内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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原発の再稼働

川内原発の事故は九州一体、西日本の海を汚染する 九州大学広瀬直毅准教授ら 2011年7月7日発表

 川内原発は、日本のエネルギーを原発に依存するのか、どうか、という問題だけではなく、私たちの健康に直接つながる問題です。いったん、原発事故が起きれば、その流出した放射性物質(RI)は九州一体の海域に広がり、更に対馬海流、黒潮に乗って西日本全域の海域を汚染していきます。  九州大学広瀬直毅准教授ら 2011年7月7日発表した「川内原子力発電所からの仮想的な放射性物質流出に対する海洋拡散シュミレーションを実施 2014年7月7日発表」です。 PRESS RELEASE(2011 /07/07)九州大学 九州大学広報室 〒812-8581福岡市東区箱崎6-10-1 川内原子力発電所からの仮想的な放射性物質流出 に対する海洋拡散シミュレーョンを実施 ■概 要九州大学応用力研究所 広瀬直毅准教授らは、万一の原発 広瀬直毅准教授らは、万一の原発事故に備えて、放射性物質の海洋拡散をシミュレーョンしました。その結果、川内原子力発電所起源とする場合流出放射性散をシミュレーョンしました。その結果、川内原子力発電所起源とする場合、流出放射性物質はあまり沖合へ拡散せず、主に沿岸付近を移動し、日本の沿岸域の大部分で濃度が上昇する恐れがあること、また隣国に達するに達する可能性があることわかりました。  ■背景  東目本大震災に伴い、福島県の原子力発電所から流出した放射性物質(RT)の海洋拡散が現在問題となっています。万一の場合に備えて、福島以外の原発に対しても排出物の輸送過程をある程度予測しておく必要があります。  日本周辺の海流分布をみると、太平洋側の排出物は黒潮あるいは親潮に流され、日本海側ならば対馬暖流によって下流側へと輸送されると予想できますが、九州西岸に位置する川内原発は両暖流の上流に位置するため、流出物質が太平洋側へ南下するのか、日本海へと北上するのか、判断が難しいのが現状です。 ■内容 そこで広瀬准教授らは、現実的な海況を再現・予測することのできる九州大学応用力学研究所海況予測モデル(DREAMS、分解能約7.4kmメッシュ)の流速推定値を用いて、川内原発付近を起源とするRTの輸送過程についてシミュレーションを行いました。2011年3月11目からの1ヶ月聞に10PBq(1京Bq)のRTが海水中に流出したと仮定し、その濃度分布を移流拡散方程式によってシミュレーションしました。計算期開が短いためRTの半減期は考慮せず、さらに簡単のため蒸発も沈殿もせず海水に溶け込んだ中立トレーサーと仮定しています。 ■結果 モデル計算によると、起源付近においては、1ヶ月間(RT流出中)200Bq/L以上の高濃度状態が続き、15km沖合での最高値も60Bq/Lに達しました。しかし、それでも東京電力による福島県沖合15kmのモニタリング値(4月中句)と比べると一桁小さいので、本研究の仮定以上のRT流出量を想定する必要があるかもしれません。  放出停止後は最高濃度部が北方へ移動し、特に有明海内外では長期聞にわたって高濃度(1Bq/L以上)の状態が続くと算出されました。逆に起源付近の濃度は比較的速やかに低下、5月24日頃には1Bq/Lを下回りました。  トレーサーの一部は南方へも輸送され、流出から約1ヶ月後に黒潮に乗ると、速やかに太平洋沿岸域へ拡がります(図1b)。  海流の速度に差があるため、太平洋側に比べて、日本海側へのトレーサー輸送速度は遅くはありますが、濃度は日本海側の方が高く、長崎市付近で13Bq/L(4/22頃)、博多付近で1.5Bq/L(5/20頃)に達します(図2a)。その後も高濃度水塊が日本海の沿岸域を進行することになります(図1c)。  また、5月後半から韓国東岸でも急にトレーサー濃度が上昇します。東シナ海で水深100~200mの深さまで拡散したRTトレーサーが、対馬海峡西水道の底部を伝って韓国海域に達し、沿岸湧昇によって表層に現れたものです。  以上はある一時期の仮想的な状況におけるRT輸送過程ですので、流況や気象条件によって結果が異なる可能性には汪意が必要です。少なくとも、川内原発から排出された物質は、東シナ海・日本海・太平洋の沿岸付近に高濃度帯を形成する恐れがあり、隣国にまで達する可能性があると指摘されます。 ■今後の展開  以上の結果を、日本海洋学会秋季大会(2011年9月・於 九州大学応用力学研究所)にて報告する予定です。さらに実験期聞(現在は100日間)を延長し、より長期聞の拡散過程を調査する予定です。また、海況や気象条件の異なった季節の試算も行なう必要があります。他の原子力発電所に関しても同様の数値計算を行ないたいと考えています。 図1.川内原子力発電所付近から流出したRIトレーサーの濃度分布 図2.各沿岸海域におけるRI濃度の時間変化 横軸は3/11からの日数。   【お問い合わせ】 九州大学応用力学研究所准教授 広瀬 直毅 電話:092-583-7492 FAX:092-583-7492 Mai1 : hirose@riam.kyushu-u.ac.jp      

福井若狭の暮らしと自然を守ろう!西川一誠知事 安全性の十分でない原発の再稼働を認めないで下さい!署名

