内部被ばくについて、自主的に学習し、周りの方々に広めていくための会
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2019年5月

原発事故とがんの関連否定 子ども甲状腺の本格検査 2019年5月31日 佐賀新聞

原発事故とがんの関連否定 子ども甲状腺の本格検査 2019年5月31日 佐賀新聞  保護者に伴われ、甲状腺検査に向かう子どもたち=2011年10月、福島市の県立医大病院  東京電力福島第1原発事故後当時18歳以下だった福島県内全ての子どもを対象とした甲状腺検査で、2014、15年度に実施した2巡目の検査で見つかったがんと被ばくに関連性がないとする中間報告を、専門家による部会がまとめたことが31日、関係者への取材で分かった。被ばく線量が高いとがん発見率が上がるといった相関関係が認められないことなどが理由。福島市で6月3日に開かれる部会で報告する。  基礎データ収集が目的の1巡目と違い、2巡目は事故によるがんの影響を調べる「本格検査」と位置付けている。専門家による2巡目の見解が初めてまとまったことで、今後の検査の在り方に影響を与えそうだ。  関係者によると、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が県内59市町村ごとに推定した甲状腺被ばく線量を使い、がんが見つかった子どもの年齢や市町村と突き合わせて分析。約38万人を対象とした2巡目では52人のがんが確定し、19人に疑いが見られたが、線量の増加に従ってがん発見率が上がるという関連性はなかった。  対象者が全国に散らばり受診率が低下していることが課題となっており、各都道府県ががんのデータを集めた「地域がん登録」などを活用していく必要があるとした。  原発事故で放出された放射性ヨウ素は甲状腺にたまってがんを引き起こす恐れがある。福島県は、放射線の影響が表れる前に子どもの甲状腺の現状を把握するため1巡目となる「先行検査」を11~13年度に実施。101人ががんと確定したが、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と比べて被ばく線量が低いことなどから「放射線の影響とは考えにくい」とする中間報告を15年に発表していた。  昨年5月からは4巡目の検査が始まっている。これまでがんの確定は168人、疑いが43人に上っている。

2019年6月2日は、青森県知事選挙。核燃も、原発もない青森を!

facebook Yoshihito Hashimotoさんより。 2019年5月30日 騙されないで下さい!!!高レベル以外は、全て低レベル放射性廃棄物となります。 そして、100ベクレル/kg以下であったものを廃棄物管理が不可能とし8,000ベクレル/kg以下まで緩和させ一般廃棄物として扱われ再利用も可能になりました。 除染で集めたものをまた、大地に埋め戻すということを国家が行なっております。 放射性廃棄物は 一般廃棄物(8,000Bq/kg以下)以外、高レベル放射性廃棄物低レベル放射性廃棄物に区分けされ高レベル以外は、全て 低レベル放射性廃棄物とされます。 低レベル廃棄物管理施設も容量があり関電はむつ中間管理施設の使用を企む旨の記事が昨年、共同に報道され “青森県むつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設に関西電力が出資するとの報道に関し、宮下宗一郎市長は14日、開会中の市議会本会議で行政報告し、関電が事実関係を否定したことを明らかにした。 関電は市の質問に「あらゆる可能性を検討しているが、むつ市に使用済み核燃料を搬入する方針を固めたことや出資を検討している事実はない」と回答した。宮下市長は「一連の報道で市民が不安感や不信感を抱いたと思う。今後も毅然(きぜん)とした態度で取り組んでいく」と語った。 むつ市は報道があった3日以降、事実関係を調査していた。共同通信社が記事を配信し、河北新報社も掲載した。”https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201806/20180615_21039.html最終的には 報道の誤りと結論づけされました。 関電は“関電はこれまでに福井県を除く管内の自治体を延べ8700回以上訪問し、中間貯蔵施設設置への理解を求めた。ただ、現実的な選択肢はないに等しく、業界内では当初から、東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電が共同運営する中間貯蔵施設(青森県むつ市)への“相乗り”が有力視されていた。  むつ市の施設は国内で唯一、原発の敷地外に立地。東日本大震災後、東電と原電の原発が再稼働していない中、関電の使用済み燃料を置く余地は十分にあるとみられていた。 しかし今年6月、「関電がむつ市の施設に出資する方向で最終調整」との一部報道を受け、同市の宮下宗一郎市長が反発。関電幹部は当時、「どんな候補地であれ、地元同意を取り付けるまでに情報が公になれば話はまとまらない」と怒りをあらわにした。 これ以降、関電の選定作業にブレーキがかかったとみる向きもある。    ■  ■ 岩根社長は西川一誠知事との面談後、「県外立地」の基本路線は崩さない方針を示した。一方、業界関係者は「2年先まで猶予期間を設けたのは、福井県知事選を見越しての動きではないか」と推測する。 来年4月に迫っている県知事選は保守分裂の構図。県内の複数の自治体が過去に誘致に手を挙げていることに加え、知事が交代すれば「県内立地」の道が開ける可能性があり、関電に方針変更の余地があるとみているからだ。 業界関係者は「期限を2019年中としなかった点に関電の戦略を感じる」と話す。”https://www.sankei.com/economy/amp/181226/ecn1812260046-a.html 六ヶ所が満杯になれば低レベル廃棄物の行き場がなくなり“原発立地の廃棄物受け入れはしない”との確約違反となる。そのため、“むつ市の中間管理施設を”という算段であるのだろう。 いずれにせよ 青森県である。 三村知事は“三村県政 原子力との距離感 姿勢は「第三者的感覚」2019年5月13日 東奥日報2012年1月、旧民主党政権時代に都内で開かれた国の原子力政策大綱策定会議。出席した三村申吾知事に委員の一人が質問した。「高レベル放射性廃棄物最終処分地の受け入れを県民に納得してもらうのは難しいと感じているか」 行政・政治・選挙選挙 知事の顔色が変わった。  「全くあり得ないと何度も話している」「(最終処分地にしないという)これまでの約束をないことにするのか」。知事は机をたたいて強く反論した。  あれから7年。原子力問題を巡り、表舞台で知事がこれほど激しく自ら主張する場面は、まず見られなくなった。事業者の計画変更など重要な局面で対応するのは主に副知事だ。  核燃料サイクルの中核となる再処理工場、東通原発、大間原発、使用済み核燃料中間貯蔵施設。原子力規制委員会の審査長期化などから施設の稼働・本格的な工事再開がずれ込み、確かな先行きは見通せない。  「国策」の重圧を背負い、地域経済の疲弊に直面している立地市町村からは「知事の顔が見えない」「自分の言葉で原子力を語ることがない」という声が聞こえる。  昨年6月、関西電力がむつ市のリサイクル燃料貯蔵(RFS)に対し、使用済み核燃料中間貯蔵施設への搬入・一時保管を目的に出資する方向で調整している-との報道があった。  関電とRFSは公式ホームページなどで報道を否定するコメントを発表した。  直後の県議会。事業者に直接事情を聴いたむつ市の動きを受け、自民党会派の議員が「責任がある立場として県は直接事実確認をすべきだ」とただした。消極的な発言を繰り返す県エネルギー総合対策局長の答弁に業を煮やした議員は、知事の所見を求めた。知事は、いら立ちをにじませつつ「あるとか、ないとか言っていることに対して、なかなかコメントしづらい」と述べ、中身のある見解は示さなかった。  「県との関係。これはなかなか容易ではない。エネルギーの問題では、一緒に陳情に行ってくれといっても断られる」。今年2月、むつ市内で開かれた県議選関係の集会。宮下宗一郎市長はあいさつで「これはいったい何なんだ」と続け、不満を隠さなかった。  原子力施設を抱える下北半島の4市町村長は知事に、核燃料サイクル政策推進など国に対する要望活動への同行を求めているが、そうした場面はまだない。宮下市長は東奥日報紙取材に「ほかの政策では知事と市町村長が連携して要望するのに、原子力ではそれがない。疑問だ」と語った。  立地自治体から見れば、知事の姿勢は、原子力問題で前面に立つことを避けているようにすら映る。  だがそれは、国と事業者に対する知事の「適切な距離」だ-と、エネルギー関連部署を経験した県OBはみる。「あくまでも県は主体でなく協力者。安全を第一に考えると、一定の緊張関係を保ちながら国と事業者に責任を貫徹させなければいけない」と説明する。  反原発・反核燃を訴えてきた元県議の古村一雄氏は「県幹部から『知事は原子力政策について積極的推進ではない』と言われたことがある」という。こうした見方は複数から聞こえる。  今回の知事選の公約発表で、原子力事業に対する具体的な県の責任の果たし方を報道陣に問われた中で三村知事は、こう答えた。  「(原子力)規制庁も第三者機関かもしれないが、われわれも国と事業者に対して第三者機関的感覚でこれまで同様責任を果たしていく」  地域の命運に関わる原子力問題で「第三者機関的感覚」を基本姿勢とする知事。客観性に裏打ちされた冷静なトップ判断は大前提だ。だが、地元と共に立地を受け入れた県に今、当事者意識がどれほどあるのか-という立地地域の疑問、温度差は消えない。” と 茶を濁しただけの 言いなり三村知事… 青森は 核のゴミ捨て場ではない! 資料低レベル放射性廃棄物 濃度 濃度上限値報告書では、低レベル放射性廃棄物について、余裕深度処分、浅地 中ピット処分及び浅地中トレンチ処分の対象となる放射性廃棄物中の放射性 核種とその濃度上限値の推奨値が、それぞれ以下のように示されている。・余裕深度処分C-14(10 の 16 乗ベクレル毎トン) Cl-36(10 の 13 乗ベクレル毎トン) Tc-99(10 の 14 乗ベクレル毎トン) I-129(10 の 12 乗ベクレル毎トン) α核種(10 の 11 乗ベクレル毎トン)・浅地中ピット処分C-14(10 の 11 乗ベクレル毎トン) Co-60(10 の 15 乗ベクレル毎トン) Ni-63(10 の 13 乗ベクレル毎トン) Sr-90(10 の 13 乗ベクレル毎トン) Tc-99(10 の 9 乗ベクレル毎トン) Cs-137(10 の 14 [...]

