福島老朽原発を考える会(フクロウの会)が、子どもたちの尿検査から見えてきたもの、フランス放射能測定NGO“ACRO”理事長D.Boilley氏を迎えて という集会を2012年8月18日に開きました。

 その時のスライドを青木一政氏からいただきました。紹介します。

 まず、核戦争防止国際医師会議ドイツ支部「チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害: 科学的データは何を示している 」(合同出版 2012年3月30日)の中で紹介されていた、アンゲリーナ・ニャーグ博士(チェルノブイリ医師協会代表)のデータを青木氏がグラフ化したものです。(スライド3)

 チェルノブイリ原発事故で被ばくした北ウクライナ住民にあらわれた疾患です。原発事故から5年後にはガンではない、あらゆる疾患が爆発的に増加しています。このグラフは10万人あたりの疾患率ですから、このグラフで1万人を超えるということは10人に1人その病気にかかるということです。福島県、宮城県南部だけでなく、東北・関東・東海のホット・スポットと言われるところでも、このような疾患が爆発的に増加するのではないでしょうか?

 また、尿から検出された放射性セシウムの濃度が、内部被ばくの実態をよく現していると考えられます。国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線防護モデルでは、外部被ばくと内部被ばくの影響は1対1と、内部被ばくの影響を軽視しています。そのため、尿から数ベクレル/kg検出されても「健康に影響はない」ことになってしまいます。

 しかし、バイオアッセイ研究センターの福島昭治氏の「チェルノブイリ膀胱炎」の研究では、ウクライナ共和国の高放射能汚染地帯に住む住民では97%が上皮異形成(がん化する一歩手前の状態)、64%が上皮内がんにかかっています。この住民の尿から検出されたセシウム137の濃度の平均は6.47ベクレル/Lだったというのです。

 また、中程度の放射能汚染地帯では83%が上皮異形成(がん化する一歩手前の状態)、59%が上皮内がんにかかっています。この住民の尿から検出されたセシウム137の濃度の平均は1.23ベクレル/L(スライド4)

 つまり、尿から放射性セシウムが1ベクレル/Lも検出される状態は、膀胱がんを引き越しかねないほど危険なレベルまで内部被ばくしている可能性がある、ということです。

 そして、福島老朽原発を考える会が、フランスのNGO団体アクロ(ACRO)と協力して、行った福島県、宮城県、岩手県、などの子どもたちの尿検査結果がスライド5~8です。

 スライド5は、福島市の子どもたち10名の尿検査を2011年5月19日~21日の採取して計測したものと、その2か月後7月23日~25日に採取して計測したものです。9名の子どもは2カ月後には尿中の放射性セシウムの濃度は減少していますが、1名の子どもだけは微増しています。

 9名の子どもは1回目の計測(5月下旬)の後、福島県外に避難したのですが、微増だった1名の子どもは福島市に住み続けていました。

 スライド6は岩手県のホット・スポットである、一関市の4歳の女の子の尿検査の結果です。1回目は2011年9月に測定し、尿から放射性セシウムが4.6ベクレル/Lも出ていました。祖母の畑でとれた野菜、しいたけ、山菜を食べていたそうです。家にあった干ししいたけを測定したところ、1810ベクレル/kgでした。その後、野菜を西日本産、北海道に切り替えたところ、3ヶ月後に尿中の放射性セシウムは1.0ベクレル/L以下になりました。その更に2か月半後の測定では0.2以下になっていました。

 スライド7は福島市の17歳の運動部に所属している男子です。放課後2時間外で練習、土日も練習か試合。2011年7月末の検査で放射性セシウムが3.47ベクレル/Lでした。検査前までは食材の産地も気にしないで食べていましたが、検査結果がわかってからは食材の産地を選び、ミネラルウォーターを飲むようにしました。しかし、尿中の放射性セシウムの減少の割合は半減期150日程度でした。これは17歳の子どもにしては減少の割合が少な過ぎます。放射性セシウムの生物学的半減期は

 1歳まで   9日

 9歳まで   38日

 30歳まで 70日

 50歳まで 90日

です。17歳の男子なら少なくとも38日前後であるはずです。これは、追加的な内部被ばくがあるためではないでしょうか?それが屋外で放課後2時間の部活動、土日の練習や試合による呼吸器による土ぼこりを吸うことによる、内部被ばくではないでしょうか?

 スライド8は23歳男性の例です。1回目約1.7ベクレル/L、2回目約1.6ベクレル/Lとほとんど減りませんでした。しかし、3回目の計測では検出限界0.38ベクレル/L未満になっています。この方はこの間、特に生活の中で自分から変えたことは何もなかったと言います。しかし、積雪のため1月~2月はソフトボールの練習がなかったこと、3月~4月は花粉症のためにマスクを着用していたそうです。つまり、呼吸器で土ぼこりを吸うことによる内部被ばくがこの方の主な原因であり、それをやめること、屋外での運動をやめ、屋外ではマスクを着用することで、内部被ばくしていた放射性セシウムが追加で蓄積することなく排出された可能性があります。

 福島老朽原発を考える会 子どもたちの尿検査から見えてきたもの 20120818