       福井若狭の暮らしと自然を守ろう!西川一誠知事 安全性の十分でない原発の再稼働を認めないで下さい!署名 広瀬隆さんより  全国のみなさま  広瀬隆です 2014年8月9日にキックオフした「福井県の原発の再稼働を認めないよう西川一誠知事に求める署名」が、県外の人たちも(海外の全世界からも)下記サイトからイン ターネットで参加できるようになっています。 現地では、必死の署名集めが展開されています。http://fukui.jpn.org/ 署名 福井県の方 署名 福井県外の方  鹿児島県の川内原発に次ぐスケジュールで進められているのが、福井県の高浜原発・ 再稼働計画です。  みなさまも、これを傍観せずに、どんどん署名に参加して、「もう動かすな原発! 福井県民署名実行委員会」に送ってください。できれ ば、急いでください! そして、みなさまの周囲の方たちにも広く呼びかけてください。 数が大切です。そして、冷静な意見も・・・ 私見ですが、福井県のような原発立地自治体には、これまで原発推進のための電源三法交付金が支払われてきましたが、原発に代る県内での 新たな産業育成のために、目的と期間を限って、これと同等の交付金が交付されるよう、私たちも経済産業省と国に呼びかけると、私は西川一誠知事に約束しました。まず、原発ゼロの政策を打ち出すことが第一です、と。  ニュース「福井原発再稼働反対の県民署名展開 サイトも開設」下地毅 2014年10月12日03時00分 朝日新聞 福井県版 原発再稼働反対の署名を呼びかけるメンバー=JR福井駅前 原発の再稼働を認めないよう西川一誠知事に求める署名活動が、「もう動かすな原発! 福井県民署名実行委員会」(代表は明通寺住職の中嶌哲演さんら4人)によって進められている。2014年10月11日もJR福井駅前でメンバーらが「一人でも多くの署名を」と呼びかけた。 委員会は、中嶌住職と山本富士夫・福井大名誉教授の呼びかけで発足し、2014年8月9日に「キックオフ集会」があった。安倍政権が前向きな再稼働には地元同意が必要とされている。多くの人に参加を呼びかけるため西川知事への要請内容は「再稼働を認めないでください」の一点とした。 署名を呼びかける対象は、県民だけではなく国民や世界。原発事故や使用済み核燃料の影響は地球規模に達しかねない恐れを重視した。署名集めを担う県内各市町ごとの実行委員会の整備が進められているほか、インターネット上に署名サイト(http://fukui.jpn.org/)も開設された。    

川内原発再稼働を無期凍結すべきである 原子力市民委員会 2014年7月9日

見解:川内原発再稼働を無期凍結すべきである                              2014年 7月 9日                             原子力市民委員会                       座長 舩橋晴俊 座長代理 吉岡 斉                       委員 荒木田岳 井野博満 大島堅一 大沼淳一                       海渡雄一 後藤政志 島薗 進 筒井哲郎                       満田夏花 武藤類子  原子力市民委員会は、2013年4月の発足時から、福島原発事故の被害の深刻さを直視し、原発ゼロ社会への転換を目指すべきであるとの基本的な見解を示してきた。2013年6月には、新規制基準の策定に際し、緊急提言「原発再稼働を3年間凍結し、原子力災害を二度と起こさせない体系的政策を構築せよ」を発表し、新規制基準が原発の安全を保証しないことを示した上で、それに基づく原発再稼働はすべきでないことを主張した。  2014年4月に発表した『原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱』では、原発ゼロ社会を目指す具体的な行財政改革の道筋までを含む政策提言を行ってきた。現在、電力各社と政府が、原発再稼働を急ぎ、九州電力川内原発の再稼働許可が切迫していることに対して、原子力市民委員会として、以下の通り、川内原発の再稼働は無期限で凍結するべきであるとの見解をまとめた。  以下の1.から6.において、原子力市民委員会としての現状認識および、再稼働を凍結すべきと考える理由を示すとともに、7.において、原子力規制委員会、政府、電力会社、自治体がとるべき選択を示し、原発ゼロ社会を希求する市民に対して行動を呼びかける。 1.原発再稼働をめぐる昨今の状況  原子力規制委員会は2014年3月13日、全国16原発48基のうち、再稼働に向け新規制規準に係る適合性審査を受けている10原発18基(当時)の中から、九州電力川内(せんだい)原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機の適合性審査を優先的に進めることを決めた。九州電力の申請書類の不備により当初予定よりも審査が遅れているが、近々「適合」の判断を下した審査書案が発表され、パブリックコメント等の手続きをへて審査書が正式決定されると報じられている。それを受けて電力会社が再稼働への同意を地元自治体に要請し、地元自治体が受諾すれば再稼働が実現する。それは9月以降となる可能性が高い。  政府は再稼働の是非に関する政治判断を行わないとしているが、このことは原子力規制委員会による適合性評価以外のハードルを、再稼働に対して一切設けないことを意味する。電力会社から地元自治体(鹿児島県、薩摩川内市)への働きかけの最終段階で、自治体側が経済産業大臣や総理大臣に対して安全の確約を要請し、政府側が最大限努力する旨回答する、という法令上根拠のないセレモニーをへて、ごく短期間で自治体側が同意することが懸念される。川内原発に続く2番手としては、関西電力高浜原発3、4号機が有力である。それに続き四国電力伊方原発3号機、九州電力玄海原発3、4号機、関西電力大飯原発3、4号機などが控えている。文末の[付録1]に示したように現時点で全国12原発19基が再稼働を目指しており、今後もその基数が次々と増えていくことは確実である。福島原発事故前への原状復帰に近づいていくための、陣取り合戦のような執拗な原発関係者の工作に、今後ますます拍車がかかることが予想される。 2.なぜ原発ゼロ社会を目指さないのか  だが福島原発事故の経験を踏まえるならば、原発ゼロ社会の実現へ向けて邁進すること以外に、私たちの進むべき道はない。福島原発事故によって、放射能大量放出をともなう原発の過酷事故が、他の技術に関わる事故とは異次元の、計り知れない大きな被害をもたらすことが、事実によって再確認された。1986年に旧ソ連ウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故によって生じた汚染地帯では、今もなお数十万人の住民が故郷に戻ることができない。  現在考えられているいかなる安全対策も、原発の本質的危険性を封じ込めることができない彌縫策にしか過ぎない以上、原発ゼロ社会を目指すしかない。それが最善の安全対策である。  『脱原子力政策大綱』(第5章)で述べたように、今ある原発を再稼働させずとも、一定基数の新鋭ガス火力を迅速に導入すれば、電力需給逼迫はすぐに解消され、しかも巨額にのぼる現在の火力発電焚増しコストも大幅削減できる。