内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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2015年6月

エートス運動のジャック・ロシャール氏も「1マイクロシーベルト/時以上は危険」

 エートス運動のジャック・ロシャール氏も「1マイクロシーベルト/時以上は危険」と日本政府に講演していました。これは、2011年11月28日、内閣府に対して行われた「原子力災害後の生活環境の回復 チェルノブイリから学ぶこと」と題する、エートス運動のジャック・ロシャール氏の講演資料にはっきりと紹介されています。  題名は「ある村で採用された外部被ばくのための放射線メモリ」です。原子力規制委員会の被災者支援チームはこの資料に「母親たちが決めた放射線量の目安」と題名をつけました。しかし、この資料はロシア語のままで日本語訳されていませんでした。吉田由布子さんが日本語訳され、2015年6月21日「やっぱり支援法でしょ!原発事故子ども・被災者支援法3週年シンポジウム」で紹介されたものを、一部川根が編集したものです。  チェルノブイリでは年間1ミリシーベルト以上には移住権利があります。土地汚染でセシウム137で18万5000ベクレル/m2、土壌なら2846ベクレル/kg以上の場所です。空間線量ならば0.66マイクロシーベルト/時以上です。 資料『チェルノブイリ事故の際の放射能汚染の区分(土地) 改訂版 pdf付き』  日本政府では年間50ミリシーベルト未満に福島県住民を帰還させようとしています。2017年3月末までに。緩慢な殺人であると思います。 資料『セシウム137が母親ー胎児系に与える影響 ユーリ・I・バンダジェフスキー 』  日本政府、福島県、各自治体の高放射能汚染地帯への住民帰還政策を撤回させましょう。          

沖縄の高校生の詩(島言葉) 2015年6月23日 糸満市

みるく世ゆがやゆら 与勝高校三年(よかつこうこうさんねん)  知念 捷(ちねん まさる) 2015年6月23日 那覇市 沖縄慰霊の日 式典にて   みるく世がやゆら 平和を願った古の琉球人が詠んだ琉歌が私へ訴える 「戦(いくさ) 世(ゆ)済(し)まち みるく世(ゆ)ややがて 嘆なじくなよ 臣下(しんか)命(ぬちど)宝(たから)」 七〇年前のあの日と同じように 今年もまたせみの鳴き声が梅雨の終りを告げる 七〇年目の慰霊の日 大地の恵みを受け大きく育ったクワディーサーの木々の間を 夏至(かーちー)南風(べー)の湿った潮風が吹き抜ける せみの声は微かに風の中へと消えてゆく クワディーサーの木々に触れせみの声に耳を澄ます みるく世がやゆら 「今は平和でしょうか」と私は風に問う 花を愛し踊りを愛し私を孫のように愛してくれた祖父の姉 戦後七〇年再婚をせず戦争未亡人として生き抜いた祖父の姉 九十才を超え彼女の体は折れ曲がりベッドへと横臥する 一九四五年沖縄戦彼女は愛する夫を失った 一人妻と乳飲み子を残し二十二才の若い死 南部の戦跡へと礎へと 夫の足跡を夫のぬくもりを求め探しまわった 彼女のもとには戦死を報せる紙一枚 亀甲墓に納められた骨壺には彼女が拾った小さな石 戦後七〇年を前にして彼女は認知症を患った 愛する夫のことを若い夫婦の幸せを奪ったあの戦争を すべての記憶が漆黒の闇へと消えゆくのを前にして彼女は歌う愛する夫と戦争の記憶を呼び止めるかのように あなたが笑ってお戻りになられることをお待ちしていますと 軍人節の歌に込め何十回何百回と 次第に途切れ途切れになる彼女の歌声 無慈悲にも自然の摂理は彼女の記憶を風の中へと消してゆく 七〇年の時を経て彼女の哀しみが刻まれた頬を涙がつたう 蒼天に飛び立つ鳩を平和の象徴というのなら 彼女が戦争の惨めさと戦争の風化の現状を私へ物語る みるく世がやゆら 彼女の夫の名が二十四万もの犠牲者の名が 刻まれた礎に私は問う みるく世がやゆら 頭上を飛び交う戦闘機クワディーサーの葉のたゆたい 六月二十三日の世界に私は問う みるく世がやゆら 戦争の恐ろしさを知らぬ私に私は問う 気が重い一層戦争のことは風に流してしまいたい しかし忘れてはならぬ彼女の記憶を戦争の惨めさを 伝えねばならぬ彼女の哀しさを平和の尊さを みるく世がやゆら せみよ大きく鳴け思うがままに クワディーサーよ大きく育て燦燦と注ぐ光を浴びて 古のあの琉歌(うた)よ時を超え今世界中を駆け巡れ 今が平和でこれからも平和であり続けるために みるく世がやゆら 潮風に吹かれ私は彼女の記憶を心に留める みるく世の素晴らしさを未来へと繋ぐ

