大間原発が来年2020年建設を再開するかもしれません。MOX燃料だけで動かす原発は世界初めてです。MOX燃料とは、ウランにプルトニウムを付加した核燃料です。
日本は47トンものプルトニウムをため込んでいます。そのうち31.1トンが核兵器の原料になるプルトニウム239です。このプルトニウムを消費するのは、MOX燃料を使う原発(プルサーマル発電と言います)だけです。
現在、稼働している、MOX燃料を使っている原発は、高浜3号機、高浜4号機、伊方4号機、玄海3号機です。2019年2月22日、日本原電が40年超えの老朽原発、東海第二原発の再稼働を表明しました。実は、これもMOX燃料を使う原発なのです。
これら通常の原発でMOX燃料を使うにしても、核燃料の一部しか使えません。ですから、原発1基で消費できるプルトニウムは年間0.4トン程度。47トンもプルトニウムが消費できるのは、40年も先の話になります。しかし、大間原発は1基で年間1.1トン消費できる、と言われています。ですから、日本がプルトニウムを保有しているのは、核兵器を作るためではないか、という海外の懸念を払しょくするためにも、政府は大間原発を建設し、運転させたいのです。
原子力規制委員会は、青森県の六ケ所村の再処理工場の新規制基準審査を進めています。2019年中にも審査合格が出されようとしています。この六ケ所再処理工場は、1997年完成の予定が設計見直しやトラブルで、24回も延期されています。ここでMOX燃料のためのプルトニウムを、使用済み核燃料から抽出するのです。六ケ所再処理工場再稼働と大間原発建設は、右下の福井新聞が書くようにセットです。また、日本原燃は、この六ケ所再処理工場で抽出したプルトニウムを、フランスのメロックス社に委託して、MOX燃料の製造を行う計画です。
「電源開発 仏メロックス工場で 大間MOX燃料製造へ 日本原子力産業協会 2009年4月9日」
プルトニウム239はほんの少し、吸い込んだだけでも、肺がんや骨肉腫を引き起こす猛毒の放射性物質です。六ケ所再処理工場で、使用済み核燃料の中の死の灰から、プルトニウムを取り出しますが、その時に核燃料被覆管を切るために、気体の放射性物質トリチウムが大量に空気中に放出されます。イギリス、フランスの再処理工場の近くでは子どもたちの白血病が増えています。原発が運転してできた死の灰も危険なのに、その死の灰からプルトニウムを取り出す際にトリチウムもまき散らす。さらに猛毒のプルトニウムをウランに混ぜて、更に、管理の難しい、恐ろしく放射能の高い死の灰を作り出す。このような死の核燃料サイクルを動かすべきではありません。
日本政府はプルトニウムをMOX燃料として燃やすのではなく、国際管理にするべく、プルトニウムを放棄すべきです。核兵器禁止条約に参加すると同時に、プルトニウム国際管理こそ主張すべきです。
以下、大間原発の記事(東京新聞2018年9月5日)、六ケ所再処理工場の記事(東京新聞2019年1月29日)、六ケ所再処理工場の記事(東奥日報2019年3月1日)、大間原発の記事(福井新聞2018年9月5日)を紹介します。
大間原発 新基準工事2年遅れ 運転開始 2026度ごろ
2018年9月5日 東京新聞朝刊 3面
電源開発(Jパワー)の浦島彰人副社長は2018年9月4日、青森県庁に佐々木郁夫副知事を訪ね、建設中の大間原発(同県大間町)の新規制基準に対応するための工事の開始時期が約2年遅れて2020年後半になると報告した。同社は原子炉建設などの工事に5年、試運転に1年を見込み、2026年度ごろの運転開始を目指す。
会談で浦島副社長は「今後も(原子力規制委員会での)審査に時間がかかる。審査に真摯(しんし)に対応し、早期の許認可取得に向け最大限努力する」と工事延期に理解を求めた。佐々木副知事は「度重なる工事時期の見直しだ。県民、関係自治体の理解が得られるようお願いしたい」と応じた。
再処理工場 適合へ最終盤 規制委審査 プルトニウム保有増
東京新聞 2019年1月29日 朝刊3面
原発の使用済み核燃料を化学処理(再処理)して、燃料に再利用するプルトニウムなどを取り出す日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)を巡り、原子力規制委員会は2019年1月28日、審査会合を開いた。本格稼働に必要な審査では昨年9月に主要な議論を終えたが、その後、再処理工場に特有の事故対策を確認する必要が生じ、原燃に追加説明を求めていた。会合では異論が出ず、これで審査適合確実の見通しとなった。
