関西電力が未だに高浜3、4号機の蒸気発生器や圧力容器に欠陥合金インコネル600を使っている。

インコネル600,690とは?

インコネル 高度情報科学技術研究機構 ATOMICA より

 インコネルはニッケルベースの合金であり、商品名である。ニッケル、クロム、モリブデン、ニオブ、鉄等を成分とし、組成比によって、インコネル600、同625、同718等がある。インコネル600はPWRの蒸気発生器伝熱管に用いられている。90年代前半までは、振止め金具部を除けば、熱処理をしないインコネル600(MA600)であった。最近では、インコネル600に熱処理(700℃近辺で約10時間加熱し、合金中に含まれている炭素を炭化物として析出させ、且つ、炭化物の近傍にクロム欠乏層が生じないようにする)を施したTT600合金が多用されたが、さらに、クロム量を増やして応力腐食割れ特性を改善したTT690合金が使用されつつある。また、応力腐食割れの感受性の低い材料の開発も進められ、新設プラントに採用されている。インコネルは応力腐食割れが起りにくい材料と考えられてきたが、BWR一次冷却系環境下でのSCCがみられるようになった。主たる材料要因は粒界近傍のクロム欠乏によるもので、ニオブを追加することにより溶接金属中の炭素を安定化させ応力腐食割れの発生を防止できることが分り、最近ではニオブを添加したインコネルを採用している。

『米デービス=ベッセ原発 圧力容器上蓋に大穴』美浜の会 

アメリカのデービス=ベッセ原発
圧力容器上蓋に大穴
一次冷却水喪失事故の一歩手前だった
関電の原発にも上蓋ひび割れの危険

●海外での上蓋貫通部でのひび割れの頻発とその危険性。
 海外で加圧水型炉の上蓋を貫通する制御棒駆動軸の管台にひび割れが発生するという事故が90年代に入って多発し、フランス、スウェーデン、米国で大きな問題となってきた。フランスでは、検査された29機の原発のうち20機に上蓋貫通部でのひび割れが見つかった(1993年8月時点)。またアメリカのPWR69機のうち、33機について上蓋貫通部での検査が実施され、そのうち13機で応力腐食割れが見つかり、うち4機で円周方向のひび割れ、9機で一次冷却水の漏洩が発見されている(2002年8月時点)。フランスの場合は、検査した原発の約7割、アメリカでは約4割にひび割れが発見されていることになる。上蓋貫通部での応力腐食割れの発生は、PWRにとって普遍的な事象であると言わざるを得ない。
 
●今年に入って発生したデービス=ベッセ原発でのひび割れは上蓋鋼材を腐食し、LOCAの一歩手前だった。
 さらに今年に入り、米オハイオ州にあるデービス=ベッセ原発では、管台のひび割れ(貫通割れ)に接触した部位で上蓋母材の大規模な腐食が発生するというまったく新しい現象が見つかった。上蓋鋼材がすべて腐食し、ステンレスの内張1枚の文字通り皮1枚という状態であった。NRCは「LOCAの可能性があった」と評価している。またNRCは腐食のメカニズムはまだ明らかではないとしながらも、貫通部に蓄積したホウ酸が高温湿潤環境中で、低合金鋼製の上蓋母材を腐食した可能性を強く示唆している。
 
●インコネル600を使っているPWRすべてに共通の危険性がある-上蓋管台はPWRのアキレス腱。
 これら一連の上蓋貫通部でのひび割れの主原因は、管台の材質がインコネル600であることによるものであるとされている。これまで一般的にインコネル600の一次冷却水中での応力腐食割れの問題は指摘されてきたが、上蓋での損傷問題を受け、NRCは改めて「[原子力]産業の経験は、600合金が応力腐食割れに弱いことを示した」とその危険性を強調している(NRC INFORMATION NOTICE 2001-05)。欧米のPWRの上蓋管台はほとんどすべてがインコネル600でできている。このため、欧米で共通してひび割れが多発したのである。円周方向の割れが進展すれば、制御棒飛び出し事故からLOCAに発展し、上蓋母材の腐食が起これば、同じくLOCAから深刻な重大事故へと発展する危険性がある。インコネル600製の管台を持ち、一次冷却水にホウ酸を添加するPWRにとって、上蓋管台部はアキレス腱的存在であると言うことができるだろう。
 
●上蓋を交換していない関電の高浜3・4、大飯3・4号機はひび割れ事故の危険性を抱えている。
 日本のPWRの場合はどうだろうか。日本のPWRも上蓋管台部の素材はインコネル600であり、欧米と同様、ひび割れの危険性を抱えている。海外での事例を受け、関西電力は1996年から2001年にかけて若狭にある全11機の原発のうち7機の上蓋を交換し、それに伴ってインコネル600製の管台をインコネル690に取り替えた。しかし、大飯3・4、高浜3・4号機については交換を実施せず、炉頂部の温度低減化工事ですませている。これら上蓋未交換の4機について大きな問題がある。
 フランスの場合、289℃という比較的低い温度でも3機の原発がひび割れを起こしている。4機の改良工事による温度低下は310℃→294℃(高浜)である。フランスではそれよりも低い炉頂温度ですでに損傷が起こっているのである。上蓋を交換しなかった4機に損傷が発生しないなどとなぜ言えるのか(EDFはひび割れ開始時間と頂部温度・運転時間に明確な相関はなく、応力レベルと材質が決定的要因であると指摘している)。
 関電は、炉頂部の温度を下げたのでひび割れは発生しないとし、たとえひび割れが起こるとしても軸方向の割れであり深刻な冷却水漏洩には発展しないとしている。これはまったく無根拠であると言わざるをえない。関西電力は上蓋を交換していない4機の原発について、安全の根拠を示すべきである。また、ひび割れやその兆候はないのか。これら未交換の上蓋の検査結果について、全資料を公開すべきである。東京電力をはじめ、各電力の隠蔽工作が明らかとなり、安全性に重大な疑義が生じている今こそ、関電は率先して広く情報を公開し、安全性を明らかにすべきである。
 