放射線管理区域4万ベクレル/m2以上に汚染された市町村マップ

 沢野伸浩氏(金沢星稜大学女子短期大学部教授)が、放射線管理区域4万ベクレル/m2以上に汚染された市町村マップを作られています。これは、以下のサイトに紹介されています。 Glocal Collegeへようこそ!NPO法人基盤地図活用研究会と協働のページ  日本における「放射線管理区域」とは以下を超える区域を言います。 ①外部放射線については3ヵ月で実効線量が1.3ミリシーベルト ②空気中の放射性物質濃度については3ヵ月で限度の10分の1 <例>ヨウ素131ならば100ベクレル/m3 ③放射性物質によって物の表面が汚染されている場合はアルファ線を出す場合は4000ベクレル/m2、アルファ線を出さない場合は4万ベクレル/m2 <例>セシウム134、セシウム137だけならばアルファ線を出さず、ベータ線とガンマ線を出します。ですから表面汚染は4万ベクレル/m2となります。 ④外部被ばく(①の場合)と内部被ばく(②の場合)とが複合する場合は線量と放射能濃度のそれぞれの基準値に対する比の和が1 <例>3ヵ月で0.625ミリシーベルト(1.3ミリシーベルトの半分)とヨウ素131が50ベクレル/m3(100ベクレル/m3の半分) ー放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科学技術庁告示第五号)最終改正 平成二十一年十月九日 文部科学省告示第百六十九号 第四条  つまり、セシウム134、セシウム137だけを考えると、合計4万ベクレル/m2以上汚染された地域が「放射線管理区域」になります。ここは、人工放射線を取り扱う作業所などにおいて、特に放射線レベルの高い場所なので、一般公衆の立ち入りを禁止しています。また、「放射線管理区域」内では18歳未満の就労が禁止されています。したがって、18歳未満の就学も禁止されると考えるべきでしょう。  以下は、沢野伸浩氏が文部科学省の「航空機測定データ」から単純に40,000ベクレル以上の値を抽出し、その値を赤い点として地図上に重ねてみたものです。また、現在公開されているIDW内挿値のメッシュ間隔は、220m~270m程度ですので、平均的には1点が6.3ha程度の範囲の代表値とみなすことができます。汚染地図の下の一覧表は該当する点にこの面積をかけることで、その面積の概算を行ったものです。                                                                                                            ただし、文部科学省の「航空機測定データ」は航空機を使って地表から出てくるガンマ線をキャッチして推測したものに過ぎません。実際に土壌中の放射性物質を測定した「生データ」ではありません。コンクリート・ジャングルである東京都では、まったくセシウム137で4万ベクレル/m2汚染された場所がまったくないかのようになってしまっています。これは東京都の学校や公園の土壌が4万ベクレル/m2以上汚染されていても、周囲のビルやアスファルトの道路がそれよりずっと低い汚染になっているため、上空を飛ぶ航空機がキャッチするガンマ線は、それらの汚染度が平均化され、低い数値となって現れるためです。ホット・スポットを隠す測定方法です。  上記の赤く塗られた「放射線管理区域」はほんの一部でしかないことに注意する必要があります。「放射線管理区域」は18歳未満就学禁止。つまり、この赤い地域のすべての小中高校は閉校し、安全な場所で子どもたちが学べるようにするべきです。

