日米防衛協力のための指針 1997年9月23日

共同発表
日米安全保障協議委員会
日米防衛協力のための指針の見直しの終了
1997年9月23日
於 ニュー・ヨーク
英文は下記の最後に。

日米防衛協力のための指針1997年9月23日於ニュー・ヨーク

 日米同盟関係は、日本の安全の確保にとって必要不可欠なものであり、また、アジア太平洋地域における平和と安定を維持するために引き続き重要な役割を果たしている。日米同盟関係は、この地域における米国の肯定的な関与を促進するものである。この同盟関係は、自由、民主主義及び人権の尊重等の共通の価値観を反映するとともに、より安定した国際的な安全保障環境の構築のための努力を始めとする広範な日米間の協力の政治的な基礎となっている。このような努力が成果を挙げることは、この地域のすべての者の利益となる。
 1978年11月27日の第17回日米安全保障協議委員会(SCC)で了承された「日米防衛協力のための指針」(「指針」)は、防衛の分野における包括的な協力態勢に関する研究・協議の結果として策定された。指針の下で行われたより緊密な防衛協力のための作業の成果には顕著なものがあり、これは、日米安全保障体制の信頼性を増進させた。
 冷戦の終結にもかかわらず、アジア太平洋地域には潜在的な不安定性と不確実性が依然として存在しており、この地域における平和と安定の維持は、日本の安全のために一層重要になっている。
 1996年4月に橋本総理大臣とクリントン大統領により発表された「日米安全保障共同宣言」は、日米安全保障関係が、共通の安全保障上の目標を達成するとともに、21世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した。また、総理大臣と大統領は、日本と米国の間に既に構築されている緊密な協力関係を増進するため、1978年の指針の見直しを開始することで意見が一致した。
 1996年6月、日米両国政府は、1995年11月の日本の「防衛計画の大綱」及び「日米安全保障共同宣言」を踏まえて指針の見直し(「見直し」)を行うため、日米安全保障協議委員会の下にある防衛協力小委員会(SDC)を改組した。防衛協力小委員会は、冷戦後の情勢の変化にかんがみ、指針の下での成果を基礎として、以下の分野について検討を行ってきた。
平素から行う協力
日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(「周辺事態」)の協力
 これらの検討は、平素からの及び緊急事態における日米両国の役割並びに協力及び調整の在り方について、一般的な大枠及び方向性を示すことを目的としたものである。見直しは、特定の地域における事態を議論して行ったものではない。
 防衛協力小委員会は、1996年9月の日米安全保障協議委員会による指示を受け、1997年秋に終了することを目途に、より効果的な日米協力に資するような考え方及び具体的な項目を洗い出すことを目標として見直しを行った。見直しの過程で防衛協力小委員会において行われた議論は、1996年9月の「日米防衛協力のための指針の見直しの進捗状況報告」及び1997年6月の「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間とりまとめ」に整理されている。
 防衛協力小委員会は、新たな「日米防衛協力のための指針」を作成し、これを日米安全保障協議委員会に報告した。日米安全保障協議委員会は、以下に示す指針を了承し、公表した。この指針は、1978年の指針に代わるものである。

日米防衛協力のための指針
I 指針の目的

 この指針の目的は、平素から並びに日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際してより効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための、堅固な基礎を構築することである。また、指針は、平素からの及び緊急事態における日米両国の役割並びに協力及び調整の在り方について、一般的な大枠及び方向性を示すものである。

II 基本的な前提及び考え方

 指針及びその下で行われる取組みは、以下の基本的な前提及び考え方に従う。

1 日米安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。

2 日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。

3 日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法の基本原則並びに国際連合憲章を始めとする関連する国際約束に合致するものである。

4 指針及びその下で行われる取組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。しかしながら、日米協力のための効果的な態勢の構築が指針及びその下で行われる取組みの目標であることから、日米両国政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待される。日本のすべての行為は、その時々において適用のある国内法令に従う。

