安倍晋三政権が、原発立地自治体の大熊町の一部避難指示解除を2019年4月5日の原子力災害対策本部で決定しました。プルトニウムが土にしみこんでいる大熊町への住民帰還は、緩慢な殺人であると思います。「健康にただちに影響はない」かもしれません。しかし、放射能は確実に体を蝕み、心筋梗塞、脳梗塞などの突然死も含め、発がんリスクを高めます。

資料 大熊町の土壌汚染はチェルノブイリを超えている

 2012年4月1日の広野町の避難指示解除から始まり、原発20km圏外の避難指示解除を次々と行ってきた政府。2017年3月31日および4月1日には、飯舘村、川俣町、浪江町および富岡町の避難指示解除を行いしました。そして、ついに原発立地自治体、つまり東電福島第一原発が建っている大熊町の一部避難指示解除を2019年4月5日に決定しました。旧ソ連で言えば、チェルノブイリ原発4号機が建っていたプリピャチ市の一部避難指示解除に相当する決定です。

 この「緩慢な殺人」を求める、大熊町の一部避難指示解除を批判的に報道する新聞記事、テレビは皆無です。

 しかし、この避難指示を解除する要件とは、以下の「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」に書かれている、「年間20ミリシーベルト以下になることが確実」になること、です。原発事故の収束の見込みも立っていなかった2011年12月26日に決定されています。さらに、驚くべきことに「年間20ミリシーベルトの被ばくは、喫煙や飲酒、肥満、野菜不足よりも発がんリスクが低い」と説明されています。これはうそです。環境省の資料にも、「生活習慣による発がんリスク」を「放射線による発がんリスク」と比べる資料が掲載されていました(2014年度統一資料)が、最新版(2017年度統一資料)では、「生活習慣による発がんリスク」と「放射線による発がんリスク」とは、別々のページに掲載されるようになりました。本来、原因が異なる発がんリスクを比較することは間違っているからです。例えば、年間20ミリシーベルト被ばくした人が、野菜をきちんと食べるようになったら、発がんリスクは減るのですか?もともと野菜を十分とっている人が年間20ミリシーベルト被ばくした場合、どのようにして発がんリスクを減らすのですか。個々の市民に年間20ミリシーベルトもの被ばくを強要することが人権としてできるわけがないのです。

資料 放射線被ばくを「喫煙」「飲みすぎ」「やせすぎ」「肥満」「運動不足」と比べるのは間違い

 この政府、原子力災害対策本部が決定した、避難指示の要件「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」は無効であり、決定を破棄するべきであると考えます。

ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について
平成23 年12 月26 日 原子力災害対策本部

1. はじめに
(警戒区域及び避難指示区域に関する経緯及び現状)
(1) 本年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所事故の発生以降、国は、原子力災害の拡大防止のため、警戒区域及び避難指示区域を設定してきた。
① 同原子力発電所の事故直後から住民の生命・身体の危険を回避するために避難指示を発出した後、事故の深刻化に伴い徐々に避難指示区域を拡大し、3月12日には原子力発電所の半径20km の地域を避難指示区域に設定した。
更に、4月22日には、引き続き同原子力発電所の状況が不安定な中にあって、再び事態が深刻化し住民が一度に大量の放射線を被ばくするリスクを回避することを目的に、同じ地域を、原則立入禁止とする、より厳しい規制措置として警戒区域に設定した。
② 同じく4月22日、半径20km 以遠の地域であって、既に環境中に放出された放射性物質からの住民の被ばくを低減するため、事故発生から1年の期間内に累積線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある地域を計画的避難区域に設定した。
(2) こうした警戒区域や避難指示区域の設定は、住民や地域社会に多くの困難をもたらすものであり、原子力発電所の安全性の確認や放射線被ばくの危険性の低下など状況に変化が生じた場合には、住民の安全・安心を大前提としつつ、速やかに見直すべきものである。
(ステップ2の完了と原子力発電所の安全性の確認)
(3) 12月16日、原子力災害対策本部において、原子炉は安定状態を達成し、発電所の事故そのものは収束に至ったことが確認された。
 具体的には、原子炉の「冷温停止状態」の達成、使用済燃料プールのより安定的な冷却の確保、滞留水全体量の減少、放射性物質の飛散抑制などの目標が達成されていることから、発電所全体の安全性が総合的に確保されていると判断し、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」というステップ2の目標達成と完了を確認した。
 また、今後、使用済燃料や燃料デブリの取出し、廃炉などの中長期的な対応を実施するに当たっても、その都度状況に応じて、臨界防止、放射性物質の閉じ込め、放射線の遮へい等の対策を適切に講じることにより、発電所の安全性が確保し得ることが確認された。これらにより、福島第一原子力発電所の安全性は、引き続き確保されることを確認した。
(見直しに関する基本的考え方と今後の検討課題の提示)
(4) ステップ2の完了により原子力発電所の安全性が確認されたことから、警戒区域及び避難指示区域(①発電所半径20kmの区域及び②半径20km以遠の計画的避難区域)の見直しについて具体的な検討を開始する環境が整ったこととなる。
 今後、具体的な検討を開始するに当たり、国として、まずは見直しに関する基本的な考え方を提示することとし、見直しに当たって発生しうる諸課題への対応や新たな区域の運用については、今後、県、市町村、住民など関係者との綿密な協議・調整を行いながら検討していくこととする。