セシウム137が母親ー胎児系に与える影響 ユーリ・I・バンダジェフスキー

[初稿]2015年6月19日 [追記]2019年8月29日 放射性セシウムが母体に蓄積すると引き起こされるホルモンバランスの異常とその結果 川根眞也 2019年3月21日 https://drive.google.com/file/d/1x1V4U-WZfV7ndPPs86DfGa4nEKbh5kse/view?usp=sharing [解説]  政府は2015年6月12日、福島県の居住制限区域(年間50ミリシーベルト以下)および避難指示準備区域(年間20ミリシーベルト以下)を2017年3月までにすべて解除し、住民を強制的に帰還させる方針を決定しました。  さらにこれを補完すべく、福島県は2015年6月15日、2017年3月で、自主避難者への住宅支援事業の打ち切る方針を決定しました。  また、政府は2015年6月17日、全町避難が続いている楢葉町をお盆前の2015年8月に避難指示解除する方針を明らかにしました。  これは、住民の緩慢な殺人を意味する決定だと思います。  チェルノブイリ原発事故後、放射性セシウムが母親と胎児にどのような影響を与えたのか?そして、現在もどのような影響を与え続けているのか?ベラルーシ共和国ゴメリ医科大学学長(1990年~1999年)であった、ユーリ・I・バンダジェフスキー教授の『放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響 チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実』(久保田護 訳 合同出版 2013年4月1日)から、その主要な部分を抜粋し、紹介します。  同時にヤブロコフ、V・B・ネステレンコ、A・V・ネステレンコ、プレオブラジェンスカヤ著『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店 2013年4月26日)からも、妊娠異常と子どもたちの性的発達不全の部分を抜粋し、紹介します。  空間線量で何ミリシーベルト以下では安全などという、砂上の楼閣の議論はやめにしましょう。ウクライナ、ロシア、ベラルーシの人びとの苦難に学び、より良い選択をすべきだと考えます。                          2015年6月19日記 川根 眞也 放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響 チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実 ユーリ・I・バンダジェフスキー 著 久保田護訳 2013年4月1日    以下は、ユーリ・I・バンダジェフスキー著 久保田護訳『放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響 チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実』合同出版の抜粋である。一部、わかりやすくなるように文章を簡略化したところがある。〔編集者〕  1.1 チェルノブイリ原発事故以前のベラルーシ共和国の放射能汚染と人口統計の状況  ベラルーシ共和国では最近、死亡率が出生率の1.6倍になっているが、戦争や疫病といった人類がもっとも困窮したときでも、このようなことはなかった。       pp.7  1994年から2008年にかけて、ベラルーシの人口は60万7400人も減少した。これは総人口の5.6%も減少したことを意味する。15歳以下の子どもは2000年から2009年のあいだに29万も減った。 pp.9  2000年から2008年にかけて、ベラルーシ共和国では先天性奇形や発育異常のある新生児の数が10万出生につき、359.5から558.7に増加した。 pp.9  ベラルーシ共和国の人びとの生殖に重大な問題が生じていることを、先天性奇形の増加と出生率の低下が示している。このことと、死亡率の加速的な増加によって、人口が破局的に減少していることが説明できる。 pp.9  ベラルーシでは疫学的にみて非常に多くの先天的障害児が生まれている。先天的奇形の新生児が、ベラルーシ共和国のとくにチェルノブイリ原発事故の汚染地域で増えていることについては、明確だ。しかし、このことは原子力ロビーと旧ソ連の代議士、ベラルーシ共和国の議員たちにとって、都合の悪いものだった。そこで、遺伝学者であり、奇形学のG・I・ラジューク教授の先天性・遺伝性研究所を閉鎖してしまった。ベラルーシには現在、先天性疾患の発生原因に関する問題に十分な対応ができる学術組織が存在しない。原子力ロビーにとっては、政府に医学的知識がない方が好都合なのだ。 