III 平素から行う協力

 日米両国政府は、現在の日米安全保障体制を堅持し、また、各々所要の防衛態勢の維持に努める。日本は、「防衛計画の大綱」にのっとり、自衛のために必要な範囲内で防衛力を保持する。米国は、そのコミットメントを達成するため、核抑止力を保持するとともに、アジア太平洋地域における前方展開兵力を維持し、かつ、来援し得るその他の兵力を保持する。
 日米両国政府は、各々の政策を基礎としつつ、日本の防衛及びより安定した国際的な安全保障環境の構築のため、平素から密接な協力を維持する。
 日米両国政府は、平素から様々な分野での協力を充実する。この協力には、日米物品役務相互提供協定及び日米相互防衛援助協定並びにこれらの関連取決めに基づく相互支援活動が含まれる。

1 情報交換及び政策協議

 日米両国政府は、正確な情報及び的確な分析が安全保障の基礎であると認識し、アジア太平洋地域の情勢を中心として、双方が関心を有する国際情勢についての情報及び意見の交換を強化するとともに、防衛政策及び軍事態勢についての緊密な協議を継続する。
 このような情報交換及び政策協議は、日米安全保障協議委員会及び日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)を含むあらゆる機会をとらえ、できる限り広範なレベル及び分野において行われる。

2 安全保障面での種々の協力

 安全保障面での地域的な及び地球的規模の諸活動を促進するための日米協力は、より安定した国際的な安全保障環境の構築に寄与する。
 日米両国政府は、この地域における安全保障対話・防衛交流及び国際的な軍備管理・軍縮の意義と重要性を認識し、これらの活動を促進するとともに、必要に応じて協力する。
 日米いずれかの政府又は両国政府が国際連合平和維持活動又は人道的な国際救援活動に参加する場合には、日米両国政府は、必要に応じて、相互支援のために密接に協力する。日米両国政府は、輸送、衛生、情報交換、教育訓練等の分野における協力の要領を準備する。
 大規模災害の発生を受け、日米いずれかの政府又は両国政府が関係政府又は国際機関の要請に応じて緊急援助活動を行う場合には、日米両国政府は、必要に応じて密接に協力する。

3 日米共同の取組み

 日米両国政府は、日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画についての検討及び周辺事態に際しての相互協力計画についての検討を含む共同作業を行う。このような努力は、双方の関係機関の関与を得た包括的なメカニズムにおいて行われ、日米協力の基礎を構築する。
 日米両国政府は、このような共同作業を検証するとともに、自衛隊及び米軍を始めとする日米両国の公的機関及び民間の機関による円滑かつ効果的な対応を可能とするため、共同演習・訓練を強化する。また、日米両国政府は、緊急事態において関係機関の関与を得て運用される日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。

IV 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等

 日本に対する武力攻撃に際しての共同対処行動等は、引き続き日米防衛協力の中核的要素である。
 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するための措置をとるとともに、日本の防衛のために必要な準備を行う。日本に対する武力攻撃がなされた場合には、日米両国政府は、適切に共同して対処し、極力早期にこれを排除する。

1 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合

 日米両国政府は、情報交換及び政策協議を強化するとともに、日米間の調整メカニズムの運用を早期に開始する。日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う。日本は、米軍の来援基盤を構築し、維持する。また、日米両国政府は、情勢の変化に応じ、情報収集及び警戒監視を強化するとともに、日本に対する武力攻撃に発展し得る行為に対応するための準備を行う。
 日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。
 なお、日米両国政府は、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることを念頭に置きつつ、日本の防衛のための準備と周辺事態への対応又はそのための準備との間の密接な相互関係に留意する。

2 日本に対する武力攻撃がなされた場合

(1)整合のとれた共同対処行動のための基本的な考え方

(イ)  日本は、日本に対する武力攻撃に即応して主体的に行動し、極力早期にこれを排除する。その際、米国は、日本に対して適切に協力する。このような日米協力の在り方は、武力攻撃の規模、態様、事態の推移その他の要素により異なるが、これには、整合のとれた共同の作戦の実施及びそのための準備、事態の拡大を抑制するための措置、警戒監視並びに情報交換についての協力が含まれ得る。
(ロ)  自衛隊及び米軍が作戦を共同して実施する場合には、双方は、整合性を確保しつつ、適時かつ適切な形で、各々の防衛力を運用する。その際、双方は、各々の陸・海・空部隊の効果的な統合運用を行う。自衛隊は、主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は、自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ハ)  米国は、兵力を適時に来援させ、日本は、これを促進するための基盤を構築し、維持する。
(2)作戦構想

