文部科学省や埼玉県は「埼玉県の通常の放射線の範囲は0.031~0.060マイクロシーベルト/時の範囲である」と言っています。日新聞で報道される、例えば「埼玉県さいたま市の放射線量0.054マイクロシーベルト/時」は通常の範囲内なのでしょうか?

 これはまったくのうそです。かつての埼玉県さいたま市の自然放射線の平均のレベルは0.034マイクロシーベルト/時でした。ですから、0.054は通常の約1.5倍。0.068もあれば通常の2倍です。0.10は自然放射線の3倍ということになります。

 以下が原発事故前1年間の埼玉県の放射線量の最高値、最低値、1日の平均値です。この数値をていねいに見ていくと、1日の平均値は0.032~0.036の範囲に95%が入ります。文科省や埼玉県が行っている、「埼玉県の通常の自然放射線の範囲は0.031~0.060」の0.060マイクロシーベルト/時は、1年間でたった1度、2010年12月8日の最高値ただ1つだけです。これを通常の自然放射線の範囲とすることは無理があります。原発前1年間のデータを見ても、通常の放射線の範囲は「0.032~0.036マイクロシーベルト/時」です。つまり、平均値を取れば0.034マイクロシーベルト/時です。

 

 

  そして、旧科学技術庁(文部科学省に放射線モニタリング業務は移行)が日本全国の小中高校等に放射線量計「はかるくん」を無料で貸し出しています。そのデータを集め、各都道府県の自然放射線の平均値を出しています。以下は1994年の「はかるくん」による自然放射線の平均値です。みなさんの地域の自然放射線が原発事故前にいくつだったのか、ご確認下さい。そして、その2倍、3倍であれば、明らかに異常です。自然放射線の10倍もあれば、いずれ健康被害が出てもおかしくないレベルであることにもご注意下さい。埼玉県の自然放射線は1994年ではここでも0.034マイクロシーベルト/時です。

 政府は空間線量0.23マイクロシーベルト/時で「年間1ミリシーベルト」に相当する、と言い、この0.23マイクロシーベルト/時を超える地域を「汚染状況重点調査地域」として指定し、除染に対する補助金を出しています。

 しかし、「空間線量0.23マイクロシーベルト/時で年間1ミリシーベルトに相当する」というのはでたらめです。本来、外部被ばくと内部被ばくの両方の合計で1ミリシーベルト以上の被ばくをさせてはならない、にもかかわらず、外部被ばくだけで1ミリシーベルトを想定しているからです。

 実際には1kmメッシュで土壌測定を行った常総生協のデータを見ると、空間線量0.23マイクロシーベルト/時での土地にはセシウム134、137合計7万~7万8000ベクレル/m2の汚染があります。スウェーデンのマーチン・トンデルは、セシウム137で10万ベクレル/m2のスウェーデン西北部の汚染地域で1988年から1996年の9年間で発ガン率が11%増だったという報告があります。

常総生協 土壌沈着量測定結果

スウェーデンでセシウム137 10万ベクレル/m2の地域でガン発生率が11%増えた マーチン・トンデル論文

 

 空間線量0.23マイクロシーベルト/時はこのセシウム137で10万ベクレル/m2の7割に相当する可能性があり、除染基準ではなく、住民避難の基準とすべき数値です。

原発事故前の自然放射線の調べかた

文部科学省 日本の環境放射能と放射線
 http://www.kankyo-hoshano.go.jp/kl_db/servlet/com_s_index

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