中長期的にはエネルギー消費の自然減や、再生可能エネルギーおよび省エネルギーの促進によって、原発が供給していた電力量は相殺できる。もちろん原発廃止による地域経済や電力経営への影響は大きいので、利害関係者(立地自治体、電力会社など)に対する経済的配慮は必要であるが、さほど法外な金額とはならないはずである。原発ゼロは十分現実的な選択肢である。 3.福井地裁の大飯原発3・4号機運転差し止め判決の意味  2014年5月21日、福井地裁が関西電力に対し大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じる判決を言い渡した。福島のような深刻な原発事故が再び起これば、周辺住民の人格権(個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益)が極めて広く侵害されるので、その具体的危険性が万が一にも存在する場合、原発の運転を差し止めるべきだというのが判決の論理構造である。その上で3、4号機に係る安全技術及び設備が地震等に対して「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとで初めて成り立ちうる脆弱なものであると認めざるを得ない」という専門技術的判断を下した。  福井地裁が用いたこの論理構造は骨太であり、今後の原発訴訟において標準的なものとなることが期待される。その一方で、専門技術的判断については、日本原子力学会などから異論や批判が出されている。従来の原発訴訟判決の大半は、原子力専門家たちのお墨付きを得た政府の規制当局の判断を尊重してきた。しかし福島原発事故により政府の規制当局の専門技術的判断の信頼性が低いことが露見した。そこで裁判官が、原告・被告の主張に対し互いに対等のものとして耳を傾け、どちらが説得力をもつかを真摯に検討した結果、原告側に軍配を上げたのである。それは適切な手法であると私たちは考える。  福島原発事故により、原発過酷事故の具体的危険性を否定することはもはや不可能となった。それなのになぜ原発ゼロ社会を目指さないのか。 4.現行の安全対策の不十分さ(日本の原発全般について)  原発に対する現行の安全対策の不十分さについては、主要なものだけで次の5点が指摘できる。うち第1・2・3点は全ての原発に一様に当てはまるものである。第4・5点は個々の原発によって妥当性の度合いが変わりうるものである。したがって川内原発など個々の原発の安全対策の不十分さの度合いを評価する上で、この第4・5点の吟味が重要な意味をもってくる。  第1に、福島原発事故の進行過程(原因)についての調査・検証がなされていない。政府又は国会に、技術的な分析・評価能力をそなえた調査・検証委員会を常設機関として設置し、実地調査を含む総合的な調査・検証を進めるべきである。原因究明がなされないままでは、信頼性ある規制基準・防災対策・危機管理対策等を定めることはできない。  第2に、福島原発事故の被害者への政府・電力会社の補償・支援がきわめて不十分である。その財源を確保するための法令も万全ではない。これを改めない限り、同様のことが起きたときの住民の人格権は保障されない。  第3に、新規制基準自体が、日本の全ての既設原発について、原子炉施設の周辺部分の安全対策を追加すれば再稼働の許可を得られるように策定された不十分なものである。  たとえば、住民の被ばくを防ぐ絶対的な条件である「立地審査指針」を廃止したこと、原子炉の構造的弱点の評価を行わず付属設備の強化のみでよしとしたことなどが問題となる。  第4に、個々の原発の安全性を正しく評価するには、規制基準に照らして具体的審査を行う必要があるが、その具体的審査において、必ずしも周到な判断が下されるとは限らない。たとえば直下の活断層の有無、基準地震動の妥当性、津波の最大波高の妥当性、火山噴火に対する評価の妥当性などが、個々の原発ごとに問題となる。規制基準自体が包括性を欠いているため、個々の原発の抱える無視できないリスクを見逃してしまうおそれもある。  第5に、新規制基準が原子炉施設のハードウェアとしての安全性を定めているにとどまり、過酷事故が発生した場合において、防災対策が十分な効果を発揮する見込みがきわめて乏しく、被害者の人格権が保障されない可能性が高いことである。とりわけ致命的なのは、過酷事故の際に周辺住民の安全を守るための実効性ある地域防災計画が、原発の建設・運転を許可する際の法律上の要件となっていないことである。地域防災計画の策定・実施については自治体(都道府県、市町村)が直接的な責任を負う。しかし今まで提出された地域防災計画はほとんどが絵に描いた餅であり、とりわけ災害弱者に対する配慮を著しく欠いている。しかもその妥当性をチェックして合否の判定を行う法令上の仕組みがない。本来は事業者が立案し自治体と協議したうえで合意したものを原子力規制委員会に申請し審査を受けるべきだが、現状では規制委員会は地域防災計画作成のための簡単な指針を公表し自治体に具体的計画の作成を丸投げしているだけである。そして自治体もまた専門業者に計画作成の土台となるシミュレーション作業を委託している。  もちろん原発過酷事故に対する十分な防災対策を立てることは本質的に不可能である。それでもこの無理難題に形だけでも答えざるを得ない原発周辺自治体の苦悩は察するにあまりある。そのような性格の施設が近隣の都道府県や市町村で運転されること自体が、無用の脅威を当該地域に及ぼすものである。またもし過酷事故が起きれば当該地域が半永久的に居住不能となるおそれもある。そうした破滅的事態を考慮した防災計画はもはや防災計画の名に値しない。なお原発過酷事故については多くの都道府県にまたがる地域横断的な防災計画が必要であるが、その整備も進んでいない。 5.現行の安全対策の不十分さ(川内原発について)  川内原発1、2号機もまた、今述べたような安全対策上の難点を、5点全てにおいて抱えている。加えて、1号機は1984年7月、2号機は1985年11月に運転開始した比較的古い原発であり、1号機は今年、2号機は来年、運転年月が30年を超える。1号機については、「高経年化技術評価書」が提出されたが、その審議は事業者と規制庁だけで進められている。耐震Sクラスの主蒸気系統配管で疲労の蓄積が進んでいるなど、老朽化の兆候が見られる。