(イ)  日本に対する航空侵攻に対処するための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本に対する航空侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、防空のための作戦を主体的に実施する。
 米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ロ)  日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の保護のための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備、日本周辺海域における船舶の保護並びにその他の作戦を主体的に実施する。
 米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、機動打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ハ)  日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、日本に対する着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。
 米軍は、主として自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。その際、米国は、侵攻の規模、態様その他の要素に応じ、極力早期に兵力を来援させ、自衛隊の行う作戦を支援する。
(ニ)  その他の脅威への対応
自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事態に応じて米軍の適切な支援を得る。
自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。
(3)作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項

(イ)  指揮及び調整
 自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動する。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、役割分担の決定、作戦行動の整合性の確保等についての手続をあらかじめ定めておく。
(ロ)  日米間の調整メカニズム
 日米両国の関係機関の間における必要な調整は、日米間の調整メカニズムを通じて行われる。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、作戦、情報活動及び後方支援について、日米共同調整所の活用を含め、この調整メカニズムを通じて相互に緊密に調整する。
(ハ)  通信電子活動
 日米両国政府は、通信電子能力の効果的な活用を確保するため、相互に支援する。
(ニ)  情報活動
 日米両国政府は、効果的な作戦を共同して実施するため、情報活動について協力する。これには、情報の要求、収集、処理及び配布についての調整が含まれる。その際、日米両国政府は、共有した情報の保全に関し各々責任を負う。
(ホ)  後方支援活動
 自衛隊及び米軍は、日米間の適切な取決めに従い、効率的かつ適切に後方支援活動を実施する。
 日米両国政府は、後方支援の効率性を向上させ、かつ、各々の能力不足を軽減するよう、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用しつつ、相互支援活動を実施する。その際、特に次の事項に配慮する。
補給
 米国は、米国製の装備品等の補給品の取得を支援し、日本は、日本国内における補給品の取得を支援する。
輸送
 日米両国政府は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送を含む輸送活動について、緊密に協力する。
整備
 日本は、日本国内において米軍の装備品の整備を支援し、米国は、米国製の品目の整備であって日本の整備能力が及ばないものについて支援を行う。整備の支援には、必要に応じ、整備要員の技術指導を含む。また、日本は、サルベージ及び回収に関する米軍の需要についても支援を行う。
施設
 日本は、必要に応じ、日米安全保障条約及びその関連取極に従って新たな施設・区域を提供する。また、作戦を効果的かつ効率的に実施するために必要な場合には、自衛隊及び米軍は、同条約及びその関連取極に従って、自衛隊の施設及び米軍の施設・区域の共同使用を実施する。
衛生
 日米両国政府は、衛生の分野において、傷病者の治療及び後送等の相互支援を行う。
V 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力

 周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。日米両国政府は、個々の事態の状況について共通の認識に到達した場合に、各々の行う活動を効果的に調整する。なお、周辺事態に対応する際にとられる措置は、情勢に応じて異なり得るものである。

1 周辺事態が予想される場合

 周辺事態が予想される場合には、日米両国政府は、その事態について共通の認識に到達するための努力を含め、情報交換及び政策協議を強化する。
 同時に、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払うとともに、日米共同調整所の活用を含め、日米間の調整メカニズムの運用を早期に開始する。また、日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う。更に、日米両国政府は、情勢の変化に応じ、情報収集及び警戒監視を強化するとともに、情勢に対応するための即応態勢を強化する。

2 周辺事態への対応

 周辺事態への対応に際しては、日米両国政府は、事態の拡大の抑制のためのものを含む適切な措置をとる。これらの措置は、上記Ⅱに掲げられた基本的な前提及び考え方に従い、かつ、各々の判断に基づいてとられる。日米両国政府は、適切な取決めに従って、必要に応じて相互支援を行う。
 協力の対象となる機能及び分野並びに協力項目例は、以下に整理し、下記の表に示すとおりである。

