuo*; Sugita, Takeshi*†; Okada, Colin E.‡; Reed, Michael S.‡; Blumenthal, Daniel J.§

 また、学習院大学教授の村松康行氏らも、2013年7月2日に「ヨウ素129 の測定を通じたヨウ素131 の土壌濃度マップ」を公表しています。しかし、これは2011年6月14日時点でのヨウ素131汚染マップであり、東京第一原発のメルトダウン、メルトスルーから3カ月も経った時点での推定です。上記の日本原子力研究開発機構の2011年4月3日時点からも約72日後の推定であり、ヨウ素131の半減期8日の9倍の日数は発った時点です。つまり、ヨウ素131は9半減期を過ぎています。(1/2)9=1/512。すなわち、日本原子力研究開発機構の2011年4月3日時点での推定値の約500分の1の汚染度にわい小化されたヨウ素131汚染マップです。村松氏らの研究は福島県など東北・関東地方の人びとの初期被ばくの推定にはまったく役に立たない研究である、と思います。

 

 これは2011年6月14日時点ですから、上記の日本原子力研究開発機構の2011年4月3日時点と比べるためには500倍します。赤色の5000ベクレル/㎡超えの地域は2011年4月3日時点では250万ベクレル/㎡超えであったと考えられます。

 チェルノブイリ原発事故は1986年4月26日に起きました。以下がその14日後、1986年5月10日時点でのヨウ素131によるベラルーシ共和国の汚染マップです。

 上図の赤に縦線が引かれている地域はヨウ素131が185万~555万ベクレル/㎡沈着している地域です。日本原子力研究開発機構のヨウ素131の地表沈着量マップの赤い地域に相当します。

 そして、この地域では小児甲状腺がんが多発しました。下がベラルーシ共和国の各行政区ごとに発症した小児甲状腺がんの子どもたちの人数を表しています。1990年から2000年までの11年間で合計953人の子どもたちが小児甲状腺がんにかかりました。チェルノブイリ原発事故前はベラルーシ共和国全土で小児甲状腺がんにかかる子どもは1年間に0~2人でした。