●上蓋の損傷はゼロだったする関電の発表は疑わしい。本当にひび割れやその兆候はなかったのか。
 さらに東京電力の損傷隠蔽・検査記録ねつ造事件を受け、東電と同じ様に関電も上蓋部でのひび割れやその兆候を隠していたかも知れないという疑いが浮かび上がってきた。
 関電は、1993年~1995年にかけて9機の原発の上蓋管台について渦電流探傷検査を実施した。その結果は、損傷数ゼロである。しかし関電は、損傷がなかったにもかかわらず「予防保全」を理由に1機分約30億円という費用をかけて7機の交換工事を行った。東電が福島第一原発1、3、5号機のシュラウドの傷を隠しながら「予防保全」と称して交換を実施したのとよく似た話である。「予防保全」だけでは納得し難い。多数のひび割れが管台部で見つかったが、それを隠蔽するために交換したのではないかという疑いが生じる。
 フランスでは検査したうち約7割の原発でひび割れが見つかっているが、美浜3、高浜1・2については、これら損傷を起こしたフランスの原発よりも温度も高く、運転時間も長い。アメリカでの検査手法はほとんどが視覚的検査(ファイバースコープや直接の目視)によるもので、超音波探傷を行ったのは4機、ECTは6機だけである。目視に比べ、より精度の高いECTや超音波、浸透検査等、詳細な非破壊検査の実施をNRCは求めているが、これが実施されれば目視では発見できなかったような損傷ももっと増えると予想される。しかし精度の悪い視覚的検査でも、アメリカでは約4割のPWRでひび割れが見つかっている。ECTを使っても損傷がゼロだったとする関西電力の主張は疑わしい。
 関電は、今回の一斉検査で交換済みの上蓋は調査の対象から外すと発表した。しかし、ひび割れやひび割れの兆候が本当になかったのかを明らかにするため、SG保管庫に保管されている古い上蓋を徹底検査し、過去の検査資料も含めて検査結果を公開すべきである。四国電力は交換済みの上蓋も検査するとしている。今回の東電の検査記録ねつ造事件を通じて、改めて情報資料の公開が大きな問題になっている。この事件を重く受け止め他山の石とするならば、再検査は当然である。「現在作動中の機器の検査を優先させるため」などという関電の言い訳は極めて不自然である。関西電力は、これまでのような情報非公開の姿勢を根本的に改め、新たに浮上してきた上蓋交換等に関する疑いに対して真摯に回答すべきであろう。

[1]加圧水型炉の制御棒駆動装置上蓋貫通部の仕組み
 
(1)上蓋と制御棒駆動機構用管台の構造図
 
 加圧水型炉の上蓋は、直径約5メートル、厚さ40cm。材質は低合金で、内側には厚さ10mm程度のステンレスが被覆材として溶接されている。そして、上蓋の上から制御棒駆動軸を通すため、インコネル製のステンレスの管台が40~80本、上蓋を貫通して設置されている【資料1】【資料2】。これら、制御棒駆動機構(CRDM:Control Rod Drive Mechanism)の管台は、外径約10cm、内径7cm、厚さ約1.5cmのステンレスの管で、長さはおよそ1mである。欧米および日本のほとんどのPWRでは、材質としてインコネル600が使用されている。管台を通す貫通穴の周辺には、円周状に深さ約2cmほど削り込まれており、そこには厚めにインコネルの被覆が施され、管台を取り付けるために、厚さ1.5cm程度の溶接が行われている。管台の中にはさらに、制御棒駆動軸を通すためのサーマルスリーブが溶接され、取り付けられている【資料3】。

【資料1】-PWR全体図(出典:NRC)

【資料2】-上蓋断面模式図(出典:NRC)

【資料3】-制御棒駆動機構(CRDM)用管台詳細図

(2)上蓋貫通部での破断事故は、制御棒飛び出し事故やLOCAから深刻な重大事故へと発展

 制御棒駆動機構の管台部での損傷は重大な問題である。貫通割れが発生すれば、即一次冷却水の漏洩事故となる。また、円周方向の割れが進展すれば、管台そのものの破断を引き起こす。管台が破断すれば、内部の約150気圧の圧力によって一挙に制御棒が飛び出す、いわゆる制御棒飛びだし事故が起こり、炉心の一部で瞬間的に出力が上昇するような事故となる。続いて、破断した管台から冷却水が噴出し、空焚きという重大事故に発展する可能性を持っている。
 
[2]海外での上蓋貫通部でのひび割れの頻発とその危険性。
 
(1)90年代以降、フランス、スウェーデン、スイス、アメリカの原発で上蓋貫通部のひび割れ事故が頻発
 
 1991年9月、フランスのビジェイ原発3号機の駆動機構の管台で最初に損傷が見つかった。圧力容器に耐圧試験(通常の125%の水圧)を実施した際、上蓋内側の管台の溶接部の亀裂から一次冷却水が、表側に漏れだしたのである。その後、フランスEDFが各原発で上蓋貫通部の検査を実施したところ、1993年8月までに、29機中19機の原発でひび割れが見つかった【資料4】。さらにその後、スウェーデンやスイス等の他のプラントにおいても同様の損傷が発生していることが判明【資料5】【資料6】。しかも、フランスにおける損傷例では、ほとんどが軸方向の割れであったが、スウェーデンのリングハルス2号における損傷は、軸方向の割れに比べてより深刻な円周方向の割れであり、円周上に18cmもの亀裂が確認されたのである。
 2000年に入って今度はアメリカで、次々と損傷が見つかりはじめた。全69機のPWRのうち、2002年8月時点で、33機について検査が実施され、うち13機でひび割れが見つかっている【資料7】。中でも2001年に見つかったオコニー3号機の事例が深刻で、この事例では軸方向に入ったひび割れから円周方向の割れが確認されている【資料8】【資料9】。
 