規制基準適合性審査に加えて、高経年化についても慎重な審査が必要であると考える。  有効な地域防災計画が立てられていないことも深刻な問題である。川内原発の30キロ圏人口は約23万人であり、他の原発立地地域と比べて特別に多いとは言えないが、50キロ圏に拡大すると一挙に83万人(全国4番目)となる人口密集地域である。鹿児島県は民間調査機関に委託して、緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)として指定された原発30キロ圏からの避難に要する時間の推計結果を発表した。しかし現実的な諸条件を考慮した詳細なシミュレーションを行い、避難のボトルネックを明らかにし、その解消のために必要な措置を講ずるという、地域防災計画を効果的にするために不可欠の手続きを踏んでいない。  特に重大な欠陥は、要援護者(高齢者、入院患者、介護施設入所者等)の受入先と、避難の具体的手順が決まっていないことである。福島原発事故で最も厳しい境遇に置かれたのが要援護者であることを肝に銘ずるべきである。福島原発事故は多くの犠牲者をもたらした。とりわけ大熊町双葉病院だけで50名、避難区域にあった病院と養護施設から全部で60名の犠牲者が出た。川内原発の防災計画上の問題点については「付録2」に整理したので、ご覧頂きたい。また過酷事故が起きれば避難区域が30キロ圏をこえて大きく拡がる可能性があることは、福島原発事故で経験した通りである。30キロ圏よりもはるかに広域にわたる九州全域の避難計画を構築する必要がある。そして数万人以上の長期避難が必要な場合には、避難先は九州のみに限らず全国に確保しなければならない。  有効な防災計画の不在以外にも、次のような問題がある。  第1に、新規制基準にもとづく具体的審査において、火山噴火にともなう火砕流が原発敷地に進入するリスクを、十分慎重に評価しているとは言えない。もし大規模火砕流が川内原発に到達すれば、原発過酷事故を防止するあらゆる防災活動は不可能となり、2基の原子炉において同時並行的に過酷事故が発生・拡大する恐れがあり、慎重の上にも慎重な審査が必要とされるにもかかわらず、形式的な審査を行うにとどめている。  第2に、川内原発の敷地には豊富な地下水が流れている。川内原発での地下水流入量は300m3/日で、福島第一原発と同レベルである。過酷事故によって、福島第一原発と同じような汚染水流出が止まらないという事態が起こりうる。だが新規制基準で規制対象となっていないため、対策は示されていない。  なお、これは全国共通の問題であるが、川内原発に係わる新規制基準の適合性審査の過程で、過酷事故対策の不備も明らかになった。想定事故事例として「配管破断(冷却水喪失)と全交流電源喪失が同時に起こった場合」の対策が要求されているが、九州電力の回答は、「炉心溶融と原子炉容器の破損は防げない」というものであり、その後の落下溶融炉心とコンクリートとの反応、水蒸気爆発、水素爆発などの防止策も不確実な応急措置でしかないことが分かった。「格納容器内で起こるこうした様々な爆発を含む急激な現象が格納容器の健全性を脅かす」ことは自明であり、「主要な過酷事故シナリオの中で格納容器の健全性が保証できない」ということは、原発事故で放射性物質を大量に放出する蓋然性が高いことを意味する。これは審査中のすべての加圧水型原子炉(PWR)に共通する欠陥である。 6.民主主義的な権利を尊重しなければならない  国民世論の多数意見が将来の原発ゼロを支持している状況は、多くの世論調査結果が示す通り2011年から変わっていない。しかし政府は国民世論を無視して原発を重要なベースロード電源として活用する方針を決め、その具体的な方策の検討に入っている。そのこと自体が民主主義からの逸脱である。国民世論を踏まえ脱原発ロードマップを定める脱原発基本法の制定を政府は目指すべきである。  また周辺広域住民の世論状況にかかわらず、立地道府県と立地当該市町村の自治体首長のみの同意で再稼働を進めることは許されることではない。原発過酷事故の影響がきわめて広域に及ぶことが、福島原発事故によって再確認されたからである。周辺広域住民の同意に関する新たなルールを定めぬまま再稼働を強行することは、これまた民主主義からの逸脱である。実際に、周辺広域住民の多数者が、原発再稼働に反対しているだけでなく、自分たちが再稼働の是非に関する決定に関与できない状況にも不満を抱いているからである。  『南日本新聞』が2013年4月に実施した電話世論調査(5月5日朝刊に掲載)の結果によれば、鹿児島県民の多数者(59%)は川内原発再稼働に反対している。また再稼働に際して同意を得るべき自治体の範囲について、原発立地市町村とその属する都道府県だけでよいとする回答は全体のわずか7.4%に過ぎず、圧倒的大多数の者がより広域的な範囲の同意を求めている。政府は脱原発基本法を制定し、周辺広域住民による原発建設・運転への同意の新たなルールを整備すると同時に、現行の安全対策の不十分さを抜本的に解消する作業に着手すべきである。現在の日本の法体系では、原子力規制委員会の新規制基準をクリアした原発の再稼働を差し止める権限を政府はもたない。しかし上記のような要件が整うまで再稼働を無期凍結する要請を、政府は電力会社に対して行うことはできる。それを電力会社が一定の合意条件のもとで受諾すればよい。その前例となるのは菅直人首相が2011年5月、運転差し止めの根拠法を探したが見つからない状況のなかで、中部電力浜岡原発の運転停止を要請し、中部電力がそれを受諾したケースである。 7.主要な関係者の取るべき選択  今まで見てきたような、川内原発の安全対策の不十分を踏まえれば、その再稼働は賢明ではない。またそれは国民および周辺広域住民の意思を無視して進められている点でも、民主主義に反するものである。そこで再稼働における主要な関係者に対して、原子力市民委員会は以下のように勧告する。  原子力規制委員会は、新規制基準について抜本的な再検討を行うとともに、原子力利用の安全確保のための施策を一元的につかさどる、という設置法第1条に掲げられた任務を果すために、地域防災計画の審査をみずからの責任とするよう政府・国会に働きかけるべきである。みずからの役割を、原子力施設の保安検査機関のそれに限定しようとするのは臆病すぎる。政府は国民の人格権を守る責任がある。