2019年2月28日、キム・ジョンウン朝鮮民主主義共和国労働党委員長と、ドナルド・トランプ米大統領との首脳会談が行われました。首脳会談は、不調に終り、何一つ合意文書や声明を出すことができませんでした。NHKや各新聞は、くだらない解説で、お茶を濁しています。しかし、どの報道も、今年2019年1月に、アメリカが小型核兵器の製造を開始したことに触れていません。

  そもそも、今年2019年1月に、アメリカが小型核兵器の製造を開始したことを報道したのは、東京新聞2019年1月30日朝刊1面、「米、小型核製造を開始 トランプ政権 ロシアに対抗」と日本共産党の赤旗2019年2月1日7面、「米、低爆発力核弾頭の製造開始 核関連、54兆円に  米予算局試算 10年で戦力強化へ」だけです。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞は2019年1月および2月に、アメリカが小型核兵器の製造開始を報道していません。

 アメリカが北朝鮮でも使える小型核兵器の製造開始したのに、北朝鮮が核兵器を放棄することがありえるでしょうか。この点に言及しない、NHKや大新聞は見るに値しない、読むに値しない、と思います。

 ただし、毎日新聞の昨年2018年2月4日朝刊の記事はいい記事でした。なぜ、今回、この小型核兵器の製造開始を毎日新聞が報道しないのか、理解に苦しみます。すべて、北朝鮮の「核への固執」で首脳会談の不調を説明するためでしょうか。ますます、日本のマスコミが、真実を報道する力を失っています。もう、テレビやインターネットのニュースを見たり、新聞を読む時間より、SNSで信頼できる情報発信者を見つけ、読む時間を大切にしないと、世界やにで起きていることは理解できません。

 ともかく、今日2019年2月28日のNHKのニュース解説は、アメリカの核開発について、一切言及せず、北朝鮮に「裏切られてきた歴史」を視聴者に刷り込む、ひどい内容でした。

 3つの重要な記事を紹介します。

[1]2018年2月8日 毎日新聞

検証 トランプ政権 新小型核開発へ(その2止) 「新冷戦」緊張高まる 米小型核、露に対抗

毎日新聞 2018年2月4日 東京朝刊

 

 「数多くの数量と種類の爆発力の小さな核兵器を保有し、地域紛争で限定的に先制使用することが、(米国に対する)優位性をもたらすというロシアの考えは誤りだ」。2日にトランプ米政権が発表した「核態勢見直し(NPR)」は、こうしたロシアの考えをただすことが「戦略的に重要だ」と強調している。

 「冷戦の勝利者である米国は、唯一生き残った超大国として世界に君臨していた。ソ連崩壊によってロシアが感じた屈辱の深さを米国は過小評価してきた。ロシアは深く傷つき、米国は高慢だと恨みを深めていた」。米中央情報局(CIA)で長らく核兵器の役割を考え続け、ブッシュ(子)とオバマの両政権で国防長官を務めたロバート・ゲーツ氏は回顧録にこう記す。

 2007年2月、ドイツ南部のミュンヘンで開かれた安全保障政策会議。ゲーツ氏も出席したこの会議で、プーチン露大統領は演説で「軍事力と政策決定の(世界の中での)中心が一つしかない、非民主的な一極支配」と批判した。これほど激しい言葉で米国に対抗心を示したのは初めて。翌08年、ロシアと親欧米のジョージア(旧グルジア)の両軍が衝突する紛争が起きる。

 通常兵器の戦力で米国に大きく劣るロシアはそれ以前から、核兵器の使用条件の緩和に着手。00年4月の軍事ドクトリン改正で「通常兵器を用いた大規模侵略への対応として核兵器使用の権利がある」と定め、イラク開戦後の03年10月には「戦略抑止力の限定的使用を検討する」として、「小型核の先制使用」の検討を本格化したとされる。

 一方、今回のNPRの取りまとめを主導したマティス国防長官は「ロシアは米国と戦略的な競争相手になろうとしている。10年前と違い、彼らとはもはや協力的な関与はできない」と突き放す。壊滅的な威力がある戦略核兵器の使用は非現実的である一方、小型核を使う戦術核兵器の戦力では米国はロシアに劣る。米国からすれば、この分野でも同等の対抗手段を持つことで、ロシアを抑止するのが狙いとみられる。

 米ソ両核大国が核戦争一歩直前に至った1962年のキューバ・ミサイル危機。その研究で知られるハーバード大学のグレアム・アリソン教授は、現在の米露間には「対話や協力、そして妥協しようとする考えが無い」と嘆く。ケネディ、フルシチョフの米ソ両首脳が危機再発防止のためホットラインを開設、核軍縮を模索し始めたように、「今こそ両国は過去に直面した危機に学ぶべきだ」と毎日新聞の取材に答えた。