【資料4】-1993年8月までに公表されたフランスの原子炉の検査結果

原発名  運転時間(92年末)(時間)     上蓋下部温度(℃)  検査年月     検査数    上蓋貫通部ひび割れ本数
ビジェイ2   75615    315   1992/10   65/65   6
ビジェイ3   74330    315   1991/11   65/65   2

                                      1993/06    20/65   1

ビジェイ4   75554    315   1991/11   65/65   8
ビジェイ5   78548    315   1992/07   53/65   2
フェッセンハイム1 

                 84320    313.4 1991/11   26/65   1

                                       1993/05   65/65   1
フェッセンハイム2

                87303     313.4 1992/06  30/65    0
トリカスタン2                1993/05  全数      0
トリカスタン3                1993/07  全数      0
トリカスタン4

                 70400    289.1 1993/01  65/65    1
ブライエ1   70914  289.1 1992/10  65/65    3
                                       1993/05    2/65    2
ブライエ2                     1993/03   全数      5
グラブリーヌB3            1993/06   全数       2
グラブリーヌB4

                  72698  289.1 1992/12   65/65    5
ダンピエール1               1993/07   全数       1
ダンピエール4               1993/03   全数       1
サンローラン2               1993/02   全数       5
シノン3                        1993/01  全数        0
パルウェル1 46957  313.7 1992/08   78/78     0
パルウェル2 45265  313.7 1992/10   全数        0
パルウェル3 43604  313.3 1992/01  17/74    0
                                      1993/04    74/74    1
パルウェル4 39199  313.7 1992/05    31/74    5
セントアルバン1

                  35935  313.7 1992/08     7/74     2
セントアルバン2

                  30947  313.7 1992/10    77/77    1
フラマンビレ1

                  38186  313.7 1992/09    77/77    1
フラマンビレ2
                35501  313.7 1992/05     4/74     0
                                      1993/05    74/74    0
カテノン1   

                    8975  313.7 1992/10    部分      1
カテノン2                     1993/08    全数      1
ノジャン1                     1993/06    全数      0
ベルビル1                     1993/03    全数      0

出典:”VESSEL HEAD PENETRATION CRACKING IN NUCLEAR REACTORS” – GreenPeace International
1993/08EDF年次報告(資料情報室資料)

【資料5】-1994年5月までのスウェーデンの原子炉の検査結果

原発名 検査年月 検査数   上蓋貫通部ひび割れ本数
リングハルス2                        1992/06   65/65   5
リングハルス3                             -          60/65   0
リングハルス4                             -          65/65   2

Nucleonics Week(~1994/05)(資料情報室資料)

【資料6】-1994年5月までのスイスの原子炉の検査結果

原発名    検査年月    検査数   上蓋貫通部ひび割れ本数
ベズナウ1                                1992/08   22/36    2
ベズナウ2                                1992/05   27/36    0

Nucleonics Week(~1994/05)からの孫引き(資料情報室資料)

【資料7】-2002年8月までに行われたアメリカの原子炉上蓋貫通部の検査結果

 プラント名  FEPY  01/02末 炉頂部水流温度℃   検査日  検査率  検査方法

  ひび割れ本数
  円周方向割れ
  漏洩本数
 
ANO 1 18.0 316.7 2001/03 100%(69/69) 視 1 0 1
Calvert Cliffs 2 17.9 312.2 2001/03 11%(8/73) 視 0 0 0
Cook 1 16.0 303.3 1994/02 33%(26/79) 視 0 0 0
Cook 2
  13.3
  316.1
  1994/09 91% 視 ECT 1 0  
2002/01 91% 視 ECT UT 0 0 0
Crystal River 3

  14.9

  316.1

  1996/02 100%(69/69)1 視 0 0 0
1999/10 00%(69/69) 視 0 0 0
2001/10 100%(69/69) 視 1 1 1
Davis-Besse
  14.7
  318.3
  2000/03 100%(69/69) 視      
2002/02 100%(69/69) UT 5 1 3
Farley 1 18.2 313.9 1995/09 46%(32/69) 視 0 0 0
Farley 2 16.4 313.9 2001/02 100%(69/69) 視 0 0 0
Ginna 23.9 304.4 1999/03 100% 視 ECT 1※ 0 0
Indian Point 3 13.6 312.2 2001/04 60% 視 0 0 0
Kewaunee 21.6 306.1 1905/06 100% 視 0 0 0
McGuire 1 13.6 291.7 2001/03 14%(11/78) 視 0 0 0
Millstone 2
  14.0
  312.2
  1997/08 100% 視 ECT 1※ 0 0
2002/02 100% UT 3 0 0
North Anna 1
  17.1
  315.6
  1996/02 31% 視 ECT 0 0 0
2001/09 100% 視 ECT 8 0 0
North Anna 2 16.7 315.6 2001/10 100% 視 3 0 3
Oconee 1
  20.4
  316.7
  2000/11 100%(69/69) 視 1 0 1
2002/03 100%(69/69) 視 2 0 1
Oconee 2 20.3 316.7 2001/04 100%(69/69) 視 4 1 4
Oconee 3
  20.1
  316.7
  2001/02 100%(69/69) 視 9 0 9
2001/11 100%(69/69) 視 UT 7 1 5
Palisades 15.6 301.7 1995/05 100%(53/53) 視 ECT 0 0 0
Point Beach 1 22.9 311.1 1994/04 100% ECT 0 0 0
Prairie Island 1 22.4 304.4 2001/01 100%(40/40) 視 0 0 0
Prairie Island 2 22.3 304.4 2000/04 100%(40/40) 視 0 0 0
Robinson 2 20.6 314.4 2001/04 100%(69/69) 視 0 0 0
Salem 1 13.1 312.8 2001/04 100%(78/78) 視 0 0 0
San Onofre 2 13.5 310.6 2000/10 34%(34/101) 視 0 0 0
San Onofre 3 13.3 310.6 2001/01 34%(34/101) 視 0 0 0
St.Lucie 1 18.8 310.6 2001/04 3%(2/77) 視 0 0 0
Surry 1 19.5 314.4 2001/10 100% 視 10 0 4
Surry 2 19.4 314.4 2001/11 100% 視 0 0 0
TMI1
  16.8
  316.1
  1999/09 100%(69/69) 視 0 0 0
2001/10 100%(69/69) 視 8 0 5
Turkey Point 3 19.3 312.2 1988/01 100% 視 0 0 0
Turkey Point 4 19.0 312.2 1994/03 5%(3/65) 視 0 0 0
Waterford 3 12.4 315.6 1997/04 ~20% 視 0 0 0

