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2017年10月

日本政府、核廃絶提案を放棄。2017年10月27日国連総会第1委員会(軍縮)

   2017年10月27日に日本政府が提案した、決議案はもはや「核廃絶決議」ですらなく、「核軍縮決議案」に過ぎません。核抑止論によって立つ決議案であり、軍縮への国際的圧力とはなり得ない内容です。外務省は、現時点(2017年10月29日21:00pm)で骨子しか公表してません。  この問題で、もっとも本質的な報道をしているのは、東京新聞です。そして、毎日新聞の図版です。 ***   *** 国連委採択 核廃絶決議、賛成国は減少 抑止力前提 日本に反発   2017年10月29日 東京新聞 朝刊  【ニューヨーク=赤川肇】国連総会第一委員会(軍縮)で二十七日採択された日本主導の核兵器廃絶決議は、米国や昨年棄権の英仏の核保有国を含む百四十四カ国の賛成を得たが、七月に採択された核兵器禁止条約に触れず、核兵器の非人道性についての表現が後退しており、条約推進国を中心に昨年より十カ国多い二十七カ国が棄権に回った。昨年より賛成が二十三カ国減り、百五十カ国を下回ったのは二〇〇三年以来十四年ぶり。                                             図版:核廃絶決議  つまずく日本 賛成国急減 国連委員会採択毎日新聞 2017年10月29日 東京朝刊  2面  より  昨年と同じ中国、ロシア、北朝鮮、シリアの四カ国が反対。条約推進国のブラジル、ニュージーランドなど二十七カ国が棄権した。 決議は核拡散防止条約(NPT)の重要性や強化を従来通り主張。北朝鮮の核・ミサイル開発を踏まえ、昨年より安全保障や核抑止力を重視する姿勢を明確にした。 「核兵器の全面廃絶に向けた共同行動への決意」をうたった本文第一項では、昨年の「核兵器なき平和で安全な世界を目指して」との文言を削除。「国際的な緊張関係を緩和し、NPTで想定された国家間の信頼を強化し」と挿入した。 百二十二カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約を巡っては、日本や核保有国は不参加の立場。今回の決議でも核保有国の支持を優先して一切言及せず、新たに「核兵器のない世界の実現に向けたさまざまなアプローチに留意する」との一節を設けた。 核兵器を非合法化する核兵器禁止条約が制定された中、核抑止力を前提にした決議に批判も相次いだ。昨年は共同提案国だったオーストリアのトーマス・ハイノツィ軍縮大使は「国際的な緊張関係を緩和」「国家間の信頼を強化」との文言が加わった決議を「核軍縮を後回しにする書きぶりだ」と日本の変節を疑問視した。 日本の決議は今回で二十四年連続の採択。年内にも国連総会本会議で採決され正式な決議となる。◆「唯一の被爆国」存在埋没 日本主導で国連総会第一委員会(軍縮)で採択された核兵器廃絶決議案は、賛同国を昨年から二十三カ国減らした。核兵器を非合法化する核兵器禁止条約の採択や、同条約を推進した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のノーベル平和賞受賞で核廃絶の機運が高まる中、唯一の戦争被爆国の存在が埋没する皮肉な結果となった。 (大杉はるか) 賛同国が減った背景には、核軍縮に対する日本の姿勢がある。外務省幹部は「『核兵器禁止条約は、核保有国と非保有国の溝を深めるから正しくない』という日本の主張に、イエスと言わない国が相当いる」と認める。 図版:核廃絶決議案  賛成23カ国減 禁止条約対応で日本に反発 毎日新聞 2017年10月28日 夕刊 1面 より  同条約は、七月に百二十二カ国の賛成で採択された。核拡散防止条約(NPT)が、核兵器国に核軍縮交渉の努力を求めているにすぎず、削減が進まないとの不満が採択を後押しした。核保有国は「国際的な安全保障の現実を無視している。核抑止政策と相いれない」(米英仏の共同声明)などと不参加。米国の核抑止力に依存する日本も「核兵器国を巻き込まなければ意味がない」と参加を見送った。今回の決議案でも条約に直接触れていない。 外務省幹部は「北朝鮮の核放棄が見込めない中(米国と)逆のことをやるのは、核なき世界の実現に資さない」と話す。北朝鮮の脅威を前に、安保と核軍縮を切り離せないとの説明だ。 二十八日に出された河野太郎外相の談話では「全ての国が核軍縮の取り組みにコミット(関与)できる共通の基盤の提供を追求した」と決議案の意義を強調した。だが、賛同国が減ったことを考えると、日本の立場や主張が十分に理解されたとはいえない。核軍縮に向けて政府が目指す「核保有国と非保有国の橋渡し」の実現は、より困難になった。  ***   *** 日本政府、2016年  核廃絶決議 外務省 2016年第71回国連総会我が国核兵器廃絶決議案(骨子) タイトル 「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」前文●国際的な核不拡散体制の基礎としての核兵器不拡散条約(NPT),及び同条約の3本柱(核軍縮,核不拡散,原子力の平和的利用)を追求するための不可欠な基礎としてのNPTの決定的な重要性を再確認。(パラ3)●NPT体制の普遍性を更に強化する決意の再確認,並びに核軍縮,不拡散及び原子力の平和的利用が相互補強関係にあり,NPT体制の強化に不可欠であることを想起。(パラ4)●NPT条約発効50周年に当たる2020年のNPT再検討会議及び同会議に向けた一連の準備委員会等の重要性を強調。(パラ5)●地域の安全保障状況をめぐる現下の動きについての懸念を表明。(パラ7)●核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)を含め,核軍縮の検証能力の開発に向けた取組を歓迎,この点に係る核兵器国と非核兵器国の協力の重要性を強調。(パラ11)●包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名開放20周年を記念しての閣僚級会議(ウィーン及びニューヨーク)の成功裏の開催を歓迎,20年に及ぶCTBT機関準備委員会の成果を称賛。(パラ14)●核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末に深い懸念を表明,国際人道法を含む関連国際法の遵守の必要性を再確認。(パラ15)●核兵器使用による壊滅的で非人道的な結末が皆に十分に理解されるべきことを認識し,その関連で,こうした理解を促進するための努力がなされるべきことに留意。(パラ16)●政治指導者による近年の広島・長崎訪問,特に米国大統領の広島訪問を歓迎。(パラ17)●国際社会が北朝鮮による度重なる核実験及び弾道ミサイル技術を使用した発射等,NPTを中心とする核軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦に直面していることを想起。(パラ19)●核及び放射性物質のテロが引き続き国際社会にとり緊急かつ発展的な挑戦であることを想起し,IAEAの中心的役割が再確認された第4回核セキュリティ・サミットを含め,核セキュリティ・サミットのプロセスの成功を歓迎。(パラ20)本文●核兵器の全面的な廃絶に向けた共同行動をとる全ての国の決意を新たにする。(パラ1)●2017年に開かれたNPT準備委員会を踏まえ,2020年のNPT運用検討会議に向け最大限努力することを奨励。(パラ4)●核兵器国及び非核兵器国が,核軍縮・不拡散の実践的かつ具体的な措置を実施する上で意義のある対話に一層関与することを奨励。(パラ7)●核兵器の使用による非人道的な結末についての深い懸念が,核兵器のない世界に向けた全ての国の努力を下支えする旨強調。(パラ8)●核兵器国に対し,一方的な措置,二国間の措置,地域的な措置及び多数国間の措置によるものを含め,全ての種類の核兵器の削減及び究極的には廃絶に向けた一層の取組を行うよう要請。