原発事故とがんの関連否定

子ども甲状腺の本格検査

2019年5月31日 佐賀新聞
 保護者に伴われ、甲状腺検査に向かう子どもたち=2011年10月、福島市の県立医大病院

 保護者に伴われ、甲状腺検査に向かう子どもたち=2011年10月、福島市の県立医大病院

 東京電力福島第1原発事故後当時18歳以下だった福島県内全ての子どもを対象とした甲状腺検査で、2014、15年度に実施した2巡目の検査で見つかったがんと被ばくに関連性がないとする中間報告を、専門家による部会がまとめたことが31日、関係者への取材で分かった。被ばく線量が高いとがん発見率が上がるといった相関関係が認められないことなどが理由。福島市で6月3日に開かれる部会で報告する。

 基礎データ収集が目的の1巡目と違い、2巡目は事故によるがんの影響を調べる「本格検査」と位置付けている。専門家による2巡目の見解が初めてまとまったことで、今後の検査の在り方に影響を与えそうだ。

 関係者によると、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が県内59市町村ごとに推定した甲状腺被ばく線量を使い、がんが見つかった子どもの年齢や市町村と突き合わせて分析。約38万人を対象とした2巡目では52人のがんが確定し、19人に疑いが見られたが、線量の増加に従ってがん発見率が上がるという関連性はなかった。

 対象者が全国に散らばり受診率が低下していることが課題となっており、各都道府県ががんのデータを集めた「地域がん登録」などを活用していく必要があるとした。

 原発事故で放出された放射性ヨウ素は甲状腺にたまってがんを引き起こす恐れがある。福島県は、放射線の影響が表れる前に子どもの甲状腺の現状を把握するため1巡目となる「先行検査」を11~13年度に実施。101人ががんと確定したが、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と比べて被ばく線量が低いことなどから「放射線の影響とは考えにくい」とする中間報告を15年に発表していた。

 昨年5月からは4巡目の検査が始まっている。これまでがんの確定は168人、疑いが43人に上っている。