出典:”Public Meeting Between NRC and NEI and PWR Licensees to Discuss Bulletin 2002-02″
- Nuclear Regulatory Commission  August 23 2002
“PWR Materials Reliability Program Response to NRC Bulletin 2001-01″
- Electric Power Reserch Institute  August 2001
※浅い兆候 FEPY:全出力換算年数
 
【資料8】-オコニー3の漏洩箇所 上蓋貫通部(ノズル#56)上側からの写真(白色はホウ酸)

出典:”Oconee Unit 1 & Unit 3 Reactor Vessel Head Leakage” -Duke Power Company April 12, 2001)

 

【資料9】-オコニー3 ノズル#56 のひび割れ状況-軸方向から円周方向にひび割

出典:”Oconee Unit 1 & Unit 3 Reactor Vessel Head Leakage” -Duke Power Company April 12, 2001)

 

(2)今年に入って発生したデービスベッセ(米)原発での深刻な実態。上蓋そのものが腐食。ぽっかりと空洞があき、LOCAの一歩手前だった。
 
 今年2月27日、米・デービスベッセ原発で深刻な上蓋部の腐食が発見された。同炉は、1月18日に燃料交換のため停止し、NRC公報2001-01(オコニー1・2・3号、アーカンソーニュークリアワン1号での圧力容器上蓋貫通部ノズル亀裂問題を契機とする調査の通達)に従って制御棒駆動装置の貫通部について超音波探傷検査を行っていた所、3本のノズルの貫通亀裂が判明した【資料10】。その内1本のノズル(#3)を修理するため、周辺のほう酸堆積物を除去した所、圧力容器の母材内部に深さ約15センチ、幅約10~12.5センチ、長さ約17.8センチの空洞部が見つかった【資料11】。貫通孔近傍の低合金鋼部分が腐食してぽっかりと穴があいていたのである。。最も腐食されていた部分では、圧力容器内側にある厚さ9.5ミリのステンレスの内張(クラッド)が露出している状態であり、その後の調査の結果、ステンレスの内張にも約3ミリの深さの亀裂が認められている【資料12】【資料13】【資料14】。
 NRCは、「構造マージンが著しく劣化して」おり、「冷却材喪失事故(LOCA)の可能性があった」としている(2002/03/20 NRC公聴会)【資料15】。原因は調査中であるが、応力腐食割れによって生じたノズル部の貫通割れから漏れ出た冷却水によってホウ酸が当該部位に堆積し、湿潤環境下でホウ酸による腐食が進展したものとされている。
 NRCはデービスベッセ原発での事態を受け、ブリテン2002-02を3月18日に発行。米国内で稼働する69基のPWRを操業している全企業に対して、上蓋の健全性についての情報と今後圧力バウンダリとして正常に機能し得る根拠について報告するように求めた。さらに、8月9日には、補足検査の実施を勧告するよう通達を出した。
 上蓋貫通部でのひび割れは、冷却水漏れだけでなく、ホウ酸の析出による上蓋そのものの腐食を伴う可能性があるということがデービス=ベッセの事例で明らかになった。これは、これまで経験したことのない、まったく新しい事態である。インコネル600製の管台を持ち、一次冷却水にホウ酸を添加するPWRにとって、上蓋管台部はPWRのアキレス腱的存在であると言うことができるだろう。

【資料10】-デービス=ベッセ原発 圧力容器上蓋俯瞰図-○部でひび割れが見つかった。(出典:NRC)

【資料11】-ノズル#3付近の劣化領域の断面図(出典:NRC)

【資料12】-ノズル#3付近の劣化領域・17インチの円筒に切り出した劣化領域(出典:NRC)

 

 

【資料13】-ノズル#3の腐食領域上からステンレス内張を見たところ(出典:NRC)

 

【資料14】-NRCの評価と対応(出典:第20回原子力安全委員会臨時会議(2002/03/28)資料)

 

[3]海外で次々と見つかる損傷を受けて関電が取った対応
 
(1)関電の上蓋管台について渦電流探傷検査は損傷ゼロ
 
 海外で次々と見つかる損傷を受け、関電は1993年~1995年にかけて9機の原発の上蓋管台について渦電流探傷検査を実施した。そのひび割れはゼロであると関電は発表している(ひび割れの兆候については言及なし)【資料15】【資料16】。また、定期点検毎に加圧した上での漏洩試験を実施し、耐圧部の健全性を確認しているとしている。「渦電流探傷検査や定期検査における漏えい検査により管台の健全性を確認しており損傷は認められておらず、現状でも健全性は十分に確保されている」というのが関電と政府の見解である【資料17】。

【資料15】-関西電力の渦電流探傷検査状況(1995年12月末現在)