参院茨城選挙区 立民公認 小沼氏が出馬表明 原発再稼働反対を明言 2019年5月28日 茨城新聞

参院茨城選挙区 立民公認 小沼氏が出馬表明 原発再稼働反対を明言 2019年5月28日(火)  茨城新聞 参院選茨城選挙区に立憲民主党公認で出馬表明した小沼巧氏(中央)と同党の枝野幸男代表(左)、難波奨二県連代表=水戸市内 立憲民主党は27日、今夏の参院選茨城選挙区(改選数2)に、新人で鉾田市出身の元経済産業省官僚、小沼巧氏(33)を公認候補として擁立すると発表した。小沼氏は水戸市内で記者会見し、日本原子力発電東海第2原発の再稼働の是非について「住民合意を含めた観点から反対の立場に立つ。官民それぞれの経験を生かし、茨城から原発ゼロに向けた第一歩を踏み出していく」と、再稼働反対を明言した。 会見に同席した枝野幸男代表は「(参院選の)1人区は安倍政権と一騎打ちの構図を作る。一方で複数区は、政党の持ち味の違いを発揮しないと全体のパイを拡大できない。茨城では各党が切磋琢磨(せっさたくま)する」と語った。一方、難波奨二県連代表は国民民主党県連や連合茨城と統一候補を協議してきた経緯を踏まえ、「協力関係をもらう各政党や連合と十分協議し、一本化や協力関係ができるよう努力する」と述べ、今週にも国民や社民、連合茨城に協議を要請する考えを示した。 枝野代表は小沼氏擁立について「原発発祥の地の茨城で、経産省出身でありながら原発ゼロを訴えることでリアリティーを感じてもらえる」と説明。立民公認での出馬を希望していた現職の藤田幸久氏(69)については、参院選比例区か衆院選小選挙区で処遇したいとの考えを示した。 小沼氏は清真学園高、早稲田大を卒業後、キャリア官僚として経産省に入省。通商政策課課長補佐などを務め、2017年の退官後は経営コンサルティング会社に勤めた。 同選挙区はほかに、再選を目指す自民党現職の上月良祐氏(56)、共産党新人で元県議の大内久美子氏(69)、無所属新人で前那珂市長の海野徹氏(69)が出馬を表明している。(三次豪) ■立民の現職・藤田氏 党の決定に従う 国民民主党から立憲民主党に移籍し、参院選茨城選挙区に立民公認での出馬を目指していた現職の藤田幸久氏(69)は、党本部の決定に従うとした上で、「小沼氏を一生懸命応援する。野党の貴重な1議席を守るため、頑張ってほしい」と話した。 自身の今後の対応については、「参院比例代表を含め、いろいろな選択肢の中で後援会と相談し、決めたい」と述べるにとどめた。

未臨界核実験 朝日小学生新聞 2018年10月18日

未臨界核実験とは 朝日小学生新聞 2018年10月18日  プルトニウムなどの核物質に爆発する直前まで強つよい力をかけて、その変化を観察する実験。爆発させないので、包括的核実験禁止条約(CTBT)には違反しないと、核保有国のアメリカやロシアは主張しています。古くなった核兵器の性能や安全性せいなどが確認できるとされます。 アメリカが去年の12月、西部ネバダ州の核実験場で、未臨界核実験をしていたことがわかりました。オバマ政権の下での2012年12月以来で、トランプ政権では初めて。通算28回目となりました。 【臨界前核実験とは】 1997年4月5日 中国新聞 夕刊  プルトニウムやウランが連鎖反応で次々と核分裂を起こす「臨界」に達する直前に実験を停止し、停止までの間に核物質のさまざまな反応や動きを調べる核爆発の模擬実験の一つ。過去数多くの核実験を繰り返してきたネバダ核実験場の地下約三百メートルに実験装置を持ち込み、数百キロの高性能火薬を爆発させて生じた衝撃波をプルトニウムに当てる。この結果を高性能コンピューターによる解析と組み合わせ、核兵器の安全性や信頼性を検証するのが目的。核物質は使用するものの核爆発は伴わないため、米政府は包括的核実験禁止条約(CTBT)に沿ったものと強調している。(4月5日付中国新聞夕刊)