(1)日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力

 日米両国政府は、以下の活動を各々の判断の下に実施することができるが、日米間の協力は、その実効性を高めることとなる。

(イ)  救援活動及び避難民への対応のための措置
 日米両国政府は、被災地の現地当局の同意と協力を得つつ、救援活動を行う。日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、必要に応じて協力する。
 日米両国政府は、避難民の取扱いについて、必要に応じて協力する。避難民が日本の領域に流入してくる場合については、日本がその対応の在り方を決定するとともに、主として日本が責任を持ってこれに対応し、米国は適切な支援を行う。
(ロ)  捜索・救難
 日米両国政府は、捜索・救難活動について協力する。日本は、日本領域及び戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の海域において捜索・救難活動を実施する。米国は、米軍が活動している際には、活動区域内及びその付近での捜索・救難活動を実施する。
(ハ)  非戦闘員を退避させるための活動
 日本国民又は米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退避させる必要が生じる場合には、日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地当局との関係について各々責任を有する。日米両国政府は、各々が適切であると判断する場合には、各々の有する能力を相互補完的に使用しつつ、輸送手段の確保、輸送及び施設の使用に係るものを含め、これらの非戦闘員の退避に関して、計画に際して調整し、また、実施に際して協力する。日本国民又は米国国民以外の非戦闘員について同様の必要が生じる場合には、日米両国が、各々の基準に従って、第三国の国民に対して退避に係る援助を行うことを検討することもある。

(ニ)  国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動
 日米両国政府は、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動に対し、各々の基準に従って寄与する。
 また、日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、適切に協力する。そのような協力には、情報交換、及び国際連合安全保障理事会決議に基づく船舶の検査に際しての協力が含まれる。
(2)米軍の活動に対する日本の支援

(イ)  施設の使用
 日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。
(ロ)  後方地域支援
 日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。この後方地域支援は、米軍が施設の使用及び種々の活動を効果的に行うことを可能とすることを主眼とするものである。そのような性質から、後方地域支援は、主として日本の領域において行われるが、戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の公海及びその上空において行われることもあると考えられる。
 後方地域支援を行うに当たって、日本は、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。自衛隊は、日本の防衛及び公共の秩序維持のための任務の遂行と整合を図りつつ、適切にこのような支援を行う。
(3)運用面における日米協力

 周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保を目的として、情報収集、警戒監視、機雷の除去等の活動を行う。米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。
 自衛隊及び米軍の双方の活動の実効性は、関係機関の関与を得た協力及び調整により、大きく高められる。

VI 指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み

 指針の下での日米防衛協力を効果的に進めるためには、平素、日本に対する武力攻撃及び周辺事態という安全保障上の種々の状況を通じ、日米両国が協議を行うことが必要である。日米防衛協力が確実に成果を挙げていくためには、双方が様々なレベルにおいて十分な情報の提供を受けつつ、調整を行うことが不可欠である。このため、日米両国政府は、日米安全保障協議委員会及び日米安全保障高級事務レベル協議を含むあらゆる機会をとらえて情報交換及び政策協議を充実させていくほか、協議の促進、政策調整及び作戦・活動分野の調整のための以下の2つのメカニズムを構築する。
 第一に、日米両国政府は、計画についての検討を行うとともに共通の基準及び実施要領等を確立するため、包括的なメカニズムを構築する。これには、自衛隊及び米軍のみならず、各々の政府のその他の関係機関が関与する。
 日米両国政府は、この包括的なメカニズムの在り方を必要に応じて改善する。日米安全保障協議委員会は、このメカニズムの行う作業に関する政策的な方向性を示す上で引き続き重要な役割を有する。日米安全保障協議委員会は、方針を提示し、作業の進捗を確認し、必要に応じて指示を発出する責任を有する。防衛協力小委員会は、共同作業において、日米安全保障協議委員会を補佐する。
 第二に、日米両国政府は、緊急事態において各々の活動に関する調整を行うため、両国の関係機関を含む日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。

1 計画についての検討並びに共通の基準及び実施要領等の確立のための共同作業

 双方の関係機関の関与を得て構築される包括的なメカニズムにおいては、以下に掲げる共同作業を計画的かつ効率的に進める。これらの作業の進捗及び結果は、節目節目に日米安全保障協議委員会及び防衛協力小委員会に対して報告される。

