東京電力は2014年12月5日。試験的に外していた1号機建屋カバー2枚を元に戻したと発表しました。1号機建屋カバーを本格的解体工事で撤去するのは、2015年3月に延期です。

1号機 建屋カバー解体に向けた飛散防止剤散布と調査の状況について 東京電力 20141201

 1号機の原子炉建屋カバー屋根パネル2枚(北3,南3)の戻し作業については、12月4日午前8時31分に1枚目(北3)、同日午後0時9分に2枚目(南3)の戻し作業が終了。ダストモニタおよびモニタリングポストの指示値については、有意な変動は確認されていない。また、本作業に合わせ、10月28日に発生した、屋根パネル孔部(南2屋根パネルNo.36)の開口拡大について、南3屋根パネルに拡大した孔部を覆うためのはね出し部材を取り付け、南3屋根パネルを戻したことにより、拡大した孔部を上面から覆う処置を実施。

 この1号機建屋カバーの試験的な撤去で、「ダストモニタおよびモニタリングポストの指示値で有意な放射線量の変動は観察されていない」と東電が言っていますが、12月5日東京新聞朝刊1面が海水のモニタリング問題で報道したように検出限界を高く引き上げた測定であり、ダストの調査としてはやっていないのに等しい測定です。

 1号機建屋カバーの試験撤去に関するモニタリングで、有意な放射線量が検出され警報が発令されるレベルとは?ー1号機 建屋カバー解体に向けた飛散防止剤散布と調査の状況について 東京電力 20141201 より

(1)敷地境界のモニタリングポスト(有意な変動:+2μSv/h以上の変動)
(2-1)作業現場のダストモニタ[1号機] 警報設定値:5×10-3Bq/cm3)
(2-2)3号機原子炉建屋のダストモニタ(警報設定値:5×10-3Bq/cm3)
(3)建屋周辺のダストモニタ (警報設定値:1×10-4Bq/cm3)
(4)構内のダストモニタ (警報設定値:1×10-4Bq/cm3)
(5)敷地境界付近のダストモニタ(警報設定値:1×10-5Bq/cm3)

 これは、敷地境界、例えばMP-1は2014年11月2日5時で、1.97マイクロシーベルト/時ありました。これが+2.0マイクロシーベルト/時、1.97+2.0=3.97マイクロシーベルト/時を超えたら、有意な変動だ、と発表されるということです。もともと1.97あるところが、急に3.97になるまで警報が鳴らないなんて、どういうことでしょうか?

 (2-1)(2-2)(3)(4)(5)のそれぞれのダストモニタでの警報設定値の単位はベクレル/cm3ですから、私たちがよく目にするベクレル/m3に直すとこうなります。(1ベクレル/cm3=1,000,000ベクレル/m3)

■警報設定値■ ベクレル/m3に換算すると

(2-1)作業現場のダストモニタ[1号機] と(2-2)3号機原子炉建屋のダストモニタ → 警報は5000ベクレル/m3

(3)建屋周辺のダストモニタ と (4)構内のダストモニタ → 警報は100ベクレル/m3

(5)敷地境界付近のダストモニタ →警報は10ベクレル/m3

 1号機建屋カバーの作業現場は4999ベクレル/m3検出されても、警報が鳴らない、ということです。これは「不検出詐欺」と同じです。

1号機 建屋カバー解体に向けた飛散防止剤散布と調査の状況について 東京電力 20141201

福島第一 「不検出」実際は汚染 東電 誤解与える海水簡易分析 東京新聞 2014年12月5日朝刊

 

 実は、2014年9月10日の東京電力の発表した、計画では、飛散防止剤を撒き試験的に2枚の建屋カバーを撤去した後、放射性物質の飛散の状況を確認したら、残りの4枚のパネルも外して、ガレキの調査、ガレキ・ダストの吸引の作業に入る予定でした。

号機建屋カバー解体・ガレキ撤去に伴う放射性物質飛散抑制対策について 東京電力 20140910

 それが12月5日に試験的に取り外した2枚の建屋カバーを戻したのは、この東京電力の資料によれば、

ダストの状況に問題が無ければ次のステップへ。ダスト飛散の可能性が大きい場合は、飛散防止剤の追加散布→状況が改善できない場合は、屋根パネルを元に戻します  p.1

1号機建屋カバー解体・ガレキ撤去に伴う放射性物質飛散抑制対策について 東京電力 20140910

 つまり、飛散防止剤を事前に撒いてから建屋カバーを外したが、

「予想以上にダスト飛散が大きかった」ということではないでしょうか?だから、いったん、カバーを元に戻した、ということではないでしょうか?

 10月28日午前8時23分、突風(瞬間風速18m/s)が吹き、飛散防止剤を注入していた先端ノズルが揺れて、カバーを約1m×約2m破く事故が起きました。 そのため、一時作業をこの日の中断し、翌日10月29日から作業を再開しました。

 楢葉町上繁岡地区集会所の空間線量は、10月28日の11時すぎにはすとーんと下がり、その後上昇することはありませんでした。また、10月29日朝8時から空間線量率が8時~17時にかけて上昇しています。これは作業再開とぴったり一致します。作業で放射性物質が拡散していることは否定できません。ちなみに、楢葉町上繁岡地区集会所は、東京第一原発の南西13.4kmの地点にあります。

 1号機建屋カバーの2枚が元に戻された12月4日前後の空間線量のグラフを見ようとしたところ、楢葉町上繁岡地区集会所の12月7日19:00から23:00までのデータ。12月8日すべてのデータ。12月9日0:00から11:00までのデータが原子力規制委員会のHPから消されていました。

 お持ちの方がいましたら、お教え下さい。12月7日(日)~9日(火)午前までにこのモニタリングポストで何かが行われた可能性があります。

放射線モニタリング情報>全国及び福島県の空間線量測定結果 Top>福島:相双>大熊町モニタリングポスト>夫沢の測定結果>時系列データ>1週間分

http://radioactivity.nsr.go.jp/map/ja/time.html

 放射線モニタリング情報>全国及び福島県の空間線量測定結果 Top>福島:相双>楢葉町モニタリングポスト>上繁岡地区集会所の測定結果>時系列データ>1週間分

http://radioactivity.nsr.go.jp/map/ja/time.html