米 2月に臨界前核実験を実施 トランプ政権で2回目 NHK NEWS WEB 2019年5月25日

米 2月に臨界前核実験を実施 トランプ政権で2回目 2019年5月25日 14時55分 アメリカがことし2月に核爆発を伴わない臨界前核実験を西部ネバダ州で行っていたことが分かりました。アメリカが臨界前核実験を行うのはおととしの12月以来で、トランプ政権では2回目です。 アメリカ・エネルギー省が所管するローレンス・リバモア国立研究所は24日、西部ネバダ州の核実験場でことし2月13日に臨界前核実験を行ったことを明らかにしました。 「エディザ」と名付けられた今回の実験では、プルトニウムを反応させるために高性能爆薬を使用し、核分裂の際のデータを測定したということで、研究所では、アメリカが保有する核弾頭の安全性の向上につながったと評価しています。 アメリカが臨界前核実験を行うのはおととしの12月以来29回目で、トランプ政権では2回目です。 トランプ政権は、去年2月、新たな核戦略を発表し、ロシアや中国に対抗するため、実験などを通じて核戦力の近代化を進めるとともに、「低出力核」と呼ばれる威力を抑えた核兵器の増強などを進めています。 今回の実験はことし2月の2回目の米朝首脳会談の直前に行われていて、トランプ政権として、北朝鮮に非核化を迫る一方、みずからは臨界前核実験を通じて核兵器の性能向上を進めていた形で、反核団体などからは強い反発が予想されます。 「低出力核」増強進めるアメリカ アメリカのトランプ政権は去年2月、中長期の新たな核戦略を示した「核態勢の見直し」を発表し、核なき世界を目指すとしたオバマ前政権からの方針転換を打ち出しました。 新たな戦略では、核戦力を増強するロシアや中国に対抗するため、臨界前核実験などを通じてアメリカの核戦力の近代化を進めるとともに、限定的な核攻撃も辞さない姿勢を示すロシアへの抑止力として、「低出力核」と呼ばれる威力を抑えた核兵器の増強が進められています。 こうした方針を受けて、エネルギー省の傘下にあるNNSA=核安全保障局は、ことし2月、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルに搭載する低出力核弾頭の製造を開始したことを明らかにしました。 NNSAでは、ことし10月までに新たな核弾頭をアメリカ海軍に引き渡す見通しで、「低出力核弾頭は、脅威が高まる中でそれに合わせた抑止力を提供できる」としています。 核兵器関連予算を拡充 トランプ政権は、西部ネバダ州をはじめとするアメリカの核関連施設の半数以上が建設から40年以上経過し、老朽化が進んでいるとして、核戦力の近代化を目指し、関連予算の拡充も進めています。 こうした方針を受けて、ことし3月にトランプ政権が議会に提出した来年度の予算教書では、老朽化した施設の近代化や新しい核弾頭の開発や維持など、核兵器に関連する予算は124億ドル(日本円にして1兆3500億円余り)と、前の年度と比べて11%余り増えています。 日本被団協「許し難い行為」 アメリカが「臨界前核実験」を行っていたことについて、長崎の被爆者で日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の木戸季市事務局長は「許し難い行為で、トランプ大統領は何をしでかすのか分からない。唯一の戦争被爆国の日本を訪れるときに発表したことは何か意図を感じるし、礼を失している」と述べました。 そのうえで、「原爆は人間の歴史を終わりにしかねないもので、絶対に人間とは相いれない存在だ。核兵器で脅すことはもうやめて、核兵器を廃棄するよう求めたい」と話していました。 臨界前核実験、2月実施 17年12月以来 毎日新聞 2019年5月25日 夕刊 8面  【ワシントン共同】米核研究機関のローレンス・リバモア国立研究所(カリフォルニア州)は24日、プルトニウムを用い、核爆発を伴わない臨界前核実験を2月に西部ネバダ州の施設で実施したと発表した。トランプ政権下では2017年12月にも同様の実験が行われたことが確認されている。  同研究所によると「エディザ」と名付けられた今回の実験は砂漠の地下深くで2月13日に実施された。  貯蔵された核弾頭の安全性を向上させるため、プルトニウムのデータを取得することが目的だったと説明している。 臨界前核実験 汚染確認、少量のプルトニウム 研究機関 毎日新聞 2019年5月26日 朝刊  7面  【ワシントン共同】米核研究機関のローレンス・リバモア国立研究所(カリフォルニア州)は24日、プルトニウムを用い、核爆発を伴わない臨界前核実験を2月に西部ネバダ州の施設で実施したと発表した。トランプ政権下では2017年12月にも同様の実験が行われた。  貯蔵された核弾頭の安全性を向上させるための実験。政権は18年2月公表の核戦略指針で核兵器の役割拡大を表明している。  実験に用いた核物質封じ込め用容器の付近で少量のプルトニウムによる汚染が確認されたことも、米大統領とエネルギー長官への助言機関の報告書やエネルギー省の核安全保障局(NNSA)への取材で分かった。報告書などによると、容器の接続部品に亀裂が見つかった。NNSAは「原因は調査中」とした上で、外部への影響はないとしている。 米、2月に臨界前核実験 トランプ政権2017年12月以来 2019年5月25日 東京新聞 夕刊 1面トップ記事 米国立研究所  未臨界核実験 トランプ政権で2回目 2019年5月26日 読売新聞 朝刊7面 朝日新聞は、2019年5月25日夕刊でも、同年5月26日朝刊でも、記事を書きませんでした。トランプ大統領の来日、大相撲観戦を報道しながら。ダメな新聞です。  と書いたところ、朝日新聞2019年5月27日朝刊紙面4面には、「未臨界核実験米が2月実施 トランプ政権2回目」と書きました。奇妙なことに、朝日新聞電子版にはこの記事そのものが、ありません。他紙(東京、毎日、読売)が書いたから、仕方なく朝日新聞は、紙面には記事だけをアリバイ的に載せたのではないでしょうか。 紙面記事 未臨界核実験米が2月実施 トランプ政権2回目 朝日新聞 2015年5月27日 朝刊4面 朝日新聞 2019年5月27日 朝刊 デジタル版には、同記事がない。

