[解説]
新聞各紙は、台風19号の死者を報道しなくなったが、13都県で死者87人になった。一番多くの死者を出したのは福島県30人だ。阿武隈川が氾濫することは前日に予想されていた。福島県は高齢者を高齢者を前日のうちに避難させるへきだったのではないか。
甚大な被害 台風19号 87人死亡 7人行方不明 71河川で決壊
2019年10月25日 18:22pm NHK NewsWeb
10月25日 18時22分
NHKが各地の放送局を通じてまとめたところ、台風19号で亡くなった人は全国で87人となり、7人が行方不明となっています。
亡くなった人は、▽福島県で30人、▽宮城県で19人、▽神奈川県で14人、▽栃木県、群馬県、長野県でそれぞれ4人、▽静岡県で3人、▽岩手県、茨城県、埼玉県でそれぞれ2人、▽東京都、千葉県、兵庫県でそれぞれ1人です。
また、行方不明となっている人は、▽神奈川県で3人、▽宮城県、福島県、茨城県、長野県、静岡県でそれぞれ1人です。
堤防決壊は71河川135か所
国土交通省によりますと、台風19号による豪雨で川の堤防が壊れる「決壊」が発生したのは、20日午前11時の時点で、7つの県の合わせて71河川、135か所となっています。
国が管理する河川で堤防の決壊が確認されたのは、7つの河川の12か所です。
県が管理する河川で堤防の決壊が確認されたのは、67の河川の123か所です。
このうち新たに堤防の決壊が確認されたのは、
▽内川の宮城県丸森町愛宕田で3か所、
▽五福谷川の宮城県丸森町上林西で1か所、
▽黒川の栃木県壬生町上稲葉で1か所です。
このほか、川の水が堤防を越える「越水」などで氾濫が発生した河川も、16都県の、延べ271河川にのぼっています。
決壊の情報は、国土交通省のホームページの「災害・防災情報」でも確認することができます。
住宅被害 7万4000棟超
総務省消防庁によりますと、台風19号の影響で、全国で7万4464棟の住宅が、水につかったり全半壊したりする被害を受けています。
このうち▽床上まで水につかったのは、栃木県や福島県、長野県など17の都県で3万3001棟、▽床下が水につかったのは、21の都県で3万4011棟となっています。
また、▽全壊や半壊の被害を受けた住宅は、茨城県や福島県、岩手県など15の都県で3112棟、▽一部損壊が、27の都道府県で4340棟となっています。
土砂災害 20都県で482件
国土交通省によりますと、台風19号による豪雨で発生した土石流や崖崩れなどによる土砂災害は、21日午後5時の時点で、少なくとも20の都県で482件発生しているということです。
今回の台風による豪雨では、群馬県富岡市で、裏山の土砂が崩れて住宅に流れ込み3人が死亡するなど、各地で土砂災害が相次ぎました。
都県別では、宮城県が最も多く82件、神奈川県が59件、岩手県が53件、群馬県が42件、新潟県と静岡県がいずれも41件、長野県が38件、福島県が37件、埼玉県が23件、栃木県が22件、東京都が13件、山梨県が11件、茨城県で10件などとなっています。
浸水想定578浄水場、対策せず 台風19号、福島では被害も
2019年10月24日 朝日新聞
河川の氾濫(はんらん)などで浸水する恐れがある場所に設置されながら、浸水対策がされていない浄水場は全国で578カ所にのぼっている。台風19号の大雨では、福島県いわき市の平(たいら)浄水場が水没し、最大で約4万5千戸が断水した。災害からの復旧を支えるインフラの備えが遅れている。
厚生労働省は、2018年9月に公共施設や病院などにつながる全国の主要な浄水場3521カ所を調査。その結果、22%に当たる758カ所が浸水想定区域にあり、そのうち76%の578カ所は入り口のかさ上げや防水扉の設置などの対策がされていなかった。土砂災害警戒区域にも542カ所あるが、うち496カ所が未対策だという。厚労省は各自治体の承諾が得られていないとして、個別の施設名を公表していない。
