東京電力福島第一原発の事故を受け、放射能に汚染された牧草を早期に刈り取り、その後に生えてくる牧草を牛のえさにしたり、放牧に使ったりするよう指導する方針を、農林水産省が決めた。刈り取った草は、放射性物質の拡散を招く焼却や埋却を避け、まとめて牧場そばに保管するよう求める。

 農水省は、放射能汚染された牧草を食べた牛の原乳や肉から基準以上の放射性物質が検出されることを防ぐため、利用できる牧草の基準を4月中旬に設定。牧草の汚染が疑われる東北・関東などの16都県に調査を依頼した。18日までの各県の検査結果では、岩手から千葉までの8県で基準を超えた。

 基準を超えた地域は放牧や牧草を牛に与えることをやめ、輸入飼料などを使っている。だが、現在生えている牧草をどうするかが問題になっていた。

 農水省は、刈り取りが可能な高さ(30センチ程度)まで育った牧草はなるべく早期に刈り取るよう求める。一部は乳牛や肉用牛でない繁殖用の牛などに与えることを認め、残った大半の牧草は円筒形にまとめて発酵や乾燥させ、当面保管するよう指導する。

 現在の汚染の主な原因は3月中旬の原発水素爆発と農水省はみている。大気中の検査結果などから、原発近辺を除いて最近の汚染はひどくないとしており、刈り取り後に生える「二番草」を牛に与えることは可能と考えている。ただ、利用前に検査で安全性を確認することを求める考えで、近くこうした内容の通知を各都県に出す。(大谷聡)