[解説]

 2011年3月12日,13日,14日,15日の福島第一原発1号機、2号機のベントと、2011年3月15日の2号機の圧力抑制室の底抜けによって、1/2号機の排気筒の内側には、高濃度の放射能がこびりついています。1/2号機排気筒は高さ120mもあります。1/2号機排気筒には、高さ45m,66m付近に明らかな亀裂があり、大きな地震や台風などにより、倒壊する恐れがある、とされてきました。東京電力は、そのため、排気筒上部から順順に切断・撤去する巨大なクレーン型の機械を開発し、2019年3月から解体・撤去工事を始める、としていました。それが、「モックアップ訓練(模型を作って、模型を解体・撤去して練習するること)を繰り返し、万全を期すため」と称して、2019年5月連休明けに行う、と発表されました。

 それが突如、2019年5月14日、クレーンの長さが約1.6m足りなかった、として、無期延期になりました。

 以下は、その後、2019年5月23日に東京電力が公表した資料です。

分かりにくいので、編集者が解説を加えています。赤字が解説を加えた部分です。

果たして、クレーンが約3m足りない、ということが、数年かけて準備されてきた工事で起こりうるのでしょうか?今回の作業に入る前の失敗は、そもそも650トンものクレーン車(巻末の東京新聞参照)を安定的に設置することが不可能なのではないですか?東京電力福島第一原発の敷地はもともとは沼地です。辺野古新基地建設予定地と同じようにN値がゼロなのではないですか?また、「5月11日の現場合わせ時、調査機材の下端が排気筒頂部よりも約1.6m低い」とは、たった2週間の間に、排気筒が沈んだのではないでしょうか?

 東京電力の資料では、何も分かりません。今回の作業無期延期になった本当の理由を公表するべきだ、と考えます。

 また、今年2019年7月、8月にも福島県地方にも台風が襲来する可能性があり、また、その台風によって1/2号機排気筒が倒壊する危険性もあります。その際に高濃度の放射能が舞い散る危険性があります。注意が必要です。

福島第一原子力発電所
1/2号機排気筒解体に向けた調整状況について

2019年5月23日 東京電力

高さ120mの1/2号機排気筒解体開始に向けた最終確認として、解体装置が最頂部に設置可能か確認するため、5月11日にクレーンに解体装置高さを模擬した調査機材を取り付けて現場合わせを行ったところ、事前に計画していた高さと約3mの差異(低い)があることを確認しました。
  差異の原因としては、クレーンアーム部の角度表示の測定誤差を一つの可能性と推定しつつ、光波等を用いて、長さ・高さ等の実測を中心とした確認を進めてまいりました。

図  解体装置外形図  

クレーンフックまで約7.6m

解体装置高さを模擬した調査機材の模式図

事前に計画していた調査機材の下端位置が、排気筒頂部にぴったり合わなければならないのに、約1.3m短かった。

また、排気筒頂部が5月11日の現場合わせ時、調査機材の下端が排気筒頂部よりも約1.6m低い位置となった。

従って、約1.3m+約1.6m=約3m、長さが足りなくなった。

検証結果と今後の調整内容の検討状況

・ 光波による実測等の結果、クレーンアームの角度は設定値と実際の角度に誤差がなかったことを確認するとともに、高さ等の実測から、最大巻き上げ時のワイヤーの長さに、計画と約4mの差異があることを確認しました。

・ この差異が発生した要因は、リミットスイッチワイヤーの長さ約4mを、誤ってクレーン先端からフック上端までの距離約4mとして計画してしまったため、実際のワイヤー長さ約8mに対し、約4mの差異が発生しました。

・ なお、排気筒の高さを実際よりも1m高い設定でクレーンの高さを計画していたことも確認され、5月11日の確認作業時には、約3mの差異が発生しました。

【今後の調整内容(案)】

①︓クレーンジブを延長する

②︓ブームを起こしクレーンを排気筒に近づける

東京新聞 福島第一原発傷んだ排気筒はこう解体する

2018年12月5日 朝刊 4面