2011年3月16日カーニー⽶⼤統領報道官が、翌日3月17日にはルース駐日大使が、自国民に対して福島第一原発80km圏内からの退避を勧告しました。そこが100ミリシーベルトに相当するとしたからです。

 2011年3月17日付けのニューヨークタイムスの図入りの記事に、編集者が青字で日本語訳をつけました。

 また、2011年3月の時点での、世界各国の自国民に対する退避勧告の一覧です。

 日本の原子力規制委員会の原発事故による、避難は500マイクロシーベルト/時です。また、先日2018年10月17日の会合で、原子力規制委員会は「1週間で100ミリシーベルト被ばくを避難基準とする」方向で検討を始めました。殺人的な被ばく線量です。アメリカが起こりうる最悪の事態を想定して、福島第一原発から80km圏内の自国民に対して退避勧告を出したのに対して、原子力規制委員会は原発事故当時の原発5km圏内での空間線量率が500マイクロシーベルト/時であったことから、これを避難基準としたのです。原子力規制委員会の検討資料にはこうあります。「(福島第一原発の)敷地境界付近において500μSv/h 程度以上の空間放射線量率が観測されたことからも、上記のとおり、敷地外における即時の避難を実施する際の基準としてOIL1 の500μSv/h という値を設定することは、その水準として適切であると考える。」と。

 ここには住民の健康被害については、一顧だに考慮されていません。また、外部被ばくのみの線量評価であり、欠陥を持つことも原子力規制委員会自身が認めています。

 原子力規制委員会の避難基準を信じていれば、殺されます。原発事故が予想されるようであれば、とっとと逃げましょう。

■読売新聞 被曝線量目安 100ミリ・シーベルト以内 規制委決定 事故後1週間内で 読売 2018年10月18日

 原子力規制委員会は17日の定例会合で、原子力発電所などの事故を想定した避難計画を作る際、事故後1週間以内の被曝(ひばく)線量を100ミリ・シーベルト以内に抑えるとする目安を決めた。

 原発から半径30キロ・メートル以内の自治体などは、避難計画の策定が義務付けられている。国際原子力機関(IAEA)は、緊急時の被曝線量の目安を20〜100ミリ・シーベルトに設定することを求めているが、規制委はこれまで具体的な目安を示してこなかった。100ミリ・シーベルトを超えると、がんのリスクが徐々に高まるとされる。一方、2011年の東京電力福島第一原発事故では、高齢の入院患者が無理な移動を伴う避難で死亡する事態が相次ぎ、問題となった。
 規制委の更田豊志(ふけた・とよし)委員長は17日の記者会見で「入院中の高齢者の場合、無理な移動の方が危険なことを原発事故で学んだ」と述べ、IAEAが求める最大値を目安としたことは適切だとした。
 

■平成25 年2 月の原子力災害対策指針改定における防護措置の実施の判断基準(OIL:運用上の介入レベル)の設定の考え方

平成25 年3 月 原子力規制委員会

1.検討の経緯
 緊急時に計測された空間放射線量に基づき、防護措置の実施の判断基準となるOIL(運用上の介入レベル)については、平成24 年11 月22 日から原子力災害事前対策等に関
する検討チームを開催して検討を進めてきた。同チームにおいては、当初、防護措置の実施の判断基準(OIL:運用上の介入レベル)の設定に当たり、IAEA GSG-2 が提案し
ているように、防護措置が採られる対象や時期に応じた包括的判断基準を定めた上で、その基準に基づきOIL を算出するというアプローチを念頭に検討を進めてきた。さらに、我が国の従来の防護措置の水準との比較や、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に適用した時に防護措置が適切に講じられるか等も踏まえて、包括的判断基準や、そこから導出されるOIL の値などから成る判断基準の体系を議論した。
 このようなアプローチに関し、第5 回原子力災害事前対策等に関する検討チーム会合(平成24 年12 月27 日開催)において、包括的判断基準の設定やOIL の値の導出方法
について、我が国が従来設定していた基準とIAEA の提示する考え方とでは、対象とする被ばく経路に差異があること(例えば、避難を要するとされる基準について、我が国
では、従来、外部被ばくのみを対象としていること)や、包括的判断基準からOIL を算出する手法について、IAEA から詳細な導出過程が明らかにされていないことなどから、
その合理性が十分に説明できないこと等の問題点が明らかとなった。
 なお、現行のIAEA GSG-2 等の出版物では、包括的判断基準からOIL の導出過程は公表されていないため、十分な背景をもって包括的判断基準からOIL を算出するには、
IAEA の導出過程とは別に、代表的な事故想定や住民の生活習慣等の要因をすべて検証した上で、我が国独自のOIL の導出過程を構築することが求められるが、これには膨大
な作業が必要となるため、当面、地域防災計画の策定・運用が必要であることを考えると、これのみを待つことは現実的な方策ではない。また、IAEA において、技術的な文
書としてOIL の導出に係る詳細なデータ等が文書にとりまとめられる動きもあり、これが公表された際には、包括的判断基準を設定した上で、十分な合理性をもってOIL を導
出することも可能となり得る。同時に、IAEA においてOIL の体系などを示した基準文書の見直しが進められている。
 以上の状況にかんがみ、平成25 年2 月の原子力災害対策指針の改定においては、包括的判断基準を定めた上でOIL を算出するというアプローチではなく、防護措置を実施
するための基準として運用できるものを、今般の原子力発電所の事故後の経験・教訓から導き出すという手法を採用する。すなわち、東京電力株式会社福島第一原子力発電所
事故で実施された防護措置の例と教訓、実際に観測された空間放射線量率等の水準などを踏まえ、現実に実効的な防護措置を実施するには判断基準をどのように定めることが
適当かという観点からOIL の値を設定していく手法を採る。具体的な基準の設定とその考え方を以下に示す。