再利用・埋め立て 環境省が本腰(下) 元規制委トップ議論否定? 「応援するのは当たり前」 被災地議員「何度も開いて」 2019年5月21日 東京新聞朝刊19面

こちら特報部 再利用・埋め立て 環境省が本腰(下) 元規制委トップ議論否定? 「応援するのは当たり前」 被災地議員「何度も開いて」2019年5月20日 東京新聞   朝刊19頁    福島県内の汚染土の再利用で、安全面を確認する実証事業が二〇一七年四月以降、福島県南相馬市で始まった。茨城県東海村と栃木県那須町では昨夏から、埋め立て処分の実証事業が行われている。結果を踏まえて関係法令などを整え、本格的に処分が始まる。  今後の道筋を開く実証事業だからこそ地元の反発は強い。南相馬市の団体「除去土壌の再生利用実証事業に反対する市民の会」の栗村桂子氏は会合で、「南相馬で再利用が進めば他の地域にも及ぶことは明らか」と訴えた。  相次ぐ批判にいらだちを隠せない人もいた。福島県飯舘村の復興アドバイザーで、元原子力規制委員長の田中氏だ。  「村長から住民の思いを伝えてほしいと話があった。私はこういうところに来たくないけど」と切り出し、五分という発言時間に「何がしゃべれるか」とぼそり。「会場に来た国会議員が少ない」とも漏らした。  飯舘村はすでに再利用の受け入れを決めている。その舞台となるのは、帰還困難区域の長泥地区。農地造成で除染土を再利用することになり、手つかずだった除染を国が広範囲で実施することが決まった。  田中氏は「長泥の住民がどれだけ苦労して(受け入れの)決断に至ったか。二〇一一年の事故直後から長泥の人たちと付き合って、一人一人の考えが分かる。応援するのは当たり前」と述べ、反対する人たちを暗に非難した。  その上で、再利用の方針は民主党政権下で成立した関連法に基づくと言及し「国会議員が(再利用の推進に)責任を持つ必要がある。市民に意見を聞くということではなくて」と述べた。もう「議論の余地なし」とも受け取れる言葉だ。  強く異を唱えた人がいる。直後にマイクを握った日大の糸長浩司特任教授(環境学)だ。  「私と飯舘村の付き合いは一九九三年から。今の村長の前から村づくりに関わり、事故後も毎年調査に入っている。除染を条件に長泥の住民に苦渋の選択をさせたことが民主国家としてアウト」と指弾した。  京都大の今中哲二氏も糸長特任教授と村の調査を続けてきた間柄。「皆さんは東電に優しすぎる。汚染された物は全て東電に引き取らせることを原則にすべきだ」と訴えた。  田中氏は聴取会の最後に再度、発言の機会を持った。かなり「上から目線」で反対意見を批判した。  「皆さん、放射能は特別のリスクがあるみたいに言うが、リスクがゼロのものは科学技術にはない。もっと正しく勉強していただかないと。再利用が拡散という話があるが、仮置きされる今の状態を放置する方が『拡散した状況』と言える。管理されていないから。再利用という形は管理型なんです、一種の。その方が始末がいい」  閉会後の取材では語気がさらに強まった。「気楽な議論じゃない。知的レベルが低すぎる。いまだにこんな議論を蒸し返しているようじゃダメ」  とはいえ、田中氏は委員長の時に今よりも厳しい再利用の基準値を求めていた。そのことを指摘されると「(基準は)もっと高くても大丈夫、被ばくの問題では。それを選択せざるを得ない」。退任後は考えが変わったようだ。どんな事情が影響したのだろうか。  田中氏の言うように、再利用は議論の余地なしで進めなくてはならないのか。大熊町の木幡ますみ町議は違う考えだった。  「(除染土の後始末は)孫や子どもにも関わる。他の原発で同じ状況が生まれたらどうするかという問題もある。そこを含めて考えないといけない。だから何度も何度も、福島でも意見聴取会を開いてほしい」と願った。  デスクメモ  2019・5・20  ホットスポットとして知られた千葉県柏市は落ち葉などを不燃ゴミの日に回収している。一二年五月の市の測定では、一キロ当たり三〇〇〇ベクレル弱が検出された。この数値に不安を感じる人もいる。八〇〇〇ベクレルという再利用の基準値はどうか。科学的でないという批判では解決しない。(裕) トップ社会政治経済国際速報エンタメスポーツオススメ特集   除染土使い農業再開 飯舘村の帰還困難区域で初公開 2019年5月25日 05:57テレ朝ニュース  https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000155436.html  環境省は福島県飯舘村の帰還困難区域で、除染した土で農業を再開する復興事業の様子を初めて報道陣に公開しました。  帰還困難区域長泥行政区・鴫原良友区長:「帰還困難区域の見本になればいいなと」 飯舘村では福島第一原発の事故で発生した除染土を長泥地区に埋め立て、さらに普通の土を盛り、そこで試験農業を行う取り組みが住民の合意を得て進んでいます。24日は除染した土に紛れ込んだ枝などを取り除く工程や来月に始まる予定の作付けの現場などが公開されました。   被災地・飯舘村に移住した、前原子力規制委員長・田中俊一氏の決意 無報酬で村の「復興アドバイザー」に 2018年3月10日  週刊現代 2012年9月に初代原子力規制委員会の委員長に就任し、原発再稼働に関する安全審査を司った田中俊一氏。昨年の退任後、氏は故郷の福島へと向かった。 5年にわたり様々なしがらみと闘ってきた老科学者は、雪残る被災地でいま何を思うのかーー。 山あいにひっそりと暮らす 東日本大震災、それに続く福島第一原子力発電所の事故から丸7年が過ぎようとしている。だが、「フクイチ」がある福島県の浜通り地方には、まだ事故の深い傷痕が残されたままだ。飯舘村もその例に漏れない。 大量の放射性物質が飛散した飯舘村は、昨年春に一部の地区を除いて、ようやく住民の帰還が許されるようになったばかり。しかし、もっとも汚染がひどく、いまも帰還困難区域に指定されている長泥地区に続く道路は、鉄製のゲートで閉ざされている。 この村にはいま、昨年9月まで原子力規制委員会の委員長を務めた田中俊一氏(73歳)がいる。本来の自宅がある茨城県市から車を飛ばして、数日ごとに行き来する生活を送っているという。  われわれが田中氏の新しい住まいを訪ねたのは2月の下旬。飯舘村は前日に降った雪でうっすら覆われていた。 「なんだい。ずいぶん早いな」 自宅の呼び鈴を押したのは朝8時半ごろ。自分で用意した朝食を食べ終えたばかりだった。少々ぶっきらぼうながら、実直な人柄がにじみ出る口調は、以前取材した時と変わらない。 招き入れられた自宅は、かつて村の診療所の医師が住んでいたという。10年ほど空き家になっていたが、すっかりリフォームされていた。 「天井も高くて立派な家だけど、その代わり冬場はかなり寒くて暖房費がかさむよ。昨日なんて、風呂場の天井から落ちた水滴で床に氷筍が出来てたくらいだ」 ほんの数ヵ月前まで、原発の安全性に厳しい目を光らせてきた人物は、いま人よりもイノシシの数のほうが圧倒的に多い山村でひっそりと暮らしている。いまの肩書は飯舘村の「復興アドバイザー」、無報酬のボランティアだ。 双方から批判され続けた、過酷な5年間 フクイチの事故以来、日本の原子力政策を巡っては、推進派と反原発・脱原発派との対立が激化していた。そんななかで、12年に新たに設置されることになった原子力規制委員会の委員長は、双方から攻撃されることが予想される難しいポストだった。   「原子力ムラというものがあるとすれば、知らない人には、私も立派な住人に見えるんだろうね。でも私はそのムラでも、傍流の研究者だった」 そう言って笑う田中氏の存在が、原発の安全性に対する審査を任せられる専門家を探していた政府の目に留まった。 「ムラの主流にいる人たちがやってきた原子力政策が失敗したんだから、彼らが規制側に回るわけにはいかない。だから私だったんでしょう」 田中氏は、原子力ムラの人間からすれば「裏切り者」。一方、被災者からすれば「村を放射能で汚染した一味」という複雑な立場だ。それでも、自ら求めたわけではない初代原子力規制委員会の委員長という重責を任され、原発再稼働を求める電力会社にたびたび苦言を呈してきた。 「あれだけ厳しい基準を言われたら電力会社も大変だと思います。なにしろ原発一基あたり安全対策のために1000億〜1500億円かかるんだから。当然、『もう少しなんとかならないのか』という気持ちはあったでしょう。でもそれを口に出さず、規制委員会の示す基準に従って対策を取ること以外に道はないと理解してくれるようになった。それは良かった」 福島県出身の田中氏は、東北大学で原子核工学を専攻し、日本原子力研究所に入所。99年の東海村JCO臨界事故では、東海研究所の副所長という立場で事態の収束に尽力した。 初めて、世の中の注目を浴びたのは 11年3月の福島第一原発の事故直後。原子力利用を推進してきた研究者たちと連名で国民に謝罪したうえ、政府・自治体・産業界・研究機関が一体となって緊急事態にあたるべき、と提言したのだ。言ってしまえば、これまでの人生を否定する行為でもあった。 以後、独自の活動を始める。 原発事故の混乱が続く11年5月、飯舘村を訪れた田中氏は作業服に身を包み、いち早く除染の実証実験を開始した。 規制委員会委員長になってからは、なかなか足を運ぶことは出来なかったものの、飯舘村の菅野典雄村長や長泥地区の鴫原良友区長とは連絡を取り合ってきた。 そんな田中氏は、委員長という重責から解放され、一個人に戻っても活動の場として飯舘村を選んだ 本当の春が訪れる、その日まで 「規制委員長を退任するときに、官邸に行って安倍総理に挨拶してきたんだ。そうしたら『田中さん、これから飯舘に住むんだって?』と言われた。総理の耳にも入っていたんだね。だから『機会があったら是非おいで下さい』と言ったんだけど、『う〜ん』という返事だった。でも、復興が順調に進めばきっと関心を持ってくれると思う」 村の復興アドバイザーとしての仕事は「何でも屋」だ。 「村には空き家がたくさんあるから、大きな家がタダ同然で借りられる。自然が多いし、土地も広い。広く募集したら、移住希望者だっていると思う。でも、村役場には帰還してくる人の世話や学校再開に向けての対応とか仕事が満載で、そこまで手が回らないんですよ。そういうところを私みたいなフリーターがお手伝いすればいいんです」 何でも屋は、ご近所のニーズを察知しなければならない。村に住まいを構えたのも、 ときどき訪れるだけでは、住民の声をすくい上げられないと考えたからだ。  「ずっと住んでいれば、村の人たちとの付き合いも深くなるでしょう。それに解決しなければならない問題は日々変化していく。時々やってくるだけじゃあ『今日はこうしたから、明日はああしよう』ということもできない。村の皆さんの中に入っていかないと、なかなか本音も聞けないしね」 国の行政機関のトップを務めた人物がこれほどの決意で地域社会に溶け込んでいこうとするケースは稀だ。 とはいえ、村の大部分が帰還困難区域の指定解除を受けたからといって、急に村が活気づくわけではない。村に戻ってくる人々も年配者が中心。もともと少子高齢化が進んでいたのだが、原発事故はその流れを一気に加速させてしまった。 村のあちらこちらには、除染作業で出た汚染土壌を詰め込んだフレコンバッグが積み上げられ、黒々とした無数の小山が聳え立つ。その異様な光景はいまだ無くならない。 「村にはフレコンバッグが230万個もある。あれを片付けることが当面の目標。まだ帰還できない長泥地区の水田に、フレコンバッグの土をひとまとめにして、大規模農業ができるように土壌改良するんですよ。上からきれいな土を50cmくらいかぶせれば、園芸作物や牧草の栽培は可能になると思います。セシウムは土の中で移動しないので、放射性物質が漏れる心配もありません」 田中氏は、村が事故以前の姿に戻ることだけが「復興」だとは考えていない。現実的な手段と目標で、そこに住む人々の生活や雇用を取り戻す。そのためには、一歩ずつ前進していくしかない。 (取材・文/阿部崇、撮影:西崎進也)

