[解説]
2019年9月1日、東京電力はやっと、1/2号機排気筒(高さ120m)の最上部の切断、撤去に成功しました。朝日新聞2019年9月2日朝刊も、報道していますが、なぜか、朝日新聞東京版は今回、遠隔操作するのではなく、作業員を投入した事実を報道しませんでした。しかし、朝日新聞福島版では予定になかった作業員投入を報道しています。
これは何なのでしょうか?以下は朝日新聞2019年9月2日朝日新聞朝刊の福島版、東京版、そして東京版他で伝えられた朝日新聞8月2日朝刊の記事です。8月2日の記事では、作業員の被曝を避けるために遠隔操作、とあります。すなわち、東京版を読んでいる人には、9月1日の1/2号機排気筒最上部の切断、撤去は遠隔操作で行われ、作業員の被曝は避けられた、と思うのではないでしょうか。朝日新聞は東電福島第一原発の廃炉作業は、「安全に」「作業員の被曝も少なく」行われている、というイメージ操作をしているのではないでしょうか?
福島県民と東京都民の原発の状況認識のギャップはこうして作られていくのです。
[追記] 2019年9月3日 5:10am
以下、2019年9月2日の朝日新聞福島県版記事では、「頂上付近の放射線量は30マイクロシーベルト」とありますが、これは誤報の可能性があります。東京新聞原発取材班のツィートでは、「120m地点の放射線量は毎時0.08ミリシーベルト。」2019年9月1日14:02のツィート。つまり、80マイクロシーベルト/時、とあります。東京新聞原発取材班さんに、東京新聞原発取材班と朝日新聞の記事との齟齬についてを聞いたところ、東京新聞原発取材班さんから出典を示し、説明がありました。
東京新聞原発取材班
@kochigen2017
出典は下記です。今年4月公表の調査結果
https://twitter.com/kochigen2017/status/1168413236976185344?s=19
2019年9月2日 15:39
この出典は2019年4月25日の東京電力の資料です。
福島第一原子力発電所1/2号機排気筒解体計画について(準備作業・解体前調査の報告) 東京電力 2019年4月25日
これを読むと朝日新聞の記者が0.30mSv/hを30マイクロシーベルト/時を勘違いした可能性が高いです。
すなわち、朝日新聞の記者は、上記資料の3ページ、「筒身外部の線量(γ線)は,0.07~0.30mSv/hであった。」(東京電力2019年4月13日および4月28日調査、筒身から5~7m離れた位置で測定。上記資料参照。)から、0.30mSv/hを計算間違いをして、30ミリシーベルト/時、と書いたのではないでしょうか。ちなみに、0.30mSv/hが計測されたのは、最頂部ではなく、高さ60メートル付近。また、0.30mSv/hとは30マイクロシーベルト/時ではなく、300マイクロシーベルト/時です。朝日新聞の記者は二重の間違いを犯したことになります。
作業員3人の方々は、高さ120メートルの、空間線量80マイクロシーベルト/時の場所で作業し、約2時間の作業で0.2ミリシーベルトの被ばくをしました。
以下は、2019年9月3日 5:20am現在の福島第一原発敷地境界ダストモニタです。2019年9月1日、2日、3日とかなりの放射能が環境中に放出されていることが読み取れます。
ここ数週間は、少なくとも東日本は、屋内外でのマスクの着用、外出後すぐに洗顔手洗い(眼も洗う)、すぐシャワー、室内着への着替えを励行した方が良さそうです。
[福島版]
福島)第一原発排気筒の解体 異例の作業員投入
石塚広志
2019年9月2日 朝日新聞 福島版
東京電力福島第一原発の1、2号機の共用排気筒(高さ120メートル、直径3・2メートル)の解体作業で1日、ようやく頭頂部がつり下ろされた。だが、この日、作業員3人がゴンドラで上がるという異例の作業が行われた。被曝(ひばく)の恐れから、作業は遠隔操作を主としているが、早くも現場に人の投入という「最終手段」が使われた形となった。