2.平成25 年2月の指針改定におけるOILの設定の考え方
①即時の避難を要する基準(OIL1 相当)
 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故への対応においては、予防的防護措置を準備する区域(PAZ)や緊急時活動レベル(EAL)の枠組みが導入されていなかったものの、原子力施設の状況から判断し、大規模な放射性物質の放出前から、避難開始及び避難範囲の拡大がなされた。住民等への被ばく影響を可能な限り回避する観点からは、このような予防的防護措置としての避難や屋内退避は引き続き講じられるべきものであり、そのような観点からEAL に基づくPAZ の外部における段階的な避難の必要性とその判断の基となる施設の状態などが決定されなければならない。そのような前提の下で、PAZ 範囲外の不必要な避難を回避し、一部に放射線量の高い地区などが生じた場合の防護措置が的確に実施できるよう、OIL1 に相当する即時の避難を要する基準を設定する必要がある。
 今般の事故時に観測された空間放射線量率について、PAZ の目安である5km 近くで見ると、大熊町大野局(発電所から約5km の距離の地点)の空間放射線量率の10
分値で以下のとおり観測された。
・3 月15 日の10 時頃から100μSv/hを超える値が測定され始め、10 時10 分に449μSv、10 時20 分に一番高い値として625μSv/h が観測され、10 時30 分に616μSv/h、
10 時40 分に347μSv/h と推移。
・3 月16 日には11 時30 分に559μSv/h、その後、300~400μSv/h 台の値が続き、12 時10 分に567μSv/h、12 時20 分に408μSv/h、12 時30 分に309μSv/h と推移。
 これらの値は、プルームの通過による一時的な上昇の可能性もあるが、PAZ 範囲外において地上に沈着した放射性核種からの線量率として500μSv/h 以上の空間放射線
量率となっていた可能性があることを勘案すると、OIL1 を500μSv/h とすることが適当と考えられる。その場合には、今般の事故よりも過酷な事象が生じた場合にも、
PAZ 範囲外の周辺地域においてOIL1 により即時に避難の実施を判断することが可能になる。
 また、原子力発電所の敷地境界付近においては、より高い空間放射線量率が以下のとおり観測された。
・発電所のモニタリングポスト(4 番)では、3 月13 日13 時50 分に905μSv/h となり、15 時頃まで数百μSv/h 台の値が継続。
・発電所のモニタリングポスト(2 番)では、3 月13 日の20 時10 分に450μSv/hを観測し、その後、400μSv/h 台の放射線量率が継続し、翌日3 月14 日2 時40分に650μSv/h に、約8 時間後の4 時に820μSv/h を観測。
・発電所のモニタリングポスト(3 番)では、3 月14 日7 時50 分に332μSv/h、9時12 分に519μSv/h を観測。
・モニタリングポストによる測定結果を補完するものとして行われた正門付近の空間放射線量率の計測において、3 月14 日21 時35 分に760μSv/h の値を観測した後、約9 時間後の3 月15 日7 時頃まで500μSv/h を超える値を観測。
 このように、敷地境界付近において500μSv/h 程度以上の空間放射線量率が観測されたことからも、上記のとおり、敷地外における即時の避難を実施する際の基準とし
てOIL1 の500μSv/h という値を設定することは、その水準として適切であると考える。
 なお、IAEA GSG-2 に掲載されたOIL1 の初期設定値は1,000μSv/h である。しかし、今般の事故後において1,000μSv/h を超える値としては、原子力発電所の敷地外
では、双葉町上羽鳥(発電所から約5.6km の距離の地点)で3 月12 日15 時に計測された1,591μSv/h と、双葉町山田(発電所から約4.1km の距離の地点)で3 月15
日24 時に計測された1,018μSv/h が存在するが、これらの値は空間放射線量率の推移から見るとプルームによる一時的な上昇と判断できるものである。そして、これらプ
ルーム以外の影響で1000μSv/h 以上の値が観測された地点は、原子力発電所の敷地内のみである。したがって、1,000μSv/h という値は、一定の範囲に予防的防護措置とし
ての避難を実施した後、それ以外に、空間放射線量率等の高い地域において即時の避難を実施するための基準であるOIL1 として採用するには高すぎる値であると考えられる。