審査で議論した安全対策全般を事務局がまとめる「審査書案」の作成作業は詰めの段階となり、作成後、規制委が会合で了承すれば事実上の適合となり、意見公募などを経て正式適合となる。
再処理工場は、使用済み燃料を再利用する国策「核燃料サイクル」の中核施設。1993年の着工後、トラブルなどで完成が20年以上遅れているが、原燃は2021年度上半期の完成を目指している。総事業費は13兆9300億円の見通し。審査に正式合格しても本格稼働は完成以降になる。
使用済み燃料から抽出したプルトニウムは、核兵器に転用可能とされるが、再利用したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料は、燃やす原発の再稼働が進まない。そうした現状で再処理工場が稼働すればプルトニウムの大量保有につながりかねず、国際社会から厳しい目を向けられる可能性がある。
原燃は会合後、規制委に指摘された事故対策の事項などを反映させた「補正書」を遅くとも3月末までに提出する意向を示した。
これまでの審査では規制委が昨年9月、地震や津波対策などに関する主要な議論を終え、事務局の原子力規制庁が審査書案の作成に入った。
六ケ所再処理工場適合審査 原燃が近く補正書提出
日本原燃の増田尚宏社長は2019年2月28日、六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)の新規制基準適合性審査に関して、来週中に事業変更許可申請の補正申請書を原子力規制委員会に提出する考えを示した。
2019年2月18日に開かれた原燃と規制委との意見交換で、増田社長は補正申請書を同月中にも提出したい意向を示していた。
増田社長は2月28日に青森市内で開いた定例会見で、現在、これまでの審査会合で説明した内容や規制委側から出たコメントを補正申請書に反映している-とし、「2019年3月8日までには提出することで準備が着々と進んでいる」と述べた。
また、これまで提出した補正申請書に誤記や落丁といったミスが相次いだことを踏まえ「補正書としての品質をしっかりとして出すことが大事だと思っている」と語った。
原燃側からの補正申請書提出後、原子力規制庁が事実上の合格証にあたる「審査書案」の取りまとめを本格化させる。
プル消費の「切り札」当て外れ 再処理工場稼働にも影響
2018年9月5日 午前5時00分 福井新聞
プルトニウム消費の「切り札」とされる電源開発大間原発(青森県大間町)の運転開始が2018年9月4日、先送りの公算となった。国の原子力委員会は、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)について、現行のプルトニウム保有量の水準を超えないように制限すべきだとの指針を示しており、工場稼働にも影響を与えそうだ。
「大間原発に期待されるプルトニウム消費への寄与は大きい」。大間原発の運転開始遅れについて、日本原燃の担当者は落胆を隠せなかった。同原発は全ての核燃料にプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を使う世界初の商業炉。大間原発1基で年間、核分裂性のプルトニウムを約1・1トン消費できる。
通常の原発でMOX燃料を燃やす「プルサーマル発電」では、年間で消費できるのは1基当たり多くても0・4トン程度。東京電力福島第1原発事故後、十分に消費できるほど原発の再稼働が進まず、現在プルサーマル発電を実施しているのは関西電力高浜3、4号機と九州電力玄海3号機(佐賀県)の3基だけ。四国電力伊方3号機(愛媛県)は広島高裁による運転差し止めの仮処分決定により現在停止中。大間原発でのプルトニウム消費の期待は大きかった。
背景にあるのは、日本の保有プルトニウムに対する米国など国際社会の厳しい視線だ。日本は非核分裂性も合わせ、国内外に約47トンのプルトニウムを持つ。これは核兵器約6000発分とされる。
原子力委は米国の要請に応じる形で2018年7月、2021年度完成予定の再処理工場の稼働を制限する新たな指針を決めたばかり。再処理工場はフル稼働すれば年間約8トンのプルトニウムを生産する。大間原発の運転開始は2024年度ごろから2026年度ごろにずれ込む見通しで、再処理工場が稼働しても当面限定的になりそうだ。
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