したがって原子力規制委員会が新規制基準に係る適合の判断を下したとしても、今まで述べてきたような諸条件を満たすまで再稼働を無期凍結するよう電力会社に要請すべきである。その上で、まず、周辺広域住民による原発建設・運転への同意のルールを整備することが急務である。本来的には、原発ゼロ社会の実現を求める世論に答え、脱原発法の制定を進めるのが、政府の役割である。  電力会社は、上記の諸条件を満たさぬ形で原発再稼働を行うことが、企業の社会的責任と抵触するものであり、また原発過酷事故の再発という計り知れない経営リスクを伴うことを認識して再稼働を無期凍結し、安全確保の法令上の仕組みの抜本的強化を政府および原子力規制委員会に働きかけるべきである。  立地自治体(県、立地市町村)は、住民の人格権を守ることに責任を負う立場に立って、原発再稼働に同意しない姿勢を貫くべきである。また原発過酷事故によって大きな影響を被る可能性をもつ周辺自治体(都道府県、市町村)は、再稼働を思い止まるよう電力会社に働きかけるとともに、政府に対して住民世論表明の仕組みについて整備を求めることが望まれる。原発ゼロ社会の実現を希求する市民に対して、原子力市民委員会は、今の政権が国民世論を無視して原子力発電の原状復帰路線を掲げ、そのもとで経済産業省や電力業界が再稼働への道を突き進んでいることに対し、さまざまの形で異議を申し立てることを呼びかける。また原発立地都道府県・市町村をはじめとする周辺広域住民に対しても、人々の安全が保証されていない状態のまま原発再稼働へのレールが敷かれている状況に対し、さまざまの形で抵抗することを呼びかける。もちろんそうした市民的イニシアチブを進めるに際して、原子力市民委員会はサポートを惜しまない。  原子力市民委員会は、脱原発を求める組織だけでなく、地方自治体など必ずしも脱原発の立場をとらない組織とも対話を進め、さらに双方の必要に応じて協力・連携を行う。政府や電力会社の見解に対する「セカンド・オピニオン」を求められれば、誰にでも喜んで提供する。再稼働問題は現下における原子力利用の最重要問題のひとつであり、あらゆる機会をとらえて多様な人々との情報交換・対話・協力・連携に尽力したい。                                     以 上 [付録1]適合性審査を申請中の原発(12カ所、19基、2014年 7月 9日現在)九州電力 玄海原発3、4号機、川内原発1、2号機四国電力 伊方原発3号機中国電力 島根原発2号機関西電力 高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機中部電力 浜岡原発4号機東京電力 柏崎刈羽原発6、7号機日本原電 東海第二原発東北電力 女川原発2号機、東通原発1号機北海道電力 泊原発1、2、3号機 [付録2]川内原発の避難計画の問題点について  鹿児島県は今年5月27日、原子力防災計画(平成25年度)を発表した。本計画は、原子力規制委員会の原子力災害対策指針に基づき、川内原発の事故時に、県 市町村 地方行政機関等がとるべき対策を定め、避難計画についても盛り込んでいる。また、川内原発から30km圏のUPZ内にある薩摩川内市、いちき串木野市、阿久根市、鹿児島市など9市町は、それぞれ防災計画を策定している。  現実に重大な原発事故が発生した場合、風向きと天候によって被害は県境を越えて隣県にも及ぶ。現在の鹿児島県による避難計画のみならず、南九州全域にわたる広域の避難計画が必要となってくる。避難者の受け入れ先としては少なくとも九州全域を考える必要がある。現在の原子力防災計画には少なくとも以下のような問題が考えられる。 1.風下への避難  計画は放射性物質の拡散シミュレーションを踏まえたものではない。薩摩川内市の住民の避難先は、鹿児島市、姶良市、南さつま市などであり、いちき串木野市の避難先は、鹿児島市、指宿市、南九州市、枕崎市などであり、いずれも南東の方向である。川内原発の周辺は北西の風が吹くことが多く、風下の避難となる可能性が高い。 2.受け入れ先の想定  環境総合研究所の放射性物質拡散シミュレーションによれば、避難先となっている鹿児島市、南さつま市などでも一時移転の基準であるOIL2(20マイクロシーベルト/時)に達するという結果がでている。この場合、受け入れ自治体にも、一次移転の指示がでることになり、避難住民および受け入れ自治体の住民の避難を行わなければならない。現在の計画ではこのようなことは想定されておらず、混乱が予測される。 3.避難時間シミュレーション  避難時間に係るシミュレーションについては、各市町とも、県が行うとしている(注1)。一方、鹿児島県は、5月29日、避難時間のシミュレーションを発表し、13のシナリオを想定して原発から30km圏内の住民の9割が圏外にでるまでの時間を、取り上げたシナリオ中の最長で28時間45分としている(注2)。しかし、30km圏内から圏外への避難時間が示されているだけであり、避難先までの時間が示されていない、市町別の時間が示されていないなどの問題があり、自治体や住民からの疑問には答えていない状況である。 4.二段階避難  現在の計画は、PAZ(5km圏内)の住民が避難してから、OILに照らして、UPZ(30km圏内)の住民が避難する計画になっている。しかし、これが現実可能かどうかについては住民から疑問の声も多くあがっており、自治体も検討が必要としている(注3)。また、PAZに隣接するいちき串木野市の羽島地区では避難に使う道路が海沿いの一本道であり、事故時の避難の現実可能性を懸念する住民も少なくない。 5.避難経路  住民は自家用車または自治体が用意したバスにより避難することになっている。しかし、避難経路が限られており、地震による道路破壊の危険性、悪天候や高波の場合に海沿いの避難経路などが通行不能になる可能性がある。また、国道3号線などに避難車両が集中し、渋滞が引き起こされる可能性も指摘されている。 6.要援護者の避難  病院・福祉施設など支援が必要な患者や寝たきりの高齢者などが入所している施設の避難計画が策定されておらず、適切な受け入れ先も決まっていない。避難先の自治体も、こうした要援護者を受け入れる準備が整っていない。  なお、伊藤祐一郎鹿児島県知事は要援護者の避難の問題について、「原発から10キロ圏までの要援護者の避難計画はつくるが、それ以外の計画は作らない」旨の発言を行った。