※1「初期設定値」とは緊急事態当初に用いるOIL の値であり、地上沈着した放射性核種組成が明確になった時点で必要な場合にはOIL の初期設定値は改定される。
※2 本値は地上1m で計測した場合の空間放射線量率である。実際の適用に当たっては、空間放射線量率計測機器の設置場所における線量率と地上1m での線量率との差異を考慮して、判断基準の値を補正する必要がある。

②一時移転を要する基準(OIL2 に相当)
 平成23 年4 月22 日に、飯館村(全域)、川俣町の一部(山木屋地区)、葛尾村(東京電力株式会社福島第一原子力発電所から20km 圏内を除く全域)、浪江町(東京電力
株式会社福島第一原子力発電所から20km 圏内を除く全域)及び南相馬市の一部が、「計画的避難区域」とされ、住民等に概ね1 ヶ月を目途に別の場所に計画的に避難す
ることが求められた。
 これらの地域については、原子力発電所の事故の初期の段階から比較的高い空間放射線量率が観測されており、防護措置の枠組みとしては、OIL1 と比較すると時間的余裕をもって講じる一時移転の判断基準であるOIL2 を用いて、今般の事故後の対応より早い段階から避難を開始する必要があったと考えられる。
 今般の事故後、原子力発電所から北西方向の計画的避難区域に設定された地域付近の空間線放射量率は以下のとおり観測された。
・3 月12 日からモニタリングカーを用いたサーベイメータによる移動サーベイが実施され、3 月13 日に発電所から北西方向の9.7km, 18.4km, 20.5km 及び 22.9km
の地点においてサーベイメータの検出上限値30μSv/h を超える空間放射線量率を観測。
・3 月15 日には北西39km の飯館村においては16 時00 分に22.7μSv/h に、その後17 時00 分に29.3μSv/h、17 時40 分に33.2μSv/h、18 時20 分に44.7μSv/h の値を観測。
・3 月16 日には10 時06 分に北西55km において22.2μSv/h、11 時23 分に北西30km において58.5μSv/h、11 時35 分に西北西25km において80.0μSv/h を観測。
・3 月17 日には、13 時10 分に西北西30km において58.6μSv/h、北西30km において167μSv/h、14 時00 分に北西30kmにおいて170μSv/h、14 時17 分に北西30km
において95.1μSv/h、15 時38 分に北西40km において20.0μSv/h を観測。
これらの値は、その後の空間放射線量率の変化や、最後の放射性物質の大規模放出が3 月16 日の12 時30 分であったことを踏まえると、地上に沈着した核種からの影響によるものと考えられる。
 なお、3 月15 日の4 時00 分の段階で南南西43km に位置するいわき市において23.7μSv/h の値が、同日の12 時00 分には西南西22kmの川内村において20.5μSv/hの値が、それぞれ記録されているが、これはプルームの通過に伴う一時的な空間放射線量率の増加の可能性が高い。また、福島市内の4 ヶ所の測定地点のうち、1 ヶ所(保健福祉事務所東側駐車場)において、3 月15 日17 時00 分には20.3μSv/hとなり、3 月16 日1 時30 分まで20μSv/h 以上が続いたが、その間、プルームが少なくとも3 回到来していると考えられ、プルームによる線量率の上昇と地上沈着による線量寄与の識別が困難になるケースもあった。
 これらの測定結果を踏まえると、OIL2 を20μSv/h と設定し、できるだけ早い段階から一時移転が必要となる地域を特定し、1 週間程度の間に防護措置が実施できる仕組みとすることが適当と考えられる。こうした基準によれば、30km 圏外を含む北西方向の地域の一時移転を、事故発生から約1 ヶ月後ではなく、事故発生から1 週間以内で判断・実施することが可能となり、より早い段階で適切な防護措置を講ずることができる。
 また、OIL2 に基づく一時移転の判断は1 週間を目途とした時間的余裕を設定しているが、それまでの間、無用な内部被ばくを避けるため、OIL2 の基準値が観測された地域では地域生産物の摂取は控える防護措置が講じられるべきである。

※1「初期設定値」とは緊急事態当初に用いるOIL の値であり、地上沈着した放射性核種組成が明確になった時点で必要な場合にはOIL の初期設定値は改定される。
※2「地域生産物」とは、放出された放射性物質により直接汚染される野外で生産された食品であって、数週間以内に消費されるもの(例えば野菜、該当地域の牧草を食べた牛の乳)をいう。
※3 本値は地上1m で計測した場合の空間放射線量率である。実際の適用に当たっては、空間放射線量率計測機器の設置場所における線量率と地上1m での線量率との差異を考慮して、判断基準の値を補正する必要がある。

③飲食物の摂取制限を要する基準(OIL6 及びOIL3 に相当)

【以下、略】