(1)共同作戦計画についての検討及び相互協力計画についての検討

 自衛隊及び米軍は、日本に対する武力攻撃に際して整合のとれた行動を円滑かつ効果的に実施し得るよう、平素から共同作戦計画についての検討を行う。また、日米両国政府は、周辺事態に円滑かつ効果的に対応し得るよう、平素から相互協力計画についての検討を行う。
 共同作戦計画についての検討及び相互協力計画についての検討は、その結果が日米両国政府の各々の計画に適切に反映されることが期待されるという前提の下で、種々の状況を想定しつつ行われる。日米両国政府は、実際の状況に照らして、日米両国各々の計画を調整する。日米両国政府は、共同作戦計画についての検討と相互協力計画についての検討との間の整合を図るよう留意することにより、周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合又は両者が同時に生起する場合に適切に対応し得るようにする。

(2)準備のための共通の基準の確立

 日米両国政府は、日本の防衛のための準備に関し、共通の基準を平素から確立する。この基準は、各々の準備段階における情報活動、部隊の活動、移動、後方支援その他の事項を明らかにするものである。日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府の合意により共通の準備段階が選択され、これが、自衛隊、米軍その他の関係機関による日本の防衛のための準備のレベルに反映される。
 同様に、日米両国政府は、周辺事態における協力措置の準備に関しても、合意により共通の準備段階を選択し得るよう、共通の基準を確立する。

(3)共通の実施要領等の確立

 日米両国政府は、自衛隊及び米軍が日本の防衛のための整合のとれた作戦を円滑かつ効果的に実施できるよう、共通の実施要領等をあらかじめ準備しておく。これには、通信、目標位置の伝達、情報活動及び後方支援並びに相撃防止のための要領とともに、各々の部隊の活動を適切に律するための基準が含まれる。また、自衛隊及び米軍は、通信電子活動等に関する相互運用性の重要性を考慮し、相互に必要な事項をあらかじめ定めておく。

2 日米間の調整メカニズム

 日米両国政府は、日米両国の関係機関の関与を得て、日米間の調整メカニズムを平素から構築し、日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際して各々が行う活動の間の調整を行う。
 調整の要領は、調整すべき事項及び関与する関係機関に応じて異なる。調整の要領には、調整会議の開催、連絡員の相互派遣及び連絡窓口の指定が含まれる。自衛隊及び米軍は、この調整メカニズムの一環として、双方の活動について調整するため、必要なハードウェア及びソフトウェアを備えた日米共同調整所を平素から準備しておく。

VII 指針の適時かつ適切な見直し

 日米安全保障関係に関連する諸情勢に変化が生じ、その時の状況に照らして必要と判断される場合には、日米両国政府は、適時かつ適切な形でこの指針を見直す。

周辺事態における協力の対象となる機能及び分野並びに協力項目例

機能及び分野 協力項目例

日米両国政府が

各々主体的に

行う活動における協力

救援活動及び避難民への対応のための措置 ・被災地への人員及び補給品の輸送
・被災地における衛生、通信及び輸送
・避難民の救援及び輸送のための活動並びに避難民に対する応急物資の支給
捜索・救難 ・日本領域及び日本の周囲の海域における捜索・救難活動並びにこれに関する情報の交換
非戦闘員を退避させるための活動

・情報の交換並びに非戦闘員との連絡及び非戦闘員の集結・輸送
・非戦闘員の輸送のための米航空機・船舶による自衛隊施設及び民間空港・港湾の使用
・非戦闘員の日本入国時の通関、出入国管理及び検疫
・日本国内における一時的な宿泊、輸送及び衛生に係る非戦闘員