pp.10  国際原子力機関(IAEA)は、世界保健機関(WHO)を長年にわたって牛耳ってきた。そして、1959年、放射線被曝が人びとの健康に与える影響に関するデータは存在しないという協定を、WHOに押し付けた。世界中のすべての人びとの健康と生命よりもこの協定の方が大事なのだろうか。 pp.10 1.2 放射性セシウムが体内に取り込まれる条件での女性生殖器官の病態  女性の体内でセシウム137濃度が40Bq/kgを超えると、月経周期のさまざまな時期で性ホルモン産生の逆転が起きることが明らかとなった。これらの女性ホルモンの産生異常は、女性生殖器の病気の原因となるだけでなく、不妊症の原因にもなる。女性ホルモンが正常に分泌されていれば、妊娠中のプロセスや母体と胎児とのあいだに起きる相互作用に対応するため、子宮粘膜と女性生殖器の準備態勢を整えることができる。しかし、女性ホルモン産生異常があれば、子宮粘膜と女性生殖器の準備態勢を整えることができず、不妊症になってしまう。 pp.12  体内のセシウム137濃度が50Bq/kg以上になると、若い女性に起きる性ホルモンの産生異常は顕著になる。体内のセシウム137濃度が50Bq/kg以上の場合、検査した女性6人に1人に排卵が見られなかった。このように、放射性セシウムが体内に取り込まれると、その影響で月経周期の黄体期不全と無排卵症が起きる。これらはホルモン産生の制御プロセスにおける異常を反映している。結論として、無排卵症と黄体期不全により、不妊症となる。放射性物質の汚染地域で出生率が低下している主な原因のひとつは不妊症であると私たちは考えている。 pp.15  セシウム137による土壌汚染が55万5000~148万ベクレル/m2と、常に放射性物質にさらされている環境で生活している少女たちがいる。この少女たちの体内の女性生殖器官は発達が遅れていた。調査を受けた少女たちの37%で二次性徴の発現が遅れ、81%の少女たちで月経周期の異常が見られた。脳下垂体性腺刺激ホルモンの分泌機能異常が39%の少女たちに指摘された。31.5%の症例ではステロイドホルモンの産生障害(糖質コルチコイドホルモンの生合成の障害)も指摘された。調査の結果、放射能汚染地域に住む少女たちに内分泌機能の低下があることが明らかになった。されに生殖機能の調節障害も示された。 pp.15  性成熟の障害の程度と放射線の被曝量とのあいだには相関関係があることが明らかにされている。この知見は動物実験でも確認された。餌を通じて妊娠中の母親の体内にセシウム137が取りこまれると、仔の生殖器官の発育が障害される。具体的には、セシウム137で体内汚染された母親から生まれた仔の卵巣では、思春期に成熟卵胞が有意に少なくなっており、閉鎖卵胞は対照よりも増えていることが明らかになった。その実験動物の仔の卵巣では、成熟卵胞と機能中の黄体が併存していた。さらに、卵管と子宮の粘膜の形成にも遅れが生じていた。 pp.15 1.4 放射性セシウムがもたらす突然変異誘発作用  体重1gあたり27000Bqのセシウム137を雄ラットに経口的に一度に投与した。すると、投与210日から230日後に、雄ラットの生殖細胞内で一価染色体と染色体断片が統計的に有意に増加した。このセシウム137を投与した雄ラットを正常な雌ラットと交配させた。すると、子宮着床前と着床後の両方で子宮内の胎児の死亡が増加した。この研究者たちはセシウム137を投与した雄ラットの体内で、ゲノムに病的な変化が起きたことが影響して胎児の死亡が増加したと考えている。 pp.18  R・I・ゴンチャロワとN・I・リャボコニの研究では、放射性物質の汚染地域で育てた食物を実験用の雄マウスに与えて飼育した。すると、雄マウスの体内では放射性セシウムの濃度が853Bq/kgと1103Bq/kgに達した。その結果、雄マウスの生殖細胞と骨髄細胞では染色体とゲノムの突然変異が増加した。 pp.18  セシウム137で汚染されたゴメリ州の郡部に7~8年のあいだ居住した後、ミンスク市に移住してきた子どもたちの末梢血のリンパ球では、ニ動原体染色体と環状染色体の頻度が高かったことが確認されている。これらの染色体異常は、放射線被曝によって起きる不安定型染色体異常の指標として知られている。 pp.19  チェルノブイリ原発事故の非常事態が収束した後、発育奇形の数がベラルーシ全土で急激に増えてきた。それには多発性発育奇形、手足の縮小奇形、多指症の頻度が大きく寄与している。これらの発育奇形には優性突然変異が大きく寄与している。  単発性や多発性の先天性奇形の発生率の分析結果から、土壌汚染が55万5000ベクレル/m2の郡では、1997~1998年のあいだに生まれた子どもたちの奇形発生率が対照群よりも高いことが示された。 