プラント名
  運開年月
  炉頂部温度℃
  検査年月
  検査までの運転時間(103時間)※1 検査本数※2
  損傷本数
 
美浜1号機 1970/11 310 1994/09 96 37/37 0
美浜2号機 1972/02 310 1993/01 105 41/41 0
      1994/06 105 41/41 0
      1995/12 115 27/41 0
美浜3号機 1976/12 321 1993/10 109 53/66 0
      1995/04 119 66/66 0
高浜1号機 1974/11 321 1993/06 99 53/66 0
      1994/11 106 66/66 0
高浜2号機 1975/11 321 1994/05 97 53/66 0
      1995/11 107 66/66 0
高浜3号機 1985/01 307 1993/11 65 56/66 0
高浜4号機 1985/06 307 1994/01 64 56/66 0
大飯1号機 1979/03 308 1993/08 71 67/79 0
大飯2号機 1979/12 308 1994/05 92 67/79 0
      1995/10 100 58/79 0
大飯3号機   310   25※3    
大飯4号機   310   16※3    

 

※1:1994年3月末 ※2:検査本数/設備本数(空気抜き管1本を含む)※3:1994年3月末現在
参考:装置の検査精度 約1mm
出典:関電発表資料(池野さんからの提供)
 

【資料16】-上蓋管台検査(渦電流探傷

(2)損傷はゼロ。しかしながら、全11機の原発の内7機は上蓋交換、4機は改造工事を実施
 
 損傷が「確認されていない」にもかかわらず、関西電力は全11機の原発の内7機については上蓋交換を行い、4機については改良工事を実施した【資料17】【資料18】【資料19】。上蓋を交換するにあたっての関電の理由は以下の通りである。

「(損傷はない)しかしながら、一般に応力腐食割れは、材料・応力・環境に影響される時間依存型の損傷であり、材料・応力が同じであれば、温度が高いほど、また、運転時間が長いほど応力腐食割れの発生の可能性があると考えられる。このため、将来的な健全性維持を図るという予防保全の観点から原子炉容器上部ふたの取り替えおよび原子炉容器頂部温度低減化対策を行う」(『福井県の原子力』資料編31「定期検査における主な改良工事」・以下無指定の引用の出典は同じ) 

「貫通管についてはひび割れは見つかっていない。高熱によるひずみが起きやすい構造と分かったので、海外の損傷事例を考慮し、予防保全の視点から交換を決めた」(1994年9月6日 毎日新聞) 

●第1期工事(1996年~1997年)-美浜3号、高浜1.2号
 関電は、応力腐食割れの発生要因のうち「温度と時間に着目し、原子炉容器頂部温度が高い3ループプラントで、運転時間の長い3プラント(美浜3号機、高浜1号機、高浜2号機)に対し、将来を見据えた予防保全の観点から、原子炉容器上部ふた取り替えを決定し」た。関電は、この3機については温度が320度で、他の原発に比べて10度高く、ひび割れの危険率が2倍になるため、交換を決めたとしている(1994/9/9朝日)
 
これは「第1期工事」と呼ばれ、1997年6月までに終了している。
 工事の内容は、主に以下の3点である。
・管台の材料の変更-インコネル600→インコネル690
・管台取り付け時の溶接による残留応力を低減させるように溶接形状を変更
・出力分布調整用制御棒クラスタの駆動装置の廃止
 

●第2期工事(1998年~2001年)-美浜1・2号、大飯1.2号
 関電によれば、第1期工事の対象となった3原発以外については「温度、運転時間の観点から、すぐに保全対策を決定する必要がなかったため、渦電流探傷検査で健全性を確認しつつ総合的な予防保全対策を検討することとした」としていた。しかし「その後、継続して海外情報の取得に努めた結果、損傷本数が増加し、上部ふた取り替えが有効な対策として採用されつつあることや、一部プラントでは、容易な工事で原子炉容器頂部温度を低くすることができることが分かった」として、残りの原発にも対策を施すことを決定した。炉頂部の温度の低化させるための改造工事が困難な、美浜1・2号、大飯1・2号については第1期工事に続いて、第2期工事として上蓋の交換をおこなった。工事の内容は第1期と同じである。

 
●炉頂部温度低下のための改造工事-高浜3.4号、大飯3.4号
 高浜3.4号、大飯3.4号については炉頂部の温度を低下させるように、原子炉容器内に流入した1次冷却材を頂部に導くスプレイノズルの内径を大きくする改造工事を実施した。

 【資料17】

 

 

【資料18】-高浜発電所3号機の第10回定期検査(出典:関西電力資料)

 

【資料19】-国内PWR上蓋健全性評価(出典:第20回原子力安全委員会臨時会議(02/03/28)資料)

[4]上蓋を交換していない関電の高浜3・4、大飯3・4号機はひび割れ事故の危険性を抱えている。
 
 インコネル600を使用したPWRの上蓋には安全上大きな問題が存在することは明らかである。しかし関電は、高浜3・4号炉、大飯3・4号炉については交換を実施せず、炉頂部の温度低減化工事ですませている。しかしこれには大きな問題がある。
 【資料20】を見て欲しい。これは上蓋管台破損と炉頂部温度・運転時間の相関を示したものである。これを見ればわかるように、調査の結果、EDFはひび割れ開始時間と頂部温度・運転時間に明確な相関はなく、応力レベルと材質が決定的要因であるという指摘をおこなっている。しかも、炉頂部の温度が289℃という比較的低温である3機にも、同じようにひび割れが発生している。この事実は重要である。
 関電は、高浜3.4、大飯3・4については炉頂部の温度を引き下げたので安全性を確保できたとしているが、改良工事の結果は310℃→294℃(高浜)である。同じ炉頂温度ですでにフランスでは損傷が起こっているのである。上蓋を交換しなかった4機に損傷が発生しないなどとなぜ言えるのか。しかも、この時点ですでに運転時間は破損したフランスの3プラントに近い。1年間は約8700時間、この表は1995年段階のものである。すでに8年が経過しており、さらに運転時間は増大しているはずである。
 頂部温度の低下がひび割れ防止にどれほど有効性があるのか。改造工事によって、ひび割れ開始時間と進展時間がどう変化するか具体的な解析はおこなっているのか。原子力安全委の20回議事録によれば、実験結果からの予測では大体30万時間は大丈夫とされているが、その根拠は何か。関電と政府は安全の根拠を示すべきである。
 また、ひび割れやその兆候はないのか。関電は、これら未交換の上蓋の検査結果について、全資料を公開すべきである。

