放射線医学総合研究所が誰にも説明せずに、こっそり「被曝早見表」を改訂していました。朝日新聞2013年7月24日夕刊 1面に掲載された記事「被曝早見表、説明せず改訂」放医研 周知不足で混乱。

 また、翌日7月25日の朝日新聞朝刊7面にもほぼ同様の記事が載りました。

「被曝線量の数値、混在 放医研『早見表』改訂」

 この2つの記事で驚いたことに、自然放射線、特に食品から受ける被ばく線量がこれまでの3倍の数値に変更されています。これまでは「食品から0.35ミリシーベルト」と書いてあったのが、いきなり「食品から0.99ミリシーベルト」と3倍にもなっています。2011年3月11日の東日本大震災による、東京電力福島第一原子力発電所事故によって大量の放射性物質がまき散らされました。このため1日にセシウム137などを3~4ベクレル(もっと少ない想定か?)摂取することから内部被ばくの影響が、自然放射能であるカリウム40から受ける内部被ばくの影響の2倍くらいであることと放射線医学総合研究所が考えている、ということです。すなわち、食品中の人工放射能であるセシウム134、137、ストロンチウム90などが東日本産の食品中に含まれている以上、食品から受ける内部被ばくの影響はこれまでの3倍になったと放医研も考えている、ということです。

 ただし、放医研は自然放射能カリウム40が出すベータ線、ガンマ線の影響とセシウム134、137が出すベータ線、ガンマ線の影響をほぼ同等と考えています。

 これはまったくの間違いです。カリウム40は地球誕生以来生物の進化の過程で付き合ってきた放射性物質です。現在ではカリウムが100gあるとすると、その中に放射線を出すカリウム40が0.0117g含まれています。生物はこの放射線を出すカリウムが1カ所にたまらないように、絶えず新しいカリウムを取り入れると同時に古いカリウムを排出する仕組みを作り上げています。これを「代謝」と言いますが、カリウムにはこの代謝経路が7つくらいある、と言われています。

 ですから、体重60kgくらいの大人では体内にだいたい4000ベクレルのカリウム40があると言われていますが、その量は4000ベクレル程度でそれ以上増えていきません。

 ところが、このカリウムと似ているセシウムはカリウムと同様に植物、そして動物の体内に取り込まれていきますが、放射線を出すセシウム134、137が全地球上にばらまかれたのは1940年代のアメリカによる原爆開発とそれに伴う原発の開発以降のことです。

 地球上の生物がこの放射性セシウムと付き合うのはたかだか70年くらいのことに過ぎません。カリウムのように確立された代謝経路がないのではないでしょうか。

 事実、きのこ、川魚、山菜など放射性セシウムをためやすい食品を何も気にせず食べている人の中には放射性セシウムが数万ベクレルたまっていたことが報告されています。(南相馬市総合病院で勤務する、坪倉正治氏が行った測定では、4名の高齢者の方から1万ベクレルを超える数値、そのうち1人は、2万ベクレルを超えた数値が出ました。2012年7月

 また、セシウム137はベータ崩壊してバリウム137になりますが、細胞内に取り込まれたバリウムが毒性を持っていて、それが放射線ととに生物に悪影響を及ぼす可能性をユーリ・I・バンダジェフスキー博士が指摘してます。

 自然放射能カリウム40とセシウム137をほぼ同等に扱う、放医研の内部被ばく影響のモデルは間違っています。少なくとも300倍近い影響の評価ミス(セシウム137の評価は実際には放医研の300倍近いのでは)があるのではないでしょうか。(ECRR2010勧告)

 また、これまで広島、長崎の被爆者の寿命調査(LSS)に基づき、「100ミリシーベルト以下ではがんの過剰発生は見られない」と放医研は言ってきました。この放医研の学説が日本中の「放射線の専門家」の寄りどころになって、「100ミリシーベルトまでは安全」と多くの「放射線の専門家」たちが日本全国津々浦々で講演してきました。

 これが突然

「100mSv以下ではがんの過剰発生がみられない」

⇒「100mSv超ではがん死亡のリスクが線量とともに徐々に増えることが明らかになっている」

に変わっています。これは100ミリシーベルト以下の低線量でのがん罹患率について否定することができなくなったからではないでしょうか。福島の子どもたちは誰1人100ミリシーベルト浴びた者はいないことになっています。しかし、すでに12名の小児甲状腺がんの患者と15名の疑いの子どもたちが出ています。事実が「100ミリシーベルト以下は安全」理論を否定しています。

 放医研はベラルーシ、ウクライナ、ロシアの医師たちに学び、低線量被ばくの真実について国民に正しく伝えるべきです。