への援助

国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動 ・経済制裁の実効性を確保するために国際連合安全保障理事会決議に基づいて行われる船舶の検査及びこのような検査に関連する活動
・情報の交換
米軍の活動に対する日本の支援 施設の使用 ・補給等を目的とする米航空機・船舶による自衛隊施設及び民間空港・港湾の使用
・自衛隊施設及び民間空港・港湾における米国による人員及び物資の積卸しに必要な場所及び保管施設の確保
・米航空機・船舶による使用のための自衛隊施設及び民間空港・港湾の運用時間の延長
・米航空機による自衛隊の飛行場の使用
・訓練・演習区域の提供
・米軍施設・区域内における事務所・宿泊所等の建設
米軍の活動に対する日本の支援 後方
地域支援
補給 ・自衛隊施設及び民間空港・港湾における米航空機・船舶に対する物資(武器・弾薬を除く。)及び燃料・油脂・潤滑油の提供
・米軍施設・区域に対する物資(武器・弾薬を除く。)及び燃料・油脂・潤滑油の提供
輸送 ・人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の日本国内における陸上・海上・航空輸送
・公海上の米船舶に対する人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の海上輸送
・人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の輸送のための車両及びクレーンの使用
整備 ・米航空機・船舶・車両の修理・整備
・修理部品の提供
・整備用資器材の一時提供
衛生 ・日本国内における傷病者の治療
・日本国内における傷病者の輸送
・医薬品及び衛生機具の提供
警備 ・米軍施設・区域の警備
・米軍施設・区域の周囲の海域の警戒監視
・日本国内の輸送経路上の警備
・情報の交換
通信 ・日米両国の関係機関の間の通信のための周波数(衛星通信用を含む。)の確保及び器材の提供
米軍の活動に対する日本の支援 後方地域
支援
その他 ・米船舶の出入港に対する支援
・自衛隊施設及び民間空港・港湾における物資の積卸し
・米軍施設・区域内における汚水処理、給水、給電等
・米軍施設・区域従業員の一時増員
運用面における日米協力 警戒監視 ・情報の交換
機雷除去 ・日本領域及び日本の周囲の公海における機雷の除去並びに機雷に関する情報の交換
海・空域調整 ・日本領域及び周囲の海域における交通量の増大に対応した海上運航調整
・日本領域及び周囲の空域における航空交通管制及び空域調整

 

Joint Statement
U.S.-Japan Security Consultative Committee
Completion of the Review of the Guidelines
for U.S.-Japan Defense Cooperation
New York, New York

September 23, 1997

The U.S.-Japan alliance is indispensable for ensuring the security of Japan and continues to play a key role in maintaining peace and stability in the Asia-Pacific region. It also facilitates the positive engagement of the United States in the region. The alliance reflects such common values as respect for freedom, democracy, and human rights, and serves as a political basis for wide-ranging bilateral cooperation, including efforts to build a more stable international security environment. The success of such efforts benefits all in the region.

The “Guidelines for U.S.-Japan Defense Cooperation” (the Guidelines), approved by the 17th Security Consultative Committee (SCC) on November 27, 1978, resulted from studies and consultations on a comprehensive framework for cooperation in the area of defense. Significant achievements for closer defense cooperation under the Guidelines have increased the credibility of bilateral security arrangements.

Although the Cold War has ended, the potential for instability and uncertainty persists in the Asia-Pacific region. Accordingly, the maintenance of people and stability in this region has assumed greater importance for the security of Japan.

The “U.S.-Japan Joint Declaration on Security” issued by President Clinton and Prime Minister Hashimoto in April 1996, reconfirmed that the U.S.-Japan security relationship remains the cornerstone for achieving common security objectives, and for maintaining a stable and prosperous environment in the Asia-Pacific region as we enter the twenty-first century. The President and the Prime Minister agreed to initiate a review of the 1978 Guidelines to build upon the close working relationship already established between the United States and Japan.

In June 1996, the two Governments reconstituted the Subcommittee for Defense Cooperation (SDC) under the auspices of the SCC, to conduct the review of the Guidelines (the Review) on the basis of Japan’s “National Defense Program Outline” of November 1995, and the “U.S.-Japan Joint Declaration on Security.” In view of the changes in the post-Cold War environment, and based on the achievements made under the Guidelines, the SDC has considered:

-cooperation under normal circumstances;
-actions in response to an armed attack against Japan; and
-cooperation in situations in areas surrounding Japan that will have an important influence on Japan’s peace and security (situations in areas surrounding Japan).

These considerations aimed at providing a general framework and policy direction for the roles and missions of the two countries and ways of cooperation and coordination, both under normal circumstances and during contingencies. The Review did not address situations in specific areas.

The SDC has conducted the Review with the objective of identifying ideas and specific items that would contribute to more effective bilateral cooperation with the intention to complete the Review by autumn of 1997, as instructed by the SCC in September 1996. The discussions at the SDC in the course of the Review are summarized in the “Progress Report on the Guidelines Review for U.S.-Japan Defense Cooperation” of September 1996, and in the “Interim Report on the Review of the Guidelines for U.S.-Japan Defense Cooperation” of June 1997.

The SDC prepared and submitted to the SCC new “Guidelines for U.S.-Japan Defense Cooperation.” The SCC approved and issued the following Guidelines, which supersede the 1978 Guidelines.