【資料20】-上蓋管台破損と炉頂部温度・運転時間の相関

 

関電高浜3号18年8月3日から定期点検。蒸気発生器が応力腐食割れ9月12日 

2018年9月12日
関西電力株式会社

高浜発電所3号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果の原因と対策等について)

 高浜発電所3号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、2018年8月3日から第23回定期検査を実施しており、蒸気発生器(SG)の健全性を確認する観点から、3台あるSGの伝熱管全数※1について応力腐食割れ※2等を検出するために、定期検査ごとに行っている渦流探傷検査(ECT)※3を実施した結果、C-SGの伝熱管1本の高温側管板※4部で、内面(1次側)からの有意な信号指示が認められました。
 また、A,B-SGの伝熱管については、有意な信号指示は認められなかったものの、A-SGの伝熱管1本で外面(2次側)からの微小な減肉と見られる信号指示(判定基準未満)が認められました。このため当該箇所を小型カメラで点検したところ、伝熱管と管支持板の間に異物を確認しました。
 なお、本件による環境への放射能の影響はありません。

※1 過去に同様の有意な信号指示が認められ、施栓した管等を除きA-SGで3,273本、B-SGで3,248本、C-SGで3,263本、合計9,784本。
※2 環境、応力、材料の3要因によって発生する割れ
※3 高周波電流を流したコイルを、伝熱管に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物のきず等により生じた渦電流の変化を電気信号として取り出すことできず等を検出する検査。伝熱管の内面(1次側)より、伝熱管の内面(1次側)と外面(2次側)の両方を検査している。
※4 蒸気発生器内の伝熱管が取り付けられている部品。伝熱管と管板で、1次冷却材と給水(2次冷却水)の圧力障壁となる。
1.C-SG伝熱管における有意な信号指示について
(1)原因調査
 伝熱管1本の高温側管板部で有意な信号指示が認められた原因を調査するため、過去の調査結果との比較や運転履歴の調査を実施しました。

a.過去の調査結果との比較

・高浜3号機では、これまでの定期検査において、高温側管板拡管部で有意な信号指示が確認されています(伝熱管23本)。過去の抜管調査の結果、ローラ拡管※5上端部付近の伝熱管内面で軸方向に沿った割れが認められ、原因は、伝熱管内面で局所的に発生した引張り残留応力と運転時の内圧および高温の1次冷却材環境が相まって生じた応力腐食割れであると推定され、対策として施栓を行っています。
・今回の有意な信号指示も、①高温側管板部のローラ拡管上端部付近であり、②伝熱管の軸方向に沿った内面きずを示す指示であるなど、過去に3号機で同様に認められた信号指示と特徴が類似していることを確認しました。
※5 伝熱管内部に機械式ローラを通すことで伝熱管を押し広げて、伝熱管と管板を接合させる工程。
b.SG伝熱管へのショットピーニング※6の効果

・高浜3号機では第12回定期検査(2000年)において、初めて応力腐食割れが確認された後、当該部の応力腐食割れの発生を予防するため、第13回定期検査(2001年)でSG伝熱管の高温側管板拡管部内面にショットピーニングを施工し、伝熱管内表面の引張り残留応力を改善しました。
・ショットピーニングでは、伝熱管内表面近傍(深さ約0.2mmまで)の引張り残留応力が改善されますが、これより深い部分では効果が小さいことが知られています。
・このため、ショットピーニング施工時に、深さ約0.2mm以上で当時使用していたECTの検出限界未満(深さ約0.5mm未満)の微小なきずが既に発生していた場合、時間の経過とともにきずが進展する可能性があると推定しました。
※6 伝熱管内面に小さな金属球を高速で叩き付けることにより、伝熱管内面の引張り残留応力を圧縮応力に改善する工事。
c.運転履歴調査

 運転開始以降、今回の定期検査開始に至るまでの期間について、1次冷却材の主要パラメータである温度、圧力、水質について調査を行った結果、過大な応力を発生させる温度、圧力の変化はなく、水質も基準値の範囲内で安定していたことを確認しました。

(2)推定原因
 有意な信号指示が認められた原因は、過去の調査結果等からSG製造時に高温側の管板部で伝熱管を拡管する際、伝熱管内面で局所的に引張り残留応力が発生し、これが運転時の内圧と相まって、伝熱管内面から応力腐食割れが発生・進展し、今回検出されたものと推定しました。
(3)対策
 有意な信号指示が認められた伝熱管1本については、高温側および低温側管板部で閉止栓(機械式栓)を施工し、使用しないこととします。
2.A-SG伝熱管における外面減肉信号の確認について
 今後、異物を蒸気発生器内から取り出し詳細調査を行うとともに、調査結果を踏まえ、他の管支持板部等について、小型カメラ等により点検します。 

欠陥合金インコネル600未だに使用 

添付資料1:高浜発電所3号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果) [PDF 317.76KB] 

※ 上の資料の左下がA-SG伝熱管の異常なもの。本資料最後のものが、2017年2月8日 原子力規制委員会時点のもの。2017年2月8日 原子力規制委員会の資料の時点でも、A-SG伝熱管の施栓(使えないようにふたをすること)が6本で、異常な信号を出したのが1本。今回、関西電力が出したA-SG伝熱管の施栓も7本で、異常な信号を出したのが1本。つまりこの1年6ヶ月でまた1本異常信号を出すものが出来たということ。これは設計上の欠陥であり、蒸気発生器として使用してはならないものなのではないか。