ゲノム編集の落とし穴 -“セントラルドグマ”が書き直される可能性も- 理化学研究所 2016年12月26日

ゲノム編集の落とし穴 -“セントラルドグマ”が書き直される可能性も- 理化学研究所  2016年12月26日 要旨 理化学研究所(理研)バイオリソースセンター新規変異マウス研究開発チームの牧野茂開発研究員、権藤洋一チームリーダーらの研究チーム※は、マウス細胞を用いて、ゲノム編集技術[1]により目的とするフレームシフト変異[2]を導入したところ、想定外のタンパク質が翻訳[3]されるという現象を発見しました。 近年、ゲノムを自在に改変できるゲノム編集技術が、急速に発展普及しています。この技術は簡便で、これまでゲノム改変が困難であった生物種においても利用できることから、遺伝子機能を解明する基礎研究から医療応用まで、極めて広範囲にわたる生命科学研究において利用が進んでいます。将来は、ゲノムを自在に改変し遺伝子治療への扉を開くと期待されています。一方で、標的とする配列以外のゲノム領域に、意図しない突然変異が導入される問題(オフターゲット効果)には十分に注意が払われ、技術改良が進められています。 今回、研究チームは、ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9システム[4]」を用いてマウス細胞の形態形成に関わるGli3[5]という遺伝子の標的破壊(ノックアウト)[6]を行いました。その結果、11系統の変異Gli3マウス培養細胞株を樹立し、その中の8細胞株は父方由来と母方由来のGli3遺伝子が共に翻訳が妨げられるフレームシフト変異を持つことも分かりました。ところが、樹立した株のうち6細胞株のタンパク質発現を確認したところ、6細胞株全てが、ほぼ全長のGLI3タンパク質を「定型外翻訳」[7]によって発現していました。この結果は、“ゲノム編集を行う場合、標的遺伝子の変異配列確認だけでなく、タンパク質発現まで確認することが重要であること”を示しています。さらに研究チームは、ゲノム編集実施前にノックアウトした遺伝子から予想外のタンパク質が発現するかどうか事前に確認できる「in vitro発現確認ベクター」[8]も報告し、その利用を呼びかけています。 本研究は、ゲノム編集利用にあたっての警鐘を鳴らすとともに、分子生物学の中心命題である“セントラルドグマ”[3]の重要なステップである「翻訳」開始について、全く新しい分子機構があることを強く示しています。実際にフレームシフト変異によって定型外翻訳が生じて発症するヒト疾患[9]の報告もあり、そういった疾患の分子機構の解明につながる可能性があります。一方で、ヒトやマウスの全遺伝子の半分にはuORF[10]と呼ばれる配列があり“小さな定型外翻訳”によって発現制御されている可能性が近年示唆されています。本成果はセントラルドグマそのものにパラダイムシフトをもたらす可能性があります。 本成果は、国際科学雑誌『Scientific Reports』(12月21日付け)に掲載されました。 ※研究チーム 理化学研究所 バイオリソースセンター新規変異マウス研究開発チーム開発研究員 牧野 茂(まきの しげる)開発研究員 福村 龍太郎(ふくむら りゅうたろう)チームリーダー 権藤 洋一(ごんどう よういち) 背景 高等生物のゲノムの改変は、これまでES細胞(胚性幹細胞)[11]が樹立されているマウスなど、限られた生物種でのみ実施可能でした。その後、iPS細胞(人工多能性幹細胞)[11]が生物種を問わず作製できるようになり、ゲノム改変の応用範囲が広がりました。しかし依然として、標的とする遺伝子だけを破壊したノックアウトマウスの作製を含め、ゲノム改変効率は極めて低く、多大な時間や労力が必要でした。ところが近年、ゲノム編集技術の登場により、さまざまな生物種で目的の塩基配列を効率よく自在に改変することができるようになり、急速に利用が広がっています。ゲノム編集技術は、遺伝子機能の解明や疾患メカニズムの研究を加速し、創薬、有用生物の創出、さらには究極の遺伝子治療法へつながる技術として期待されています。 このようにゲノム編集技術が急速に発展する中、技術上の問題点や限界の検証も行われています。特に、標的とする配列以外のゲノム領域に、意図しない突然変異が導入される問題(オフターゲット効果)には十分に注意が払われ、技術改良が進められてきました。 研究手法と成果 研究チームは、最も広く利用されているゲノム編集技術である「CRISPR-Cas9システム」を用いて、11系統の変異Gli3マウス培養細胞株を樹立しました。Gli3遺伝子は、形態形成に重要な役割を果たす遺伝子の一つです。その中の8細胞株は、父方由来と母方由来の両方のGli3遺伝子に、翻訳を妨げられる「フレームシフト変異(塩基の挿入や欠失変異)」が導入されていることが分かりました。通常、フレームシフト変異を持つメッセンジャーRNA(mRNA)は不良品として分解され、タンパク質への翻訳は全く起こりません。分解を免れた場合でも、フレームシフトを持つmRNAからは、読み枠がずれるためすぐに終止コドンが現れ、機能を持たない小さなN末端[12]側タンパク質断片だけが翻訳されます(図1)。 研究チームは念のため、樹立したフレームシフト変異を持つ6細胞株で、GLI3タンパク質発現をウェスタンブロット法[13]により確認したところ、予想に反して、ほぼ全長に近い正しいアミノ酸配列をもつGLI3タンパク質が発現することを発見しました(図2)。 研究チームは、フレームシフト変異細胞株で、どのようなタンパク質が合成されるのかを具体的に調べるために、Gli3遺伝子のN末端とC末端[12]に小さな目印(タグ)を結合させた発現ベクター(in vitro発現確認ベクター)を開発しました(図3A)。この方法により発現解析を行ったところ、フレームシフト変異Gli3遺伝子からは、C末端側のタグのみを持ったGLI3タンパク質が発現することを発見しました(図3B)。 この結果により、フレームシフト変異Gli3では、本来の開始コドンより下流に位置する別の開始コドンから翻訳が開始伸張しC末端の本来の終止コドンまで、正しいGLI3のアミノ酸配列を持つ、ほぼ全長のタンパク質が合成されることを明らかにしました(図3C)。 これまでゲノム編集は、オフターゲット変異を起こさないよう改良が進められてきました。 