 米露両国は10年に「新戦略兵器削減条約」(新START)に合意して以後、8年近く新たな核軍縮交渉に臨んでいない。これはキューバ危機以後、最長の「空白」期間だ。米露「新冷戦」は改善の兆しが見られない中で、核兵器の使用の可能性を高め合う新たな段階を迎えつつある。

海洋発射型 弾力運用の思惑

 トランプ米政権がNPRで新規導入を打ち出した2種類の核兵器は、いずれも海洋発射型だ。短期的には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載用の核弾頭を改良、爆発力の小さい低出力核弾頭(小型核)にして、戦略原子力潜水艦に配備。さらに、長期的には核巡航ミサイル(SLCM)を開発する方針を示した。

 ロシアとの緊張が高まる欧州ではなく、小型核を潜水艦に配備する理由は、ドイツやオランダなどは国民の反核感情が強く、核配備は「政治的に困難」(米核専門家)という事情があるためだ。NPRは潜水艦への配備は「ホスト国が不要」と記している。また、SLBMは射程が数千キロに及ぶため、欧州以外の他の地域で起きる紛争にも対処したいという思惑もある。

 具体的には、米国務省のフリート次官補代行(軍備管理担当)が2日の会見で「ロシアだけがNPRの焦点ではない」と中国、北朝鮮、イランの脅威にも触れたことがヒントになる。例えばイラン。2015年7月に米国など主要6カ国と核合意を結び、核兵器開発にもつながるウラン濃縮活動を縮小しているが、イランを敵視するトランプ政権は「意思さえあれば1年以内に核兵器を製造する能力を持つ」との立場を強調している。

 一方、核専門家が中心のシンクタンク「全米科学者連盟(FAS)」のハンス・クリスチャンセン氏は、小型核の定義をTNT火薬に換算した爆発威力20キロトン以下とした場合、米国はすでに1000発以上を保有すると分析している。

 クリスチャンセン氏によると、それにもかかわらず米国では、あらゆる事態に柔軟に対応できる新型核兵器の導入を求める声が、ブッシュ(子)政権時代からくすぶり始めていたという。ロシアが新型戦術弾道ミサイル「イスカンデルM」を導入したことで、それは顕著になった。またロシアが開発した核巡航ミサイル「カリブル」について、米国は、米ソが合意した中距離核戦力(INF)全廃条約違反と非難。NPRが核巡航ミサイル導入を目指すのは対抗措置の一環だ。

 冷戦崩壊直後から、ロシアの核兵器削減計画に関わり、オバマ前政権の「核兵器のない世界」構想を後押ししたナン元上院議員は、イランとの核交渉に携わったモニツ前エネルギー長官と1日、連名で米メディアに寄稿。「世界は新たな核時代に突入してしまった。大惨事の触媒になりかねない」と新型核兵器の導入を批判している。【ワシントン会川晴之、モスクワ杉尾直哉】


 ■ことば

核態勢見直し(NPR)

 冷戦終結後の安全保障環境の変化に応じた米国の核戦略の指針で、1994年にクリントン政権が初めて策定。政権が代わるたびに改変される。今回は4回目で、「核兵器のない世界」の実現を掲げたオバマ前政権時代の2010年4月以来、約8年ぶり。

[2]東京新聞2019年1月30日朝刊1面「米、小型核製造を開始 トランプ政権 ロシアに対抗」

  米、小型核製造を開始 トランプ政権 ロシアに対抗
  東京新聞 2019年1月30日 朝刊1面 

 【ワシントン=後藤孝好】米エネルギー省は、トランプ政権がロシアに対抗する狙いで、爆発力を抑えた低出力の小型核弾頭の製造を開始したと明らかにした。米公共ラジオ(NPR)が二十八日に伝えたところによると、十月までに少数の核弾頭が海軍に引き渡される計画。トランプ大統領が表明した中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を正式通告する期限を二月二日に控え、軍拡競争を挑む政権の姿勢が鮮明になった。

 昨年二月に公表した新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」で、爆発力が低く「使える核兵器」とされる戦術核の小型核を開発すると明記。ロシアや中国の核戦力増強、北朝鮮やイランの核開発に対抗する姿勢を打ち出していた。

 報道によると、同省国家核安全保障局はテキサス州の核施設で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する新たな小型核弾頭W76-2を製造。全米科学者連盟の核専門家クリステンセン氏は、現行の核弾頭W76-1の爆発規模は約百キロトン(TNT火薬換算)だが、W76-2は五~七キロトンと分析する。広島に投下された原爆は約十五キロトンとされる。

 トランプ政権は、小型核を多数保有するロシアについて「先制使用をちらつかせている」と懸念。INF条約に違反し新型ミサイルを配備するロシアに対抗するため小型核開発で抑止力を強化すべきだとしていた。

[3]日本共産党の赤旗2019年2月1日7面「米、低爆発力核弾頭の製造開始 核関連、54兆円に  米予算局試算 10年で戦力強化へ」