いわき市では13日午前1時半ごろ、市内を流れる夏井川が氾濫して平浄水場の1階に水が流れ込み、電気を各設備に流す心臓部が約80センチ浸水。段階的な通水が22日に始まり、27日ごろに断水は解消する見通しだが、浸水家屋の掃除や洗濯が出来ず、深刻な影響を与えている。
市内で最大の同浄水場は00年、市のハザードマップで浸水想定区域に入ると判断された。しかし、防水扉設置などの対策は取られなかった。市水道局の加藤弘司局長は「現実的にこのような被害が起きるとは想定していなかった。財源も限られるなか、具体的な対策を検討できていなかった」と話す。
豪雨で水道施設が被災し、断水する例は近年、全国で相次ぐ。11年7月の新潟・福島豪雨では約5万戸で最長68日間、18年7月に広島県などを襲った西日本豪雨では約26万3千戸で最長38日間の断水が続いた。
名古屋大の中村晋一郎准教授(土木工学)は「浸水対策などハード面の対策も必要だが、限られた予算の中で、すぐに実施することは難しい。断水のリスクに備え、住民側の事前の対策も合わせて必要だ」と話す。(増山祐史、滝口信之、力丸祥子)
核心 浸水想定 生かせず ハザードマップ一致「より安全な場所 確認を」 台風19号被害
2019年10月19日 東京新聞 朝刊2面
記録的大雨をもたらした台風19号で、河川氾濫により実際に浸水した範囲は、自治体があらかじめ被害想定を示していたハザードマップと、ほぼ一致することが分かった。避難所や災害対応拠点の庁舎が浸水想定区域に含まれている自治体もあり、台風が通過した十二日から十三日にかけて、氾濫した水が迫っていた。東京などでは住民が入りきれなくなった避難所も見られ、課題を残した。(渡辺聖子、福岡範行)
水没は想定内
ハザードマップは、雨量や地形から災害の起こりやすい場所を表した地図。氾濫により想定される浸水区域や深さがひと目で分かる。作成した自治体は住民に配布したり、ホームページに掲載したりしている。
国土地理院は台風19号の通過後、国土交通省の空撮画像から関東・中部・東北の五県の八河川について、浸水の深さを推定した地図を作った。那珂川が氾濫した水戸市のハザードマップと国土地理院の推定地図を比べると、常磐自動車道水戸北スマートインターチェンジ(IC)周辺では浸水区域がほぼ重なった。最も深い十~二十メートルの浸水が想定される区域のうち、IC南側では深さ七・二メートルに達したとみられるという。
千曲川が氾濫した長野市でも、JR東日本の北陸新幹線の車両基地が水没した一帯は、ハザードマップの浸水想定区域に含まれ、被害は「想定内」だった。
ハザードマップには避難所として想定される施設が載っているが、浸水の危険を抱える地域に含まれるケースも少なくない。山あいの宮城県丸森町では、居住エリア全域がリスクを抱えており、避難所となった町役場の敷地の一部も今回の台風で水につかった。
しかも、浸水前に住民が避難していた役場隣の施設は、屋上から大雨が入り込んで使えなくなり、土砂降りの中、五十~六十人を十メートル離れた役場へマイクロバスで三十分以上かけて移動させた。その後、水はあっという間に増え、深い所では駐車場の軽乗用車がすっぽりとつかったという。町の担当者は「こんなことは初めて。人命第一を考え、バス移動を判断した」と振り返る。
災害対応拠点である町役場は四階建て。駐車場は浸水したが、建物は無事だった。担当者は「対策本部はもともと二階に設置することになっている」と説明。ただ想定を超える浸水となった場合の設置場所については「特に決めていない」と話す。
住民が集中
多摩川沿いの東京都狛江市と調布市では、避難所へ住民が集中し、当初開設した施設だけでは間に合わなくなる事態も起きた。