pp.19 1.5 妊娠中および授乳期間中の放射性核種の体内取り込みの特徴  放射性セシウムの体内への蓄積過程は複雑で、今日でもいまだに十分な研究がなされていない。筆者らは、体内の放射性セシウムの濃度が、性別や年齢、からだの生理的状態、臓器や組織の構造、またはそれらの代謝の性質、さらにRh式赤血球表面抗原によっても影響を与えることを明らかにした。同一の餌を与えても、雌の方が雄よりも放射性セシウム濃度が低くなる。 pp.20  しかし、妊娠は特殊な生理現象であり、母親の消化管で放射性セシウムが多量に吸収される。哺乳類では、動物でもヒトでも、放射性セシウムの大部分は、胎盤で吸収されてしまい、胎児の体内にはほとんど取り込まれない。しかし、妊娠中の病気や胎児の発育によっては、発育中の胎児の臓器で放射性セシウムの濃度が高くなることもありうる。 pp.20  子宮内で発育期にセシウム137の影響を受けた仔ラットは、自分で餌を摂るようになると、餌の中の放射性セシウムをより多く体内に取り込むようになる。 pp.22  血液型がRh+の人びとはRh-の人びとよりも放射性セシウムを多く体内に取り込むことが、筆者らの研究で明らかになった。胎盤の放射性セシウム濃度も、Rh-の女性の方がRh+の女性よりも統計的に有意に低かった。放射性セシウムの膜構造への結合に関する研究を考察すると、赤血球表面にRh因子を提示する抗原決定基が、体内への放射性セシウムの取り込み過程に関与している可能性が考えられる。 pp.22 1.7 胎盤の放射性セシウムの取り込み  胎盤は妊娠時に出現するもっとも重要な一時的器官であり、胎児の発育を支えている。ヒトと多くの哺乳動物、とくにげっ歯類の胎盤は、血絨毛型の構造を持つ。血絨毛型胎盤を持つ動物では、母親のからだと発育中の胎児組織のあいだに血管系を介して緊密な関係が築かれる。母親と胎児の両方の内分泌系、神経系、免疫系、造血系などの重要な器官系によって母親と胎児のあいだの関係が調節されている。 pp.36  母親の血液の細胞は、栄養膜構造を通って胎児の体内に入り、また胎児の血液の細胞も母親の体内に入る。胎児の赤血球の30%は、常に母親の血液中を循環していることが証明されている。胎児のリンパ球もまた母親の血液中で記録される。胎児は胎盤を介して母親から免疫担当細胞と免疫グロブリンを受け取る。筆者らは1994年に仮説を提出した。母親の免疫担当幹細胞が胎盤障壁を通過して胎児に入り、母親と胎児の液性免疫の連関が形成されるという仮説である。 pp.36  ヒトでも、放射性セシウムは胎盤障壁を通過してしまう。ヒトでは、胎児の放射性セシウムの濃度よりも胎盤の放射性セシウムの濃度の方が高いことに注目する必要がある。先天性奇形の胎児の場合では、放射性セシウム濃度が著しく高い。これは、胎盤の障壁機能が低下していることを意味しているかもしれない。ヒトでは、胎盤にセシウム137が蓄積すると、胎盤の機能が著しく変化する。胎盤のセシウム137濃度が100Bq/kgを超えると、妊娠の終わりが近づくにしたがい、中間絨毛が増加し、終末絨毛が減少した。絨毛は細胞栄養芽層で覆われ、間質は粗雑で結合織の細胞が増加していた。これはホルモン産生のプロセスを意味している。先天性奇形の胎児の胎盤では、絨毛間質と絨毛間腔への出血の形態をとる血液循環障害が顕著にみられ、限局性の小梗塞巣も認められた。 pp.37 1.8 放射性セシウムを取り込んだ母―胎児系の内分泌の相互関係  妊娠した女性の体内にセシウム137が取り込まれると、発育中の胎児で大きなホルモン分泌の変化が起きる。胎盤の放射性セシウム濃度が高くなると、胎児の臍帯血エストラジオール濃度が著しく低下することが示された。また、同時に胎児の臍帯血テストステロン濃度は顕著に高くなった。胎盤の放射性セシウム濃度が高くなると、母親の血中甲状腺ホルモン濃度(サイロキシンとトリヨードサイロニン濃度)が明らかに高くなった。同時に、母親の血中コルチゾール濃度ははっきりと増加した。反対に、胎児の臍帯血中コルチゾール濃度は低下した。 pp.38  このように、母親―胎児系にセシウム137が入り込むと、何よりもまず、発育中の胎児に顕著なホルモン濃度の変化が起きる。副腎皮質にセシウム137が強く取り込まれることが注目される。セシウム137が取り込まれると、ミトコンドリアの酵素系に機能障害が起きる。セシウム137が副腎皮質のホルモン産生細胞に悪影響を与えるため、男性ホルモンのテストステロンの産生が増加し、女性ホルモンのエストラジオールが減少するとも考えられる。この仮説ではまず、副腎皮質の主要なホルモンであるコルチゾールの正合成が障害される。この状況が、下垂体副腎皮質刺激ホルモンの産生増加に拍車をかけ、副腎皮質の細胞を刺激してテストステロンの過剰産生を招く。副腎皮質の先天性機能不全の状態が起きる。