リニア建設をめぐって、川勝静岡県知事は、リニア採掘工事に伴い、大井川水系の水を減らすことなく、元に戻すようJR東海に要求しています。しかし、JR東海は首を縦に振りません。JR東海の推計でも、リニアトンネル採掘によって、大井川の水が毎秒2トン減少するとなっています。これは静岡県民の63万人分の水道使用量に相当します。JR東海は大井川水系の地下水問題をうやむやにしながら、JRリニア中央新幹線のトンネル採掘工事を進めようとしています。

 リニアは、首都東京と名古屋、大阪を結ぶだけのものであり、山梨県、静岡県、岐阜県には一切経済波及効果はありません。それどこか地盤沈下、地下水の減少、温泉の枯渇、電磁波障害、地下からの騒音しか、3県にはもたらしません。また、岐阜県の東濃地方は天然ウランの鉱床があり、トンネル採掘に伴い、ウラン残土が環境に持ち込まれることになります。アメリカの先住民族の土地にあるウラン鉱床では、鉱山労働者の肺がん罹患率(病気にかかる率)は、先住民ナバホ族平均の二八倍、子どもの骨がん罹患率も全国平均の五倍にもなっています。

<参考>

『米インディアン居留地、ウラン鉱汚染 2010年6月24日 毎日新聞 大阪版 』

内部被ばくを考える市民研究会資料 2018年9月13日 

 そもそも、東海道新幹線がある以上、乗車率が70%以上超えることは絶対にないだろう、と言われます。9兆3000億円にも及ぶ工事費用により、JR東海は赤字転落すると予想されています。ではなぜ?

 もっとも大きな理由は、東日本大震災以降、電力の省エネ化が急速に進み、関西電力の持つ原発4基の発電量を消費する一大電力消費企業が必要だったからです。莫大な電力を消費するリニアは、関西電力の4基原発稼動とセットです。

 もはや、太陽光、風力などの再生可能エネルギーにによって、大規模発電、いったん事故が起こればふるさとを奪われ、放射能汚染の土地に帰還させられる、事態を生む原発は必要ないのです。必要のない原発を今後も稼動させるための、本末転倒のリニアなど要りません。

 当初はリニア建設費用9兆3000億円はJR東海だけの資金で建設することが約束されていたのに、いつの間にか日本政府が3兆円の資金融資をすることにもなっています。2016年6月1日、安倍首相がリニアに財政投融資(3兆円)を活用すると表明して、決まりました。

 採算性がなく、環境を破壊し、原発稼動と大手銀行資本の関西電力への融資焦げ付きを回避するためだけの、リニア建設は中止するべきです。

 最後に、動画『リニア中央新幹線がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』17分19秒のリンクを貼っておきます。このリニア中央新幹線問題と原発との関係を疑問の余地なく解説してくれる動画です。

リニア問題平行線 川勝知事「計画見直す事態」

2019年9月6日 読売新聞 朝刊面 
会談で握手する大村愛知県知事(左)と川勝静岡県知事(5日午後4時53分、名古屋市中区の愛知県公館で)=林陽一撮影会談で握手する大村愛知県知事(左)と川勝静岡県知事(5日午後4時53分、名古屋市中区の愛知県公館で)=林陽一撮影

 リニア中央新幹線静岡工区の着工に向けた県とJR東海の協議が難航している問題で、川勝知事は5日、愛知県公館(名古屋市)を訪れ、大村秀章知事と会談した。JR東海が掲げる2027年の東京―名古屋間の開業目標について、川勝知事が「計画全体の見直しを考えてもらわなければならない」と強調した一方で、大村知事は「早期着工のため、一歩でも二歩でも前進していただきたい」と訴えた。互いに譲歩しない姿勢が一段と鮮明になった。

 リニア中央新幹線静岡工区の着工に向けた県とJR東海の協議が難航している問題で、川勝知事は5日、愛知県公館(名古屋市)を訪れ、大村秀章知事と会談した。JR東海が掲げる2027年の東京―名古屋間の開業目標について、川勝知事が「計画全体の見直しを考えてもらわなければならない」と強調した一方で、大村知事は「早期着工のため、一歩でも二歩でも前進していただきたい」と訴えた。互いに譲歩しない姿勢が一段と鮮明になった。