一方、本研究では、標的とするゲノム領域に狙い通りの突然変異を導入しても、想定外の標的タンパク質発現が生じる例を示しました。研究チームの発見により、“ゲノム編集技術を用いて遺伝子のノックアウトを行う際、標的とするDNA配列を調べるだけでなく、標的タンパク質の発現が消失することも慎重に解析することが重要であること ”が明らかになりました。 また、通常、このタンパク質発現確認は、図2に示すように標的遺伝子が産生するタンパク質を特異的に認識する抗体を用いて行いますが、本研究で開発したin vitro発現確認ベクターを用いることで、そういった個別の抗体を予め準備することなく、ゲノム編集の実施前に、想定外のタンパク質発現が生じるかどうか“事前検証”ができます。 今後の期待 フレームシフト変異により生じる“本来より下流の開始コドンから翻訳が開始してしまう現象(定型外翻訳)”は、複数のヒト疾患の原因遺伝子でも報告されています。このため、定型外翻訳はマウスGli3遺伝子だけに限らず、さまざまな生物種における多くの遺伝子で一般的に起こりうる現象であると考えられます。 一方で、ヒトやマウスの正常な遺伝子の上流配列には、小さなオープンリーディングフレーム(uORF)が約半数の遺伝子に存在し、uORFが定型外翻訳と結び付き、本来の遺伝子発現そのものを制御していることが最近明らかになりつつあります。 今後、研究チームは翻訳の開始機構を明らかにし、最も基本的な生命現象であるタンパク質発現制御のメカニズムの解明を目指します。さらに、この翻訳開始機構の解明は、ヒト疾患の詳細な分子機構を理解することにつながり、将来的には治療法や新規薬剤の開発にもつながると期待できます。 原論文情報 Shigeru Makino, Ryutaro Fukumura, Yoichi Gondo, “Illegitimate translation causes unexpected gene expression from on-target out-of-frame alleles created by CRISPR-Cas9″, Scientific Reports, doi: 10.1038/srep39608 発表者 理化学研究所 バイオリソースセンター 新規変異マウス研究開発チーム 開発研究員 牧野 茂(まきの しげる) チームリーダー 権藤 洋一(ごんどう よういち)    牧野 茂 開発研究員 報道担当 理化学研究所 広報室 報道担当Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715 このページのトップへ 補足説明 ゲノム編集技術 部位特異的にDNA二重鎖を切断する酵素(ヌクレアーゼ)を利用し、ゲノム上の標的配列を改変する技術。部位特異的ヌクレアーゼにより導入された二重鎖切断は、細胞にとって極めて有害であるため、速やかに修復される。その過程で起こるエラーにより標的箇所に突然変異が導入される。さらに、ドナーDNA断片を加えることで、希望する配列への置換や挿入も可能になるなど、技術的に応用が進められている。 フレームシフト変異 塩基の挿入や欠失変異のこと。mRNAから3塩基ずつ一つのアミノ酸へと翻訳されるので、挿入や欠失塩基の数がとくに3の倍数でない数の場合には読み枠がずれ、合成されるタンパク質が本来の配列とは全く異なったものになる。異なったフレームには終止コドンがすぐに現れるため、フレームシフト変異のすぐ下流で翻訳が終了するか、もしくは、いわゆるナンセンス変異依存mRNA分解(nonsense mediated decay)によってmRNAそのものが破壊される場合も多いので「遺伝子破壊ノックアウト変異」となる場合が多い。 翻訳、セントラルドグマ ゲノムの中の遺伝子配列からmRNAが「転写」され、さらに、そのコーディング配列からタンパク質へと「翻訳」されるという“セントラルドグマ”における遺伝子発現の重要なステップの一つ。ヒトを含む真核生物でも翻訳における開始因子や伸張因子など多くの研究が1960年代から蓄積されている。教科書にも詳しく記載され,分子レベルにおいてもかなり解明されていると考えられている。 CRISPR-Cas9システム ゲノム上の標的領域と相補的なsgRNA(single guide RNA)とCas9ヌクレアーゼの二つにより、ゲノム改変を行うゲノム編集技術の一つ。sgRNAのデザインや作製が簡便な上、技術的開発も進められており、さまざまな生物のゲノム改変で最も多用されている。特に、受精卵や初期胚でも、効率よく特異的に標的配列に二重鎖切断を導入することができるため、ES細胞やiPS細胞のない生物種にも利用できる。さらに、母方由来と父方由来の両方の遺伝子を同時に標的破壊できるほど効率が高いため、一気にホモ接合ノックアウト生物が得られるのも特長となっている。CRISPR-Cas9はクリスパーキャスナインと読む。 Gli3 形態形成に重要な役割を担うヘッジホグシグナル伝達系において、下流の遺伝子群の発現制御を行う重要な転写因子の一つをコードする遺伝子。ヘッジホグシグナル伝達系に突然変異が生じると、初期発生において形態異常や成体では発がんに関与する。本研究では、その分子機構の詳細な解明を目指して、Gli3遺伝子の標的破壊を計画した。 遺伝子の標的破壊(ノックアウト) 2007年ノーベル生理学医学賞を受賞した「ノックアウトマウス」が有名。哺乳類ゲノムにおいて、標的とする遺伝子だけを相同組換えを利用して特異的に破壊する方法。なるべく長い相同配列をターゲッティングベクターに配することにより効率を上げるため、ベクター構築に手間がかかる。また、ノックアウト生物ができるのは、受賞当時はES細胞が利用可能な生物に限られていた。現在では、iPS細胞があればこの相同組換えベクターを用いる方法でノックアウト生物はできる。通常は片方の親由来の遺伝子一つだけ破壊する。そのため、両方の遺伝子とも破壊した「ホモ接合ノックアウト生物」を得るためには、さらに交配によってホモ接合生物を得る必要がある。 定型外翻訳 “セントラルドグマ”([3]参照)では、mRNA上のオープンリーディングフレームと呼ばれる配列の5’末端のAUGからタンパク質への翻訳が開始し、3塩基ずつ一つのアミノ酸としてタンパク質が伸張し、3’末端の終止コドンまで一つのペプチドとして発現すると分子生物学教科書に記載されている。今回発表した「定型規格から外れた翻訳illegitimate [...]