(パラ10)●核兵器国に対し,2020年のNPT運用検討会議に向けたプロセス全体を通じ,核軍縮のための取組の一環として,解体・削減された核兵器及び運搬手段に関するより頻繁で詳細な報告を行うことを含め,透明性の向上及び相互信頼の拡大のための取組を発展させていくことを奨励(パラ12)●核兵器国から明白で法的拘束力を伴う安全保証を受けることについての非核兵器国の正当な関心を認識し,核兵器国に対し既存のコミットメントを十分に尊重するように求めるとともに,更なる非核兵器地帯の設置を奨励する。(パラ14,15,16) ●核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の即時の交渉開始及び早期の交渉妥結を促すとともに,全ての国に対し,かかる条約が効力を生ずるまでの間,核分裂性物質生産モラトリアムを宣言し,及び維持するよう促す。(パラ20)●世界の指導者や若者等が被爆者を始め将来世代に自らの体験を引き継ぐコミュニティや人々を訪問し,こうしたコミュニティや人々と交流すること等を通じ,被爆の実相に関する認識を向上させるためのあらゆる取組を奨励。(パラ22)●NPT上の核兵器国としての地位を持つことができない北朝鮮による,最近の核実験及び弾道ミサイル技術を使用した発射を最も強い表現で非難する。北朝鮮に対し,更なる核実験の実施を自制するとともに,実施中の全ての核活動を完全な,検証可能な,かつ不可逆的な方法で直ちに放棄することを強く要求する。北朝鮮に対し,全ての関連する国連安保理決議の完全に遵守するとともに,2005年9月19日の六者会合共同声明を履行し,IAEAの保障措置を含め,速やかにNPTの全面的な遵守に復帰することを要求。(パラ23)●全ての国に対して北朝鮮の核・ミサイル計画がもたらす脅威に対処するため,全ての関連する国連安保理決議の完全な履行を通じたものを含む取組の強化を呼びかけ。(パラ24)●全ての国に対し核不拡散に係る効果的な国内管理体制の確立及び実施を呼びかけるとともに,不拡散のための取組における国際的な連携と能力構築の促進に向けた国家間の協力及び技術支援を奨励。(パラ26)  ***   *** 日本政府、2017年核軍縮決議案  外務省  2017年第72回国連総会我が国核兵器廃絶決議案(骨子) タイトル 「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」前文●国際的な核不拡散体制の礎石としての核兵器不拡散条約(NPT),及び核軍縮,核不拡散,原子力の平和的利用を追求するための不可欠な基礎としてのNPTの決定的な重要性を再確認。●NPT体制の普遍性を更に強化する決意の再確認,並びに核軍縮,不拡散及び原子力の平和的利用が相互補強関係にあり,NPT体制の強化に不可欠であることを想起。●1995年NPT運用検討・延長会議並びに2000年及び2010年NPT運用検討会議の最終文書を想起。●NPT条約発効50周年に当たる2020年のNPT再検討会議及び同会議に向けた一連の準備委員会等の重要性を強調。●核兵器のない世界の実現に向けた様々なアプローチに留意しつつ,全ての国の間の信頼関係の再構築と協力関係の強化が核軍縮・不拡散の実質的な進展のために極めて重要であることを強調。●国際的な平和と安全保障の強化及び核軍縮の促進は相互に補強関係にあることを再確認。●地域の安全保障状況をめぐる現下の動きについての重大な懸念を表明。●北朝鮮による累次の核実験・弾道ミサイル技術を用いた発射は,地域及び世界の平和及び安全保障に対する,これまでにない,重大かつ差し迫った脅威であること,NPT を中心とする体制に対する重大な挑戦であること等を想起。●核軍縮の検証能力の発展に向けた取組を歓迎,この点に係る核兵器国と非核兵器国の協力の重要性を強調。●包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名開放以降のCTBT機関準備委員会の成果を称賛。●核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末に深い懸念を表明,国際人道法を含む関連国際法の遵守の必要性を再確認。●核兵器使用による壊滅的で非人道的な結末が皆に十分に理解されるべきことを認識し,その関連で,こうした理解を促進するための努力がなされるべきことに留意。●政治指導者による近年の広島・長崎訪問を歓迎。●核及び放射性物質のテロが引き続き国際社会にとり緊急かつ発展的な挑戦であることを想起し,核セキュリティにおけるIAEAの中心的役割を再確認。本文●国際的な緊張関係を緩和し,NPT前文で想定されているように国家間の信頼の強化等により核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動をとることを全ての国により改めて決意。●全ての者にとって安全で,核兵器のない平和で安全な世界の実現に向け,NPT を完全に実施するという核兵器国の明確な約束を再確認。●2017年のNPT第1回準備委員会の成功を歓迎し,2020年のNPT運用検討会議に向け最大限努力することを奨励。●全ての国が,核軍縮・不拡散の実践的,具体的かつ効果的な措置を促す意義のある対話に層関与することを奨励。 ●核兵器の使用による非人道的な結末についての深い懸念が,核兵器のない世界に向けた全ての国の努力を下支えする主要な要素であり続ける旨強調。●全ての国に対して,国際的な緊張を緩和し,国家間の信頼を強化し,更なる核兵器の削減につながる環境を醸成するよう奨励し,核兵器国に対し,一方的な措置,二国間の措置,地域的な措置及び多数国間の措置によるものを含め,全ての種類の核兵器を削減し究極的に廃絶するため一層努力するよう要請。●核兵器国に対し,2020年のNPT運用検討会議に向けたプロセス全体を通じ,核軍縮のための取組の一環として,特に,解体・削減された核兵器及び運搬手段に関するより頻繁で詳細な報告を行うことによるものを含め,透明性の向上及び相互信頼の拡大のための取組を発展させていくことを奨励。●核兵器国から明白で法的拘束力を伴う安全の保証を受けることについての非核兵器国の正当な利益を認識し,核兵器国に対し安全の保証に関するコミットメントを十分に尊重するように求めるとともに,更なる非核兵器地帯の設置を奨励。●北朝鮮による核実験を踏まえ,核実験モラトリアムの普遍的な遵守の死活的重要性及び緊急性を強調。CTBTの発効要件国である北朝鮮による核実験が続く中,同条約の発効は可能ではない。北朝鮮に対し遅滞なく署名・批准することを要求。●核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉が開始され,早期妥結するまでの間,核兵器用核分裂性物質の生産モラトリアムを宣言し維持することの死活的な重要性及び緊急性を強調。●特に発効要件国である 8 か国が CTBT の署名・批准に向けて取組むことが要請されていることを想起しつつ,CTBTの早期発効,FMCTの早期交渉開始に対する広く浸透した要請を認識。●とりわけ,指導者や若者等がコミュニティや被爆者を始めとする人々を訪問し,交流し,これらの人々から将来世代に自らの体験を引き継ぐこと等を通じ,被爆の実相に関する認識を向上させるためのあらゆる取組を奨励。●北朝鮮による,全ての核実験及び弾道ミサイル技術を使用した発射を最も強い表現で非難。北朝鮮に対し,更なる核実験の実施を控えるとともに,全ての進行中の核活動を完全で,検証可能で,かつ不可逆的な方法で直ちに放棄することを強く要求する。北朝鮮に対し,全ての関連する国連安保理決議を完全に遵守するとともに,2005年9月19日の六者会合共同声明を履行し,IAEAの保障措置を含め,速やかにNPTの全面的な遵守に復帰することを要求。●全ての国に対し,北朝鮮の核・ミサイル計画がもたらすこれまでにない,重大かつ差し迫った脅威に対処するため,全ての関連する国連安保理決議の完全な履行を通じることを含め最大限の努力を行うよう要請。●全ての国に対し核兵器の拡散を防ぐ効果的な国内管理を確立し執行するよう要請するとともに,不拡散の取組における国際的な連携と能力構築の強化のための国家間の協力及び技術支援を奨励。(了)                      