 会談で注目された議論は、沿線9都府県が強く求める27年の開業と工事に伴う大井川の水量減少問題、国がどう関与するかだ。

 約40分間の会談は、冒頭以外を非公開とし、側近も交えず2人だけで行われた。27年の開業目標を巡り、対立を深めてきた両トップの歩み寄りが期待されていた。

 会談の冒頭、川勝知事は「リニアの問題でぎくしゃくしているのは残念だ。(私だけがJR東海とけんかしているという)誤解を解くために来た」とあいさつした。大村知事は「解決できない問題はないと思うので、関係者の英知を結集し、何としても目標の27年開業を進めていきたい」と早期着工を強く求めた。

 両知事は会談後、別々に記者団の取材に応じた。川勝知事は大井川の水量減少問題に触れ、「不測の事態が起きている。(静岡の)水がめが失われる。(開業計画の)全体を見直すべき事態と認識していただきたい」と、安易な早期着工を認めない姿勢を示した。大村知事は「川勝知事の立場もあるでしょう。互いの意見がかみ合うというわけではなかった」と総括し、「27年の開業目標が遅れることは譲れない」と改めて訴えた。

 JR東海は工事中の一定期間、県外に流出した大井川の湧水を戻すことは技術的に難しいと説明した。これに対し、県や利水者は、湧水の全量を戻すべきだと強く反発していた。

 川勝知事はこの点を大村知事に説明したという。JR東海の対応について「詭弁きべんであり、県民は怒っている。(大村知事の)静岡県民は誰もリニア工事に反対していないという認識は改められたのでは」と述べた。大村知事は水問題について「静岡県とJR東海が科学的な論拠に基づいて議論をしてほしい」と話すにとどめた。

 ただ、両知事は「問題解決には国の積極的関与が必須」との意見では一致した。川勝知事は大井川の問題について、「技術的な解決には国土交通省が関与しないと(いけない)」と述べた。大村知事は「国が前面に乗り出して調整してほしい。鉄道業者に水問題(の解決)まで全てやれというのは酷だ」と理解を示した。

 今回の会談は、川勝知事が「(大村知事に)中間意見書を読んでいただきたい」と発言したことに、大村知事が「自分が私のところに説明に来ればよい」と猛反発したことがきっかけになった。

 

大井川直下に断層か、リニア工事計画地 湧水流出、下流水量減も

2019年10月1日  静岡新聞

 
 静岡、山梨県境付近の地中断面図

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事が計画されている大井川上流部の本流直下に断層や破砕帯が存在する可能性があることが30日、複数の地質学専門家の指摘で分かった。山梨県側へのトンネル湧水の流出が懸念される畑薙山断層と近接していて、工事中に大井川の水が破砕帯を通じて県外に大量流出し、下流部の河川流量に影響を及ぼす恐れがあるという。JR東海も断層の存在を把握しているとみられるが、これまでの県との協議では説明していない。
 専門家によると、大井川本流直下の断層は山梨側に向け傾斜していて畑薙山断層と地下で一体化している可能性もある。トンネルより上流には川に沿った断層も存在するとされ、川から地下に染み込む水が大量に含まれている可能性がある。トンネル掘削時に高圧で大量の水が噴き出すことが懸念される。
 大規模な破砕帯がある畑薙山断層は大井川に沿って南下し、川の下をくぐるとみられている。この断層にも同様に川の水が染み込んでいる可能性がある。専門家は本流近くでボーリング調査をして事前に県外への湧水流出量を把握し、下流部の流量への影響を見極める必要があると指摘している。

 

リニア残土 微量ウラン  JR東海 公表せず

岐阜 日吉トンネル工事

2019年8月5日 しんぶん赤旗

 JR東海が進めるリニア中央新幹線建設工事の日吉トンネル南垣外工区(岐阜県瑞浪市)で残土から複数回、放射性物質である微量のウランが検出されていたことが分かりました。この地域には日本最大のウラン鉱床が広がっています。トンネル掘削には住民から不安の声が相次いでいましたが、同社は公表していませんでした。専門家は、住民の信頼を得るためには公表が必要と指摘しています。(丹田智之)


