内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会

劣化ウラン研究会代表 山崎久隆

 連帯のメッセージ

 私たち劣化ウラン研究会は、1990年代に大量にばらまかれた劣化ウラン兵器の被害を追い続けてきて、最も強固な壁にぶつかったのは、2003年です。当時イラク攻撃が始まり、アフガニスタンへの軍事攻撃を開始して2年経っていた米国で、湾岸戦争当時に使用した劣化ウランの影響を告発し、国連などで劣化ウラン兵器禁止の運動に取り組むNGOの主張に対する反論を国防総省や国務省が開始しました。

 その時日本ではとても奇妙な現象が起きます。

 本来、核の平和利用を標榜し、その最先頭に立つべき国や、原子力文化振興財団などの原発推進団体が米国の宣伝に呼応し「劣化ウランで健康被害は起こりえない」というキャンペーンを始めました。これは、ウランによる内部被曝の危険性が広まることで、核や原子力への批判が高まることを警戒したものだったろうと思われます。当然ながら日本政府による米政権支持が大きな影響を与えたことは言うまでもありません。

 しかしながら、現在では劣化ウラン兵器による健康被害は多くの国が帰還兵士の健康被害に関連づけられるようになり、イラク現地及び劣化ウラン兵器が使用された地域住民への影響についても徐々に明らかになりつつあります。

 内部被曝の影響は、実態が分かるまでに長期間かかり、その間に特に子どもたちにとっては回復不能な被害をもたらすことになる。これが甚大な被害を出してきた私たち人類の到達点であったはずです。

 そして2011年3月11日に、繰り返してはならなかったはずの核の拡散、原発震災が起きてしまいました。

 放射性物質による内部被曝の全ぼうについては、いまもって正確な影響は分かっていません。

 ICRPや日本の行政機関などの内部被曝に関する評価は、外部被曝からの外挿に基づく推計に過ぎない基準をもとに論じています。

 取り込まれた放射性物質は、循環系を通じて全身に拡散し、放射性核種により特定臓器に沈着し、放射線被曝を引き起こしています。そのうちセシウムの体内への蓄積については、既に福島市、いわき市、二本松市、相馬市などの女性の母乳から2~13ベクレル/リットルが検出されていることが確認されており、これはチェルノブイリ原発事故の際の周辺住民と同程度と考えられます。

 児玉龍彦東京大学アイソトープ総合センター長も、論文や国会参考人質疑において、深刻化する放射性物質による被曝、とりわけセシウムによる内部被曝を問題提起し、スクリーニングを基本とした緊急除染と、避難地域の殲偵を含む適切な被爆対策を提言しています。

 米をはじめとする食品の汚染は深刻であり、キログラムあたり500ベクレルという途方もない値を「基準値」としてしまったために「汚染はたいしたことは無い」という誤った報道が続いています。しかし現実は、少なくても測定された早場米で既に20ベクレル/kgを超える値が出でいます。

 現時点でも体外被曝と体内に蓄積されたセシウム等の被曝により、健康被害を憂慮すべき段階であるというのに、今後さらに放射性物質の摂取を「強制」するかのような施策は、将来取り返しのつかない影響を与えることを憂慮せざるを得ません。

 いまからでも、対策をとり、特に子どもたちの被曝を最小限に抑えるためのあらゆる努力を行い、また行政に行わせる取り組みが必要です。

 皆さんと共に、できる限りの取り組みを進めていきましょう。 

 2011年8月29日 劣化ウラン研究会代表 山崎久隆

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