原爆粉じん 急性症状多発 放影研、内部被ばく過小評価か 毎日新聞 2017年7月30日

原爆粉じん急性症状多発 放影研、内部被ばく過小評価か毎日新聞 2017年7月30日 10時30分  広島大の大滝慈(めぐ)名誉教授(統計学)らのグループが原爆投下直後に救護で広島市内に入った元少年兵を対象に実施したアンケートで、粉じんを浴びたグループの急性症状の発症頻度が、浴びていないグループの10倍以上と極めて高かったことが分かった。日米共同研究機関「放射線影響研究所」(放影研、広島・長崎両市)は、放射性物質が付着した粉じんなどを吸い込んだ内部被ばくの影響を「無視できる程度」とし、原爆症認定などで指標とされてきた。大滝名誉教授は「被爆者の急性症状や後に起きた障害の主原因は内部被ばくの可能性が高い。影響が過小評価されている」と指摘する。   アンケートは、当時15~19歳の陸軍船舶特別幹部候補生だった142人を対象に昨年2月に実施。候補生は原爆が落とされた1945年8月6日、広島市外で集められ、正午~午後5時ごろに救護のため市内に入った。作業の場所や内容、粉じんを浴びた状況、その後の健康状態などを尋ねて64人から回答を得た。  脱毛や下痢などの急性症状の頻度は、爆心地から半径2キロ以内で作業して粉じんを浴びたグループ(21人)が、2キロ以遠で浴びなかったグループ(22人、不明も含む)の11.7倍に上り、2キロ以遠で浴びた人(9人)も5.5倍と高かった。後にがんや白血病になった事例も、浴びたグループの方が多かった。大滝名誉教授は「サンプル数は少ないが、年齢や健康状態、活動時間がほぼ同じでデータの信頼性は高い」としている。  また、放影研が2001年に公表した被爆者3042人の染色体異常の発生頻度と推定放射線量の関係を示すデータも再検討した結果、屋内で被爆した人の放射線量が実際は約30%多い可能性があることが判明。大滝名誉教授らは「後に倒壊建物の粉じんなどを吸って内部被ばくし、染色体異常につながった可能性が高い」と結論づけた。  放影研は残留放射線や内部被ばくについて「原爆さく裂時に放出された初期放射線に比べてかなり小さい値で、健康リスクに大きく影響しない」とし、初期放射線のみを算定する被ばく線量推定方式を作成。国はこれを原爆症認定に用いてきた。一方で、認定訴訟では原告の体験や症状の検討から内部被ばくの過小評価を指摘する司法判断が相次いでいた。大滝教授は「援護されるべき被爆者らが見捨てられてきた恐れがある。方式を見直すべきだ」としている。【竹内麻子】

日本も原子力発電ゼロは「達成できる」 小宮山宏

日本も原子力発電ゼロは「達成できる」今や再生可能エネルギー「後進国」政治・社会 2017.10.21三菱総合研究所理事長 小宮山 宏PRESIDENT Online  経団連など日本の経済界は「原発ゼロは不可能」としている。だが、三菱総研理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏は「できるに決まっている」と断言する。小宮山氏は「脱原発は世界の潮流。米国や中国も再生可能エネルギーに舵を切った。このままでは日本は乗り遅れる」と警鐘を鳴らす――。 再生可能エネルギーのコストが原発を逆転    実際のところ、311(東日本大震災)の東京電力福島第一原発事故の後、何年間も、日本は原発ゼロの状態でやってきました。いまさら「やれるか」「やれないか」という議論をするなんてムダ。全く話になりません。    もう少し、前段の流れから説明しましょう。エネルギー源は、石油や石炭などの化石資源から「非炭素資源」に変えていかないと、地球温暖化の問題は解決できません。私は、21世紀中に変えざるをえないと考えています。  三菱総研理事長/元東京大学総長 小宮山宏氏    では、ここで言う「非炭素資源」とは何か。選択肢は大きく2つ、原子力か、再生可能エネルギーです。ここまでは、議論の余地はありません。    選択には、「どちらが安いか」という、コストを考える必要があります。私は1999年に『地球持続の技術』(岩波書店)という本を出していますが、この本をまとめていた1990年代は、まだ原子力発電による電力コストの方が相当安いとされていました。当時は、ようやく太陽電池が家庭の屋根に載り始めたころで、風力発電の発電規模もかなり小さかった。再生可能エネルギーで、大量のエネルギーをまかなえる状態ではありませんでした。    しかし私は、技術の進歩を考えると、いずれどこかのタイミングで、再生可能エネルギーの供給規模やコストが、原子力と逆転すると考えていました。    実際は、私が当時予測していたよりも圧倒的に速いスピードで逆転しました。再生可能エネルギーのコストが安くなる一方で、原発についてはリスクの大きさがコストに加わるようになった。今や原発を新設するよりも、再生可能エネルギーの発電所を新設する方が安いのです。    実際に、2016年に世界で実行された発電所投資額の70%が、再生可能エネルギーに向けられています。ちなみに投資額の25%が火力発電所で、原発の投資額は5%に過ぎません。    再生可能エネルギーには大きく5種類、水力、風力、太陽光、バイオマス、地熱があります。このうち、その土地で一番安いものを選べばいいのです。日照時間は短くても風が強いというところは風力、水が豊富なところは水力、森林が豊富なところはバイオマス、アイスランドのように火山が多いところは地熱発電を使えばいい。世界では、その国や地域に合った再生可能エネルギーを選択し、どんどん開発を進めています。それがこの、投資額の70%という数字に表れています。 原発を「作ってしまった」日本の難しさ    世界でこうした流れが進んでいる一方で、日本の再生可能エネルギーの取り組みはまだまだです。日本の難しさは、これまですでに30兆円も原発に投資し、設備を作ってしまったことにあります。    原発は、「作るとき」と「使い終わった後」に非常にお金がかかります。でも、使っている間はとてもコストが低い。これだけ原発を作ってしまったわけですから、使い終わった後のことを考えず、使い続けていれば費用は安くすみます。つまり、今の日本は、「使い終わった後をどうするか」という問題を先送りにしているのです。    ただ、日本は東日本大震災で深刻な原発事故を起こしました。世界の国々は、「日本ですら事故を起こしたのだから、うちの国も起こすかもしれない」と、原発の稼働や新設を止めた。欧州では、新設や稼働はもちろん、将来にわたって原発は使わないと決めた国も出てきています。中国やベトナム、トルコなども、新設計画はありますが実際は進めていない。それが世界の潮流になっている。それなのに、事故を起こした当の日本が、なぜまだ原発を推進しようとしているのか。    さらに、政府は「今後もベース電源は原発で」と言っているようですが、今、「ベース電源」という考え方をしている国は、日本くらいじゃないでしょうか。    確かに風力や太陽光は、気候などによって発電量が変わりますが、水力やバイオマス、地熱は安定電源です。さらに、風力や太陽光でも、水力と組み合わせることによって、電源としての不安定さを解消できます。    水力発電では、余剰の電気があるときに、タービンを逆回転して下流の水を上の貯水池に上げておき、必要なときに水を落として発電する「揚水発電」ができます。いわば電気を蓄えておく蓄電池の役割を果たします。これは非常に効率がよくて、「貯めた」電気の85%くらいは後で使うことができます。    揚水発電はもともと、原発の電気が需要の少ない夜に余るため、それを活用するために開発されたものです。でも、太陽光や風力など、供給が不安定な電力の余剰電力を貯めておくのにも使えます。九州電力では今年のゴールデンウィークに、需要の70%以上を太陽光で発電しパンク寸前になりましたが、揚水発電がフル稼働して問題を解決しました。 再生可能エネルギー「後進国」日本    水力発電は、さらに大きな可能性を秘めています。現在主流の、大型のダム開発を伴うような水力発電所は、すでに作れるところには作ってしまっており、新設は難しくなっています。しかし、出力規模1万kW以下の小水力発電のポテンシャルは高く、全国で約1000万kWと試算されていて、原発10基分に相当します。このすべてを開発するのは難しいかもしれませんが、原発3基分くらいなら十分可能です。    こうした小規模の水力発電は、ダムを使いません。水力発電は、要は、上から下に流れる水の力(位置エネルギー)を使えばいいので、ダムが造りにくいようなところであっても、小さなためを作って管路で落とし、下でタービンを回せさえすれば可能です。    例えば、和歌山県の有田川町では、県営ダムの放流水を使った町営二川小水力発電所を運営しています。ダムは通常、下流の生態系を維持するために、常に一定量の放水を行う「維持放流」をしています。この放流水にタービンを入れ、最大200kW、年間120万kWhの電力を作っているのです。日本では、ほとんどのダムで維持放流をしていますから、開発の可能性は非常に大きいといえます。    今後の電力システムは、従来のように大きな発電所で集中的に発電して電気を配る、というやり方ではなくなるでしょう。揚水発電のほか、電気自動車やプラグインハイブリッド車などに搭載された電池も、太陽光や風力発電の余剰を貯める蓄電装置として使えます。こうした多様な蓄電機能と、発電パターンの異なる複数の再生可能エネルギーを組み合わせて、電力を供給する技術が求められます。    残念ながら日本は、こうした再生可能エネルギーの分野では後進国となってしまっています。ドイツでは、電力供給の30%以上が再生可能エネルギー、中国でも昨年は28%に達していますし、アメリカももうすぐ20%になります。日本は2015年現在で、わずか4.7%です。 2050年以降エネルギーコストはゼロにできる    こうした現実を見ると、エネルギー問題について悲観的になるかもしれませんが、その必要はありません。    まずは2050年の日本を描きましょう。人口は今より2割以上減少していますし、技術革新で省エネルギー化も進み、エネルギー消費量は今の半分以下になります。今よりずっと楽になります。それくらいの量は、再生可能エネルギーで十分供給できます。    5つの再生可能エネルギーをどんどん開発する。それがもっとも負担を伴わない方法なのです。次世代に対して、2050年以降はタダになるエネルギーを残すことができます。その上、現在化石資源の輸入に使っている25兆円が、すべて内需に振り向けられるようになります。都市よりも地方に落ちるお金となり、地方再生の中核となるビジネスになりえます。    現在日本では、原発に反対している人の方が多いのに、原発を稼働させ、原発事故が起きたときの避難演習をしたりしている。ほかにも、サイバーテロに襲われたらどうするか、北朝鮮が原発周辺に爆弾を落としたらどうするか、と、リスクや不安要素は本当にたくさんあります。こうした不安を抱えて「イヤな思いを持ち続けるコスト」を、将来も抱え続けるのは本当にいいことなのか。しっかりと考えるべきでしょう。 小宮山 宏三菱総合研究所理事長。1944年生まれ。67年東京大学工学部化学工学科卒業。72年同大学大学院工学系研究科博士課程修了。88年工学部教授、2000年工学部長などを経て、05年4月第28代総長に就任。09年4月から現職。専門は化学システム工学、CVD反応工学、地球環境工学など。サステナビリティ問題の世界的権威。10年8月にはサステナブルで希望ある未来社会を築くため、「プラチナ構想ネットワーク」を設立し会長に就任。(構成=大井明子)