マグロの話 Woods Hole Oceanographic Institution By David Pacchioli May 3, 2013

マグロの話 Woods Hole Oceanographic Institution  By David Pacchioli  May 3, 2013 (Woods Hole Oceanographic Institution)  マグロの話 By David Pacchioli | May 3, 2013   福島原発から来た放射性物質が海洋生態系でどのように移動するかを知るには、微小プランクトンの生態を把握することである。しかし、福島原発事故を象徴するようになった巨大生物がいる。太平洋クロマグロである。 太平洋クロマグロは、世界の食卓で珍重される魚のひとつである。最高級すし食材としての魅力を持つクロマグロは、回遊魚でもある。日本とフィリピンの沖合で産卵し、幼魚のうちに4か月かけて太平洋9,600kmを横断し、米国カリフォルニア州沖合の餌の豊富な海域で育つ。数年後、成長して成熟すると、今度は自身が産卵するため太平洋を引き返していく。 海洋生物の放射性物質の取込みとマグロの回遊パターン調査の専門家であるストーニーブルック大学のニコラス・フィッシャー教授とスタンフォード大学ホプキンス海洋研究所の大学院博士課程の学生ダニエル・マディガンは、2011年夏にカリフォルニア沖で水揚げされる若いクロマグロが、福島沖の汚染海域で孵化後の日々を過ごした可能性が高いことを知っていた。それらのクロマグロは、遠く離れた2つの大陸の間で放射性物質を運んだのだろうか。 それを確かめるため、フィッシャーとマディガンは、カリフォルニア州サンディエゴ沖で2011年8月にスポーツフィッシング愛好者が釣り上げたマグロから組織試料を採取し、フィッシャーの研究室で分析した。「分析したクロマグロのすべて(15匹中15匹)で、セシウム134とセシウム137の両方が見つかったのです」。これは福島第一原発事故からの汚染を示すまぎれもない証拠である、とフィッシャーは、東京の「海洋放射能汚染に関する国際シンポジウム」で報告した。 しかし、彼らが測定した放射能レベルは非常に低かった。サンディエゴ沖で釣れたクロマグロは、両方の放射性物質からの総セシウム濃度が1kg当り10ベクレルと、カリウム40の自然放射線濃度をわずか3%上回っただけで、日米政府が定める安全な消費レベルよりははるかに低かった。 回遊するマグロが、取り込んだ全セシウムを太平洋横断中に1日2%失っていたと推定し、さらに、太平洋横断中に冷戦時代の原爆実験の名残であるセシウム137を取り込んでいたと推定して、さかのぼって計算を行い、フィッシャーらは 、マグロは日本近海を出発したころには、体内濃度が測定値より15倍高い1kgあたり約150ベクレルであった可能性が高い、とした。 彼らは、カリフォルニア沖の定住魚であり太平洋を回遊しないキハダマグロからも試料を採取し、クロマグロで測定されたセシウムが海流または大気によって運ばれてきたものだという可能性を否定した。キハダマグロにみられたのはバックグラウンドレベルのセシウム137だけで、半減期の短いセシウム134は見つからなかったからである。 フィッシャーとマディガンが2012年5月下旬に発表したこの結果は、すさまじい反響を呼んだ。フィッシャーは無数のインタビューに応じ、テレビ番組にも出て測定結果を説明した。 人々の根拠のない放射能への不安に対処するため、フィッシャーとフランス人科学者グループは、これらのクロマグロを食べた人が取り込む放射線量(0.008マイクロシーベルト)を算定し、バナナを食べてその自然なカリウムから取り込む放射線量(0.1マイクロシーベルト)、歯科用X線撮影から受ける線量(5マイクロシーベルト)、大陸横断飛行で受ける線量(40マイクロシーベルト)と比較した。「クロマグロについては、放射能より含有水銀の方がむしろ心配です」と彼は言う。 2012年と2013年にクロマグロの放射能を分析するにあたり、フィッシャーは、それらのクロマグロが2011年時点の幼魚とは異なり、汚染水域で1年間は過ごした後であろうこと、そしてそのセシウム濃度がはるかに高まっている可能性があることを認めた。一方で、餌場となった水域のセシウム濃度が比較的低かったために低下した可能性もあるという。マディガン、フィッシャー、そしてゾフィア・バウマン博士による最近の報告によると、2012年にサンディエゴ沖で水揚げされたクロマグロには、2011年のマグロから検出された値の半分未満しか放射性セシウムが含まれておらず、マグロ組織に含まれる放射性セシウム濃度が実際に低下していたことが示された。 しかし、フィッシャーによると、クロマグロだけでなく、サメ、海鳥、アカウミガメなど他の大型回遊生物や渡り鳥の固有の回遊・渡りパターンを追跡する上で、福島原発由来の放射性核種が利用できると考えられる点にある。回遊・渡りパターンのタイミングと経路に対して理解が深まれば、漁場を管理し、絶滅危惧種の保護戦略をより効果的に策定する上で役立つはずである。 米沖のマグロから放射性セシウム NHK NEWS WEB 2012年5月29日9時35分更新 アメリカ西海岸沖で去年8月に捕獲されたクロマグロから微量の放射性セシウムが検出されたと、アメリカの研究チームが発表しました。 研究チームでは、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射性物質が回遊するマグロを通じて広がったものとみていますが、微量のため、食べても健康に影響はないとしています。 これは、アメリカ・スタンフォード大学などの研究チームが、28日、アメリカの専門誌で発表したものです。 それによりますと、研究チームは、去年8月、カリフォルニア州サンディエゴ沖でクロマグロ15匹を捕獲して調べた結果、1キログラム当たり4ベクレルのセシウム134と、6.3ベクレルのセシウム137が見つかったということです。 研究チームは、2008年にも同じ地域でクロマグロを捕獲していますが、いずれもセシウム134は検出されず、セシウム137もごくわずかでした。 このため研究チームでは、去年セシウムが検出されたクロマグロは、福島第一原発の事故当時日本近海にいて、その後、海流に乗ってアメリカの西海岸沖まで回遊し、放射性物質が広がったものとみています。しかし、今回クロマグロから検出された放射能については、微量のため、食べても健康への影響はないとしています。 ただ、今回明らかになったデータは、原発事故の影響が太平洋の広い範囲に及んでいることを示しているとしています。 Pacific bluefin tuna transport Fukushima derivedradionuclides from Japan to California  Daniel J. Madigana 2012年 [解説]上記論文では、乾燥重量なので、生に直すと、セシウム134.137合計で約2.5ベクレル/kg。下記のデータから比べてもかなり放射能汚染度が高いです。大気圏内核実験の影響だけであるならば、ビンナガマグロの肉は、セシウム137のみで0.20ベクレル/kgの汚染度であると思います。  また、2019年3月採取のビンナガマグロ(千葉県沖620km)からセシウム137のみで0.43ベクレル/kgが検出されています。かなら汚染度が高いのではないか、と思われますが、過去のデータ数が少なく、判断できません。 ■2019年3月上旬採取 ビンナガマグロ 千葉県沖南東約620km 北緯31度00分東経144度00分  セシウム137 0.42ベクレル/kg 検査機関 (株)静環検査センター <参考> ビンナガマグロの放射能汚染 ようこそ日本の環境放射能と放射線 データベースより ビンナガ(肉) セシウム137 0.22ベクレル/kg 1966年採取 採取地 太平洋 1966年5月31日採取 ビンナガ(肉) セシウム137 0.27ベクレル/kg 1966年採取 採取地 太平洋 1966年8月12日採取 ビンナガ(肉) セシウム137 1.18ベクレル/kg 1966年採取 採取地 太平洋 1966年10月14日採取 ビンナガ(肉) セシウム137 0.90ベクレル/kg 1966年採取 採取地 太平洋 1966年10月14日採取 ビンナガ(肉) セシウム137 0.70ベクレル/kg 1982年採取 採取地 太平洋 1982年11月26日採取 ビンナガ(肉) セシウム137 0.65ベクレル/kg 2013年採取 採取地 太平洋 2013年4月採取 ビンナガ(肉) セシウム137 0.49ベクレル/kg 2013年採取 採取地 太平洋 2013年11月14日採取    

10 年前に小児甲状腺がんになった少女の闘病体験記 2013 年 聞き取り チェルノブイリへのかけはし

[解説]  「小児甲状腺がんにかかっても、甲状腺がんは死なないがんだから。」とか「甲状腺がんにかかっても、手術すれば大丈夫。」などという福島県立医大の医師がいるそうです。  そもそも原発事故がなかったら、子どもたちは甲状腺がんにかかりません。本来、甲状腺がんは大人がかかるもの。また、大人がこれまでかかっていた甲状腺がんは一般に進行が遅く、手術が必要がないものもありますが、「死の灰」由来の小児甲状腺がんは、転移が早く悪性です。これまでの甲状腺がんと、原発事故の甲状腺がんとを同列に扱い、「手術すれば大丈夫」だの「死なないがん」だの言うのは止めていただきたい、です。子どもたちは10代の若いうちから、ホルモンを作る甲状腺を失い、一生、がんの転移の不安におびえる生活を送ることになるのです。だいたい3~4ヵ月に1回は定期健診を受け、甲状腺がんが他の器官に転移していないか、調べると言います。  繰り返します。原発事故がなかったら、このような子どもたちの患者は出なかったはずです。以下は2013年の聞き取り、10年前に発症なの事例です。東電福島第一原発事故が原因ではありません。1999年9月30日の東海村JCO臨界事故によるヨウ素131放出の犠牲者である、可能性があります。  ちなみに、韓国では、原発の通常運転でも、甲状腺がんに罹ったとして、被害者が裁判に勝訴しています。古里原発の周囲10km圏内に20年間住んでいた住民の訴えでした。原発は通常運転中でもセシウム137、ストロンチウム90などを放出するのです。がんを引き起こす原発はすべて廃炉にすべきです。 <参考> 「『甲状腺がんは、原発のせいだ』韓国 イ・ジンソプ裁判釜山判決 2014年10月17日」 10 年前に小児甲状腺がんになった少女の闘病体験記  2013 年 聞き取りチェルノブイリへのかけはし 1.14 歳女児、疲れがひどく受診するもなかなか甲状腺がんだということに医師も気づかず、転院を繰り返す。15 歳のとき、甲状腺専門病院にて診断がつき即座に手術をすることに。2.首には横に大きな傷が残り、思春期の女子には心にも負担が大きかった。3.手術後は毎日投薬(詳しい名前は忘れました)。一日も飲むのを忘れることができないので負担だと言っていました。4.定期的に甲状腺がんや転移がないか検査。5.検査のアイソトープを使ってのため、高額でからだへの負担が大きい。※ 甲状腺は、一度に全摘出だったが、細かいものが残っているということでしたので、アイソトープということになった。転移は肺に細かいものの疑いがありました。19 歳のとき。6.大学病院で検査をした際は、遠いので当時病院の近くの親戚の家に滞在し、ヨード除去食を1 週間行った。7.ヨード除去食はかなり厳しく、ダシ、魚、アクエリアスなど、海草はもちろん食べられるものの方が少ないといってよいくらい大変だった。8.検査の結果、放射性ヨウ素カプセルを飲んで、甲状腺自体を不機能にする必要があり、それを飲み、1 週間だったと思うが大学の特別な病院に入院。9.その病室は放射能漏れを防ぐために設備されており、看護師、医師さえ入室できない。10.食事はまるで囚人のように小窓から渡されるそうだ。11.その病室で使ったものは着衣、CD、DVD、ケーター本体、あらゆるものを処分される。観葉植物を差し入れたがそれももちろん。12.本人は吐き気や頭痛がひどく、しかも隔離されているので大変苦しかったと言っている。このとき20 歳。13.現在結婚し、別の大学病院で管理してもらっている。14.出産も無事できたが、やはり大学病院で。今も彼女は子育てをしながら転移の心配をし、家業を休んで大学病院まで行かなければならないなど、お姑さんなどに気を遣うそうです。 小児甲状腺がんをわずらった少女の親戚のかたから、闘病について語っていただきました。 (注) 10 年前とは、2013 年時の10 年前