これは以後の子どもの発育に間違いなく悪影響を与えるだろう。放射性セシウムの影響で起きる子どもたちの内分泌状態の逆転は、子どもたちの性的な発達の異常と外部環境に対する生後の適応障害を引き起こす主な原因のひとつであると筆者らは考えている。そして、子どもたちが成長してから内分泌系、神経系、免疫系や、ほかの多くの器官系の病気になるのは、セシウム137の影響で胎児期からホルモン産生が異常になっていることが基礎にあると考えられる。 pp.40 ヤブロコフ、V・B・ネステレンコ、A・V・ネステレンコ、プレオブラジェンスカヤ『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店 2013年4月26日より 5.6 泌尿生殖器系の疾患ベラルーシ 被ばくした親のもとに生まれた10歳から14歳の女児に、1993年から2003年にかけて性成熟の有意な遅れが見られた(National Belarussian Report,2006)pp.92 大惨事後、2000年までに重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上)で生まれた子どもは、相対的に汚染度が低い地域で生まれた子どもより生殖器の障害が多かった。その差は女子で5倍、男子は3倍である(Nesterennko et al.,1993) pp.93  チェルノブイリ事故によって、セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上重度に汚染された地域では、コルチゾール、サイロキシン、プロゲステロンといったホルモンの機能不全に関連した性的および身体的な発達異常のある子どもが増加した(Sharapov,2001;Reuters,2000b) pp.93  ゴメリ州チェチェルスク地区における生殖器の発達異常および性的発達異常と、地域の放射能汚染値(18万5000~295万ベクレル/m2)とには相関が見られた(Kulakov et al.,1997)  pp.93 若い男性のインポテンツと地域の放射能汚染値には相関が認められた(Shilko et al.,1993) ウクライナ 汚染地域の子どもに泌尿生殖器系の疾患が増加し、1987年に1000人あたり0.8例だった発生率が2004年には22.8例になった(Horishna,2005)  pp.93  放射能汚染地域(セシウム137で3万7000ベクレル/m2以上)の少女たちは思春期の発来が遅く(Vovk and Mysugyna,1994)、汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)に住む1017人の女児および十代の少女のうち、11%に性成熟の遅れが見られた(Luk’yanova,2003) pp.94  ストロンチウム90とプルトニウムに汚染された地域では、思春期の発来が男子で2年、女子で1年遅れた。セシウム137で汚染された地域では性的発達の早発が見られた(Paramonova and Nedvetskaya,1993) pp.94  ジトーミル州の汚染度の高い地域では第二次性徴の開始が遅れ、女子における第二次性徴の期間が標準より長くなっている(Sorokman,1999) pp.94  1986年に未成年で被ばくした女性は、被ばくしなかった女性に比べて出産時の問題が著しく多い(Nyagy,2006) pp.94  1986年に未成年で被ばくした女性が産んだ新生児は、被ばくしなかった女性が産んだ新生児に比べて身体障害の発生率が2倍に達する(Nyagy,2006) pp.94  大惨事後8年間にわたり、汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)で1万6000人の妊婦を対象に行われた調査の結果、次のことが明らかになった。すなわち、腎疾患の罹患率が12%から51%に上昇、羊水過少症が48%、新生児の呼吸器疾患が2.8倍、早産がほぼ2倍に増加。また、妊娠30週から32週という通常より早い時期に胎盤の劣化(胎盤の老化現象)が見られた(Dashkevich et al.,1995) pp.94  十代の少年少女における慢性腎盂腎炎、腎臓結石、尿路疾患の発生率と、居住する地域の汚染度に相関が見られた(Karpenko et al.,2003) pp.94  汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)では月経周期障害と診断される患者が多く(Babich and Lypchanskaya,1994)、月経障害の症例数は大惨事の3倍になった。