関東子ども健康調査支援基金 甲状腺エコー検査を実施します。2017年12月千葉県

 関東子どもネット、甲状腺エコー検査を実施します。2017年12月、千葉県にて。     2017年12/9(土)、10(日)、16(土)、17(日)千葉/甲状腺エコー検査を実施します。    関東子ども健康調査支援基金では、12月の週末、千葉県各地で甲状腺エコー検査を実施します。各地団体のボランティアが主催する健診です。医師が目の前でエコーを見ながら説明し、ボランティアのみなさんが、丁寧に対応してくれます。気になっていた方はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょう。子ども、とりわけ事故当時の小中高生は一度診てもらえるといいなと思います。申込みは、以下のリンクよりご確認ください。        子ども全国ネット http://www.kantokodomo.info/yotei.html 甲状腺エコー検査@あびこ *11月1日20時受付開始* 12月16日(土)11:00~17:00 我孫子北近隣センター 千葉県我孫子市並木5-4-6 我孫子検診のお知らせ オンライン申込 申込書 甲状腺エコー検査@柏 *11月1日受付開始* 12月17日(日)11:00~16:00 さわやかちば県民プラザ 千葉県柏市柏の葉4-3-1 柏検診のお知らせ オンライン申込 申込書 会場や医師の都合等で変更になる可能性があります。各回、詳細が決まり次第お知らせと申込書を掲載します。 <今後の予定> 12月 9日(土) 白井検診(千葉県)12月10日(日) 松戸検診(千葉県)    

