2014年3月24日
原子力規制委員会委員長
田中俊一様

再回答拒否に厳重抗議し、地震動評価手法の至急見直しを求めます

 

 私たちは3月18日に「高浜3・4号と大飯3・4号に則した耐専スペクトルと断層モデルによる地震動評価に関する公開質問状」(2014年3月5日付)および「川内1・2号の地震動評価に関する追加質問」(2014年3月17日付)への回答を原子力規制庁の担当者から受け、質疑を行いましたが、担当者による回答は全く不十分でした。そこで、3月31日に再回答を求めるべく、3月19日付で「公開質問状への再度の詳細回答のお願い」を貴職に提出したところです。しかし、3月20日の夕方には規制庁担当者より、「前回の集会で申し上げたとおりで、別段変わった返答はできない。」「当該原発は審査中でもあり、途中段階では具体的なことはこれ以上回答できない。」「今後、意見募集をしていくので、是非そこへの意見提出をしていただきたい。」と電話連絡をしてこられ、再回答を拒否されました。これは、地震動評価手法における根本的な問題点を放置したまま地震動評価を行うことを宣言したに等しく、極めて由々しきことであり、厳重に抗議いたします。

その上で、3月18日の交渉で明らかになった地震動評価手法の下記問題点について、原子力規制委員会として責任を持って調査・検討し、地震動評価手法を至急見直されるよう強く要請いたします。また、これらの検討結果について後日説明を受ける機会を持って頂くよう求めます。

(1) 耐専スペクトルの適用性について、原子力安全委員会で検討された内容を精査し、原子力規制委員会での新基準適合性審査会合での議論との整合性について十分検討すること。

資料1:原子力安全委員会,応答スペクトルに基づく地震動評価」に関する専門家との意見交換会(2009.5.22)とりわけ、資料第1-1号および第1-2号
資料2:原子力規制委員会,第63回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合(2013.12.25)の資料第3-2号および第59回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合(2013.12.18)の資料第2-3号
資料3:原子力安全委員会,第62回地震・地震動評価委員会及び施設健全性評価委員会WG3第62-7号(2010.3.3)

(2) 2008年岩手宮城内陸地震など最近のM7クラスの内陸地殻内地震の地震観測記録を用いて耐専スペクトルを再構築し、適用範囲を広げ、それを新基準適合性審査会合に適用すること。

資料4:原子力規制委員会,発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる新安全設計基準に関する検討チーム第10回会合、震基10-3(2013.3.22)

(3) 松田式による震源断層の長さから地震規模を算定する方法について、原子力安全委員会で再評価された内容を精査し、新基準適合性審査会合で地震規模を過小評価しないように徹底すること。

資料5:第166回原子炉安全専門審査会(1999.2.10),第9回原子力安全委員会臨時会議(1999.2.18)および原子力安全委員会原子力安全基準専門部会第14回耐震指針検討分科会地震・地震動ワーキンググループ(2004.3.3)
資料6:中央防災会議第26回「東南海,南海地震等に関する専門調査会」参考資料,中部圏・近畿圏の内陸地震の震度分布の検討資料集,図2.3.2(2006.12.7)

(4) 断層モデルでは断層面積から地震規模を求めているが、スケーリング則を求める元データが北米中心の地震データと国内地震データでは断層幅に大差があり、日本国内にそのまま適用できるどうか検討すること。

資料7: Somerville, P. G., 入倉孝次郎,澤田純男,岩崎好規則,田居優,伏見実:地震断層のすべり変位量の空間分布の検討,第22回地震工学研究発表会,291-294(1993)
資料8:武村雅之:日本列島における地殻内地震のスケーリング則—-地震断層の影響および地震被害との関連—-,地震第2輯,51,211-228(1998)
資料9: Somerville, P.G., Irikura, K., Graves, R., Sawada, S., Wald, D., Abrahamson, N., Iwasaki, Y., Kagawa, T.,Smith, N. and Kowada, A.: Characterizing crustal earthquake slip models for the prediction of strong ground motion,Seismological Research Letters, 70, 59-80(1999)
資料10:入倉孝次郎,三宅弘恵:シナリオ地震の強震動予測,地学雑誌,110,849-875(2001)

(5) 地震調査研究推進本部は松田式から求めた地震規模に基づいて震源断層の長さと幅を修正した断層モデルを構築しているが(たとえば警固断層)、この方法を原子力発電所の地震動評価に用いない理由を明確にすること。

資料11:地震調査研究推進本部地震調査委員会:警固断層帯(南東部)の地震を想定した強震動評価について(2008.4.11)および震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)(2009.12.21改訂)

(6) 日本国内の地震観測記録に基づいて断層モデルのスケーリング則を根本的に見直し、断層モデルを国内用に改め、これを用いて原子力発電所の地震動評価を行うこと。断層モデルが再構築されるまでは、震源断層の長さから松田式で地震規模を求め、それを断層モデルの地震規模に適用して地震動評価を行うか、推本の採用している修正レシピを用いるか、いずれかの方法で地震動を安全側に評価すること。

(7) 基準地震動の策定に際して、耐専スペクトルにおいては、倍半分のバラツキがあることを考慮して余裕を持たせること。また、断層モデルでは、「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」で「震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して地震動が評価されていることを確認する。」と規定しているが、十分な余裕をもたせるためのルールを明確にすること。

添付資料:原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉記録
http://wakasa-net.sakura.ne.jp/news/nrc20140318r.pdf

以上
呼びかけ団体:
原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)
賛同団体・個人:(2014.3.20現在78団体、373個人)

【賛同される方は以下にご連絡下さい】

連絡先:若狭連帯行動ネットワーク
久保TEL 072-939-5660 dpnmz005@kawachi.zaq.ne.jp
長沢TEL 072-269-4561 ngsw@oboe.ocn.ne.jp