大惨事に続く数年間は月経過多が多く、5,6年後には月経の回数減少や月経停止が多かった(Gorptchenko et al.,1995)被ばくし、検診を受けた1017人の少女の14%に月経障害が見られた(Luk’yanova,2003;Dashkevich and Janyuta,1997) pp.94  女性リクビダートルと汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)に住む女性における胎盤の発育異常や変性は、胎盤に取り込まれたセシウム137の量と相関があった。観察された変化には、胎盤の厚さの不均等や線維瘢痕形成、のう胞、石灰沈着、未梢絨毛間質の未分化、未熟な線維芽細胞などがあり、結果として新生児の低体重につながった(Luk’yanova,2003; Luk’yanova et al.,2005;Ivanyuta and Dubchak,2000;Zqdorozhnaya,1993) pp.94  大惨事後8年から10年で、避難者と汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)の住民に、自然流産や妊娠後期における妊娠中毒症、早産その他、妊娠にまつわる異常の発生頻度が有意に増加した(Grodzinsky,1998;Golbchykov et al.,2002;Kyra et al.,2003) pp.95 汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)に住む妊婦のうち54.1%に子癇前症、貧血、胎盤の損傷が見られた(対照群は10.3%)。78.2%は出産時に合併症と過多出血を経験したが、これは対照群の2.2倍だった(Luk’yanova,2003;Sergienko,1997,1998) pp.95  キエフ州の重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上)では流産が特に頻発した(Gerasymova and Romanenko,2002)。汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)では自然流産のリスクが他の地域より高い(Lipchak et al.,2003) pp.95  重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2以上)に住む少女は、流産や妊娠合併症、再生不良貧血、早産の可能性が他の地域より高い(Horishna,2005) pp.95  大惨事に続く7,8年間、リクビダートルの約30%に性機能障害と精子の異常があった(Romanenko et al.,1995b) pp.95  検査を受けたリクビダートルの42%で精子数が最大53%減少し、可動精子の割合が低下しただけでなく(対照群70~75%に対して35~40%)、死滅精子の数も増加した(対照群25%に対して最大70%)(Gorptchenko et al.,1995)。 pp.95 <編集者注>   かのチェルノブイリの国では、放射性物質の種類によって人体への危険度を考え、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム238,239,240の土壌汚染それぞれ汚染度合によって、強制避難、移住、移住権利、放射線管理区域が設定されています。  日本のようにガラスバッヂのような、不確かで定量化できないものを使った、放射線管理はしていません。  政府が言う、年間20シーベルトの区域は空間線量3.8マイクロシーベルト/時の地域です。以下のNUMO(核のゴミの最終処分場を探していた機関) フェロー河田東海夫氏の2011年5月24日の資料では、セシウム137で重度汚染地域(セシウム137で55万5000ベクレル/m2)の空間線量率は2マイクロシーベルト/時である、と示されています。汚染地域(セシウム137で18万5000ベクレル/m2以上)の空間線量率は0.66マイクロシーベルト/時です。いずれも地上1mでの値です。年間20ミリシーベルトに福島県住民を帰還されるとはどういうことか?上記の文章をすべて、 55万5000ベクレル/m2→空間線量2マイクロシーベルト/時 18万5000ベクレル/m2→空間線量0.66マイクロシーベルト/時 放射線管理区域3万7000ベクレル/m2→空間線量0.13マイクロシーベルト/時 として、読み直してみて下さい。いかにこの原発20km圏内+高放射能汚染地帯に住民を帰還させることが「緩慢な殺人」を意味するものであるか、明らかになると思います。                             土壌汚染問題とその対応 河田東海夫(NUMOフェロー) 2011年5月24日    