ネット選挙は23時59分59秒までセーフ!投票日前日・当日の「SNSの利用」には気を付けて! Yahoo ニュース 2017年10月21日

ネット選挙は23時59分59秒までセーフ!投票日前日・当日の「SNSの利用」には気を付けて!Yahoo ニュース 2017年10月21日(土) 13:32配信  出典 Yahooニュース   ネット選挙は23時59分59秒までセーフ!投票日前日・当日の「SNSの利用」には気を付けて!10/21(土) 13:32配信    ネット選挙は23時59分59秒までセーフ!投票日前日・当日の「SNSの利用」には気を付けて!    インターネットを使った選挙運動は2013年から解禁されました。今回の衆議院議員選挙でも公示日以降、候補者や政党、有権者がそれぞれホームページやSNS、ツイッターを使って選挙運動を行っています。    しかし、選挙運動ができるのは今日まで(22日に日付が変わる瞬間まで)です! 投票日の22日になってしまうと、選挙運動は誰であっても一切できません。    21日と22日(投票日当日)で変わるので気を付けて! [できること・できないこと]   一般の有権者が、インターネットを使った選挙運動で投票日前日までにできること、投票日当日にできることを簡単に表にしてみました。    あわせて、「よくある質問」もまとめましたので、こちらもご参考くださいね!    ウェブサイトの更新、SNSでの発信、LINE等のアプリでの選挙運動はいつまでしていいの?    よく「選挙運動は20時まででは?」という質問がありますが、20時までの制限は「街頭演説」の規制です。ネットを含む選挙運動は本日23時59分59秒まで可能です。上記の表を見ていただくとわかるように、ネット選挙運動において一般の有権者は電子メール・携帯のショートメッセージ・ネット広告は禁止、他はなんでもOKです。投票日前日の今日(10月21日)までは選挙運動期間と定められていますので、ウェブサイトの更新やFacebook・Twitter・LINE等のSNSを使って特定の候補に投票を呼びかけることが出来ます。Youtubeに特定候補・政党への投票を呼びかける動画をアップすることもできます。    応援している候補者・政党のいる方は、日付が変わるまで精一杯活動しましょう。ただし、自分の候補の当選を願うあまり、相手候補を貶めるような誹謗中傷をしたり、デマを拡散したりする行為はやめましょう。そうした行為が政治不信を広げてしまいますし、虚偽事項公表罪(公職選挙法第235条第2項)にあたる可能性もあります。    インターネットが見られない人に、あの政治家のサイトを紙に印刷して渡してあげたい    政治家の公式サイトを印刷して配布する行為は「文書図画の頒布」にあたり、禁止されています。特定の政党や候補者または第三者であっても、選挙運動に関するウェブサイト・PDFの文書・パンフレット等を印刷して配布する行為はできませんのでご注意ください。スマホやタブレットに表示して見せるのはOKです。    投票日当日は選挙運動が禁止!では、候補者の投稿に「いいね!」はOK?    明日(10月22日)の投票日当日になってしまいますと、選挙運動は一切できませんのでご注意ください。候補者や政党の投稿をシェアやRTなどで拡散する行為は、投票日当日は選挙運動とみなされ、違反になる可能性があるので控えましょう。    ただし、選挙運動と見なされるかどうかにグレーゾーンがあります。例えば候補者の投稿や選挙運動に関係する記事に「いいね!」をするのはどうでしょうか? これについては、直ちに選挙運動と見なされて違反になる可能性は低いと言われています。    ただし、意図的に特定候補に対して多数の「いいね!」を行うことによって、投票日当日に特定候補者のSNSやウェブサイトを盛り上げようとする意図があると認められる場合は、選挙運動にあたると解釈される可能性がありますのでご注意ください。    投票日当日、○○候補がピンチだと聞いた。ツイッターやLINEがダメなら、メールで支援者に投票するように連絡したい!    投票日当日はもちろん、選挙運動期間中でも違反になる行為です。繰り返しになりますが、そもそも選挙運動に関連するメールを発信できるのは候補者本人、または政党のみであり、一般の方がメール(電子メール・携帯ショートメッセージ)を使って選挙運動を行うことは認められていません。    さらに候補者から送付されてきたメールを転送する行為も禁止されていますので、ここは特に注意が必要です。    「○○候補に投票してきた」ツイッターでみんなにも投票を呼び掛けたい!    「選挙に行ってきました」、「投票してきました」等のただの事実の報告であれば問題はないですが、    「○○さんに投票してきました」    「投票してきました。○○候補がんばれ!」 等の特定の候補者への応援につながる内容が含まれる場合は、その候補に投票を呼び掛ける選挙運動に該当すると受け取られる可能性があります。特定候補の顔写真・名前の入ったポスターや看板の前で撮った写真をアップして上記の投稿をすることも、選挙運動と見なされる可能性が高いので注意が必要です。    例えばですが    「投票してきました。私の選挙区の立候補者はこの人たちです。    選挙ドットコムの候補者一覧 http://shugiin.go2senkyo.com/ みなさん、忘れずに投票に行きましょう!」    このような形でしたら投票率の向上を呼びかけるものとして、違反になることはありません。投票率の推移は選管のホームページに掲載されることが多いので「12時の投票率はまだ○○%です。みなさん投票へ行きましょう!」などの呼びかけも問題ありません。前回の衆院選の投票率は過去最低となる52.66%でした。今回は悪天候もあって、前回より投票率が下がるのではと心配されています。みんなで投票に行って、投票率を上げましょう!    投票日当日はずっと規制があるの?    明日の20時で全国の投票箱が閉まります。投票行動に影響を与えることもなくなりますので、20時を超えると自由に候補者名や政党名を記載しての更新ができるようになります。    選挙ドットコムでは、第48回衆院議員選挙の特設サイトを設け、衆院議員選挙の情報を掲載しています。投票の当日であっても選挙ドットコムの候補者一覧ページなど、特定の候補者に偏っていないウェブサイトを参考に掲載する行為については、選挙運動性を帯びていないので問題がないと考えられています。ご自分の選挙区の候補者等について詳しい情報をお知りになりたい方は、ぜひご活用ください! 選挙ドットコム編集部 選挙ドットコム    

衆院選2017 「アベノミクス加速」実態は? 毎日新聞 2017年10月19日 東京朝刊

衆院選2017「アベノミクス加速」実態は?毎日新聞 2017年10月19日 東京朝刊 就業者数185万人増→→→多くは非正規 GDPが過去最高→→→世界シェア低下  「私たちは、正社員の有効求人倍率1倍を日本で初めて作り出した」。安倍晋三首相は18日、埼玉県熊谷市の街頭で胸を張った。アベノミクスの加速を訴え、経済規模を示す国内総生産(GDP)が過去最高を更新したと強調する。確かにこの5年で株価や雇用の指標は改善した。とはいえ裏付けのデータを調べると、主張とは異なる側面も浮かぶ。【和田浩幸】  自民党公約に「就業者数185万人増加」「若者の就職内定率過去最高」など華々しいデータが並ぶ。2012年末の第2次内閣発足以降、正社員の有効求人倍率は右肩上がりで、今年6月に1・01倍と集計開始(04年11月)以来初めて1倍を超えた。リーマン・ショック(08年)後の09年下半期は0・25。回復ぶりは鮮明だ。  でも、雇用の質はどうか。16年の労働力人口(15歳以上の就業者と失業者の合計数)はリーマン・ショックの08年とほぼ同じだが正規雇用は43万人減少した。役員を除く雇用者数は安倍政権下、16年までの4年で230万人増えたが、そのうち9割の207万人は非正規労働者だ。  第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「製造業や建設業を中心に求人が増えた一方、雇用増で求職者は減ったこともその一因だ」と分析。「1倍を超えても年齢条件が合わなかったり、希望の求人がなかったりで、雇用環境は改善したが誰でも正社員になれるわけではない」と指摘する。  実際、正社員の有効求人倍率(全国平均)が0・86倍だった16年を都道府県別に見ると、首位の東京1・23倍に対し最下位の沖縄は0・38倍で、半数超の27道県が平均を下回った。16年の職業別有効求人倍率(パートを除く常用)は平均1・11倍。人手不足の「建設・採掘」は3・38倍だが、肉体的負担の少ない「事務的職業」は0・34倍にとどまる。      ◇  自民党公約は、名目GDPが50兆円増え過去最高の543兆円になったと強調。首相も街頭で、アベノミクスの「三本の矢」で挑んだ結果だと訴える。しかし、同志社大の服部茂幸教授(経済政策)は「都合の悪い事実に触れていない」と語る。政府の誘導する物価上昇の影響を名目値から差し引いた実質GDPの増加率は、リーマン・ショック前の水準を下回っている。「円安でも輸出は伸びなかった。停滞に苦しんだ80年代の米国と似た構造だ」とみる。  内閣府によると15年の名目GDPはドル換算で4・4兆ドルとなり、世界全体に占める割合は5・9%と12年比2・3ポイント下がった。金融緩和による円安が要因だがデフレ脱却の見通しは立たず、日本の存在感は低下している。  京都女子大の橘木俊詔(たちばなきとしあき)客員教授(労働経済学)は「賃金が停滞し格差が解消されていない。有権者は政権が示すデータをしっかり確認し、判断することが重要だ」と指摘している。      

原爆症訴訟 4人を認定、救護被爆者は認めず 大阪地裁 毎日新聞 2008年7月18日

原爆症訴訟  4人を認定、救護被爆者は認めず 大阪地裁  毎日新聞  2008年7月18日  被爆者が原爆症認定を求めた集団訴訟のうち、大阪、京都、兵庫の11人(うち6人は死亡)が国に認定却下処分取り消しなどを求めた第2次近畿訴訟で、大阪地裁(西川知一郎裁判長)は18日、未認定の5人のうち4人を原爆症と認定するよう国に命じる判決を言い渡した。一連の訴訟で国は10連敗となった。残る1人は直接被爆していない「救護被爆者」で、集団訴訟で初の司法判断として注目されたが、西川裁判長は請求を棄却した。 救護被爆者の原告は森美子さん(83)=京都市右京区。爆心地から約20キロ離れた長崎県大村市の海軍病院で、看護師として被爆者の救護活動に従事し、放射能の影響で肝機能障害になったと主張。西川裁判長は「多数の被爆者との身体的接触を通じ、被爆したとしても不合理ではない」と指摘し、救護被爆で健康被害が起きる可能性に言及したものの、「放射線に起因しているとする明らかな証拠はない」と結論づけた。 原告は広島、長崎で被爆し、がんや肝機能障害などを発症した73~83歳の男女と、死亡により訴訟を承継した遺族。国の新基準で原爆症と認定された6人については「訴えの利益がなくなった」として訴えを却下。また、国への1人当たり300万円の賠償請求は「漫然と却下処分を出したとは言えない」として棄却した。【川辺康広】 【ことば】▽救護被爆者▽ 直接被爆したり、原爆投下後に爆心地近くに立ち入ってはいないが、死者や負傷者の搬送や救護活動に当たり、放射能の影響を受けた被爆者。厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ約25万2000人(昨年3月末現在)の約1割が救護被爆者。72年の1人を最後に原爆症認定者はなく、今年4月から運用された新基準でも対象外になっている。    