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(写真)耕作放棄地に造成された南垣外工区の残土置き場=岐阜県瑞浪市

 本紙が岐阜県から情報公開請求で入手した資料によると、2018年5月30日に同工区の残土から1グラムあたり5・3マイクログラムのウランが検出されていました。同年6月5日にも1グラムあたり5・0マイクログラムのウランが出ています。資料は同年5月30日から7月10日までの計量証明書で、以後は公開されていません。

 いずれも検出されたウランは微量で、JR東海が定めた管理上の基準「1グラムあたり77マイクログラム」(放射能量1ベクレルに相当)を下回っています。付近の残土置き場に搬出し、同社は「管理値を超えるウラン含有土は発生していない」として公表していません。

 瑞浪市を含む岐阜県の東濃地域は日本で数少ないウラン鉱床があります。天然のウランを加工すれば、原発の核燃料になります。

 同社は「鉱床を回避しているので、ウランに関する問題は発生しない」と説明し、工事を進めてきました。

 日吉トンネルのルート付近に住む男性(85)=瑞浪市=は「トンネルを掘り進めているうちに、どこかで鉱床に当たるのではないか。(ウラン対策について)住民は何も知らされていません。工事は進めるべきではない」と憤ります。

 旧通商産業省地質調査所で東濃のウラン鉱床を調査した元日本環境学会副会長の坂巻幸雄さんは「工事で出たウランは微々たる量だと言えます。しかし、工事に関する情報は細かいことまで自治体と住民に伝えてこそ信頼は生まれるものです」と話しています。

ウラン出土の危険 着工前に指摘も

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(写真)本紙が岐阜県への情報公開請求で入手したウランの検出を示す計量証明書など

 岐阜県の東濃地域は、天然の重金属類が豊富な地質として知られています。同地域を横断するリニア中央新幹線の日吉トンネル南垣外工区(瑞浪市)では、環境基準を超える有害物質のヒ素やフッ素に加え、放射性物質のウランを含む残土も発生していました。

 「ウランについては、私たちが調査した範囲では問題ないだろうということで、出ることを前提にしていません」

 着工前の2014年1月30日、岐阜県庁で開かれたリニアの環境影響評価審査会で、出席したJR東海の担当者はそう言い切りました。

 ある委員は「現場で工事を始めて、本当にウランが出てきたらどうするのか」と厳しく指摘。別の委員は「私は反対。ここは掘るべきではない」との意見を表明しましたが、JRの担当者は「必要に応じて対策していく」と繰り返しました。

 天然ウランが日本で採掘されていた場所は、主に東濃と人形峠(岡山・鳥取両県)の2カ所です。旧動力炉・核燃料開発事業団の『動燃30年史』(1998年)によると「日本国内における地域別埋蔵ウラン量」(88年3月末)は人形峠の1945トンに対し、東濃は4590トンと突出しています。

JR東海 処分場所・方法もあいまいなまま

 ウランを含む残土が発生した場合の対応を指摘した日本共産党の本村伸子衆院議員の質問(16年3月30日、国土交通委)に対し、国交省の藤田耕三鉄道局長(当時)は「放射線量やウランの濃度を含む地質の状況把握の結果については、(JR東海が)県や関係市町に報告し、工事説明会などで地元の方々に説明していく」と答弁しています。

 JR東海は、高濃度のウラン含有土が発生した場合は「通常の残土置き場には搬入しない」(広報部)としています。しかし、最終処分の場所や方法について聞くと「専門家に相談の上、関係機関と協議して決定する」と、あいまいな回答でした。

 日本原子力研究開発機構の東濃地科学センター地層科学研究部の笹尾英嗣部長は「1グラムあたり1ベクレル以下ということであれば、環境や人体への影響はない」と述べた上で、こう指摘します。

 「ウランは限られた場所の特定の地層に分布しています。過去の周辺の調査結果から日吉トンネルのルート上に大規模なウラン鉱床はないと言えますが、小規模な鉱床がある可能性は否定できない」

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youtube動画 17分19秒

『リニア中央新幹線がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』