これについては、社会的に最も配慮が必要な要援護者を見捨てることにもなり、人権上も大きな問題である。 7.長期にわたる避難  避難計画は、原子力災害の特徴である長期にわたる避難を想定したものではない。受け入れ自治体が準備した避難所も、そのような想定にはなっていない(注4)。 8.スクリーニングおよび除染  避難者の被ばくを防止するため、また放射性物質の拡散を防ぐため、避難する住民や車両のスクリーニングおよび除染は重要であり、原子力規制委員会の原子力災害対策指針において位置付けられている。しかしスクリーニングおよび除染の場所や器材については、現在、ほとんど決まっていない状況である(注5)。 9.住民の意見の反映  現在、鹿児島県および各自治体が、住民説明会を行っており、少なからぬ住民が上記の点を指摘、質問をしている。UPZ内のいちき串木野市の市民団体が、全人口の過半数の署名を集め、市および市議会に「住民のいのちを守る避難計画がない状態での再稼働に反対」という趣旨の陳情を行った。これを受けた形で、市議会は「市民の生命を守る実効性のある避難計画の確立を求める意見書」を全会一致で可決した。しかし、県・市はこのような疑問に十分に答えておらず、どのように計画に反映させるのかも示していない状況である。 (注1) 2014年6月11日反原発・かごしまネット「原子力災害対策に関する質問」 (注2) 2014年5月29日鹿児島県「避難時間シミュレーションの結果」 (注3) 2014年6月11日反原発・かごしまネット「原子力災害対策に関する質問」によれば、9つの避難元自治体のうち7つの自治体は、協議や検討が必要としている。 (注4) 枕崎市、南さつま市への聴き取りによれば、一人あたりの床面積は2平方メートルと非常に狭い。 (注5) 唯一、具体的な回答があった日置市では市総合体育館および市中央公民館を確保しているとしているが、避難経路から入りこんだところにあるため、渋滞や混乱なども予想される。 参考資料:『原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱』 原子力市民委員会、                              2014年4月12日発行 連 絡 先:原子力市民委員会 〒160-0004 東京都新宿区四谷1-21 戸田ビル4F(高木仁三郎市民科学基金内) URL http://www.ccnejapan.com/ E-MAIL email@ccnejapan.com TEL/FAX 03-3358-7064    

2014年3月18日の原子力規制委員会との交渉まとめ

 2014年3月18日の原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉まとめ   呼びかけ: 原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)  2014年3月18日の原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉で明らかになったことを、今後のため、簡単にまとめておきましょう。  第1に、新基準適合性検討の審査は事務局である原子力規制庁で実際行っており、審査の中身に関する質問に対しては適切な判断の下、事務局で回答を作成していること、したがって、原子力規制委員会田中委員長宛に提出した今回の公開質問状に対しても、その回答作成は事務局に一任されており、公開質問状を委員長や委員に見せることはあっても、回答について原子力規制委員会はもとより委員長や委員の決済、了承、確認などは一切受けていないことが明らかになりました。  第2に、断層モデルでは耐専スペクトルと比べて地震規模が1/2以下で、地震動評価結果も1/2以下になることについて、最初は「手法が違うので地震規模が違ってもしようがない」とうそぶいていましたが、北米中心のデータと国内データの違いによるものであることを理論的に追及されるや、「したがって、一つの手法だけじゃなくて二つの手法、いろんな手法を使って基準地震動を作っている」と述べ、事実上、逆断層以外の多くの場合、断層モデルが過小評価になっていることを認めました。しかし、実際には、最も重要な近距離の活断層に対して、耐専スペクトルは適用範囲外だとして用いられず、断層モデルで基準地震動が作成されているのです。これでは、断層モデルで地震動が過小評価されることを知った上で、断層モデルで基準地震動を策定しているということになります。こんな理不尽なことは許せません。  第3に、原子力安全委員会の時代に、断層モデルの地震規模を松田式に合わせて断層モデルのほうを修正して地震動評価を行うと耐専スペクトルに合うという検討を行っていたのですが、規制庁はこれを知りませんでした。また、地震調査研究推進本部が警固断層の強震動評価を行う際に、松田式から地震規模を求め断層モデルをこれに合うように修正するレシピを提案して警固断層に適用していることを規制庁は知りませんでした。つまり、原子力安全委員会が行っていた断層モデルに関する検討結果が規制委員会に継承されていないこと、地震調査研究推進本部による断層モデルの修正レシピなど基本的な重要事項について調査・検討していないことが明らかになったのです。  第4に、規制庁は当初、耐専スペクトルの適用範囲は極近距離以遠だと主張していましたが、規制委員会の審査会合において高浜3・4号では極近距離以遠で耐専スペクトルを求めていることを失念しており、鳥取県西部地震で震源断層直上の賀祥ダムの地震観測記録が耐専スペクトルに合うことを原子力安全委員会で確認していたことを知りませんでした。つまり、耐専スペクトルの適用範囲を極近距離以遠に限定できないことさえ認識していなかったことが明らかになったのです。  第5に、活断層による地震規模を震源断層の長さから松田式で行うことについて、1995年の阪神・淡路大震災の直後に原子力安全委員会で検討し、断層長さと地震規模の平均的な関係は松田式でほぼ表すことができ、国内外のデータに良く合うことが確認されていることを規制庁は知りませんでした。これは重大なことで、耐専スペクトルでは断層長さから松田式で地震規模を求めており、そうするのが地震学界では通説になっているのですが、これを断層面積に直す際に、北米中心のデータでは断層幅が日本国内より長いため断層面積が大きくなること、その結果、断層面積から地震規模を求める断層モデルでは国内の活断層に対して地震規模が小さくなることを規制庁は認識していなかったのです。  