長崎原爆 被爆体験者敗訴を見直しか 最高裁が弁論決める 毎日新聞 2017年10月19日

長崎原爆 被爆体験者敗訴を見直しか 最高裁が弁論決める毎日新聞 2017年10月19日  長崎原爆投下時に国が指定した被爆地域の外側にいたため、被爆者健康手帳が取得できない「被爆体験者」388人が第1陣として長崎市と長崎県、国に手帳の交付などを求めた集団訴訟で、最高裁第1小法廷(木沢克之裁判長)が11月30日に上告審弁論を開くことを決めたことが、関係者への取材で分かった。最高裁は通常、2審の結論を変更する際に弁論を開くため、原告が全面敗訴した2審判決を見直す可能性がある。    原告は、長崎原爆の爆心地から約7~12キロで原爆に遭い、放射性降下物を体内に取り込んで内部被ばくしたなどとして、被爆者援護法が「被爆者」の要件とする「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に該当すると主張している。  しかし、2012年6月の1審・長崎地裁判決は原告の主張を「合理的根拠を欠く」と判断して原告全員が敗訴。昨年5月の2審・福岡高裁判決も「健康被害があった証拠は見いだせない」として1審判決を支持し、原告の控訴を棄却した。原告は「国が当時の行政区域を基に被爆地域の指定をしたことに合理性はなく、憲法の法の下の平等に反する」として上告していた。  一方、原告161人による第2陣訴訟では昨年2月の1審・長崎地裁判決が「原爆による年間積算線量が自然放射線の世界平均(2.4ミリシーベルト)の10倍を超える25ミリシーベルト以上である場合には、健康被害を生じる可能性がある」と指摘し、被爆地域外の一部地域にいた原告10人について県と市に手帳交付を命じた。敗訴原告と県、市はいずれも控訴し、福岡高裁で控訴審が続いている。【樋口岳大】