2. 区域の見直しに当たっての共通課題に対する対応方針
 今後新たに設定されることとなる区域には、それぞれの区域に特有の解決すべき課題が存在しているが、次のような区域に共通する課題も存在する。国として、個別課題の解決と併せて、これらの共通課題の解決にもしっかりと対応していくこととする。
(1) 住民の安全・安心の確保
① 住民の帰還を進めるに当たり、まずは地震・津波に起因するインフラ被害による住民への危険を回避する必要があることは言うまでもないことである。
 このため、道路や防災施設などについて最低限の応急復旧を急ぎ、必要な防災・防犯対策を講じた上で、区域特有の課題に取り組むこととする。
② さらに、放射性物質による汚染に対するおそれを絶えず抱えている住民の心情をかんがみれば、こうした物理的なリスクの排除のみならず、放射性物質による影響に関する住民の安全・安心の確保は帰還に当たっての大変重要な課題であると考えられる。
③ 原子力安全委員会は、本年8月4日に示した解除に関する考え方1において、解除日以降年間20ミリシーベルト以下となることが確実であることを、避難指示を解除するための必須の要件であるとの考えを示した。
④ この度の区域見直しの検討に当たっては、年間20ミリシーベルトの被ばくリスクについては様々な議論があったことから、内閣官房に設置されている放射性物質汚染対策顧問会議の下に「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」を設け、オープンな形で国内外の幅広い有識者に意見を表明していただくとともに、低線量被ばくに関する国内外の科学的知見や評価の整理、現場からの課題抽出などを行った。その結果、事故による被ばくリスクを自発的に選択できる他のリスク要因と単純に比較することは必ずしも適切でないものの、リスクの程度を理解する一助として評価すると、年間20ミリシーベルト以下については、健康リスクは喫煙や飲酒、肥満、野菜不足など他の発ガン要因によるリスクと比較して十分に低いものである。年間20ミリシーベルトは、除染や食品の安全管理の継続的な実施など適切な放射線防護措置を講ずることにより十分リスクを回避出来る水準であることから、今後より一層の線量低減を目指すに当たってのスタートとして用いることが適当であるとの評価が得られた。
こうした議論も経て、政府は、今回の区域の見直しに当たっても、年間20ミリシーベルト基準を用いることが適当であるとの結論に達した。
⑥ しかしながら、放射性物質による汚染に対する強い不安感を有している住民がいることも事実であり、これを払拭するための積極的な施策が必要である。
 このため、健康管理の着実な実施への支援に加え、国は、放射性物質の健康影響に関する住民の正しい理解の浸透と対策の実施のために、県や市町村と連携して、政府関係者や多方面の専門家がコミュニティレベルで住民と継続的に対話を行う体制の整備や地域に密着した専門家の育成、透明性の確保及び住民参加の観点から地域への放射線測定器の配備を行うこととする。
(2) 徹底した除染の実施と子どもへの配慮
① 国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的責任を負っていることから、放射性物質による環境汚染が住民や環境に及ぼす影響を速やかに低減し、住民の不安を一日でも早く解消するとともに、復興に向けた取組を加速させるため、国は、県、市町村、住民と連携し、責任を持って除染に取り組む覚悟である。
 現在の避難指示区域においては、国は、避難指示が解除された後も含め、放射性物質汚染対処特措法2に基づいて策定する特別地域内除染実施計画に基づいて、責任を持って着実に除染を実施することとする。② 除染の実施に当たっては、20ミリシーベルト以下の地域について、適切な優先順位をつけ、中間目標としての参考レベルを設定し、重点的かつ効率的な除染作業3を行うこととする。
 中間目標としての参考レベルとしては、例えば、現在、年間積算線量が20ミリシーベルト近傍の地点においては、まずは2年後に年間10ミリシーベルト近傍まで引き下げ、その目標が達成された場合には、次の段階として、例えば年間5ミリシーベルトという新たな参考レベルを設定し、除染作業を進めることとする。
③ また、特に子どもは放射線への感受性が強いことを考慮し、除染を始めとする被ばく線量の一層の低減に向けた対策は、子どもを優先して行うこととする。
具体的には、
(ア) 通学路、公園などの子どもの生活環境について特に優先した除染に取り組むことにより、2年後までに、子どもの年間被ばく線量が概ね60%減少した状態を実現することを目指すこと、
(イ) 特に学校再開前に除染等により校庭・園庭の空間線量率を毎時1マイクロシーベルト未満を実現すること、
(ウ) 子どもの健康管理や被ばく線量の測定とともに学校給食食材等の放射能濃度測定機器の整備促進などを実施する。
(3) インフラ復旧、雇用対策等
① これまで避難を余儀なくされていた地域においては、災害廃棄物の撤去や電気・ガス・水道などのライフライン、道路などの復旧への取組がこれから行われることとなる。
 住民が安全・安心に帰還するため、国は、上記のような生活インフラや病
院・学校などの公共施設の復旧・復興に向け、県、市町村のニーズを踏まえ、迅速に対応していくこととする。
② また、帰還した住民、避難の継続を余儀なくされている住民のいずれにとっても、雇用の確保をはじめとする生活の再建に向けた取組は何よりも重要な課題であり、安定した雇用の創出や居住の安定確保などに向け、積極的な施策を実施していく。
(4) 損害賠償の扱い