添付資料2:高浜発電所3号機の蒸気発生器伝熱管の施栓履歴 [PDF 149.79KB] 

一次系の弁の分解点検していた作業員、2ミリの被曝事故 

高浜3号の定検作業員 計画線量 2倍超被ばく
福井新聞  2018年9月13日

 

 関西電力は12日、定期検査中の高浜原発3号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)の原子炉格納容器内で作業をしていた協力会社の作業員が、1日分の計画線量の2倍を超える外部被ばくを受けたと発表した。法令で定める年間限度量は超えておらず、内部被ばくや皮膚の汚染はなかったとしている。

 関電によると、作業員は東亜バルブエンジニアリング(兵庫県)の下請け会社の50代男性10日午後、1次系の弁の分解点検を約3時間10分行った。管理区域から退出する際に線量計を確認したところ、計画値の0・9ミリシーベルトを大きく超える1・81ミリシーベルトの被ばくが分かった

 作業員の被ばく線量低減のため、一日1ミリシーベルトを超える作業に従事する際は、事前に労働基準監督署長への届け出が必要。関電は同日中に敦賀労基署へ線量超過を報告した。

 今回の作業では線量計の警報音が聞こえるようイヤホンを付ける必要があった。しかし作業員は装着しなかったため、警報音に気づかなかった。また、作業時間は2日前に同じ場所で行った別の作業員の被ばく実績値を元に、東亜バルブの放射線管理専任者が決めたが、線源と作業員の距離を十分考慮しなかったことが、計画外の被ばくを生んだとしている。関電は今回の被ばくについて、法令報告や安全協定上の異常報告に該当しないことから、別件と併せてこの日発表したとしている。(坂下享)

 

関西電力 高浜3号機 蒸気発生器に直径1cmの異物

蒸気発生器内に異物 高浜3号 細管1本が減肉
福井新聞  2018年9月13日

 関西電力から12日、県に入った連絡によると、定期検査中の高浜原発3号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)の蒸気発生器の細管1本と支持板の間に、長さ1センチ程度の異物を確認した。材質は不明。環境への放射能の影響はない。

 関電は8月18日から、3台ある蒸気発生器の細管計9784本に傷がないか調べるため、高周波電流を流す検査を実施した。このうち細管1本の外側が減肉していることを示す信号が出たため、小型カメラで確認したところ異物を見つけた。

 細管の外側は2次冷却水が流れている。この異物が細管を削ったとみて今後、異物を取り出し分析するほか、混入した原因などを調べる。

 県原子力安全対策課は「2012年2月から行った第21回定検で混入した可能性がある。減肉は技術基準未満だが、予防的に施栓する予定」としている。

 別の細管1本では、内側に長さ約4・8ミリのひび割れが見つかった。高温(約320度)の1次冷却水が入る部分。細管の厚さは約1・3ミリあるが、貫通はしていない。応力腐食割れとみられる。この細管も施栓する予定。

 高浜3号機の細管の施栓数は全体の3・6%で、計364本となる。施栓率は10%までプラントの安全性に問題がないことが確認されている。

 高浜3号機は11月9日からの発電・送電開始を予定しているが、県原子力安全対策課は「現時点で工程に影響があるかは分からない」としている。(牧野将寛)

関西電力は、この蒸気発生器の細管減肉を1年8ヶ月間放置していた疑い。

2017年2月8日 原子力規制委員会

高浜発電所3号機における蒸気発生器伝熱管の損傷に係る関西電力から
の報告に対する評価及び今後の対応について(案)
平成29年2月8日
原 子 力 規 制 委 員 会

1.経緯
関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)では、高浜発電所3号機(第22回定期検査中)において、3台すべての蒸気発生器(以下「SG」という。)の健全性を確認するため、施栓済み※1の伝熱管を除く全数の伝熱管に対して渦流探傷試験※2
(以下「ECT」という。)を実施したところ、平成29年1月12日、A-SGの伝熱管1本から高温側の管板部に有意な信号指示が認められた。なお、B-SG及びC-SGの伝熱管については、有意な信号指示が認められなかった。
同日、当委員会は、関西電力から核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第62条の3の規定に基づく事故故障等に関する報告を受けた。
その後、1月19日、当委員会は、関西電力から当該事故故障等に関する原因と対策に係る報告書を受領し、今般、その内容を精査するとともに評価を行った。
※1:伝熱管に摩耗減肉や応力腐食割れが発生したことにより、機械式栓により施栓して供用外としたもの。
※2:高周波電流を流した24個のコイルを伝熱管に挿入することで伝熱管に渦電流を発生させ、伝熱管の欠陥により生じる渦電流の変化を電気信号として取り出し、欠陥を検出する試験(ECT:Eddy Current Test)
2.関西電力の報告の概要
(1)SG伝熱管に対するECT結果(別紙1、2、3参照)
ECTによるデータを分析した結果、1次冷却材入口側(高温側)の伝熱管と管板部の接触部上部に、伝熱管内面の軸方向に沿った非貫通のきずの特徴を示す有意な信号指示が確認された。
なお、前回の定期検査(第21回定期検査)で実施されたECTでは、当該管に有意な信号指示が認められていないことが確認された。