沖縄県北部、米軍ヘリコプターCH53E墜落、炎上。ストロンチウム90の環境への放出の危険

[初稿]2017年10月15日 記:川根眞也 [追記]2017年10月17日 02:10am記:川根眞也    またしても、米軍ヘリコプターが墜落、炎上しました。2017年10月11日5:59am(米軍ヘリコプターの墜落を目撃した、修学旅行生のツィッター投稿時刻から)。それも、オスプレイのための、ヘリコプターの離発着場、ヘリ・パッドを建設中の、沖縄県北部高江町の北部訓練場の目の前で。   この米軍ヘリコプター CH-53Eは、2004年8月13日に沖縄国際大学に墜落したヘリコプター CH-53Dの改良型で、ローターブレードが6枚から7枚になっています。つまり、ローターブレードの亀裂を感知するためのIBISという装置も7個装着。IBISに使われているストロンチウム90の量も、7個分になります。   2004年の沖縄国際大学での墜落事故では、IBISが失われたのは1個分でしたが、今回のCH-53Eの場合は、全焼。IBIS7個分のストロンチウム90が気化し、環境中に拡散した、と考えられます。   そのストロンチウム90の総量とは、一体、どれくらいなのでしょうか?ローターブレード1枚に1基ついているIBISのストロンチウム90は1850万ベクレル、7基分になりますから、1850万×7=1億2950ベクレルにもなります。 沖縄タイムス 2017年10月12日より                      不時着し炎上した米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリコプター=13日午前8時23分ごろ、東村高江(小型無人機で撮影) 琉球新報 2017年10月14日より ***   *** 【沖縄国際大学、ヘリコプター墜落炎上事故 2004年】   2004年8月13日午後2時15分頃、アメリカ軍普天間基地所属の大型輸送ヘリコプターCH-53Dが訓練中にコントロールを失い、沖縄国際大学1号館北側に接触、墜落、炎上した。    事故直後、消火作業が終わった後にアメリカ軍が現場を封鎖し、事故を起こした機体を搬出するまで日本の警察・消防・行政・大学関係者が現場に一切立ち入れなかった。    さらに当該機のローターブレードには氷結などによる亀裂・劣化を検出するために放射性物質であるストロンチウム90が1個ずつ(CH-53Dのローターブレードは6枚なので合計6個)のステンレス容器に納められており、そのうちの1つが今回の事故で機体の燃焼により損壊し放射能汚染を引き起こした疑いが持たれている。(これをIBIS、という)ただし、米国大使館は報道機関に対して、ストロンチウム90は機体の燃焼、熔解で気化した可能性が高いと回答している。そして、アメリカ軍によって土壌や機体は回収されてしまったことで詳細を解明することは困難になった。 ***   *** 高江米軍ヘリ炎上米軍、現場立ち入り拒否 沖縄県、放射能調査求める 高江米軍ヘリ炎上琉球新報  2017年10月13日 10:08   放射能測定器を膝の上に乗せ、現場に入る米軍関係者=12日、東村高江  高江米軍ヘリ炎上を受け、翁長雄志沖縄県知事は12日正午すぎ、東村高江の事故現場を視察した。視察後、翁長知事は記者団に「悲しい、悔しい、そして怒り」と憤りをあらわにした。県が抗議をしても繰り返される米軍事故に「国に県が強いられている意味では、これが国難だ」と強調した。  県環境部は11、12の両日、土壌中の放射性物質や有害物質の有無などを調査するため、事故現場への立ち入りを求めたが、現場を囲む規制線内に入ることが認められていない。12日午後6時半現在、調査は実施できていない。  2004年の沖縄国際大米軍ヘリ墜落事故を受け、日米両政府は日本国内の米軍使用施設・区域外で米軍機が墜落または着陸を余儀なくされた際に適用するガイドラインを策定した。県はガイドラインに沿って調査を求めているが、見通しは立っていない。  日米地位協定が壁となり県警が現場検証などに至れない問題に関し翁長知事は「日米合同委員会の中で日本政府に当事者能力がない。米軍に『二度とこういうことがないようにしてください』という話しかしない。豆腐にくぎのような状況だ」と指摘した。  事故当日、現場に近づけなかった東村の伊集盛久村長は、一夜明けた12日午前9時過ぎ、現場から約50メートルの場所で機体の残骸を確認し「あってはならないことが起きてしまった」と事故を非難した。東村議会(安和敏幸議長)の議員団8人も現地を視察した。  役場に戻った伊集村長は午前11時過ぎ、小野寺五典防衛相から電話で謝罪を受けた。小野寺氏からは「事故原因が判明するまで訓練中止を検討する」との説明を受けたという。  ***   *** 高江米軍ヘリ炎上 放射性物質が飛散の可能性琉球新報  2017年10/12(木) 18:55配信 矢ヶ﨑克馬・琉大名誉教授(物性物理学)の話  (2004年8月13日)沖国大に墜落した米軍ヘリCH53には回転翼の安全装置に放射性物質ストロンチウム90が使用されていた。その際には六つの装置のうち一つを回収できず、米軍は気化したとし、環境に影響ないと主張した。この時に消失した量は約500マイクロキュリー、1850万ベクレルとされた。大変な量だ。  ストロンチウム90は高速ベータ線(電子)を出す。回転翼の中は真空になっていて、ベータ線を常時測定している。損傷が起き空気が入ると測定数値が激減し、警報が鳴る仕組みだ。  ベータ線は透過力が弱いので通常は近接しない限り危険性はないが、燃え上がると酸化しながら微粒子になって大気中に飛散する。空気中を漂う微粒子が体内に入ると内部被ばくの危険がある。  今回も黒煙と一緒に周囲にばらまかれてしまったのではないか。爆発的に燃えていた様子からすると、複数の装置が燃えて沖国大の時より多く飛散したかもしれない。  ***   *** 【沖縄国際大学、ヘリコプター墜落・炎上事故】 米軍ヘリ墜落事故: 報道機関の質問に対する回答2004年9月3日 下記は、沖縄県宜野湾市で起きた米軍ヘリ墜落事故(8月13日)に関連して、報道機関からの質問に対する回答です。 質問:米軍ヘリコプター(CH-53D)の墜落現場では、「ガイガーカウンター」(放射能検出機)は使用されたのか? 回答: 使用された。1部の航空機やヘリコプターの残がいを検査する際に使用される標準的な検査機器のひとつが、放射能検出機である。8月13日沖縄での米軍ヘリコプター(CH-53D)の墜落に対し、米海兵隊の安全・救援担当職員は、付近にいる人々や乗員の安全を確保すべく、また事故機の残がいを保全するために、一連の手続きに注意深く従った。環境への悪影響を防ぎ、また最終的に事故の原因を知るために、CH-53Dの残がいを注意深く調べなければならない。それでは放射能検出器を使用し、われわれは何を探していたのか? CH-53Dには、低レベルの放射性同位体であるストロンチウム90を含む回転翼安全装置および氷結探知機が装備されている。放射能検出機はCH-53Dの残がいの中にあるこれらの機器を見つけ出すために使用された。ストロンチウム90を含む回転翼安全装置は、飛行翼検査システム(IBIS)と呼ばれる、ヘリコプターの回転翼に取り付けられた感知器であり、回転翼の亀裂・劣化をパイロットに警告する。IBIS安全装置は別々のケーシングに6放射線源を含んでいる。ケーシングはローターに取り付けられたブレードの根元の部分に位置する。それぞれのケーシングは約500マイクロキュリーのストロンチウム90を含み、ノック式ボールペンの押しボタンくらいのサイズの小さいステンレス製保護シリンダーに装てんされている。6個の容器のうち5個は事故現場から回収された。ひとつは機体の燃焼・溶解で気化した可能性が高く、識別不能である。焼失したストロンチウム90の量は人体に危険性はない。この量は通常の胸部エックス線撮影あるいは太平洋を横断する航空機搭乗による照射に比べ、かなり少ない。氷結探知機は約50マイクロキュリーのストロンチウム90を含むが、現場から回収された。米海兵隊は日本の民間企業と連携して環境影響調査を行い、その結果をでき得る限り早急に報告する。ストロンチウム90、燃料、その他の合成物質、汚染の可能性のあるいかなる物質も含めて、現場に残る物質は、どのような種類であれ検証する。しかし、予備調査結果が示唆するところによると、墜落現場には放射能汚染の痕跡は存在しない。 ***   *** 【IBISとは】 ブログ へろへろblog  「墜落したHH-60ヘリコプターの放射性物質とは」2013年8月8日より    「飛行中の回転翼のひび割れを調べるセンサー」というのは、シコルスキー社のIn-Flight Blade Inspection System (IBIS)というものだ。H-53シリーズだけでなく、H-3/S-61シリーズのヘリコプターにも、少なくとも一部で採用されていた。これは普通に知られているもので、秘密でもなんでもないから、Googleで検索すれば親切な説明資料も出てくる。   これを装備するヘリコプターのブレード(回転翼)は中空に作られていて、内部には大気圧よりも少し高い圧力で窒素が充填されている。そして、各々のローターには、蓋(プラグ)をするような形で、IBISのプレッシャ・インジケータが取り付けられる。   下の図がIBISのプレッシャ・インジケータで、左図は放射線抑制効果のあるカバーを付けた状態、右図は運用時にカバーを外した状態である。    もし、ブレードに何らかのダメージで亀裂が入ると窒素の圧力が抜け、プレッシャ・インジケータのスイッチが作動する。すると、インジケータに黒い2本のラインが現れる(左図の状態)ので、停止中であれば目視で異常が確認できる。    また、それと同時に内蔵されたストロンチウム90から放射線が出るので、飛行中であっても機体に取り付けられたセンサーが反応して警報を発する。こうして、目視点検できない飛行中でも、乗員がローター・ブレードの亀裂(クラック)を検知できるというわけだ。    このIBISは当然ながら海上自衛隊のMH-53にも装備されていて、ローターが静止していれば、それは外観からも容易に確認することができる。下のサイトにある写真で、MH-53のローターの付け根に、カバーの付いたIBISプレッシャ・インジケータが付いているのがよく分かる。    もし、ブレードに何らかのダメージで亀裂が入ると窒素の圧力が抜け、プレッシャ・インジケータのスイッチが作動する。すると、インジケータに黒い2本のラインが現れる(左図の状態)ので、停止中であれば目視で異常が確認できる。   また、それと同時に内蔵されたストロンチウム90から放射線が出るので、飛行中であっても機体に取り付けられたセンサーが反応して警報を発する。こうして、目視点検できない飛行中でも、乗員がローター・ブレードの亀裂(クラック)を検知できるというわけだ。    このIBISは当然ながら海上自衛隊のMH-53にも装備されていて、ローターが静止していれば、それは外観からも容易に確認することができる。下のサイトにある写真で、MH-53のローターの付け根に、カバーの付いたIBISプレッシャ・インジケータが付いているのがよく分かる。 ***   *** 高江米軍ヘリ炎上事故機に放射性材料 部品で使用、米軍認める 久米島緊急着陸と同一機 高江米軍ヘリ炎上琉球新報  2017年10月14日 06:00  事故現場近くのため池で水質検査をする沖縄防衛局、衛生環境研究所、沖縄環境保全研究所の関係者ら=13日午後、東村高江  東村高江で不時着し炎上したCH53E大型輸送ヘリコプターに関し、在沖米海兵隊は13日、本紙取材に「CH53Eのインジケーター(指示器)の一つに放射性の材料が使われている」と認めた。沖縄防衛局と県は13日午後4時ごろから、現場周辺で初の環境調査を実施した。内周規制線内には入れなかったため、県は週明けにも改めて防衛局を通し立ち入りを申請する。関係者によると今回の事故機は、6月に久米島空港へ緊急着陸したCH53Eと同一機だった。 在日米軍の監視を続けるリムピースの頼和太郎編集長によると、「インジケーター」は2004年の沖国大米軍ヘリ墜落でも問題となった、プロペラの内部に傷があるかどうかを調べる検査装置のことを指すとみられる。米軍は放射性物質について「健康を害すのに十分な量ではない」とも回答した。  沖国大米軍ヘリ墜落事故では放射性物質「ストロンチウム90」が問題となった。今回も近隣住民らの間に不安が広がっている。11日に炎上事故があった東村高江では放射能測定器とみられる機器を持った米兵が現場に入った。矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授は「04年同様、今回も黒煙とともに周囲に飛散したのではないか」と指摘している。  沖縄防衛局と県は事故により放射性物質が飛散した可能性があるとして、事故機が横たわる現場から100メートルほど離れた場所で土壌を、隣接するため池では水をそれぞれ採取した。県の担当者によると、採取物のデータ分析には約1カ月を要す見通し。  県は事故機に接する土壌の採取を要望している。週明けにも再度、立ち入りを申請する。防衛局と県は同日、福地ダムの水質も調査した。  関係者によると、11日に普天間飛行場を離陸したCH53Eのうち、4番機のみ同飛行場への帰還が確認されていない。6月に久米島に緊急着陸したCH53Eも4番機だった。  ***   ***  cmk2wlさんによる、沖縄の軍用ヘリ墜落について 2013年8月17日記 1.  2004年 沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落。あの事故の報道内容からすると シコルスキー社製「CH53D」が墜落し、その一部 18,500,000ベクレルが燃えたと。これをキュリーに換算すると 500μCi [...]

