ディーゼル排ガス:胎児に影響、自閉症発症の可能性
毎日新聞 2006年6月4日
ディーゼル自動車の排ガスを妊娠中のマウスに吸わせると、生まれた子供の小脳にある
神経細胞「プルキンエ細胞」が消失して少なくなることが、栃木臨床病理研究所と
東京理科大のグループによる研究で分かった。自閉症では小脳にプルキンエ細胞の減少が
見られるとの報告もある。ディーゼル排ガスが自閉症の発症につながる可能性を示す
初めての研究として注目を集めそうだ。16日にカナダのモントリオールで開かれる
国際小児神経学会で発表する。
研究グループは、妊娠中のマウスに、大都市の重汚染地域の2倍の濃度に相当する
1立方メートル当たり0.3ミリグラムの濃度のディーゼル排ガスを、1日12時間、
約3週間浴びせた後に生まれた子マウスと、きれいな空気の下で生まれた子マウスの
小脳をそれぞれ20匹ずつ調べた。
その結果、細胞を自ら殺す「アポトーシス」と呼ばれる状態になったプルキンエ細胞の
割合は、ディーゼル排ガスを浴びた親マウスから生まれた子マウスが57.5%だったのに
対し、きれいな空気の下で生まれた子マウスは2.4%だった。また、雄は雌に比べ、
この割合が高かった。人間の自閉症発症率は男性が女性より高い傾向がある。
さらに、プルキンエ細胞の数も、排ガスを浴びたマウスから生まれた子マウスに比べ、
きれいな空気下で生まれた子マウスは約1.7倍と多かった。
菅又昌雄・栃木臨床病理研究所長は「プルキンエ細胞の消失などは、精神神経疾患に
つながる可能性がある。ヒトはマウスに比べ胎盤にある“フィルター”の数が少ないため、
ディーゼル排ガスの影響を受けやすいと考えられる。現在、防御方法を研究中だ」と
話している。
毎日新聞