第6に、2008年岩手・宮城内陸地震では地下地震計で1000ガルを超える地震動が観測されており、基準地震動と同じ解放基盤表面はぎとり波に直すと2000ガル近くになるのですが、これを耐専スペクトルに反映させるべきだと主張したところ、規制庁は「震源を特定せず策定する地震動」で検討していると回答してきました。しかし、「震源を特定せず策定する地震動」に関する審査会合の議論では、地域特性からそのような地震が起こらないという主張が通り、結果として考慮外に置かれているのです。耐専スペクトルへの反映は地域性とは無関係であり、マグニチュード、等価震源距離、地震観測記録、地盤情報があれば可能です。これを指摘すると、規制庁は黙りを決め込んだのです。  第7に、川内1・2号では、通常の断層モデルとは異なり、地震規模から応力降下量などの断層パラメータを決めるのではなく、応力降下量を小さく固定してから地震規模を逆算していました。このため、見かけは地震規模が松田式で求めた値にほぼ等しいのですが、最初から応力降下量を小さく設定しているため、地震規模に対応した応力降下量の値よりかなり小さくなっていて、地震動評価結果が耐専スペクトルの1/2~1/3になっていることを指摘されると、規制庁は沈黙戦術へ戻り、地震規模は通常の断層モデルより大きいので保守的だと見当外れの回答に終始したのです。しかし、アスペリティの平均応力降下量が小さいためアスペリティ面積が異常に大きくなっていることについては認めざるを得ませんでした。つまり、規制庁は断層モデルの適用法も満足に知らないで使っていることが明らかになったのです。  第8に、川内からの参加者が、国土交通省による川内原発近くの川内河口ボーリング図の中に12.5万年間に地層が-36.1m動いた証拠があること、周辺にある3本のリニアメントのうちの1本が敷地内に繋がっている可能性があることを指摘し、福島みずほ議員も活断層の調査を川内でも行って頂きたいと強く要望されました。規制庁は「持ち帰る」と約束しました。また、規制庁の川内出先に公開質問状を二つ提出し、「規制庁へ届ける」旨の確約があったのに,規制庁は見たことがないため、「帰ってどこにあるのか調べる」と約束しました。  最後に、交渉での規制庁の回答があまりにズサンであり、回答者も基本的なことを知らずに黙り込む有様で、これでは話にならないため、川内1・2号の審査書案が完成する前にしっかり責任を持って回答できる人を出席させてセカンドラウンドをやりたいと提案し、「持ち帰って検討する」ことになりました。 資料『川内原発 原子力規制委員会の再回答拒否に厳重抗議し、地震動評価手法の至急見直しを求めます 2014年3月24日』  

川内原発 原子力規制委員会の再回答拒否に厳重抗議し、地震動評価手法の至急見直しを求めます 2014年3月24日

2014年3月24日原子力規制委員会委員長田中俊一様 再回答拒否に厳重抗議し、地震動評価手法の至急見直しを求めます    私たちは3月18日に「高浜3・4号と大飯3・4号に則した耐専スペクトルと断層モデルによる地震動評価に関する公開質問状」(2014年3月5日付)および「川内1・2号の地震動評価に関する追加質問」(2014年3月17日付)への回答を原子力規制庁の担当者から受け、質疑を行いましたが、担当者による回答は全く不十分でした。そこで、3月31日に再回答を求めるべく、3月19日付で「公開質問状への再度の詳細回答のお願い」を貴職に提出したところです。しかし、3月20日の夕方には規制庁担当者より、「前回の集会で申し上げたとおりで、別段変わった返答はできない。」「当該原発は審査中でもあり、途中段階では具体的なことはこれ以上回答できない。」「今後、意見募集をしていくので、是非そこへの意見提出をしていただきたい。」と電話連絡をしてこられ、再回答を拒否されました。これは、地震動評価手法における根本的な問題点を放置したまま地震動評価を行うことを宣言したに等しく、極めて由々しきことであり、厳重に抗議いたします。 その上で、3月18日の交渉で明らかになった地震動評価手法の下記問題点について、原子力規制委員会として責任を持って調査・検討し、地震動評価手法を至急見直されるよう強く要請いたします。また、これらの検討結果について後日説明を受ける機会を持って頂くよう求めます。 (1) 耐専スペクトルの適用性について、原子力安全委員会で検討された内容を精査し、原子力規制委員会での新基準適合性審査会合での議論との整合性について十分検討すること。 資料1:原子力安全委員会,応答スペクトルに基づく地震動評価」に関する専門家との意見交換会(2009.5.22)とりわけ、資料第1-1号および第1-2号資料2:原子力規制委員会,第63回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合(2013.12.25)の資料第3-2号および第59回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合(2013.12.18)の資料第2-3号資料3:原子力安全委員会,第62回地震・地震動評価委員会及び施設健全性評価委員会WG3第62-7号(2010.3.3) (2) 2008年岩手宮城内陸地震など最近のM7クラスの内陸地殻内地震の地震観測記録を用いて耐専スペクトルを再構築し、適用範囲を広げ、それを新基準適合性審査会合に適用すること。 資料4:原子力規制委員会,発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる新安全設計基準に関する検討チーム第10回会合、震基10-3(2013.3.22) (3) 松田式による震源断層の長さから地震規模を算定する方法について、原子力安全委員会で再評価された内容を精査し、新基準適合性審査会合で地震規模を過小評価しないように徹底すること。 