原発事故、誰も守ってくれないから… ヨウ素剤、準備する住民たち 毎日新聞 2017年10月11日 東京夕刊

原発事故、誰も守ってくれないから… ヨウ素剤、準備する住民たち毎日新聞 2017年10月11日 東京夕刊  特 幼稚園児の保護者に問診の上、安定ヨウ素剤を配布する青山浩一医師=千葉県松戸市で2017年9月、沢田石洋史撮影  放射性物質が放出される原発の過酷事故に備えて、住民が自ら安定ヨウ素剤を入手する動きが広がろうとしている。甲状腺被ばくを防ぐためだ。東京電力福島第1原発事故から6年半の月日を重ねた今回の衆院選。原子力防災の在り方は問われるのだろうか。【沢田石洋史】  江戸川を挟んで東京都に隣接する千葉県松戸市で9月、ヨウ素剤の配布会が開かれた。約300人の園児が通う「大勝院幼稚園」の講堂。国や自治体は一切関わっていない。櫛田良豊園長は「本来は国がやるべき仕事ですが、やらないので園が企画しました。大人が子どもたちを守らないで誰が守るのか」と語る。150人以上の保護者が集まり、医師の説明と問診後、3日分のヨウ素剤を家族のために受け取った。  配布会を進めているのは、フォトジャーナリストの広河隆一さんが代表を務める「DAYS救援アクション」(事務所・東京都世田谷区)と、市民グループ「放射能からこどもを守ろう関東ネット」だ。  広河さんは「原発で大事故が起きれば放射性物質は遠くまで広がることが福島第1原発事故で明らかになったのに、政府がヨウ素剤配布の対象にしているのは原発から30キロ圏だけ。これでは万一の時に子どもたちの健康を守れない」と憤る。配布運動を「健康に生きる権利の行使」と位置付けている。  松戸市は福島第1原発から約200キロ離れている。日常生活で原発を意識してこなかった同市で何が起きたか--。  2011年3月下旬に市内の浄水場で採取した水道水から1キログラム当たり最大220ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。この数値は乳児(0歳児)の飲用に関する基準(100ベクレル)の2倍を超す。千葉県は一時、乳児が飲むのを控えるよう呼び掛けた。  さらに市民の間で「空間線量も高いのでは」との不安の声が広がり始めた。当時5歳の長男を大勝院幼稚園に通わせていた脇ゆうりかさんが振り返る。「放射線検知器を持っている人がいて、市内でスイッチを入れたらブザーが鳴りっぱなし。汚染マップを作らなければならないと、母親たちが測定を始めました」。市が線量測定に乗り出したのは5月下旬。国の除染基準(毎時0・23マイクロシーベルト)を超える線量が多くの場所で測定された。  放射性物質は放射性プルーム(雲)の通過によって拡散した。環境省は最大で東北、関東の8県104市町村を「汚染状況重点調査地域」に指定した。  「関東ネット」の共同代表を務めている脇さんはこう話す。「どうすればヨウ素剤を入手できるのかとの問い合わせが各地から来ています。原発事故による災害について改めて考える機会にもなっています。5県43グループの母親たちがつながって行政に子どもの健康追跡調査などを要望してきましたが、6年半たった今できることとして配布運動は広がっていくと思います」 5キロ圏外も事前配布、国に促す  松戸市の配布会には3人の医師が駆け付けた。原発事故当時、福島県郡山市で整形外科医院を経営していた種市靖行さん、島根大医学部の野宗(のそう)義博特任教授、鹿児島市で内科クリニックの院長を務める青山浩一さんだ。  青山さんは地元で来院者の求めに応じてヨウ素剤を配ってきた。「震災後、鹿児島にも福島県や近隣県から住民が避難してきました。11年の年末に、一時帰省する人に『ヨウ素剤を入手したい』と依頼され、薬問屋から購入してお渡ししたのが最初です」  鹿児島の住民の間では現在、放射性物質への不安感が募っている。15年に九州電力川内原発が再稼働し、16年4月の熊本地震の際は九電が原発を止めることなく「安全宣言」をしたためだ。「北朝鮮のミサイルが原発周辺に落ちる可能性はゼロとは言い切れません。やはりヨウ素剤の事前配布は必要です」。青山さんは被ばくリスクが頭から離れない。  一方、国の原子力災害対策指針は万全の備えとは言い難い。原発から5キロ圏内の住民にはヨウ素剤を事前配布することになっているが、5~30キロ圏では保管所に備蓄し、事故後に配布するのを基本としている。青山さんは「希望する人には、30キロ圏外も含めて配布すべきだと考えます」と国に方針変更を促す。30キロ圏外で備蓄済みの自治体は兵庫県篠山市などごくわずかだ。  青山さんのクリニックでは、来院者が求めれば実費でヨウ素剤を配布している。金額は1丸(1錠)当たり5・6円(税込み)。13歳以上の場合、1日に1回2丸飲む必要があり、11・2円になる。3日間の屋内退避に備えるならば33・6円。  副作用の発生率は「0・0001%」「インフルエンザ予防接種の20分の1」などと言われるように低い数値だが、服用には医師の指導が必要だ。  種市さんも「東電福島第1原発事故の影響は30キロ圏を超えて広範囲に及んでいるのに、ヨウ素剤の事前配布が狭い範囲に限定されているのは不思議なこと。実態に合わせて、住民の不安に応えるべきです」と訴える。種市さんは整形外科医だが、原発事故以降は周囲の声に応える形で福島県の資格を取り、甲状腺検査も行っている。  野宗さんは甲状腺外科医として旧ソ連の核実験場があったカザフスタンで被ばく者の診療に当たった経験を踏まえ、こう警告する。「大きな原発事故があった時、住民に誰がヨウ素剤を配るのでしょうか。間違いなく混乱が起きる。だから事前配布が必要なのです」  事前配布にこだわるのは、ヨウ素剤の効果と服用時間には関係性があるからだ。日本医師会のガイドブックによると、被ばくの24時間前に服用すれば放射性ヨウ素を90%以上阻止する効果がある。だが、8時間後は阻止効果が40%に低下する。  この国の行方を左右する衆院選で、原発政策に関心を持つ有権者は何を判断基準にすればいいのだろう。  チェルノブイリ原発事故で被ばくした子どもらの支援活動や福島第1原発事故の取材を続ける広河さんは「二つの事故で共通するのは、政治家を含めて誰も自分たちの身を守ってくれないということ。原発政策については、立候補者が何を訴えているかではなく、有権者の命を守るために何を実行してきたかを見極めてほしい」と話す。  ヨウ素剤の事前配布は、住民や医師らのボランティアに任せるのではなく、国や自治体が責任を持って進めるべきではないか--。原発の再稼働を進めるのならば、国政選挙で議論されなければならないはずだ。  「DAYS救援アクション」は安定ヨウ素剤の自主配布の進め方などを記した「簡単ガイドブック」(1部300円、送料110円)を販売している。問い合わせはメール(daysaction@daysjapan.net)で。  ■ことば 甲状腺  喉にあるチョウのような形の臓器で、新陳代謝や成長に欠かせないホルモンを作る。海藻類などに含まれるヨード(ヨウ素)を養分にしているが、原発事故で放出された危険な放射性ヨウ素を見分けられず、吸収してしまう。大量に被ばくすれば甲状腺がんなどにつながる恐れがある。一方、あらかじめ安定ヨウ素剤を飲んで甲状腺を飽和状態にしておけば、放射性ヨウ素が入り込むのを予防できる。    

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