長崎原爆

被爆体験者敗訴を見直しか 最高裁が弁論決める
毎日新聞 2017年10月19日

 長崎原爆投下時に国が指定した被爆地域の外側にいたため、被爆者健康手帳が取得できない「被爆体験者」388人が第1陣として長崎市と長崎県、国に手帳の交付などを求めた集団訴訟で、最高裁第1小法廷(木沢克之裁判長)が11月30日に上告審弁論を開くことを決めたことが、関係者への取材で分かった。最高裁は通常、2審の結論を変更する際に弁論を開くため、原告が全面敗訴した2審判決を見直す可能性がある。 

  原告は、長崎原爆の爆心地から約7~12キロで原爆に遭い、放射性降下物を体内に取り込んで内部被ばくしたなどとして、被爆者援護法が「被爆者」の要件とする「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に該当すると主張している。

 しかし、2012年6月の1審・長崎地裁判決は原告の主張を「合理的根拠を欠く」と判断して原告全員が敗訴。昨年5月の2審・福岡高裁判決も「健康被害があった証拠は見いだせない」として1審判決を支持し、原告の控訴を棄却した。原告は「国が当時の行政区域を基に被爆地域の指定をしたことに合理性はなく、憲法の法の下の平等に反する」として上告していた。

 一方、原告161人による第2陣訴訟では昨年2月の1審・長崎地裁判決が「原爆による年間積算線量が自然放射線の世界平均(2.4ミリシーベルト)の10倍を超える25ミリシーベルト以上である場合には、健康被害を生じる可能性がある」と指摘し、被爆地域外の一部地域にいた原告10人について県と市に手帳交付を命じた。敗訴原告と県、市はいずれも控訴し、福岡高裁で控訴審が続いている。【樋口岳大】