(2)原因調査の結果

① 原因調査
要因分析図に基づき、製造履歴、運転履歴、材料、強度計算書、SG伝熱管内面の損傷モード等の観点から調査を実施した。
○製造・運転履歴調査
設計・建設時の記録やプラントの運転履歴等を確認したところ、製造記録に問題となる記録がないこと、運転開始から第22回定期検査開始までの運転履歴に異常な温度・圧力の変化がないこと等が確認された。なお、第21回定期検査から第22回定期検査までの運転期間は約35日間であり、定格熱出力一定で運転していたことが確認された。
また、第22サイクルにおける各放射線監視装置指示値の調査をしたところ、各指示値に有意な変化はなく、SGの1次側から2次側への1次冷却材の漏えいがないことが確認された。
○材料調査
製造時のミルシートを調査したところ、材料の成分はSG製造メーカの仕様どおりであり、伝熱管はインコネルTT600製であることが確認された
○設計図書調査
工事計画認可申請書の強度計算書を調査したところ、延性割れ、疲労割れに対して、設計上考慮されていることが確認された。
○過去の知見調査
SG伝熱管内面の損傷モード(粒界腐食割れ、ピッティング、局所変形、エロ-ジョン、応力腐食割れ(以下「PWSCC」という。))について過去の知
見等を調査したところ、インコネルTT600製のSG伝熱管に対するECTにおいて、高温側管板部のローラ拡管上端部において有意な信号指示が認めら
れた場合は、伝熱管のローラ拡管の際に局所的に生じた引っ張り残留応力と運転中での1次冷却材の温度等による相乗効果により発生したPWSCCと想定されていることが確認された。
○ショットピーニングの効果調査
第13回定期検査(平成13年6月~平成13年8月)時、PWSCCに対する予防保全策としてSG伝熱管内面のショットピーニング※3を施工していた
ことが確認された。なお、ショットピーニングは予防保全策として有効であるものの、ショットピーニング施工以降もECTで有意な信号指示を検出したことから、ショットピーニング施工による引張り応力の改善範囲(伝熱管内面より約0.2mm 以内の深さ)とECTによる検出範囲(伝熱管内面より約0.5mm 以上の深さ)にあたらない伝熱管内面より約0.2mm~約0.5mm の深さの範囲にPWSCCが既に存在していたとすると、ショットピーニング施工後においても進展し続け、PWSCCとして顕在化する可能性があるとしている。

※3:伝熱管内面に小さな金属球を高速で叩き付けることにより、伝熱管内面部の残留応力を改善する手法
○運転期間の影響調査
第21回定期検査で行ったSG伝熱管のECTでは有意な信号指示として認められなかった微小なきずが、第21回定期検査から第22回定期検査まで
の約35日間の定格熱出力一定運転によって僅かに進展したことに伴い、きず内面の接触状態が変化し、有意な信号指示として認められたとしている。
② 推定原因
今回のSG伝熱管に対するECTで認められた有意な信号指示は、過去にインコネルTT600製の伝熱管で経験した信号指示と同様に伝熱管内側の軸方
向に沿ったきずの特徴を有していることから、SG製造時に高温側の管板部で伝熱管を拡管する際、伝熱管内面で局所的に発生した引張り残留応力と運転中の1次冷却材の温度等による相乗効果で伝熱管内面からPWSCCが進展したものと推定される。
(3)対策
ECTで有意な信号指示の認められたSG伝熱管については、高温側及び低温側のSG管板部で伝熱管に施栓を行い供用外とする。なお、施栓については、設置許可申請書において安全解析施栓率(10%)が定められており、この値を超えていない。
② 過去の知見調査の結果から、伝熱管内面の高温側管板部ではPWSCCによる有意な信号指示の検出が想定されることから、今後も定期検査毎に、SG伝熱管の全数について伝熱管全長に亘ってECTを実施して健全性を確認していく。
3.当該報告に対する評価
(1)安全上の影響についての評価
本件は、定期検査中に、SG伝熱管の健全性を確認するために実施したECTにより確認されたものであり、安全上重要な機器の安全機能が喪失したり、作業員の放射線被ばくのリスクを高めるような事象ではないと評価する。
(2)原因調査結果についての評価
SG伝熱管の損傷に至った原因については、想定される原因が網羅的に抽出され、運転履歴、材料、SG伝熱管内面の損傷モード等の確認から、その原因について評価、分析を適切に実施した上で、原因が特定されていると評価する。
○要因分析図においては、過去の知見等からSG伝熱管の損傷モードを抽出し、網羅的に発生原因を挙げていることを確認した。

○PWSCCについては、材料(インコネルTT600)、応力(残留応力等)、
環境(定格熱出力一定運転中の1次冷却材の温度等)の3要因について検討されており、過去の知見により定格熱出力一定運転中はインコネルTT600製のSG伝熱管で今回検出されたECT信号指示と同様な部位で残留応力等により、PWSCCが発生することが整理されていることを確認した。
○ECT信号指示が検出されたことについて、第21回定期検査から第22回定期検査までに約35日間ではあるが定格熱出力一定運転していることを踏まえ、PWSCCによるきずが「僅かに進展すること」及び「進展に伴いきずの開口条件が変化すること」を要因として挙げていることを確認した。
ECTは渦電流がきずにさえぎられる際の電流抵抗の変化を信号として検出するため、約35日間の運転期間に基づくきずの進展のみではECT信号指示が大きく変化しないと考えられるが、きず内面の接触状態が変化することにより、渦電流のさえぎられる度合いが変化し、有意な信号指示を検出するに至ったものと考察されていることを確認した。
(3)対策についての評価
○ECTで有意な信号指示の認められたSG伝熱管を機械式栓にて施栓し供用外とすることについては、A-SGの施栓率が約3.2%となるものの安全解析施栓率10%を超えないことから、妥当であると評価する。
4.今後の対応
当委員会としては、今後、関西電力が行うこととしている対策について、審査において工事の計画が妥当であること、検査等において適切に実施されていることを確認していくこととする。
5.INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)評価
当該事故・故障等に係るINES評価について、以下のとおり確定する。
最終評価:0
判断根拠:定期検査のため原子炉を停止した状態で、渦流探傷試験を実施したところ、蒸気発生器の伝熱管に有意な信号指示を確認したものであり、原子炉施設の安全に影響を与えない事象であるので、INESレベル0の「安全上重要でない事象」と評価する。

別紙1 SG伝熱管信号指示箇所概要図

別紙2 高浜3号機 SG伝熱管ECT結果

高浜3号機SG電熱管ECT信号指示位置図 A-SG(高温側)