狛江市では十二日午後二時半ごろ、住民が多数集まった中央公民館に加え、急きょ隣接する市役所内の市議会議場を開放。その後も避難者が絶えず、市役所の会議室などを含めて四百人以上を受け入れた。
夜には別の避難所でも人があふれ、風雨が強い中で別の公共施設へ案内せざるを得なくなった。担当者は「商業施設などに協力してもらって、避難できる場所を増やせないか、検討したい」と話した。
都防災会議委員を務める常葉(とこは)大社会環境学部の重川希志依(きしえ)教授(防災教育)は「避難所が安全とは言い切れない。マップを確認して早めに避難を始め、もう一つ先の安全な場所を目指してほしい」と呼び掛けた。
台風19号の浸水エリア ハザードマップの浸水想定と多くが一致
2019年10月25日 NHK News Web
台風19号の豪雨で相次いだ堤防の決壊による河川の氾濫。
特に被害が大きかった福島県の阿武隈川など8河川の流域で、浸水したエリアをNHKが分析した結果、そのほとんどが自治体の「ハザードマップ」などで浸水が想定されていたことがわかりました。
(動画をご覧いただくと、「浸水想定」と「実際の浸水エリア」を比較できます)
比較した河川の流域は、
▽福島県と宮城県の阿武隈川、
▽宮城県の吉田川、
▽長野県の千曲川、
▽埼玉県の入間川、越辺川、都幾川、
▽茨城県の那珂川と久慈川です。
地図の重ねあわせの分析に使ったのは、自治体のハザードマップの元になる国土交通省の「浸水想定」と、国土地理院が航空写真を元に推定した「浸水エリア」の電子データです。
吉田川 宮城県大郷町の付近では…
吉田川の近くの地域では、浸水の状況がほぼ一致していたほか、吉田川に流れ込む支流の周辺でも想定されていた範囲に沿うようにして、浸水が発生していました。
阿武隈川下流 宮城県角田市や周辺では…
千曲川 長野市穂保と周辺では…
4河川では全ての浸水エリアが「浸水想定範囲」
▽千曲川、▽入間川、▽越辺川、▽那珂川の4河川は、
すべての浸水エリアが、浸水想定範囲に含まれていたことが確認されました。
浸水想定の範囲外で被害が出た場所も…
宮城県丸森町では、ハザードマップなどで阿武隈川による浸水が想定されていた範囲の外にある住宅地や田畑でも浸水被害が発生しました。
町によりますと、このエリアの浸水は阿武隈川そのものではなく、その支流が氾濫したことが原因で発生したとみられ、少なくとも70棟以上の住宅で床上が浸水する被害が出ました。
なぜ、この地域では、ハザードマップで浸水が想定されていなかったのか。
国や町は、今回、氾濫が発生した阿武隈川の支流は、川の規模が小さく、浸水の想定を行う対象の河川ではなかったため、この支流の氾濫は想定には含まれていないと説明しています。
ハザードマップの周知 十分進まず
4年前、平成27年の関東・東北豪雨で茨城県の鬼怒川の堤防が決壊し多くの住宅が流された常総市で、中央大学理工学部の河川・水文研究室が住民およそ500人に調査した結果、▽ハザードマップを知らない、見たことがないと答えた人が65%にのぼった一方、▽ハザードマップを確認し浸水の程度を把握している人は10%にとどまりました。
国土交通省は、去年の西日本豪雨など相次ぐ水害によってハザードマップを知っている人は増えているものの、内容を理解し、避難などの行動に結びつける人が多くないことが課題だとしています。
専門家「ハザードマップで地域のリスク知って」
一方、想定されていない一部のエリアで浸水が発生したことについて、「洪水のハザードマップは大きな河川を中心に浸水の想定が作られ、小さな河川沿いは想定の対象となっていないところもあるため浸水が想定されていない地域が安全だということではない。小さな河川も氾濫し、周辺が浸水することは十分ありうるので、『川の近くでは注意をする』ということを徹底してほしい」と指摘しています。