2014年3月18日の原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉まとめ

 

呼びかけ: 原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、
原子力資料情報室、若狭連帯行動ネットワーク(事務局担当)

 2014年3月18日の原子力規制委員会(原子力規制庁)との交渉で明らかになったことを、今後のため、簡単にまとめておきましょう。

 第1に、新基準適合性検討の審査は事務局である原子力規制庁で実際行っており、審査の中身に
関する質問に対しては適切な判断の下、事務局で回答を作成していること、したがって、原子力規制委員会田中委員長宛に提出した今回の公開質問状に対しても、その回答作成は事務局に一任されてお
り、公開質問状を委員長や委員に見せることはあっても、回答について原子力規制委員会はもとより委員長や委員の決済、了承、確認などは一切受けていないことが明らかになりました。

 第2に、断層モデルでは耐専スペクトルと比べて地震規模が1/2以下で、地震動評価結果も1/2以下
になることについて、最初は「手法が違うので地震規模が違ってもしようがない」とうそぶいていましたが、北米中心のデータと国内データの違いによるものであることを理論的に追及されるや、「したがって、一つの手法だけじゃなくて二つの手法、いろんな手法を使って基準地震動を作っている」と述べ、事実上、逆断層以外の多くの場合、断層モデルが過小評価になっていることを認めました。しかし、実際には、最も重要な近距離の活断層に対して、耐専スペクトルは適用範囲外だとして用いられず、断層モデルで基準地震動が作成されているのです。これでは、断層モデルで地震動が過小評価されることを知った上で、断層モデルで基準地震動を策定しているということになります。こんな理不尽なことは許せません。

 第3に、原子力安全委員会の時代に、断層モデルの地震規模を松田式に合わせて断層モデルのほ
うを修正して地震動評価を行うと耐専スペクトルに合うという検討を行っていたのですが、規制庁はこれを知りませんでした。また、地震調査研究推進本部が警固断層の強震動評価を行う際に、松田式から地震規模を求め断層モデルをこれに合うように修正するレシピを提案して警固断層に適用していることを規制庁は知りませんでした。つまり、原子力安全委員会が行っていた断層モデルに関する検討結果が規制委員会に継承されていないこと、地震調査研究推進本部による断層モデルの修正レシピなど基本的な重要事項について調査・検討していないことが明らかになったのです。

 第4に、規制庁は当初、耐専スペクトルの適用範囲は極近距離以遠だと主張していましたが、規制委員会の審査会合において高浜3・4号では極近距離以遠で耐専スペクトルを求めていることを失念しており、鳥取県西部地震で震源断層直上の賀祥ダムの地震観測記録が耐専スペクトルに合うことを原子力安全委員会で確認していたことを知りませんでした。つまり、耐専スペクトルの適用範囲を極近距離以遠に限定できないことさえ認識していなかったことが明らかになったのです。

 第5に、活断層による地震規模を震源断層の長さから松田式で行うことについて、1995年の阪神・淡路大震災の直後に原子力安全委員会で検討し、断層長さと地震規模の平均的な関係は松田式でほぼ
表すことができ、国内外のデータに良く合うことが確認されていることを規制庁は知りませんでした。これは重大なことで、耐専スペクトルでは断層長さから松田式で地震規模を求めており、そうするのが地震学界では通説になっているのですが、これを断層面積に直す際に、北米中心のデータでは断層幅が日本国内より長いため断層面積が大きくなること、その結果、断層面積から地震規模を求める断層モデルでは国内の活断層に対して地震規模が小さくなることを規制庁は認識していなかったのです。

 第6に、2008年岩手・宮城内陸地震では地下地震計で1000ガルを超える地震動が観測されており、基準地震動と同じ解放基盤表面はぎとり波に直すと2000ガル近くになるのですが、これを耐専スペクトルに反映させるべきだと主張したところ、規制庁は「震源を特定せず策定する地震動」で検討していると回答してきました。しかし、「震源を特定せず策定する地震動」に関する審査会合の議論では、地域特性からそのような地震が起こらないという主張が通り、結果として考慮外に置かれているのです。耐専スペクトルへの反映は地域性とは無関係であり、マグニチュード、等価震源距離、地震観測記録、地盤情報があれば可能です。これを指摘すると、規制庁は黙りを決め込んだのです。

 第7に、川内1・2号では、通常の断層モデルとは異なり、地震規模から応力降下量などの断層パラメータを決めるのではなく、応力降下量を小さく固定してから地震規模を逆算していました。このため、見かけは地震規模が松田式で求めた値にほぼ等しいのですが、最初から応力降下量を小さく設定しているため、地震規模に対応した応力降下量の値よりかなり小さくなっていて、地震動評価結果が耐専スペクトルの1/2~1/3になっていることを指摘されると、規制庁は沈黙戦術へ戻り、地震規模は通常の断層モデルより大きいので保守的だと見当外れの回答に終始したのです。しかし、アスペリティの平均応力降下量が小さいためアスペリティ面積が異常に大きくなっていることについては認めざるを得ませんでした。つまり、規制庁は断層モデルの適用法も満足に知らな
いで使っていることが明らかになったのです。

 第8に、川内からの参加者が、国土交通省による川内原発近くの川内河口ボーリング図の中に12.5万年間に地層が-36.1m動いた証拠があること、周辺にある3本のリニアメントのうちの1本が敷地内に繋がっている可能性があることを指摘し、福島みずほ議員も活断層の調査を川内でも行って頂きたいと強く要望されました。規制庁は「持ち帰る」と約束しました。また、規制庁の川内出先に公開質問状を二つ提出し、「規制庁へ届ける」旨の確約があったのに,規制庁は見たことがないため、「帰ってどこにあるのか調べる」と約束しました。

 最後に、交渉での規制庁の回答があまりにズサンであり、回答者も基本的なことを知らずに黙り込む有様で、これでは話にならないため、川内1・2号の審査書案が完成する前にしっかり責任を持って回答できる人を出席させてセカンドラウンドをやりたいと提案し、「持ち帰って検討する」ことになりました。

資料『川内原発 原子力規制委員会の再回答拒否に厳重抗議し、地震動評価手法の至急見直しを求めます 2014年3月24日