原発列島、僕らは当事者 詩人アーサー・ビナードさん 「原爆の図」を紙芝居に 生身の人間が演じてこそ伝わる 毎日新聞 2019年5月20日 夕刊 2面

特集ワイド 原発列島、僕らは当事者 詩人アーサー・ビナードさん 「原爆の図」を紙芝居に 生身の人間が演じてこそ伝わる 毎日新聞 2019年5月20日 夕刊 2面 詩人のアーサー・ビナードさん=根岸基弘撮影  絵の中に吸い込まれ、炎に包まれるような衝撃を受けた--。米国生まれで広島市に暮らす詩人、アーサー・ビナードさん(51)は、画家の丸木位里(いり)、俊(とし)夫妻による連作「原爆の図」に出合ったときのことをそう表現した。そして、原爆の図をもとに独自の物語をつむいだ紙芝居「ちっちゃい こえ」を7年かけて完成させた。伝えようとするメッセージは何なのか。ビナードさんによる紙芝居が始まった。【小国綾子、写真・根岸基弘】  <はじめまして。ぼくの なまえは クロという>。東京都内の出版社。声のよく響く広い部屋で、ビナードさんは演じ始めた。伸びやかに、歌うように。  絵の中で黒ネコの瞳が二つこちらを見つめている。<きみは……ニンゲンだな。ぼくの ことば わかるかい?>。私は思わずうなずきながらも、ふと考えた。原爆の図に黒ネコなんて、いたっけ?  原爆の図は丸木夫妻が被爆後の広島などを描いた全15部の大連作。それぞれ縦1・8メートル、横7・2メートルのびょうぶ仕立てで、肌を焼かれた人々や川辺で折り重なる遺体が描かれている。  丸木美術館(埼玉県東松山市)でビナードさんが初めてこの作品と出合ったのは約20年前。絵の前に立った瞬間、自分が絵の中に吸い込まれ、炎に包まれるような衝撃を受けた。「傍観者を当事者に変えてしまう。まるで巨大な紙芝居だ!」と。  来日して間もなく、23歳のとき東京の図書館で日本独自の文化である「紙芝居」の存在を知った。絵が引き抜かれ場面が切り替わるたびに、ぐいぐいと引き込まれる力強さに夢中になった。  7年前、「原爆の図は巨大な紙芝居のようだ」という感想を出版社の人に熱く語ると、「ぜひ作って」と依頼された。それが出発点だった。  何度も丸木美術館に通った。16場面で構成する紙芝居にどの絵を選ぶか。紙芝居は通常、先に物語を考えてから、それに合わせて絵を描いて作るという。今回は逆。「まず原爆の図と向き合い、絵が語り出すことに耳を傾けるしかなかった」  丸木夫妻の遺族の許可を得て、絵の一部を抜き出したり、大胆に反転させたり、色を変えたりもした。試しにいろんな登場人物を選び、プリントアウトしたものを厚紙に貼り付け、紙芝居の形にして、保育園や集会で演じてみた。そして観客の反応を見ては作り直した。試作した絵は1000枚を軽く超える。  試行錯誤の末、物語の語り部に選んだのは、第9部「焼津」の中で人々の足元にちょこんと座る黒ネコ。「原爆の図には人間だけでなく、牛、馬、犬、猫などの動物も植物も等しく描かれた。それが原爆の本質。人間だけが放射性物質を浴びたわけじゃない。みな無差別に殺された」  黒ネコは物語の中で問いかける。<ニンゲンだけだな、爆弾を つくって おとすのは。どうして だろう?>  大学4年のとき、日本語に興味を持ち、1990年の卒業と同時に来日した。詩作の傍ら、第五福竜丸事件や原爆を題材にした絵本も作った。戦後70年の節目にはラジオ番組で戦争体験者50人の話に耳を傾けた。  さらに東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後の2012年には「さよなら原発ヒロシマの会」を設立した。「福島の問題はヒロシマの眼鏡をかけないと見えない」と。  インタビューの最中、ビナードさんは原爆の図の画集を開くと、丸木夫妻の書き残した文章の一節を指さした。<平和になった時、原子爆弾は原子力発電所に化けて出ました>  「ね? 当たってるでしょ。核開発と原発は同じ流れ。原爆でも原発でもヒバクさせられる残酷さは共通していると、丸木夫妻は雄弁に簡潔に語っていたんです」  ビナードさんが紙芝居で伝えようとした本質はそこにある。「原爆の図は原爆を直接体験していない人に体験を手渡す絵です。原爆は終わっていない。原発がこれほどあるこの国で生きる僕らは当事者なんです。それなのに、そうじゃないという錯覚の中で暮らしている」。だから紙芝居という表現法を選んだのだ。肌で感じてもらうために。「政治的なプロパガンダには賞味期限がある。教科書の知識は頭にしか残らない。でも、本質に根づいた“物語”に賞味期限はない」はずだから。  紙芝居の脚本で、ビナードさんは原爆についてこう書いた。  <原子爆弾は あたらしい ころしかた。じりじり じりじり あとから あとから ころされる。サイボウを こわすものが そらから ふって、つちに もぐって、からだの なかまで もぐりこむ。たすかっても つぎの日 つぎの日>  この春、国は令和ブームに沸いた。「共同幻想に酔って楽しむのも構わないけど」と前置きしつつ、ビナードさんは苦言を呈する。「現実に何かが本当に新しくなったと思っていたら痛い目にあうよ。日本国民が『昭和』というものにどれほど踊らされて、酔って、すべてを失ったか。だから令和に酔うのはちょっと注意したほうがいいんじゃないかな」  詩人の目には、この国は今も「昭和のまま」に映る。「今の政権は昭和の政治家の孫たちだらけで、大日本帝国憲法に戻そうとしています」  ビナードさんは5月、できたてホヤホヤの紙芝居を広島市現代美術館や丸木美術館で演じた。試作品を含めると、これまで100回以上も演じてきた。  「大人よりも子どもたちの方が敏感に受け止めてくれる」という。沈黙する子、「いのちってすごい」とつぶやく子、泣き出す子……。炎や骸骨など見た目に怖い場面ではなく、体内の「サイボウ」を放射性物質に壊されながら家族を必死で捜すイヌの場面で、泣く子がいたそうだ。  「おしまい」。取材に来た私のために紙芝居を演じてくれたビナードさんが、そんな一言で物語を終えたとき、なぜだろう、自分も物語の登場人物になったような気がした。  <きみの サイボウたちは みんな げんきかい?>。物語の中の言葉が耳の奥で響いている。  語り部は黒ネコだが、紙芝居の主人公は「サイボウ」だった。原爆で死んだ生き物たちも、紙芝居の観客である私たちも、みんなサイボウでできている。地続きの存在なのだ。取材前に紙芝居を黙読した時にはなかった感覚。ビナードさんに演じてもらうと、こんなにも心に響くなんて。  ビナードさんはこう言ってほほえんだ。「紙芝居は生身の人間が演じて初めて立ち上がるメディアなんです。演じる者は物語を自分の体を通して表現するし、それが伝わるから、聞き手も引き込まれるんだよね」  それから表情を引き締め、「それこそが原爆の図の本質なので、そこを伝えられなかったら、僕にはこの絵を使わせてもらう資格がない」と言った。  「広島、長崎、ビキニ環礁、ニューメキシコ、カザフスタン、スリーマイル島、チェルノブイリ、そして原発列島となった日本のどこでも……」。紙芝居の中の言葉に、あらためてどきりとした。<じりじり あとから ころされる>。今を生きる私たちは、傍観者ではなく当事者なのだ。  ■人物略歴 Arthur Binard  1967年、米ミシガン州生まれ。2001年、詩集「釣り上げては」で中原中也賞、05年に「日本語ぽこりぽこり」で講談社エッセイ賞。紙芝居「ちっちゃい こえ」(童心社)は20日発売。

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