① 事故により住民が被った損害については、一義的には損害賠償により解決されていくべきものではあるが、住民の早期の生活再建に向けては、生活を再建していくために必要な費用も必要であり、東京電力任せではなく、国として積極的な関与を行う。
② 避難指示区域の見直しに伴う損害賠償の扱いについては、今後、原子力賠償紛争審査会及び関係機関において検討されることとなるが、避難期間の考え方、不動産・動産の価値の減少分の算定方法、長期間の避難や帰還が困難な場合の精神的損害の扱いなどについて議論されることが想定される。
 国は、原子力賠償紛争審査会に対して、可能な限り迅速な検討を依頼し、遅くとも避難指示区域の見直し実施までに賠償指針を提示することを要請することとする。


3. 警戒区域及び避難指示区域の見直し

 区域の見直しに関する基本的な考え方は次のとおりであるが、実際の線引きや見直しに当たって発生しうる諸課題への対応、新しい区域の運用などについては、県、市町村、住民など関係者との協議を踏まえ検討・実施していくこととする。
I. 警戒区域の解除について
(基本的考え方)
(1) 現在、東京電力福島第一原子力発電所の半径20km に設定されている警戒区域は、引き続き同原子力発電所の状況が不安定な中にあって、再び事態が深刻化し住民が一度に大量の放射線を被ばくするリスクを回避することを目的に設定されたものである。
 ステップ2の完了により、原子力発電所の安全性が確認され、今後、同原子力発電所から大量の放射性物質が放出され、住民の生命又は身体が緊急かつ重大な危険にさらされるおそれはなくなったものと判断されることから、警戒区域は、基本的には解除の手続きに入ることが妥当である。
(今後の検討課題)
(2) しかしながら、現在の警戒区域内は、地震・津波など自然災害による道路などへの被害の復旧が不十分な状況にあるなど、住民が安全に帰還するための措置が取られていないため、インフラなどの安全確認・応急復旧を行うとともに、防災・防犯対策などについて関係者間で十分に調整する必要があるなど、解除に先立ち準備を整えることが必要である。
こうした準備期間を考慮し、警戒区域の解除は、早ければ4月を目指し、大きく遅れない一定期間後に実施する方向で、県、市町村など関係者と協議を行う。
 なお、極めて線量が低くインフラ復旧などが十分に進んでいる市町村などから要望があり、関係者の合意が得られた場合には、早期に警戒区域の線引きの見直しを行うことも検討する。
II. 避難指示区域の見直しについて