資料5:第166回原子炉安全専門審査会(1999.2.10),第9回原子力安全委員会臨時会議(1999.2.18)および原子力安全委員会原子力安全基準専門部会第14回耐震指針検討分科会地震・地震動ワーキンググループ(2004.3.3)資料6:中央防災会議第26回「東南海,南海地震等に関する専門調査会」参考資料,中部圏・近畿圏の内陸地震の震度分布の検討資料集,図2.3.2(2006.12.7) (4) 断層モデルでは断層面積から地震規模を求めているが、スケーリング則を求める元データが北米中心の地震データと国内地震データでは断層幅に大差があり、日本国内にそのまま適用できるどうか検討すること。 資料7: Somerville, P. G., 入倉孝次郎,澤田純男,岩崎好規則,田居優,伏見実:地震断層のすべり変位量の空間分布の検討,第22回地震工学研究発表会,291-294(1993)資料8:武村雅之:日本列島における地殻内地震のスケーリング則—-地震断層の影響および地震被害との関連—-,地震第2輯,51,211-228(1998)資料9: Somerville, P.G., Irikura, K., Graves, R., Sawada, S., Wald, D., Abrahamson, N., Iwasaki, Y., Kagawa, T.,Smith, N. and Kowada, A.: Characterizing crustal earthquake slip models for the prediction of strong ground motion,Seismological Research Letters, 70, 59-80(1999)資料10:入倉孝次郎,三宅弘恵:シナリオ地震の強震動予測,地学雑誌,110,849-875(2001) (5) 地震調査研究推進本部は松田式から求めた地震規模に基づいて震源断層の長さと幅を修正した断層モデルを構築しているが(たとえば警固断層)、この方法を原子力発電所の地震動評価に用いない理由を明確にすること。 資料11:地震調査研究推進本部地震調査委員会:警固断層帯(南東部)の地震を想定した強震動評価について(2008.4.11)および震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)(2009.12.21改訂) (6) 日本国内の地震観測記録に基づいて断層モデルのスケーリング則を根本的に見直し、断層モデルを国内用に改め、これを用いて原子力発電所の地震動評価を行うこと。断層モデルが再構築されるまでは、震源断層の長さから松田式で地震規模を求め、それを断層モデルの地震規模に適用して地震動評価を行うか、推本の採用している修正レシピを用いるか、いずれかの方法で地震動を安全側に評価すること。 (7) 基準地震動の策定に際して、耐専スペクトルにおいては、倍半分のバラツキがあることを考慮して余裕を持たせること。また、断層モデルでは、「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」で「震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して地震動が評価されていることを確認する。」と規定しているが、十分な余裕をもたせるためのルールを明確にすること。 添付資料:原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉記録http://wakasa-net.sakura.ne.jp/news/nrc20140318r.pdf 以上呼びかけ団体:原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)賛同団体・個人:(2014.3.20現在78団体、373個人) 【賛同される方は以下にご連絡下さい】 連絡先:若狭連帯行動ネットワーク久保TEL 072-939-5660 dpnmz005@kawachi.zaq.ne.jp長沢TEL 072-269-4561 ngsw@oboe.ocn.ne.jp

原発の再稼働基準を見直すべき~断層モデルと耐専スペクトル~

 原発周辺の活断層が引き起こす地震動を見積もる計算法には2つあります。  断層モデルと、耐専スペクトルです。  日本政府と九電力は断層モデルを採用していますが、想定する地震動は、意図的により小さく見積もられています。  この断層モデルが想定する地震動が、原発の耐震設計の基準である基準地震動(Ss)を大きく下回るので、その原発は想定する地震に耐えられるというのが、政府と九電力の主張です。  しかし、耐専スペクトルを使って、原発周辺の活断層が引き起こす地震動を見積もると、断層モデルの2~3倍の地震動へと増加してしまいます。  これは基準地震動(Ss)に迫るもので、全国の原発の耐震性をおびやかすので、政府・九電力は、耐専スペクトルの採用を避けてきました。   しかも、この耐専スペクトルでさえ、原発に近いと想定される活断層が引き起こす地震動は、評価の対象から外されているので、原発から遠く離れた活断層が引き起こす地震動しか想定していません。  ですから、2008年の岩手宮城内陸地震で観測された、1000ガルを超えるような、強烈な地震動はあえて無視されています。  だから耐専スペクトルは、さらに1.5~4倍強い地震動を想定しなければなりません。  そうなった場合、新たに想定される耐専スペクトルは、基準地震動(Ss)を超えてしまい、全国の原発は、耐震性が立証できなくなります。  このようなイカサマの地震動評価を、政府に改めさせる必要があります。  川内・玄海原発の基準地震動は1500ガル以上へ大幅に引き上げるべきです。 ー3・18 原子力規制委員会との交渉よびかけ文より(原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク事務局担当) 九州電力リーフレット 玄海・川内原子力発電所の安全対策について pp.10より ※ ガルとは 加速度の単位。1ガルは、1秒(s)に1センチメートル毎秒(cm/s)の加速度の大きさ。1 Gal = 0.01 m/s²。地球表面における重力加速度はおよそ981ガル(重力加速度)。 ※ 世界最大の地震による加速度は、岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日)の際に岩手県一関市厳美町祭畤で観測した4022ガル。

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