放射性物質、風で再浮遊か 風向きで放射能濃度変化
朝日新聞 2011年11月12日朝刊
東京電力福島第一原発から放出され、地面に落ちた放射性物質が、風によって再び大気中に浮遊している可能性が高いことが茨城大学や東京大学などのチームの調査で分かった。
チームは3月末から8月にかけて、福島市や水戸市など関東、東北の計11地点で、福島第一原発から出たとみられる大気中のセシウム134やヨウ素131などの放射性物質をフィルターで捕らえて24~72時間おきに測った。
このうち、分析が終わった福島市、茨城県日立市、水戸市の6月以降の測定値を見ると、放射能濃度は風向きに依存し、原発の方角から風が吹くと事故前の10万倍の10ミリベクレル程度と高い値を示す一方、それ以外の風向きの時でも、事故前の千倍の0.1ミリベクレル程度と一定の濃度があった。このため、放射性物質は地面に落ちた後、泥などに吸着し、土ぼこりなどとして浮遊しているとみられる。
茨城大学の北和之教授は「台風が来ても、それほど濃度は上がらなかった。浮遊には風よりも地面の乾燥の影響が強いのではないか」と推測する。空気が乾燥する冬は土ぼこりの量が増える可能性がある。北教授は「ただちに健康被害が出る濃度とは考えにくいが、監視の強化が必要だ」と話す。
名古屋市である日本気象学会で11月17日に発表する。(小坪遊)