(1) ステップ2の完了により原子力発電所の安全性が確認されたことから、現在設定されている避難指示区域(①発電所半径20kmの区域及び②半径20km以遠の計画的避難区域)を一体として見直すこととする。
今後速やかに県や市町村など関係者と協議を開始し、来年3月末を一つの目途に、新たな避難指示区域を設定することを目指す。
(2)新たな避難指示区域に関する基本的考え方と今後の課題に対する対応方針
① 避難指示解除準備区域
(基本的考え方)
(i) 現在の避難指示区域のうち、年間積算線量20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認された地域を「避難指示解除準備区域」に設定する。
 同区域は、当面の間は、引き続き避難指示が継続されることとなるが、除染、インフラ復旧、雇用対策など復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民の一日でも早い帰還を目指す区域である。
(ii) 電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信など日常生活に必須なインフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧し、子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗した段階で、県、市町村、住民との十分な協議を踏まえ、避難指示を解除する。
 解除に当たっては、地域の実情を十分に考慮する必要があることから、一律の取扱いとはせずに、関係するそれぞれの市町村が最も適当と考える時期に、また、同一市町村であっても段階的に解除することも可能とする。
(立入規制など区域の運用)
(i) 同区域の汚染レベルは、年間積算線量20ミリシーベルトを下回っていることが確認されており、現存被ばく状況に移行したものと見なされる。
 このため、主要道路における通過交通、住民の一時帰宅(ただし、宿泊は禁止)、公益目的の立入りなどを柔軟に認める方向で検討する。
(ii) 加えて、事業所の再開、営農の再開について、公共インフラの復旧状況
や防災・防犯対策などに関する市町村との協議を踏まえ、柔軟に認めることを検討する。
 なお、これらの立入りの際には、スクリーニングや線量管理など放射線リスクに由来する防護措置を原則不要とすることも検討する。
(除染及びインフラ復旧の迅速な実施)
(i) 国は、特別地域内除染実施計画に基づき迅速に除染を実施する。実施に当たっては、子どもの生活環境や公共施設など優先度の高い施設を中心に、地域ごとの実情を踏まえた取組を進めることを検討する。
(ii) インフラ復旧・整備については、まずは早急に状況を把握し、住民の帰還のために必要なインフラの復旧を行うなど、生活環境の整備を迅速に実施することを検討する。
(局所的に線量の高い地点の扱い)
(i) 避難指示解除準備区域が設定される地域においても、局所的に線量の高い地点が存在し得る。
こうした地点については、避難指示が継続されている地域内に存在する地点であることにかんがみ、居住制限区域(後述)や特定避難勧奨地点を設定することはせずに、優先して除染を実施することにより早期の線量低減を図ることを検討する。
(ii) なお、避難指示区域外において現在設定されている特定避難勧奨地点についても、その解除に向けた検討を開始する。
② 居住制限区域