講演会『原発事故から4年!今こそ低線量被ばくの危険を問う』7/18(土)13時弘明寺

[ 2015年7月18日; 1:00 PM to 4:00 PM. ] 講演会『原発事故から4年!今こそ低線量被ばくの危険を問う』  安倍内閣は福島県の帰還困難区域を除くすべての避難地域の指定解除を2017年春までに行うことを発表しました(6/12)。慰謝料の支払いも終了し、帰還を促進するとしています。次々と避難指示区域が解除され帰還が強要されています。自主避難者への住宅補償も17年春までに終了を強行しようとしています。「年間20ミリシーベルトまで安全」として高線量地域に住民を帰還させる、まさに棄民政策を推進しています。あたかも、原発事故は終わったかのような被災者切り捨て、被ばく強要が行われています。また、福島県健康管理調査の発表で126人の子どもたちが甲状腺がんであることも判明しました(5/18)。 「食べて応援」など福島だけでなく被ばくに対して全国で安全キャンペーンが繰り広げられています。 いまこそ、足元から低線量被ばくの危険性と向き合い、子ども支援法の実施に基づく完全な補償実現、放射能健康診断実現を、原発再稼働反対・廃炉実現と合わせ取り組んでいきましょう。この問題は福島だけでなく、全国民の課題です。講演では、4年を経過し、改めて被ばくの現実に焦点を当て検証します。 【日時】2015年7月18日(土) 13時~16時 【講師】川根 眞也(内部被ばくを考える市民研究会代表、埼玉県さいたま市中学校理科教諭) 【会場】大岡地区センター(神奈川県 地下鉄 弘明寺ぐみょうじ駅下車 徒歩5分 〒232-0061 横浜市南区大岡1-14-1) 【参加費】資料代500円 【主催】ZENKOかながわ実行委員会 【共催】放射能健康診断100万人署名実行委員会 放射線教育を考えるネットワーク 【連絡先】090-4207-9449 青島      zenkokanagawa@gmail.com

地域自治会防災講演会『もし原発事故がもう一度起きたらどうするか?』7/11(土)10時

[ 2015年7月11日; 10:00 AM to 12:00 PM. ] 地域自治会防災講演会『もし原発事故がもう一度起きたらどうするか?』 【日時】2015年7月11日(土)10時~12時 【場所】不動谷会館( 〒336-0932 埼玉県さいたま市緑区大字中尾105 – 6) 【講師】川根 眞也(内部被ばくを考える市民研究会) 【参加費】無料 【連絡先】小川満 090-7422-2002 【主催】駒前自治会

6/20(土)6月例会のお知らせ

[ 2015年6月20日; 6:00 PM to 9:00 PM. ] 6月例会のお知らせです。 日 時 6月20日(土) 18:30〜21:00場 所 浦和コミュニティセンター第6集会室(浦和パルコ10階)参加費 会員の方300円    一般参加の方600円    高校生以下は無料 テーマ 1.参加されたみなさんからの意見交流 ※ここの部分はツィキャスしません。      18:30~19:00     2.福島50ミリシーベルトまで住民帰還方針を自民党が決定。自主避難者の生活権の保障と放射線防護。 報告:川根眞也 19:00~19:30     3. 放射性物質排出講座~梅雨、汗のかきかた。トリチウムを効果的に出す~ 報告:堀本秀生 19:30~20:00      4.伊方原発の原子力規制委員会による合格証。狙われる川内原発の再稼働 報告:川根 眞也 20:10~20:25     5. 内部被ばくに関する最新情報 報告:川根 眞也 20:25~21:00       ツバメの巣からセシウム、東京都汚泥焼却からヨウ素131、他  ※例会の様子を 19:00pmからTwitcasting を使って生中継します。(プライバシー保護のため、18:30~19:00はツィキャスをしません。ご了承ください)内部被ばくを考える市民研究会のアカウントはこちらです。ぜひサポーター登録&通知設定をお願いします。  ※6月学習会。会員限定です。当日参加で会員になれます。 【日時】6月27日(土) 10時~12時。浦和PARCO 9階 コムナーレ。 【参加費】100円。6月例会の資料をお持ち下さい。資料は当日100円で販売します。 【お問い合わせ】entry.naibu@gmail.com 内部被ばくを考える市民研究会事務局 内部被ばくを考える市民研究会 Twitterアカウント @naibuhibakushimツイキャスURL http://twitcasting.tv/naibuhibakushim ツイキャスとは?ツイキャスは、iPhone、Android、パソコンからライブ中継を見る事ができ、見るだけではなく、自分で撮影した動画を配信する事も出来ます。まだ使った事がない方は、ヘルプページをご参照ください。 http://twitcasting.tv/indexhelp.php 中継を見逃しても、保存、公開されているものは、後日見る事も出来ます。例会ライブ履歴はこちらから見る事が出来ます。http://twitcasting.tv/naibuhibakushim/show/

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