東電によると、頂上に取り付けられた切断用の装置の電源には二つの発電機があるが、8月31日午後7時半ごろ、主電源が燃料切れとなり、予備電源を起動させようとしたが動かなかったという。
解体部分はすでに筒状の周囲の9割以上を切り込み、装置を取り外すと頭頂部が落下するリスクがあった。そのため、作業を行う大熊町の建設会社「エイブル」の作業員3人が1日に頂上に行くことになった。
午前5時40分ごろ、ゴンドラがつり上げられ、2時間半ほど燃料補給や点検作業をしたという。頂上付近の放射線量は30マイクロシーベルト程度で、東電は大きな被曝にはならないとみている。切り取りの作業は正午前に再開し、午後3時ごろ完了。午後4時すぎ、頭頂部(約2メートル、約4トン)が地上に下ろされた。
解体作業は8月1日から始まり、翌2日に頭頂部がつり下ろされる予定だったが、装置のトラブルなどで断続的に中断。開始1カ月でようやく一つの工程が終わった。(石塚広志)
[東京版]
1日の予定が作業に1カ月 福島第一、排気筒の一部切断
2019年9月2日 朝日新聞 朝刊27面
東京電力福島第一原発の1、2号機の共用排気筒(高さ120メートル、直径3・2メートル)の解体で、最初の作業となる頭頂部(長さ約2メートル、約4トン)の切断が1日、ようやく終わった。解体作業は8月1日に開始。頭頂部の切断は8月2日の1日間のみで終える予定だったが、装置のトラブルなどが相次ぎ、約1カ月かかった。
解体装置の4枚の回転刃の摩耗が想定より早く、すり減ったり、止まったりして、作業は計5回中断した。熱中症になった作業員もいた。
東電は「初めての作業で、慎重に進めたこともあり、想定より時間を要した。予備日などに作業をすることで今年度内の完了を目指したい」とし、計画に変更はないとしている。(石塚広志)
[2019年8月2日 東京版での報道]
高い放射線量、遠隔で操作 作業員の被曝対策 福島第一排気筒解体
2019年8月2日朝日新聞 朝刊3面
東京電力福島第一原発の排気筒の解体作業が1日、始まった。排気筒は事故時の「ベント(排気)」で放射性物質を含む水蒸気を放出するのに使われた象徴的な設備だ。今も高濃度の放射性物質に汚染されており、遠隔操作の難しい作業になる。相次ぐトラブルで遅れていた工事にようやく取りかかった。▼1面参照
解体されるのは、原発敷地内にある4本のうちの1本で、炉心溶融事故を起こした1、2号機の共用排気筒(高さ120メートル、直径3・2メートル)。1号機建屋の水素爆発の影響で、排気筒を支える支柱のつなぎ目が破断し、劣化が進んでいた。原子力規制委員会から「倒れると危険だ」と指摘され、東電は16年に解体する方針を示していた。
解体は作業員の被曝(ひばく)を減らすため、200メートル離れた高台に設置した、大型バスを改造した遠隔操作室で作業する。約140台のカメラ映像を見ながら、大型クレーンでつり上げた解体装置を動かす。作業初日は午前7時半ごろから装置のつり上げを始め、筒の周りにあるはしごや電線管などの切断にとりかかる予定だった。だが、通信トラブルで装置の一部が動かず、昼過ぎから作業が始まった。2日から筒本体を輪切りにする作業に取りかかる。解体後は敷地内で保管する。
当初は3月に始める予定だったが、追加の安全対策が必要になったり、東電がクレーンの設計図の確認を怠って高さが足りなかったりして延期された。今年度中に排気筒の上半分の解体を完了する予定だが、強風時は作業を中止するため、天候次第で遅れる可能性があるという。
工事開始が遅れたことについて、磯貝智彦所長は「周辺の工事の影響については調整をしながら進めている。大きな支障があるとは考えていない」と話した。
今回、解体装置の開発や操作は、福島第一原発がある福島県大熊町の建設会社「エイブル」が担う。構内での重要作業を地元企業が担うのは異例という。岡井勇・第一工事部長は「地元企業として無事成功させ、地元の期待にしっかり応えられるよう安全に進めたい」と話した。(石塚広志、杉本崇)