(区域の定義及び性格)
(i) 現在の避難指示区域のうち、現時点からの年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難を継続することを求める地域を「居住制限区域」に設定する。
同区域においては、将来的に住民が帰還し、コミュニティを再建することを目指し、除染やインフラ復旧などを計画的に実施する。
(ii) 同区域は、除染や放射性物質の自然減衰などによって、住民が受ける年間積算線量が20ミリシーベルト以下であることが確実であることが確認された場合には、「避難指示解除準備区域」に移行することとする。
(立入規制など区域の運用)
 同区域においては、基本的に現在の計画的避難区域と同様の運用を行う方向で検討する。
その場合、同区域は、原則、住民の避難が求められる地域であるが、例外的に、住民の一時帰宅(ただし、宿泊は禁止)、通過交通、公共目的の立入り(インフラ復旧、防災目的など)などが認められることとなる。
(除染及びインフラ復旧の計画的実施)
(i) 国は、特別地域内除染実施計画に基づき、市町村と連携して、計画的に除染を実施する。
(ii) インフラ復旧・整備については、作業者の安全確保に十分配慮しつつ、まずは早急にインフラ状況の調査を行うことに加えて、市町村毎の復興再生のためのプランに基づいた対応を行うことを検討する。
 ただし、電気・水道・通信など防災上不可欠な施設や基幹道路、廃棄物処理施設・下水処理場など、当該地域を含む広域の地域経済社会の復興のために早期の復旧が強く要望されるものについては、特に迅速に除染を実施し、施設の復旧・整備を進める方向で検討する。
③ 帰還困難区域

(基本的考え方)
(i) 居住制限区域の一部の地域においては、放射性物質による汚染レベルが極めて高く、避難指示の解除までに要する期間が長期にならざるを得ない地域が存在する。
 こうした地域では除染の効果が限定的であり、また周辺線量の高さから作業員の被ばく防護の必要性が高く、インフラ復旧についても広範かつ大規模な作業が困難である可能性が高い。
 さらに、立ち入った際の被ばく管理及び放射性物質の汚染拡散防止の観点から、その境界において一定の物理的防護措置を講じざるを得ず、住民の立入りを厳しく制約せざるを得ない可能性が高い。
(ii) このため、長期間、帰還が困難であることが予想される区域を「帰還困難区域」として特定し、関連する市町村や住民と緊密な意見交換を行いながら、長期化する避難生活や生活再建のあり方、自治体機能の維持などについて、国として責任を持って対応していくこととする。
(区域の定義及び性格)
(i) 長期間、具体的には5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域を「帰還困難区域」に設定する。
(ii) 同区域においては、将来にわたって居住を制限することを原則とし、線引きは少なくとも5年間は固定することとする。
ただし、その場合であっても、将来時点における放射性物質による汚染レベルの状況、関連する市町村の復興再生のためのプランの内容やその実施状況などによっては、その取扱いについて見直しを行うことを検討する。(立入規制など区域の運用)
(i) 同区域の汚染レベルは非常に高いことから、区域境界において、バリケードなど物理的な防護措置を実施し、住民に対して避難の徹底を求めることを検討する。
 その場合でも、例外的に、可能な限り住民の意向に配慮した形で住民の一時立入りを実施することを検討する。一時立入りを実施する場合には、スクリーニングを確実に実施し個人線量管理や防護装備の着用を徹底する。
(ii) 市町村など関係者から特に要望があり合意が得られ、アクセスコントロールが可能な常磐道については、必要な対策等の諸課題を検討の上、除染及び工事を実施するとともに、十分な防災・防犯対策、必要な被ばく防護措置などが講じられることを前提に、早期に開通することを目指す。
(除染及びインフラ復旧)
 高線量地域である帰還困難区域の除染やインフラ復旧については、モデル事業などの結果などを踏まえ、県、市町村や住民など関係者と協議の上、対応の方向性を検討する。
(帰還困難区域の不動産の取扱い)
 帰還困難区域の不動産の取扱いについて、損害賠償上の扱いや各市町村の復興再生に関する考え方などを踏まえ、今後、県、市町村、住民と密に意見交換を行い、帰還困難区域の住民に対する支援パッケージ全体を議論する中で、検討を進める。

4. おわりに
 3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から約9ヶ月が経過した現在も、多くの住民が長く困難な避難生活を耐えている。
 避難指示区域の種類毎、市町村毎、個人毎に状況が大きく異なるため、市町村や住民の意向を十分に把握した上で、きめ細やかな対応を行う必要がある。
 また、避難中から帰還、そして生活再建まで切れ目のない支援が必要であり、県、市町村、住民などに真正面から向き合い、政府一丸となって、総合的な支援策を責任を持って講じていくこととする。

図:参考資料 線量分布 2011年11月5日換算 年間20ミリシーベルトの地域